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Drug Atlas · B7 Prostacyclin analogs / プロスタサイクリン誘導体 · 必修

エポプロステノール

epoprostenol

分類
Prostacyclin analogs / プロスタサイクリン誘導体
商品名(日本)
フローラン
商品名(EU)
Flolan
科目
Pharmacology
トピック
B7: Ca++-channel blockers and other vasodilators
承認適応
肺高血圧症
副作用
顔面紅潮頭痛低血圧徐脈悪心下痢
影響検査値
血小板数
対象疾患
全身性強皮症

🧠 全体像そのものを合成した薬であり、B7の他のPAH薬(拮抗・PDE5阻害・sGC刺激)とは違って受容体拮抗でもでもない「不足している生理活性物質の直接補充」という発想の薬である。その代償がわずか数分という極端な不安定性で、経口・皮下では使えず、携帯型ポンプによるという、他のPAH薬にはない特殊な投与様式を必要とする。

薬効群の中での位置づけ

B7の「その他の」のうち、の原型であり、最も重症のPAH(高リスク・III〜IV)に投じられる。

分類 代表薬 半減期・特徴
(内因性物質そのもの) 持続静注のみ 数分(極めて不安定)
類似薬 静注()・吸入(地域により) 約20〜30分(よりは安定)
経口 約5時間
経口 数時間
経口(1日3回) 1日3服で維持できる程度に安定

高リスクPAHの治療の柱はである。 (ERA・)だけでは対応しきれない高リスク例では、生命予後を左右する薬として静注、なかでもが治療に組み込まれる1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PGI2'>エポプロステノール</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>・血小板のIP受容体に供給"] --> B["Gs蛋白質を介し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>を活性化"]
    B --> C["細胞内cAMPが増加"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle relaxation'>血管平滑筋弛緩</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>低下"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet aggregation'>血小板凝集</span>を強力に抑制"]
    F["体内で速やかに加水分解される(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma half-life'>血中半減期</span>数分)"] -.->|"不安定性の理由"| A

💡 は「」ではなく「不足している物質」を補う。 が受容体や酵素という特定の分子を狙うのに対し、はPGI2という生理活性物質そのものを外から供給する。PAHでは血管内皮の合成が低下しているため、これを補充することが治療の根拠になる。ただし体内ので分単位で分解されるため、投与を止めた瞬間に血中濃度がほぼゼロになるという他のPAH薬にはないリスクを抱える。

薬物動態

項目 値・特徴
数分(体温下・生理的pHで急速に加水分解)
携帯型精密装置によるのみ(経口・筋注は無効)
など)が標準。皮膚出口と静脈穿刺部をずらし感染リスクを下げる

⚠️ 半減期の短さは有効性と危険性を同時に生む。 副作用出現時に速やかに減量すれば血中濃度がすぐ下がるという利点がある一方、ライン感染・血栓・ポンプ故障・カテーテルのによる投与の突然の中断は、数分〜数十分で血中濃度がゼロに近づき、の肺高血圧・急性右心不全・死亡に直結しうる緊急事態になる1

適応

領域 使いどころ
、特に高リスク(III〜IV)例2

用法・用量

成人にはとして1分間当たり2 ng/kgので精密装置によりを開始する。患者の状態を観察しながら15分以上の間隔をおいて1〜2 ng/kg/分ずつ増量し、10 ng/kg/分までの範囲で最適を決定する2専用溶解液以外の注射剤と配合しない(pH低下によりが分解し、状の悪化・再発を招くおそれがある)2・中止する場合は徐々に減量し、急な中止は行わない2

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分に対する過敏症、右心不全の時、重篤な左心機能障害、重篤な低血圧、用量設定期に肺水腫が増悪した患者2
  • ⚠️ 緊急時に十分対応できる医療施設で、治療に十分な知識と経験を持つのもとでのみ投与する2
  • ⚠️ 急激な中止は禁忌に準じる重大なリスク。 外国では長期投与後の急激な中止により死亡に至った症例が報告されており、・中止時は必ず徐々に減量する2
  • ライン感染・カテーテルトラブルへの備え(バックアップポンプ・予備ラインの準備、患者・家族への緊急時対応教育)が実務上不可欠

副作用

頻度 内容
高頻度(10%以上) (45.7%)、頭痛(40%)
注意(10%未満) 低血圧徐脈、頻脈、悪心嘔吐下痢、顎痛・関節痛・筋肉痛、呼吸困難
重篤・まれ ショック状態(2.9%)、減少(8.6%)、肺水腫、甲状腺機能亢進症、腹水、・消化管出血などの出血2

まとめ

  • そのものを補充する薬で、IP受容体→cAMP増加を介し血管拡張と強力なをもたらす。
  • が数分と極めて短く、携帯型ポンプによるを必須とする、他のPAH薬にはない投与様式を持つ。
  • 高リスクPAH(III〜IV)の治療の柱であり、だけで管理できない重症例に組み込まれる。
  • 投与の急な中断はの肺高血圧・右心不全・死亡に直結する緊急事態——ライン感染・血栓・ポンプ故障への備えが臨床上の最重要事項になる。
  • 高頻度の副作用は・頭痛で、重篤な副作用としてショック状態・血小板減少がある。

出典

  1. 1.静注用フローラン0.5mg/1.5mg 添付文書(2025年8月改訂・第6版)(グラクソ・スミスクライン株式会社(医薬品医療機器総合機構 掲載)・2025)効能・効果(肺動脈性肺高血圧症)、用法・用量(1分間当り2 ng/kgで持続静注開始、15分以上あけて1〜2 ng/kg/分ずつ増量し10 ng/kg/分までで最適投与速度を決定)、禁忌(右心不全の急性増悪時、重篤な左心機能障害、重篤な低血圧、用量設定期の肺水腫増悪)、警告(専用溶解液以外との配合禁止、外国での急激な中止による死亡例、緊急時対応可能な施設・経験医師のもとでの投与限定)、重大な副作用(ショック状態2.9%、血小板減少8.6%、肺水腫、甲状腺機能亢進症、腹水)、その他の副作用の頻度(顔面紅潮45.7%、頭痛40%、動悸・低血圧・徐脈・悪心嘔吐・下痢・呼吸困難など)を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension(European Society of Cardiology / European Respiratory Society・2022)静注エポプロステノールが高リスクPAHの治療に組み込まれる代表的なプロスタサイクリン経路薬であり、半減期が極めて短く投与の急な中断が反跳性の肺高血圧・右心不全・死亡に直結するため緊急事態として扱うべきことを確認した閲覧 2026-08-10