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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)

Ventricular tachycardia and fibrillation

別名
VTVF心室頻拍心室細動
臓器系
循環器
科目
CardiologyAnesthesiology
トピック
循環器内科 A-33:心室性不整脈循環器内科 A-36:ICDとCRT:適応と種類麻酔科学 B-07:周停止期不整脈の診断と治療
上位概念
不整脈
鑑別疾患
心室期外収縮心房細動乳幼児突然死症候群
合併症
肺水腫
治療薬
アミオダロンリドカインソタロールエピネフリン硫酸マグネシウムイソプレナリンマグネシウム(Mg++)プロカインアミド
原因薬剤
アジスロマイシンクラリスロマイシンジギトキシンジゴキシンジソピラミドドブタミン(es)シタロプラムレファムリンレボシメンダンメタドンメキシレチンミルリノンモキシフロキサシンオンダンセトロンプラジマリンキニジンベラパミルヴェルナカラント
症状
めまい呼吸困難失神前失神動悸筋力低下狭心痛意識障害
検査値
マグネシウムQT延長カリウムLVEF
スコア
NYHA心機能分類
下位分類
電気ストーム
原因となる疾患
Brugada症候群拡張型心筋症急性冠症候群虚血性心筋症徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)先天性QT延長症候群肥大型心筋症慢性冠症候群(安定狭心症)
禁忌薬
オンダンセトロンジギトキシンジゴキシンドーパミンパロノセトロン

🧠 全体像分岐部より下に起源を持つ幅広いQRSの不整脈群で、臨床対応の第一のは「脈が触れるか」である。は血行動態の安定性で同期か薬物治療かを選び、VT/VFは心停止としてを軸にしたACLSアルゴリズムへ直行する。急性期を乗り切った後は、の原因検索と、危険因子に基づくICD/による長期の予防へつなげる。

分類・機序

は単発のから持続性の頻拍、組織化を失った細動まで連続的なスペクトラムをなす。波形とで系統的に分類する。

ECG所見/定義
PVC( 早期ので幅の広いQRS >0.12 s、先行Pなし、QRSと逆向きのT波、完全
NSVT( 3連発以上、持続<30秒
Sustained VT( ≥30秒またはを伴う、≥100/min(典型的に150–200/min)、突然の開始・終了
200–350/min、規則的でなし
VF( 組織化されたQRSを認めない無秩序な波形で、心拍出量なし
(TdP) QT延長に伴うで、軸が周囲にねじれる

VTはさらに波形の均一性で(同じ形の幅広いQRSが規則的に連続)と(QRS形態が拍ごとに変化)に分けられ、のうちQT延長を背景に持つものがTdPである。はQRSとT波の境界・が消えた状、VFは周期・振幅とも不規則な無秩序波形を呈する。⭐ 波形だけで判断に迷うは、安全側にVTとして扱う。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular arrhythmia'>心室性不整脈</span>"] --> B["PVC"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular tachycardia, VT'>心室頻拍</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomorphic ventricular tachycardia'>単形性VT</span>"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymorphic ventricular tachycardia'>多形性VT</span>"]
  E --> F["QT延長あり:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torsades de pointes'>トルサード・ド・ポワント</span>"]
  A --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular flutter'>心室粗動</span>"]
  A --> H["VF:組織化された心拍出量なし"]

💡 基質で大きく2群に分けて考えるとよい。を背景とするVTの瘢痕による、HCM・DCMなどの心筋症)と、関連VTなど、構造は正常でイオンチャネル異常がとなるもの)である。前者は瘢痕を介したが主機序、後者は再分極異常に伴うが主機序となる。

VFでは5分以内に脳障害、10–15分で死亡しうるである。代表的な原因はCAD、心筋梗塞、心筋症、である。TdPではQT延長薬を中止し、K・Mgを補正してする。後天性のTdPが反復する場合はを検討し、の長期管理ではβ遮断薬が中心になる。

臨床像

心電図診断とSVTとの鑑別

(wide-complex tachycardia)をみたら、まず脈と血行動態で急性期対応を分岐させ、次にVTととの鑑別を行う。

QRS幅・規則性 想定される・対応
狭く規則的 、アデノシン
狭く不規則 心房細動・を鑑別
広く規則的 原則VTとして扱う。SVT+が疑われる場合のみ慎重にアデノシン
広く不規則 、TdP、性心房細動を疑う

VTを支持する所見は、(fusion beat)、著明な、極端に幅広いQRS(>0.16 s)である。これらが確認できない場合や判断に迷う場合も、⭐ は原則VTとして治療し、SVT+と決め打ちしない。

⚠️ 鑑別未確定のを経験的に投与しない。(fascicular VT)など診断が確立した特定例では有効だが、通常のVTではを悪化させうる。

急性期治療

急性期対応は、最初に脈拍の有無と血行動態の安定性で分岐する。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wide-complex tachycardia'>幅広いQRS頻拍</span>を確認"] --> B{"脈拍あり"}
  B -->|"なし:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulseless'>無脈性</span>VT/VF=心停止"| C["CPR開始+直ちに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unsynchronized defibrillation'>非同期除細動</span>"]
  C --> D["2分ごとにリズム確認・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defibrillation'>除細動</span>を反復"]
  D --> E["2回目の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defibrillation'>除細動</span>後:エピネフリン1 mg IV/IOを3〜5分ごと"]
  E --> F["3回目の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defibrillation'>除細動</span>後:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amiodarone'>アミオダロン</span>300 mg IV/IO(2回目150 mg)または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lidocaine'>リドカイン</span>1〜1.5 mg/kg(以後0.5〜0.75 mg/kgを5〜10分ごと、総量3 mg/kgまで)"]
  F --> G["可逆的原因(6H/6T)の検索・是正を並行"]
  B -->|"あり"| H{"生命を脅かす徴候(ショック・失神・虚血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute HF'>急性心不全</span>)"}
  H -->|"あり"| I{"同期可能か"}
  I -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomorphic ventricular tachycardia'>単形性VT</span>"| J["鎮静のうえ同期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardioversion'>カルディオバージョン</span><br>(機種の推奨エネルギーに従う。<br>不明なら最大出力を用いる)"]
  I -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymorphic ventricular tachycardia'>多形性VT</span>"| K["同期が困難なため<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dyssynchrony'>非同期</span>高エネルギーショック"]
  J --> L{"3回までで不成功か"}
  K --> L
  L -->|"はい"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amiodarone'>アミオダロン</span>300 mgまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='procainamide'>プロカインアミド</span>10〜15 mg/kgを静注後に再同期"]
  H -->|"なし:安定VT"| N["12誘導ECG・原因評価・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiarrhythmics'>抗不整脈薬</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amiodarone'>アミオダロン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sotalol'>ソタロール</span>等)の持続静注"]

VT/VFではを最優先し、CPRを継続しながら2分ごとにリズムを確認する。では機種ごとの推奨初回エネルギー(目安120〜200 J)を用い、以後は同等以上のエネルギーへ漸増する。2回目の後にエピネフリン1 mg IV/IOを開始して3〜5分ごとに反復し、3回目の後に300 mg(2回目150 mg)またはその代替としてを投与する1。並行して低酸素・低体温・電解質異常・血液量減少・血栓症・などの可逆的原因(6H/6T)を検索・是正する。

で生命を脅かす徴候(低血圧・ショック・意識障害・肺水腫を伴う重症心不全)を伴う場合は、鎮静のうえ電気治療を薬物より優先する。は同期が可能だが、は同期のタイミングが取りにくいため高エネルギーショックを行う。同期のエネルギー量は、初回ショックの成功率を最大化するため使用する機種の推奨エネルギーに従い、不明な場合は最大出力を用いる1。かつて示されていた律動別の具体的なジュール値(で初回120〜150 Jなど)は、機種ごとの推奨に従う方針へ置き換えられている。3回までの同期で不成功かつ不安定なら、300 mgを10〜20分でまたは10〜15 mg/kg(最大1 g)を20分で静注し、再度同期を試みる。

生命を脅かす徴候のない安定したVTでは、12誘導ECGと原因評価を行いながらなどのを持続静注し、にコンサルトする。

⚠️ QT延長性の(TdP)ではを避け、8 mmolを10分で静注してK・Mgを補正する。反復する場合はまたは一時ペーシングで心拍数を上げてを短縮する。

⚠️ 24時間以内に3回以上のVT/VF再発を来すでは、鎮静・β遮断薬の強化と交感神経遮断(等)を行い、可能な限り早期にが可能な施設へ紹介する。

長期予防:ICD・CRTの適応

急性期を乗り切ったら、原因検索とSCD再発予防に進む。ICDはVT/VFを検出してペーシング/ショックで停止する装置である。

適応区分 代表例
可逆的原因だけでは説明できないVT/VFによる心停止、または選択された
十分なGDMT後もLVEF ≤35%などの基準を満たす虚血性/非。MI後の期間、<a href=“/scores/nyha-functional-classification” class=“wikilink” data-goes-to=“心機能分類”>クラス、(目安1年以上の良好な機能的生存)を確認して判断2
遺伝性/ HCM、などで疾患固有のSCDリスク因子を評価して選択

ICDは「心不全」「LVEF低下」という病名だけで一律に植え込まず、可逆的原因の除外、治療後の再評価時期、良好な機能的生存が見込めるか、デバイス合併症と患者希望を含めて総合的に決定する。

種類 特徴
経静脈型ICD を持ち、ペーシングとが可能
皮下植込み型ICD(S-ICD) 左側胸部と皮下リード。がなく、通常型と同じペーシング機能はない

皮下植込み型ICDは内へリードを入れず感染・を避けられる一方、持続的な徐脈ペーシング、通常のが必要な患者には不向きである。

)は、十分なGDMT後も症候性のHFrEFがあり、LVEF ≤35%かつ、とくにでLBBB形態・QRS ≥150 msを示す患者が主な適応となる。を伴う-Dと、ペーシングのみの-Pは、予後、患者希望から選択する。を組み合わせたデバイスでは、再同期と治療の双方を担う。

まとめ

  • は波形・でPVC、NSVT、、VF、TdPに分類し、幅広いQRS、はVTを支持する。
  • 急性期対応の第一分岐は脈拍の有無。VT/VFは心停止としてを最優先し、2回目の後にエピネフリン、3回目の後にまたはを投与しながら可逆的原因を是正する。
  • 脈のある不安定VTは鎮静下の同期)、安定VTはの持続静注で管理し、鑑別未確定のを経験的投与しない。
  • TdPはQT延長薬の中止、K・Mg補正、が基本で、反復例はや一時ペーシングでQTを短縮する。
  • 長期のSCD予防はICD(は心停止・の既往、はLVEF ≤35%+GDMT後の総合評価)と(LVEF ≤35%+QRS ≥150 msのLBBB)で組み立てる。

出典

  1. 1.Part 9: Adult Advanced Life Support: 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care(American Heart Association・2025)同期カルディオバージョンのエネルギー量について、律動別の具体的なジュール値を示す方針が撤回され、使用する機種の推奨エネルギーに従い不明な場合は最大出力を用いる、という記載へ変わったことをAdult Tachyarrhythmia With a Pulseアルゴリズムで確認し、無脈性VT/VFでは2回目の除細動後にエピネフリン1 mg IV/IOを3〜5分ごと、3回目の除細動後にアミオダロン300 mg(2回目150 mg)または代替としてリドカインという投与順序がAdult Cardiac Arrestアルゴリズムで維持されていることも確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.2017 AHA/ACC/HRS Guideline for Management of Patients With Ventricular Arrhythmias and the Prevention of Sudden Cardiac Death(American Heart Association/American College of Cardiology/Heart Rhythm Society・2017)ICD一次予防は虚血性心筋症でNYHA II-III・LVEF≤35%・GDMT3か月以上、非虚血性心筋症でNYHA II-IV・LVEF≤35%・GDMT下がClass I適応の中心で、いずれも期待余命1年超が前提となることを確認した閲覧 2026-08-03