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Drug Atlas · B5 Antiarrhythmics / 抗不整脈薬 · 必修

マグネシウム(Mg++)

magnesium (Mg++)

分類
Antiarrhythmics / 抗不整脈薬
科目
Pharmacology
トピック
B27: Drugs acting on smooth muscles. Drugs influencing uterus contractionsB5: Drugs influencing cardiac electrophysiology
禁忌疾患
重症筋無力症
副作用
筋力低下低血圧傾眠
監視検査値
マグネシウムクレアチニン
対象疾患
気管支喘息心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)妊娠高血圧腎症・子癇・HELLP症候群破傷風

🧠 全体像のどこにも属さないが、Ca流入抑制とという単一の性質で循環器・産科・呼吸器の3領域にまたがる仕事をしている。としては(TdP)の第一選択、産科では子癇の痙攣予防・治療の第一選択、呼吸器では重症喘息発作の追加治療というまったく異なる3つの顔を持つ薬だが、根っこは全部「興奮性を静める」という同じ機序である。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 標的 との関係
Ⅰ〜Ⅳ群 など Na/K/Ca/βチャネル・受容体 標的にしない
アデノシン・ジゴキシン A1受容体/迷走神経↑/Ca流入抑制・ QT延長の値そのものを下げる薬ではなく、QT延長を背景に生じる(EAD)を止める薬

はTdPの「QT延長」自体を短縮する薬ではない。 TdPの引き金になる(EAD)はCa電流の異常再活性化で起こるため、Mgはこの電流を抑えることでQT値にかかわらず不整脈の発火を止める。血清Mg値が正常でも投与するのはこのためで、「低Mg血症の補正」と「TdPの治療」は別の理由で同じ薬を使っているという点を混同しないこと。

💡 このvaultにはのノートが2つある。 本ノート(magnesium-mg)はB5()・B27(平滑筋・子宮収縮)の・神経筋作用に焦点を当て、は緩下剤としての経口製剤(B25)を中心に扱う。同じMg²⁺というイオンでも、便秘に使う経口製剤と、TdP・子癇に使う静注製剤とでは想定する文脈が異なるため、便秘・の適応はそちらを参照する。

機序

flowchart TD
    A["Mg2+が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='L-type calcium channel'>L型Caチャネル</span>への<br>Ca流入を抑制"] --> B["心筋:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='EAD'>早期後脱分極</span>の<br>再活性化を抑制"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torsades de pointes'>トルサード・ド・ポワント</span>の発火を止める<br>(QT値自体は変えない)"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction (NMJ)'>神経筋接合部</span>:ACh放出↓・<br>興奮性↓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane stabilization'>膜安定化</span>)"]
    D --> E["中枢:NMDA受容体拮抗も関与し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='seizure threshold'>痙攣閾値</span>↑(抗痙攣作用)"]
    D --> F["平滑筋:子宮・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchial smooth muscle'>気管支平滑筋</span>の<br>興奮性↓→弛緩"]
    E --> G["子癇の痙攣予防・治療"]
    F --> H["早産の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tocolysis'>子宮収縮抑制</span>(補助的)・<br>重症喘息の気管支拡張補助"]
    D --> I["過量で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep tendon reflex'>深部腱反射</span>消失→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory muscle paralysis'>呼吸筋麻痺</span>→心停止<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dose-dependent'>用量依存的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stairs; step (stepwise)'>階段</span>状の毒性)"]

⚠️ 」という同じ機序が、治療域を超えると毒性の機序そのものになる。 での興奮伝達抑制は、治療域では子癇の痙攣を止め、過量になると消失→→心停止という順序で進行するの中毒を起こす。の消失は呼吸抑制に先行する臨床的なとして重視される。

薬物動態

項目 値・特徴
(TdP・子癇・重症喘息のいずれも急性期はIV)
代謝 代謝を受けない(Mg²⁺そのものが活性本体のイオン)
排泄 。腎機能低下があると容易に蓄積しに達する
モニタリング 血清Mg値に加え、・呼吸数・尿量が中毒の早期発見に重要(→呼吸抑制の順で進行するため)
拮抗 症候性の高Mg血症・中毒には静注で心筋・神経筋作用を一時的に拮抗する

腎機能が治療域との境目を決める。 のみに依存するため、自体でも腎機能が低下しうる)があると投与量を減らし、頻回に血清値・腱反射・尿量を確認する必要がある。

適応

領域 使いどころ
不整脈 の第一選択(血清Mg値にかかわらず投与)。のTdPで、原因薬中止・K補正と並行して静注する
産科 子癇・重症の痙攣予防・治療の第一選択(は第一選択ではない)。妊娠32週未満のでは胎児目的でも投与される
呼吸器 重症喘息発作で標準治療に反応不良のときの追加治療
電解質 低Mg血症の補充(詳細はの項を参照)

💡 早産そのもののは現在では第一選択ではない。 出典トピックB27ではとして整理されているが、現行の周産期管理ではなどが第一選択のとして優先され、の役割はむしろ子癇の痙攣予防・治療早産児のに重心が移っている。この点は出典トピックの整理より現行の位置づけを優先して記載した。

用法・用量

TdP:8 mmol(として2 g相当)程度を数分〜10分かけて静注し、必要に応じてへ移行する。子癇・重症:負荷投与に続けて持続静注を行い、・呼吸数・尿量を定期的に確認する。重症喘息発作:単回静注で・全身ステロイドに追加する。実際の用量・は適応・腎機能・体重で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌重症筋無力症をさらに障害し筋力低下を増悪させる)
  • ⚠️ 腎機能低下では蓄積しやすくに達しやすい。減量し血清値・・呼吸状態を頻回に確認する
  • モニタリングの消失は呼吸抑制に先行する例では特に慎重な監視が必要
  • 中毒時は静注で拮抗し、循環が保たれ腎機能があれば輸液・利尿、重症・腎不全では透析を検討する

副作用

頻度 内容
高頻度 ・熱感、悪心、投与部位の灼熱感
注意 低血圧の減弱、筋力低下
重篤・まれ 消失、傾眠・呼吸抑制、高度徐脈・心停止(過量、に進行)

まとめ

  • には属さない。抑制とで、QT値そのものではなく(EAD)を止める。
  • TdPでは血清Mg値にかかわらず第一選択として投与する。
  • 子癇・重症の痙攣予防・治療の第一選択で、に置き換わるものではない。早産のは現在ではが優先され、の役割は・子癇管理へ重心が移っている。
  • 代謝を受けずのみに依存するため、腎機能低下では容易に蓄積しに達する。
  • の消失は呼吸抑制に先行するで、腱反射→呼吸→循環の順にの毒性が進む。
  • 重症筋無力症は禁忌。中毒時は静注で拮抗する。
  • このvaultには経口の緩下剤としての側面をまとめたノートが別に存在する。