内科学

内科学 · L-41

低K血症・高K血症

Hypokalemia and Hyperkalemia

前提:病態
カリウム(K+)平衡の異常カリウム保持性利尿薬・ADH拮抗薬
前提:正常
静止膜電位の成立
疾患
Liddle症候群周期性四肢麻痺
症状
徐脈

🧠 全体像:K異常は不整脈と筋力低下を来すため、値の確認と同時にECG、症状、腎機能、酸塩基、薬剤を評価する。高K血症の救急治療は「→細胞内移動→」、低K血症は・喪失経路とMg欠乏を同時に補正する。

高K血症

原因

機序 主な原因
偽性 採血時溶血、強い・握りし、著明な・
低下 AKI・、尿路閉塞、、副腎不全
薬剤 阻害薬/、MRA、、、、、ヘパリン
細胞外への移動 代謝性アシドーシス、・、、、腫瘍崩壊、ジゴキシン中毒
摂取過剰 K含有・代用塩・輸液;通常は排泄障害を併存

筋力低下、麻痺、を来し得る。ECGは、、P波消失、、様、/へ進行し得るが、K値とECG変化は一致せず、正常ECGでも重症を除外できない。

⚠️ 「Kが上がるとこの順にECGが変わる」という並びは教科書上の型であって、臨床での感度は低い。 血清K 6 mEq/L以上で同時に心電図が記録された90例の後ろ向き検討では、実験的高K血症で見られる典型的パターンは臨床では信頼できず、とくに腎不全患者は著明な高K血症でも心電図変化を欠きうると報告された。著者らは心電図変化の感度・特異度がともに低く、安定した患者のを心電図で決める根拠は無いとし、臨床像と連続したK測定で管理すべきとしている1。💡 したがってECGの並び(→→P波消失→→)は出たときの重症度の目安として覚え、出ていないことを安全の根拠にしない。

救急対応

flowchart TD
    A["高Kを確認/疑う"] --> B["再採血+ECG+連続モニター"]
    B --> C{"ECG変化・重症K・症状"}
    C -->|"あり"| D["静注カルシウムで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardioprotection'>心筋保護</span>"]
    D --> E["インスリン+ブドウ糖±吸入<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-2 agonist'>β2刺激薬</span>で細胞内移動"]
    C -->|"なし"| F["原因・推移に応じ治療"]
    E --> G["Kを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracorporeal removal'>体外除去</span>:利尿・binder・透析"]
    F --> G
    G --> H["K・血糖を反復、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rebound'>再上昇</span>を監視"]
  1. ECG変化があれば静注カルシウムを直ちに投与する。心停止/切迫時は、それ以外はを用い、製剤濃度と施設プロトコルに従う。カルシウムはKを下げず、効果は短いためECG変化が持続すれば再投与する。静注カルシウムの主な適応はECG変化またはK ≥6.5 mmol/Lである2。
  2. 重症では 10単位+ブドウ糖 25 gを静注し、低血糖を少なくとも6時間監視する。吸入を併用できるが単独治療にしない2。は重い代謝性アシドーシスがある選択例に限る。
  3. は尿量がある例、/は状況に応じて用いる。古いポリスチレン樹脂(polystyrene sulfonate resin)製剤を急性期の主治療にしない3。
  4. 難治性、重症腎不全、急速なでは透析が最も確実な除去法である4。

⚠️ イオン()の有効性そのものが疑問視され、新規の剤へ置き換わりつつある。 1958年から使われてきたにもかかわらず、糞便中K排泄を実際に増やすという説得力のある証拠は動物でもヒトでも乏しく、併用で効果が高まる証拠も無い。2009年にはが結腸壊死の報告を受けて粉末樹脂との併用を避けるよう注意喚起している3。救急領域の総説も、は有効性への疑問と消化管有害事象のリスクから推奨されなくなっていると述べる2。💡 代わりに使われるのが(カルシウム型の)5と(KをH⁺・Na⁺と交換して選択的に捕捉する無機結晶)6である。⚠️ ただしこの2剤も「生命を脅かすの緊急治療には用いない」と添付文書に明記されている——置き換わったのは慢性・亜急性のK管理であって、急性期の主役は依然としてカルシウム・インスリン+ブドウ糖・・透析である56。

💡 どの薬が何をしているかを分けて覚える。 101件の研究を統合したでは、インスリン+ブドウ糖・吸入/静注、またはその組合せが血清Kを平均0.7〜1.2 mmol/L下げた(エビデンスの確実性は very low〜low)一方、は血清K値を動かさず、カルシウムについては高K血症治療の臨床的有益性を支持する根拠は同定されなかった7。カルシウムを投与する理由はKを下げることではなく心筋の膜を安定化させることであり、この「Kを下げない薬を最初に打つ」という構造そのものが試験で問われる。

低K血症

血清K <3.5 mmol/L。筋力低下、筋痛、麻痺、ileus、、を来し、ECGでは、、、QT様延長、心房・を認める。

原因の分け方

flowchart TD
    A["低K血症"] --> B["Mg・酸塩基・血圧・薬剤を確認"]
    B --> C["尿Kまたは尿K/クレアチニン"]
    C --> D["尿K低値:消化管喪失・摂取不足・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transcellular shift'>細胞内外移動</span>"]
    C --> E["尿K高値:腎性喪失"]
    E --> F{"高血圧か"}
    F -->|"はい"| G["アルドステロン過剰、Cushing、Liddleなど"]
    F -->|"いいえ"| H["利尿薬、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Bartter'>バーター</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gitelman'>ギテルマン</span>、RTA、低Mg"]

嘔吐は直接のK喪失だけでなく、・アルカローシスによる腎性K排泄を来す。インスリン、β2刺激、アルカローシス、では細胞内移動が主体で、総K欠乏を過大評価しない。低Mg血症は腎性K喪失を持続させる——細胞内Mgが減るとROMKチャネルに対するMgの抑制が外れ、からのK分泌が増えるため、Mgを補正しない限りK補充だけでは低K血症が治らない8。

著明なでは採血後も細胞がKを取り込むためを生じ得る。長期に持続する低K血症はだけでなく、尿細管間質障害、形成・線維化につながり得るため、無症候でも原因を放置しない。

補充

  • 症状がなく軽〜中等度なら経口KClを優先する。を伴うことが多く、Cl補充にもなる。
  • K ≤2.5 mmol/L、麻痺、不整脈、使用、経口不能では静注KClを連続ECG下で行う。一般には10 mmol/時程度まで、より速い補充は・厳密監視を要し、施設プロトコルに従う。
  • ブドウ糖含有液はでKをさらに細胞内へ移すため、初期溶媒として避ける。
  • Mg欠乏を同時に補正し、腎機能とKを頻回に再測定する8。原因薬・下痢・嘔吐・過剰も治療する。

まとめ

  • K異常では再検、ECG、腎機能、酸塩基、Mg、薬剤を同時に評価する。
  • 高K血症はカルシウムで心筋を守り、インスリン–ブドウ糖で移動させ、利尿・(potassium binder)・透析で除去する。
  • 低K血症はを基本とし、重症例だけを監視下に静注し、低Mgを必ず是正する。

出典

  1. 1.Retrospective review of the frequency of ECG changes in hyperkalemia(Clinical Journal of the American Society of Nephrology・2008)血清K 6 mEq/L以上で同時に心電図が記録された90例の後ろ向き検討で、実験的な高K血症で見られる典型的な心電図変化は臨床では信頼できず、腎不全患者では著明な高K血症でも心電図変化を欠きうること、心電図変化の感度・特異度がともに低いため安定した患者の治療方針を心電図で決める根拠は無く、臨床像と連続したK測定で管理すべきことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Acute hyperkalaemia in emergency care: evidence-based approaches(Emergency Medicine Journal・2026)急性高K血症では静注Ca投与はECG変化またはK 6.5 mmol/L以上が主な適応で、インスリン・ブドウ糖療法がKの細胞内移動の中心的治療であり吸入β2刺激薬が相乗的に働くこと、および従来のポリスチレンスルホン酸ナトリウムは有効性への疑問と消化管有害事象のリスクから推奨されなくなっていることを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Ion-Exchange Resins for the Treatment of Hyperkalemia: Are They Safe and Effective?(Journal of the American Society of Nephrology・2010)ポリスチレンスルホン酸ナトリウムが糞便中カリウム排泄を実際に増加させるという説得力のある証拠は動物実験・ヒトいずれにも乏しいこと、ソルビトールを加えることで有効性が高まるという証拠も無いこと、2009年9月にFDAが腸管壊死(結腸壊死)の報告を受けて粉末樹脂とソルビトールの併用投与を避けるよう注意喚起したことを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Acute hyperkalemia in the emergency department: a summary from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes conference(European Journal of Emergency Medicine・2020)急性高K血症における心電図評価、細胞膜の安定化、細胞内移行を促す治療、体外への除去という管理の原則を確認した。閲覧 2026-08-25
  5. 5.VELTASSA (patiromer) for oral suspension — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2026)非吸収性の陽イオン交換ポリマーが消化管内腔でカリウムと結合し糞便中カリウム排泄を増やすこと、適応が12歳以上の高カリウム血症であること、生命を脅かす高カリウム血症の緊急治療には使用しないという限界、警告・注意が消化管運動障害の悪化と低マグネシウム血症の2項目であること、他の経口薬とは前後3時間空けることを確認した。閲覧 2026-08-25
  6. 6.LOKELMA (sodium zirconium cyclosilicate) for oral suspension — Highlights of Prescribing Information(AstraZeneca / U.S. Food and Drug Administration・2022)非吸収性のジルコニウムケイ酸塩がカリウムをH⁺・Na⁺と交換して選択的に捕捉すること、「効果発現が緩徐なため生命を脅かす緊急の高カリウム血症治療には用いない」という限界、初回投与から1時間後に血清カリウムの低下が観察されること、警告・注意が消化管運動障害患者での使用回避・浮腫(5gあたり約400 mgのナトリウムを含有)・血液透析患者の低カリウム血症・画像検査での放射線不透過性の4項目であることを確認した。閲覧 2026-08-25
  7. 7.Pharmacological interventions for the acute treatment of hyperkalaemia: A systematic review and meta-analysis(Resuscitation・2025)101件の研究を統合したシステマティックレビュー・メタ解析で、心停止のない成人ではインスリン+ブドウ糖、吸入サルブタモール、ブドウ糖に溶解した静注サルブタモール、またはその組合せで血清Kが平均0.7〜1.2 mmol/L低下したこと(エビデンスの確実性は very low〜low)、重炭酸は血清K値に影響しなかったこと、カルシウムの高K血症治療における臨床的有益性を支持する根拠は同定されなかったことを確認した。閲覧 2026-08-25
  8. 8.Mechanism of Hypokalemia in Magnesium Deficiency(Journal of the American Society of Nephrology・2007)Mg欠乏は細胞内Mgの低下を介してROMKチャネルへのMgによる抑制を解除し遠位尿細管でのK分泌を増やすため、K補充だけでは低K血症が難治性になることを確認した。閲覧 2026-08-25