症状ノート一覧へ

Symptoms · Published

低血圧

Hypotension

臓器系
循環器
科目
PathophysiologyPhysiologyInternal Medicine
トピック
病態生理学 II-20:循環性ショックの定義と分類病態生理学 II-22:循環血液量減少性ショックの病期生理学 3-05:体位変換時・運動時の心肺適応病態生理学 P-1-17:血圧測定法と正しい測定の実際内科学 S-04:失神の鑑別診断
関連疾患
Waterhouse-Friderichsen症候群アナフィラキシーサイトカイン放出症候群原発性副腎不全市中肺炎循環性ショック(心原性・循環血液量減少性・閉塞性・血液分布異常性)多系統萎縮症脱水糖尿病性自律神経障害敗血症肺血栓塞栓症腹部コンパートメント症候群毛細血管漏出症候群脾摘後重症感染症
起因薬
(レボ)ブピバカインアプラクロニジンアミトリプチリンアルデスロイキンアルフゾシンアルプロスタジルイソソルビドモノニトラートイデカブタゲン ビクルユーセルイミプラミンイルベサルタンイロプロストヴェルナカラントエスモロールエタムシレートエトポシドエナラプリルエポプロステノールエルラナタマブエンパグリフロジンオキシトシンカナグリフロジンカプトプリルカルビドパカルベジロールクエチアピンクロニジンクロルプロマジンジソピラミドジピリダモールシルタカブタゲン オートルユーセルジルチアゼムシルデナフィルセリプロロールセレキシパグセレギリンダパグリフロジンダポキセチンチオペンタールチザニジンティサゲンレクルセル(CAR-T)デクスメデトミジンテクリスタマブテラゾシンドキサゾシンドブタミントラゾドントレプロスチニルドロタベリンナイサーゴラインニトログリセリンニトロプルシドナトリウムニモジピンネビボロールノルトリプチリンパクリタキセルパパベリンバルサルタンバルサルタン+サクビトリルビソプロロールフィネレノンフェントラミンプラゾシンプラミペキソールブリモニジンプロカインアミドプロタミンプロプラノロールプロポフォールブロモクリプチンベタネコールヘプタバレント抗毒素(BAT)ベラパミルペリンドプリルペルゴリドベンシクランベンセラジドペンタミジンボツリヌス免疫グロブリン(ヒト)マグネシウム(Mg++)ミダゾラムミルリノンメタミゾールメトプロロールモキソニジンモルシドミンモルヒネラサギリンラベタロールラミプリルランジオロールリオシグアトリドカインリルメニジンレテプラーゼレボシメンダンレボドパレボドパ+カルビドパレミフェンタニルロサルタンロチゴチンロピニロールロピバカインε-アミノカプロン酸
スコア
Charcot三徴CURB-65Glasgow-BlatchfordスコアKillip分類MASCCスコアqSOFASOFAスコア改訂Atlanta分類肺炎重症度指数

🧠 全体像:低血圧に「これ以下が異常」という一律の数値はない。臨床的に意味があるのはその人にとってが足りない血圧であり、同じ100 mmHgでも意味が正反対になる。に収縮期90台で無症状の若年者は治療対象ではなく、普段160 mmHgの高血圧患者が120 mmHgになっていれば臓器は虚血に陥りうる。だから低血圧は数値ではなく、普段の値との差灌流の所見で判断する。

数値ではなく灌流で判断する

血圧は灌流の代用指標にすぎない。血圧が保たれていても組織が酸素を受け取れていなければ循環不全であり、逆に低い値でも臓器が動いていれば介入の理由にならない。実際に見るのは、次のような臓器が働いているかどうかの所見である(脳の症状は 失神、腎の所見は 乏尿 に接続する)。

臓器 灌流不足を示す所見
、傾眠、、失神・
皮膚 、湿潤、蒼白、の遅延
全身の代謝 乳酸値の上昇、代謝性アシドーシス

を見る。 を規定するのはではなくであり、たとえばでは65 mmHg以上が目標に置かれる。脈圧が狭いこと(収縮期と拡張期の差が小さい)は、血管収縮による代償が働いているで、が落ちる前に現れる。

⚠️ 高血圧を長く患っている患者では脳・腎のの下限が上方へずれている。「正常範囲だから安全」とは言えない。 の開始・増量後の失神や腎機能悪化は、この落とし穴で起こる。

⚠️ ショックは低血圧がなくても成立する

ショックの本質は「組織が必要とする酸素を受け取れていないこと」であって、血圧が低いことではない。出血ではまず心拍出量が落ち、血圧の低下はそれより遅れて現れるにはによる頻脈と末梢血管収縮が血圧を保つため、血圧はまだ正常である。

段階 心拍出量 血圧 気づける所見
低下 保たれる 頻脈、脈圧の狭小化、末梢、口渇、起立時の変化
さらに低下 低下する 明らかな低血圧、乏尿、意識障害、乳酸上昇

⚠️ 血圧が下がってから動くのでは遅い。 とくに若年者・妊婦・運動習慣のある人は代償能が高く、相当量を失うまで血圧が動かない。逆に高齢者やβ遮断薬の内服者では、代償の頻脈そのものが出ないため脈拍も当てにならない。

⚠️ 出血では初期のヘモグロビンが正常でもを否定できない。 のように原因が明らかな場合、血圧の値ではなく失った量と速度で判断する。のショックでは末梢が温かいこともあり、「冷たくないから大丈夫」も成立しない。

起立性低血圧——定義と測り方

は、起立後3分以内にが20 mmHg以上、またはが10 mmHg以上低下することを基本に診断する。健常では代償反応によりの低下は10 mmHg程度に収まり、心拍数が10〜20/分上がる。

測定は手順に依存するので、次を守らないと再現しない。

  • 5分以上臥位(または座位)で安静にしてからを測る。
  • 起立させ、1分後と3分後に測る。1回だけでは遅れて現れる低下を拾えない。
  • カフは上腕で心臓の高さに保つ。腕が下がると値は高く出る。
  • 血圧の低下と同時に症状が再現されたかを必ず記録する。無症状の数値だけでは、その日の症状の説明にならない。

同時に心拍数を見ると機序が分かれる。 血圧が下がるのに心拍数が上がらなければ)を、心拍数が明らかに上がっていればや薬剤性を示唆する。この1点だけで方向が絞れる。

💡 食後や入浴後に起こる低血圧、長期後に起立できなくなるも同じ機序で説明できる。が続くと体は「血が余っている」と判断して利尿し、循環血液量そのものが減っている。

まとめ

  • 低血圧に一律のはない。判断はその人の普段の値との差と、灌流の所見で行う。
  • 見るのは数値ではなく、意識・尿量・皮膚所見・乳酸。灌流を規定するのはである。
  • 脈圧の狭小化は、が落ちる前に出る代償のである。
  • 高血圧患者ではの下限が上にずれており、「正常範囲」でも灌流不全になりうる。
  • ショックは低血圧がなくても成立する。は心拍出量だけが落ち、血圧は保たれている。
  • 若年・妊婦は代償が強く血圧が動きにくい。β遮断薬内服者は代償の頻脈も出ない。
  • は起立後3分以内の収縮期20 mmHg、拡張期10 mmHg以上の低下。1分後と3分後に測り、症状の再現を併せて確認する。
  • 血圧低下に心拍数の上昇が伴うかどうかで、・薬剤性が分かれる。