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Drug Atlas · B7 Prostacyclin analogs / プロスタサイクリン誘導体 · 必修

イロプロスト

iloprost

分類
Prostacyclin analogs / プロスタサイクリン誘導体
商品名(EU)
Ilomedin
科目
Pharmacology
トピック
B7: Ca++-channel blockers and other vasodilators
承認適応
原発性肺高血圧症(NYHA III。英国の吸入製剤)閉塞性血栓血管炎(進行例。スペインの静注製剤)重症凍傷(米国の静注製剤)
禁忌疾患
活動性消化性潰瘍脳内出血(原文の禁忌は頭蓋内出血)うっ血性心不全(NYHA II〜IV。静注製剤のみ)重篤な冠動脈疾患・不安定狭心症/6か月以内の心筋梗塞
副作用
顔面紅潮頭痛低血圧悪心
対象疾患
全身性強皮症肺低形成門脈肺高血圧症

🧠 全体像:はを化学的に安定化させたであり、B7のの中では「ほど不安定ではないが、ほど扱いやすくもない」中間的な位置にある。⭐ 剤形で使いどころが分かれる薬で、に用いられるのは吸入製剤、欧州の静注製剤の承認された適応は(・重症・国によっては)である。臨床で問われやすいのは、に伴う重症の・難治性への静注投与という後者のほうである。⭐ もう一つ、同じ静注でも米国だけは適応が全く違う——2024年2月に重症の治療薬として承認されており、米国のはこの1適応しか持たない。⚠️ 日本では吸入製剤(ベンテイビス)が2024年3月末の経過措置満了で基準収載品目リストから消えている。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 標準的な投与様式
(内因性物質そのもの) 数分 による持続静注のみ
約20〜30分(よりは安定) (数時間のを複数日反復)、地域により吸入薬としても承認

⭐ 半減期がやや長い分、持続静注の携帯ポンプなしで間欠的な投与が可能になる。 が分単位で消失するため生涯にわたる持続静注が必須なのに対し、は1回数時間のを数日〜数週間にわたりする形で使える場面がある。ただしほどの利便性はなく、依然として医療機関でのを要する。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iloprost'>イロプロスト</span>(安定化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prostacyclin analogue'>プロスタサイクリン類似薬</span>)が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prostacyclin (IP) receptor'>IP受容体</span>に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gs protein'>Gs蛋白質</span>を介し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>を活性化"]
    B --> C["細胞内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclic adenosine monophosphate'>cAMP</span>が増加"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle relaxation'>血管平滑筋弛緩</span>→末梢・肺血管の拡張"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet aggregation'>血小板凝集</span>の抑制"]
    C --> F["白血球の血管内皮への接着抑制"]
    D --> G["末梢では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digits (fingers and toes)'>指趾</span>の血流改善→難治性虚血・潰瘍治癒の促進"]

💡 との違いは「化学構造の安定化」にある。 は分子構造の一部を修飾することでの急速な加水分解を免れ、を数分から数十分へ延ばした類似薬である。作用機序(→↑)そのものはと共通するが、この安定性の違いが投与様式の違いに直結する。

適応

⚠️ 静注製剤の承認された適応は国ごとに違う。 「欧州では〜」と一括りにせず、どの国のの話かを確かめる。

国・製品 承認された適応
英国(Colonis社の静注) ①切断のリスクがある下肢の重症慢性虚血で、・が失敗したか適応でない例、②進行するを伴う重症の——の2つのみ1
スペイン(バイエル社のIlomedin) 3項目。①の適応がない重症虚血肢を伴う進行した()、②とくに切断のリスクがあり手術もも不可能な重症の末梢動脈閉塞性疾患、③他のに反応しない重症で日常生活に支障をきたす。⚠️ の限定が英国と違う(英は「進行するを伴う」、西は「他の治療に反応しない」)2
米国(BTG社のAurlumyn) 成人の重症の治療(のリスクを下げる目的)——これ1つだけで、末梢動脈閉塞性疾患ももも米国のこの製品の適応には無い3

⭐ は英国のの適応には無い。 英国版で唯一この語が現れるのは副作用の節で、安全性データベースの母集団(末梢動脈閉塞性疾患の病期III・IVとの患者3,325例)を説明する文である1。

に伴うでの位置づけは、ではなくの推奨が示している。💡 ここで見落としやすいのが、とで推奨の形が違うことである。

病態 2023年版の推奨(逐語の要点) LoE/SoR
SSc関連 第一選択は(通常は経口)、阻害薬も考慮する。静注は「経口治療がしなかった重症例」に考慮する 1a/A
阻害薬および/または静注を考慮する 1a/A
SSc関連PAH 進行例(クラスIII・IV)には静注(1a/A)、その他の・作動薬もクラスとして考慮してよい(1b/B) —

⚠️ **の推奨は原文が and/or で、阻害薬が無効だった場合に限るという順序は付いていない4。「経口治療の失敗後」という限定が掛かるのはの推奨のほうである。⚠️ **また、をクラスとして扱う推奨があるのはSSc-PAHの領域だけで、・では薬剤名(静注)で書かれている4。

では、に用いられるのはの吸入製剤である。⚠️ 吸入製剤の適応も「」と広く書かれてはいない——英国のベンテイビスのは「原発性でIII度の成人のと症状の改善」と限定しており、1回2.5 µgで開始してできれば5 µgへ増量し、1日6〜9回吸入する5。ここで扱う静注製剤の適応は(米国では)に限られ、英国・スペインいずれの静注製剤のにもは挙がっていない12。

米国で承認されているのは凍傷だけである

⭐ 米国では2024年2月13日に、が「成人の重症の治療——のリスクを下げる目的」で承認された(指定つきの505(b)(2)申請)6。💡 この薬にとっては「新しい効能」ではなく「が追いついた効能」である——への静注は1990年代から用いられており、承認の根拠になったのも新規の第3相試験ではなく公表済みのCauchyらの無作為化試験(単施設、1996〜2008年、47例)である。7日目ので取り込み欠損を認めた患者はブフロメジル群60%(9/15)・単独群0%(0/16)・+群19%(3/16)だった3。

⚠️ ただし添付文書自身が適用範囲に釘を刺している。 適応の文は逐語で「有効性は高所でを負った若年の健常成人で確立された」と続く3。上の試験の平均年齢は33歳(18〜55歳)、94%が男性、96%がスポーツ活動中の受傷で、糖尿病の患者は1例もいなかった3——市街地でを負う高齢者・糖尿病患者・をもつ患者とは母集団が違う。

⚠️ 「適応はだけ」はAurlumynという製品についての事実であって、という成分についての事実ではない。 欧州の静注製剤のの適応も、吸入製剤のの適応も、それぞれ別の文書で生きている。国・剤形・製品の3つを分けて読む。

日本では流通していない

日本ではかつてPAHに対する吸入製剤(ベンテイビス吸入液10 µg、バイエル薬品)が基準に収載されていた。⭐ この品目には経過措置による使用期限が令和6年(2024年)3月31日と定められており7、現行の基準収載品目リスト(内用薬・注射薬・外用薬)にはベンテイビスもも収載されていない8。⚠️ したがって以下の用法・用量と禁忌は、日本の資料ではなく欧州各国のと米国の添付文書から採ったものである。 PMDAの医療用医薬品情報検索で一般名のページを開いても、販売名・製造販売業者・添付文書の行が1件も無く、現時点で掲載されている電子添文は無い(同じ形式のURLで別の薬を引くと販売名と添付文書が並ぶことを陽性対照として確かめている)9。

用法・用量

静注は希釈後、6時間かけてする。最初の2〜3日で量を決めるため、0.5 ng/kg/分を30分行い、以後30分ごとに0.5 ng/kg/分ずつ最大2.0 ng/kg/分まで増量する1。

⚠️ 投与期間は適応ごとに違う。平坦化して「通常4週間」と覚えない。

適応 1コースの長さ
重症 0.5〜2 ng/kg/分 1日6時間を通常4週間(早期に効果が出れば短縮しうる)
重症 1.5〜2 ng/kg/分 1日6時間を5日間連続。反復サイクルは6〜12週間隔が望ましく、4週未満にはしない
重症(米国Aurlumyn) 0.5〜2 ng/kg/分 1日6時間を最大8日間連続。2日目・3日目も増量手順を繰り返し、4日目以降は前日の最大量から開始する3

⭐ 増量の刻み(0.5 ng/kg/分を30分ごと、上限2 ng/kg/分)は3か国の文書で共通だが、1コースの長さは適応ごとに別々に決められている。 米国のでは最大8日、英国・スペインのでは最長4週間(は5日間連続)である123。⚠️ 臓器障害時の減量は、英国と米国で「誰に」「どこまで」が違う。 英国の静注のは透析を要する腎不全または重度の肝障害に対して「通常量の半量など、減量したうえで慎重に初期増量する」と書く1のに対し、米国の添付文書は中等度以上の肝障害( B・C)で一律に 0.25 ng/kg/分から開始し、 30 mL/分未満では0.5 ng/kg/分で開始してできなければ0.25 ng/kg/分へ下げる、と対象も開始量も具体的に定めている3。💡 どちらも「肝で代謝される薬が溜まる」という同じ理由からだが、米国のほうが軽い障害から減量を課している。

英国のは治療期間を最長4週間とし、それを超える投与や反復サイクルの有効性・安全性は検討されていないと明記している1。スペインのIlomedinも治療期間は最長4週間としたうえで、では3〜5日の短い投与期間で数週間の改善が得られることが多いと述べており、短期コースという点で一致する2。⚠️ 英国のはの項で「数日にわたるは推奨しない」と述べ、続けて「臨床的な帰結は認められなかったものの、血小板への作用のと、治療中止時の凝集能亢進が起こりうる」と書いている1。💡 この2文は並置されているだけで、は後者を前者の理由として述べていない——と凝集能亢進には臨床的な帰結が認められなかったと原文自身が但し書きを付けており、「を避けるのはこれが起こるからだ」という因果の形で覚えない。

禁忌・注意

  • 禁忌:過敏症、妊娠・授乳中、血小板への作用が出血リスクを高める状況(活動性の消化性潰瘍、外傷、)、重篤な冠動脈疾患または、6か月以内の心筋梗塞、厳重な医学的監督下にない、 II〜IV の急性・慢性うっ血性心不全、重篤な不整脈、3か月以内の(・脳卒中)、肺水腫、に起因しない臨床的に問題となるを伴う先天性・後天性の1
  • ⚠️ 「心不全」「」を期限や重症度の限定なしに覚えない。 心不全は II以上、は3か月以内、心筋梗塞は6か月以内という線が引かれている。も「に起因しないもの」に限られる1
  • ⚠️ 「」とまとめて覚えない。 4.3の逐語は Myocardial infarction within the last six months であって、期限が付いているのは心筋梗塞だけである。は Severe coronary heart disease or unstable angina という別項目に、期限なしで挙がっている1
  • ⚠️ 禁忌の一覧は、国と剤形で別々に書かれている。上の一覧は英国の静注製剤のものである。
    • スペインのの4.3は英国とほぼ重なるが、「3か月以内の」「厳重な医学的監督下にない」「肺水腫」「」の4項目が無く、代わりに肺うっ血の疑いが禁忌に挙がる。3か月以内のについては4.4が「利益と危険を慎重に評価すること」と述べるにとどまる(同じ文が4.3を参照させているが、参照先に該当項目は無い)2
    • 英国の吸入製剤(ベンテイビス)の4.3は9項目で、静注製剤と違い妊娠・授乳が禁忌に入っていない(4.6は、の女性は妊娠を避けるべきとしたうえで、妊娠の継続を選んだ女性では利益と危険を慎重に評価して使用を考慮しうるとする)。代わりにによるが禁忌に加わり、4.4は85 mmHg未満では投与を開始しないと定めている5
    • 米国のは「4 CONTRAINDICATIONS」が逐語で **None.——禁忌を1つも挙げていない。として置かれているのはのみで、投与前に低血圧を是正し、併用中の・の一時中止を考慮するよう求めている3。⚠️ **これは「に禁忌が無い」という意味ではない——同じ成分の英国・スペインのは上のとおり多数の禁忌を挙げている。禁忌の有無は、読んだ文書の国と製品を添えてしか書けない
  • ⚠️ 血管拡張との両方を持つため、・中の患者では出血リスクに注意する。 経口抗凝固薬・ヘパリン・・他のとの併用は出血リスクを高めうるため、厳重な臨床的観察を行い、出血が生じたらを中止する1
  • 投与中は血圧低下・不整脈の出現に注意し、モニタリングのある環境で投与する。⚠️ 投与終了後に臥位から起き上がるときのにも注意する1

副作用

英国のは頻度区分ごとに列挙している。⚠️ 区分をまたいで覚えないこと——たとえばは「よくある」区分であって「非常によくある」ではない1。

頻度区分 主な内容
非常によくある(10%以上) 頭痛、、悪心・嘔吐、多汗
よくある(1%以上10%未満) めまい・・、頻脈・徐脈・、低血圧・、呼吸困難、下痢・、・、筋痛・関節痛、発熱・悪寒・
ときにある(0.1%以上1%未満) 、過敏症、痙攣・失神・振戦、心筋梗塞・心不全・不整脈、/脳虚血・・、喘息・肺水腫、消化管出血・便秘、
まれ(0.01%以上0.1%未満) 咳嗽、

⚠️ 生命を脅かす・致死的な症例が報告されている副作用として、は脳卒中・心筋梗塞・肺塞栓症・心不全・痙攣・低血圧・頻脈・喘息・狭心症・呼吸困難・肺水腫を名指ししている1。💡 これは「まれ」という意味ではない——頻度区分では低血圧・頻脈・狭心症・呼吸困難は「よくある」側にあり、重篤度と頻度は別の軸である。

⚠️ 米国の添付文書には頻度区分の表が無い。 挙がっているのは頭痛・・/頻脈・悪心・嘔吐・めまい・低血圧という列挙だけで、しかも前の安全性データはの患者ではなく、の指虚血発作を対象とした2試験の116例から得られたものだと自ら明記している(での副作用は公表文献に基づく)3。💡 頻度を比べたいときに使えるのは英国ののほうである——3,325例の集計に基づく頻度区分をもつのはこちらだけで、母集団は末梢動脈閉塞性疾患の病期III・IVとの患者である1。

まとめ

  • を化学的に安定化させた。作用機序(→増加による血管拡張・)は共通するが、がやや長く間欠的な投与が可能。
  • 同じ治療でも、(sGC刺激→cGMP)とはが異なる別系統であり、cGMP系薬どうしのようなの関係にはない。
  • では、の推奨がとで形を変えている。⚠️ 静注が「経口治療の失敗後」に置かれるのはの推奨で、では阻害薬とである。どちらも1a/A。
  • 静注製剤の承認された適応は国で違う。の適応がないと重症は英国・スペインに共通するが、を独立した適応に挙げるのはスペインのIlomedinで、英国のには無い。
  • ⭐ 米国だけは適応が丸ごと別で、2024年2月13日に承認された静注(Aurlumyn)は成人の重症の1適応しか持たない。 根拠は47例の無作為化試験(7日目のの取り込み欠損が単独群0%対ブフロメジル群60%)で、添付文書は有効性が高所で受傷した若年の健常成人で確立されたものだと明記している。用量は0.5〜2 ng/kg/分・1日6時間を最大8日間。
  • ⚠️ 禁忌は国と剤形ごとに読む。 英国の静注製剤は妊娠・授乳を含む多数を禁忌とし、英国の吸入製剤(ベンテイビス)は妊娠・授乳を禁忌に置かずによるを加え、米国のAurlumynは禁忌を1つも挙げていない(はのみ)。
  • ⚠️ 投与期間も適応で違う——は1日6時間を通常4週間、重症は1日6時間を5日間連続(反復は6〜12週間隔)、米国の重症は1日6時間を最大8日間連続。
  • に伴う・頭痛・低血圧が高頻度の副作用で、重篤な心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞・肺水腫など)には注意する。
  • 英国・スペインの静注製剤に共通する禁忌は、妊娠・授乳、活動性消化性潰瘍などの出血リスク状況、重篤な冠動脈疾患または、6か月以内の心筋梗塞、 II〜IVの急性・、重篤な不整脈である。投与はモニタリング可能な環境で行う。⚠️ 3か月以内の・肺水腫・を禁忌に挙げるのは英国のだけで、スペインのIlomedinの4.3にはこれらが無く(は4.4で「利益と危険を慎重に評価する」)、代わりに肺うっ血の疑いが禁忌に入る。
  • ⚠️ 日本では吸入製剤(ベンテイビス)が2024年3月末の経過措置満了で基準収載品目リストから削除されており、現行リストには1品目も無い。 PMDAの一般名ページにも販売名・添付文書の掲載が無く、用法・禁忌は欧州各国のと米国の添付文書で確かめるほかない。

出典

  1. 1.Iloprost 100 micrograms/ml concentrate for solution for infusion — Summary of Product Characteristics (SmPC)(Colonis Pharma Limited(electronic medicines compendium, UK。10. Date of revision of the text は 12/08/2025)・2025)全文を取得して確認した。4.1の適応は2つだけで、①切断のリスクがある下肢の重症慢性虚血で外科的血行再建や血管形成術が失敗したか適応でない例、②進行する栄養障害を伴う重症のレイノー現象である。血栓閉塞性血管炎(Buerger病)は4.1に無く、全文で唯一現れるのは4.8の安全性データベースの母集団の記述(PAOD病期III・IVとTAOの患者3,325例)である。4.2は6時間かけた静脈内投与で0.5 ng/kg/分から30分ごとに0.5 ng/kg/分ずつ最大2.0 ng/kg/分まで増量すると定めたうえで適応別に書き分けており、重症下肢虚血は0.5〜2 ng/kg/分を1日6時間で通常4週間、重症レイノー現象は1.5〜2 ng/kg/分を1日6時間で5日間連続とし反復サイクルは6〜12週間隔(4週未満にはしない)としている。治療期間は最長4週間で、それを超える投与や反復サイクルの有効性・安全性は検討されていない。4.3の禁忌は過敏症、妊娠、授乳、血小板への作用が出血リスクを高める状況(活動性消化性潰瘍・外傷・頭蓋内出血)、重篤な冠動脈疾患または不安定狭心症、6か月以内の心筋梗塞、厳重な医学的監督下にない非代償性心不全、急性または慢性のうっ血性心不全(NYHA II〜IV)、重篤な不整脈、3か月以内の脳血管イベント、肺水腫、肺高血圧症に起因しない臨床的に問題となる心機能障害を伴う先天性または後天性の弁膜異常である。4.8は最も重篤(生命を脅かすか致死的)な副作用として脳卒中・心筋梗塞・肺塞栓症・心不全・痙攣・低血圧・頻脈・喘息・狭心症・呼吸困難・肺水腫を挙げている。2026-09-16の実行で全文を再取得し、4.2の Special population に "In patients with renal insufficiency requiring dialysis or severe hepatic impairment, caution initial titration with a reduced dose is required (e.g. half the normal dose see Section 4.4 and 5.2)." とあること、4.1に凍傷(frostbite)の語が0件であること、18歳未満の小児で安全性・有効性が確立していないとしていることも確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.FICHA TÉCNICA ILOMEDIN 50 MICROGRAMOS/0,5 ML CONCENTRADO PARA SOLUCION PARA PERFUSION(Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios(バイエル。FECHA DE LA REVISIÓN DEL TEXTO は Enero 2014)・2014)全文を取得して確認した(2026-09-17に再取得し、CIMAのAPIでこの品目が現在も販売中=comerc trueであること、この ficha técnica が当該品目の現行文書として登録されていることも確かめた)。スペインで現在も販売されているIlomedin(バイエルの静注イロプロスト)の4.1の適応は3つで、①血行再建の適応がない重症虚血肢を伴う進行した閉塞性血栓血管炎(Buerger病)、②とくに切断のリスクがあり手術も血管形成術も不可能な重症の末梢動脈閉塞性疾患、③他の治療手段に反応しない重症で日常生活に支障をきたすレイノー現象である。肺高血圧症は適応に挙がっていない。4.2は1日6時間の静脈内投与で0.5〜2.0 ng/kg/分、治療期間は最長4週間だがレイノー現象では3〜5日の短い期間で数週間の改善が得られることが多いとする。4.3の禁忌は過敏症、妊娠、授乳、血小板への作用が出血リスクを高める状況(活動性消化性潰瘍・外傷・頭蓋内出血)、重篤な冠動脈疾患または不安定狭心症、6か月以内の心筋梗塞、急性または慢性のうっ血性心不全(NYHA II〜IV)、重篤な不整脈、肺うっ血の疑いである。⚠️ 英国の製品概要にある「厳重な医学的監督下にない非代償性心不全」「3か月以内の脳血管イベント」「肺水腫」「弁膜異常」の4項目は、この4.3には無い。3か月以内の脳血管イベントについては4.4が「3か月以内に一過性脳虚血発作・脳卒中を起こした患者では利益と危険を慎重に評価すること(4.3参照)」と述べるにとどまり、参照先の4.3には該当する項目が無い閲覧 2026-09-08
  3. 3.AURLUMYN (iloprost) injection, for intravenous use — Prescribing Information(BTG International Inc(DailyMed, 米国。Highlights 末尾に印刷された改訂表示は Revised: 3/2026)・2026)現行SPL(setid 34036fc0-6832-d066-e063-6394a90a18a4、labeler は BTG International Inc、版はversion 6、Highlights末尾に印刷された改訂表示は Revised: 3/2026)の全文を取得して確認した。1 INDICATIONS AND USAGE は逐語で "AURLUMYN is a prostacyclin mimetic indicated for the treatment of severe frostbite in adults to reduce the risk of digit amputations. Effectiveness was established in young, healthy adults who suffered frostbite at high altitudes." であり、この米国製品の適応は成人の重症凍傷のみで、肺高血圧症も末梢動脈閉塞性疾患もレイノー現象も含まれない。2.1は0.5 ng/kg/分で開始し忍容性に応じて30分ごとに0.5 ng/kg/分ずつ2 ng/kg/分まで増量、1日6時間の持続静注を最大8日間連続で行うと定め、2日目・3日目は増量手順を繰り返し4日目以降は前日の最大忍容量から開始するとしている。2.3は中等度・重度の肝障害(Child-Pugh B・C)で0.25 ng/kg/分から開始、2.4はeGFR 30 mL/分未満で0.5 ng/kg/分から開始し忍容できなければ0.25 ng/kg/分へ下げるとする。4 CONTRAINDICATIONS は逐語で "None." であり、5 WARNINGS AND PRECAUTIONS は症候性低血圧のみを挙げる。6.1の副作用は頭痛・顔面紅潮・動悸/頻脈・悪心・嘔吐・めまい・低血圧で、市販前の安全性データは全身性強皮症の指虚血発作(レイノー現象)を対象とした2試験の116例から得られたものだと明記している。14.1の根拠はCauchyらの非盲検無作為化試験(単施設、1996〜2008年、47例)で、7日目の骨シンチの取り込み欠損はブフロメジル群60%(9/15)・イロプロスト単独群0%(0/16)・イロプロスト+tPA群19%(3/16)、12.3は半減期を20〜30分としている。14.1は重症凍傷を「少なくとも1指趾がstage 3(病変が基節骨をわずかに越える)またはstage 4(中手骨・中足骨関節より近位に及ぶ)」と定義し、試験集団を平均年齢33歳(範囲18〜55歳)・94%が男性・96%がスポーツ活動中の受傷・6%に喫煙歴・糖尿病は1例も無しと記載している。閲覧 2026-09-16
  4. 4.EULAR recommendations for the treatment of systemic sclerosis: 2023 update(European Alliance of Associations for Rheumatology(Del Galdo et al., Ann Rheum Dis)・2025)誌上版(Ann Rheum Dis 84巻29-40頁、2025年)の全文PDFを取得してTable 1と本文で確認した。レイノー現象の推奨は「経口治療が奏効しなかった重症のSSc-RPには静注イロプロストを考慮すべきである」(エビデンスレベル1a、推奨の強さA)、指尖潰瘍の推奨は「SSc患者の指尖潰瘍の治療にはPDE5阻害薬および/または静注イロプロストを考慮すべきである」(1a、A)で、後者は逐語で and/or であり、PDE5阻害薬が無効だった場合に限るという順序は付いていない。どちらも2017年版から変更なく維持された推奨で、SLRは静注イロプロストについてより高いエビデンスレベルの新規研究を同定しなかった。プロスタサイクリン類似薬をクラスとして扱う推奨があるのはSSc-PAHの領域で、「他のプロスタサイクリン類似薬または作動薬をSSc-PAHの治療に考慮すべきである」(1b、B)、進行例(クラスIII・IV)には静注エポプロステノールを考慮すべきである(1a、A)と書き分けられている閲覧 2026-09-08
  5. 5.Ventavis 10 microgram/ml nebuliser solution — Summary of Product Characteristics (SmPC)(Bayer plc(electronic medicines compendium, UK。Date of revision of the text は 01/2021)・2021)全文を取得して確認した。吸入製剤(ベンテイビス)の4.1は逐語で "Treatment of adult patients with primary pulmonary hypertension, classified as NYHA functional class III, to improve exercise capacity and symptoms." であり、適応は原発性肺高血圧症でNYHA機能分類III度の成人に限られ、運動耐容能と症状の改善を目的とする。4.2は1回2.5 µgで開始し、忍容できれば5 µgへ増量して維持、忍容不良なら2.5 µgへ戻すとし、1回量を1日6〜9回吸入する。肝機能障害では初期は3〜4時間の投与間隔(1日最大6回)とし、腎障害はクレアチニンクリアランス30 mL/分超なら用量調節不要とする。増悪した場合は静注プロスタサイクリンへの切り替えを考慮するとしている。4.3の禁忌は過敏症、血小板への作用が出血リスクを高める状況(活動性消化性潰瘍・外傷・頭蓋内出血)、重篤な冠動脈疾患または不安定狭心症、6か月以内の心筋梗塞、厳重な医学的監督下にない非代償性心不全、重篤な不整脈、3か月以内の脳血管イベント、静脈閉塞性疾患による肺高血圧症、肺高血圧症に起因しない臨床的に問題となる心機能障害を伴う先天性・後天性の弁膜異常の9項目で、静注製剤の4.3と違い妊娠・授乳は禁忌に挙がっていない(4.6は、肺高血圧症の女性は妊娠を避けるべきとしたうえで、妊娠継続を選んだ女性では利益と危険を慎重に評価したうえで使用を考慮しうるとする)。4.4は収縮期血圧85 mmHg未満では投与を開始しないと定めている。閲覧 2026-09-16
  6. 6.NDA 217933 AURLUMYN (iloprost) injection — NDA Approval Letter(U.S. Food and Drug Administration (Center for Drug Evaluation and Research)・2024)PDF全文を取得して確認した。NDA 217933(505(b)(2)申請、宛先はEicos Sciences, Inc.)の承認レターで、逐語で "This NDA provides for the use of AURLUMYN (iloprost) injection for the treatment of severe frostbite in adults to reduce the risk of digit amputations." と述べ、"It is approved, effective on the date of this letter" としている。電子署名の日付は2024年2月13日である。本適応は希少疾病用医薬品指定を受けており("Because this drug product for this indication has an orphan drug designation")、openFDAのDrugs@FDAでも同申請のORIG-1が2024年2月13日にAP(承認)として記録されている。閲覧 2026-09-16
  7. 7.薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和6年3月31日まで)(厚生労働省・2024)外用薬のExcel(令和6年2月1日適用、tp20240201-01_03.xlsx)に「外用薬/2190701G1025/イロプロスト/10μg1mL1管/ベンテイビス吸入液10μg/バイエル薬品/先発品/1865.1/R6.3.31まで」という行があり、経過措置による使用期限の欄が令和6年3月31日であることを確認した。⚠️ このページ自体に「最新の情報ではありません。令和6年4月1日の薬価改定以降の最新の情報はこちら」という注記が付いている(2026-09-17に確認)。本ノートは経過措置満了の記録としてこの旧期間のリストを意図的に引いており、現行リストは mhlw-yakka-list-2026 の側で引いている閲覧 2026-09-08
  8. 8.薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年8月13日適用)(厚生労働省・2026)内用薬・注射薬・外用薬の3つのExcelを取得して全文検索し、ベンテイビス・イロプロスト・薬価基準収載医薬品コード2190701のいずれも0件であることを確認した。陽性対照として、同じ外用薬のファイルに「トレプロスト吸入液1.74mg」が、注射薬のファイルに「エポプロステノール静注用0.5mg「ヤンセン」」が収載されていることを確かめている閲覧 2026-09-08
  9. 9.医療用医薬品 情報検索(一般名:イロプロスト、医薬品医療機器総合機構)(独立行政法人医薬品医療機器総合機構・2026)2026-09-17にブラウザUA付きのcurlでHTMLを取得し、一般名イロプロストのページに販売名・製造販売業者等・添付文書の行が1件も無く、承認情報の欄も空(ハイフン)であることを確認した。陽性対照として同じ形式のURLでサクビトリルバルサルタン(2190041F1027)を取得すると、エンレスト錠の販売名・ノバルティスファーマ・添付文書のPDF/HTMLリンクが表示される。したがって現時点でPMDAに掲載されているイロプロストの電子添文は無い閲覧 2026-09-17