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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

深部静脈血栓症

Deep vein thrombosis

別名
DVT
臓器系
循環器血液
科目
Cardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular SurgeryInternal MedicinePathologySurgery
トピック
循環器内科 B-11:深部静脈血栓症の症状・診断・治療と合併症内科学 L-09:表在静脈血栓症と深部静脈血栓症内科学 H-08:血栓症の評価病理学 A/28:血栓症の原因と種類外科学 G-14:血栓塞栓症と血栓予防
上位概念
静脈血栓塞栓症
鑑別疾患
コンパートメント症候群結節性紅斑産褥敗血症・産褥感染丹毒・蜂窩織炎糖尿病性筋梗塞表在性血栓性静脈炎不明熱複合性局所疼痛症候群
続発疾患
慢性静脈不全肺高血圧症肺血栓塞栓症
関連疾患
腸間膜虚血(急性・慢性、虚血性大腸炎を含む)
治療薬
ヘパリンエノキサパリンダルテパリンナドロパリンフォンダパリヌクスダナパロイドワルファリンリバロキサバンアピキサバンダビガトランエテキシラートエドキサバンアルテプラーゼ
原因薬剤
エストラジオールエチニルエストラジオールエチニルエストラジオール+レボノルゲストレルラロキシフェンタモキシフェンチボロン
症状
圧痕性浮腫圧痛胸痛呼吸困難紅斑腫脹疼痛四肢痛
検査値
Dダイマー血算
スコア
Wellsスコア
組織像
大腿静脈血栓症(肉眼標本)
下位分類
Paget-Schroetter症候群
元疾患
ベーチェット病ヘパリン起因性血小板減少症足関節骨折
原因となる疾患
May-Thurner症候群Trousseau症候群ネフローゼ症候群抗リン脂質抗体症候群真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症先天性・後天性血栓性素因多発性骨髄腫乳癌肺癌膜性腎症
適応薬
アピキサバンエドキサバンダナパロイドリバロキサバン
禁忌薬
ウパダシチニブエストラジオールエチニルエストラジオールエチニルエストラジオール+レボノルゲストレルオスペミフェンダナゾールタモキシフェンチボロンデソゲストレルトファシチニブドロスピレノンノルエチステロンラロキシフェン

🧠 全体像:は、(・・)が重なって主に下肢・骨盤のに生じるであり(上肢に生じる型はを参照)、と合わせてと呼ばれる連続した病態である。診療の幹は「()→→圧迫超音波」というた診断アルゴリズムと、確定後は禁忌がなければ直ちに抗凝固を開始し、誘因の有無で治療期間を個別化することにある。早期合併症の肺塞栓症、のを防ぐことがであり、周術期には発症前の(・機械的予防・薬物予防)が同じ枠組みで重要になる。

病態

止血は血管壁・血小板・の協調による生理的な反応であり、血栓症はこれが病的に働いた状態である。血管が傷害されるとまず血管収縮が起こり、血小板の接着・凝集による、続いてとを起点とするがトロンビン・フィブリンを生成するが進む。正常ではや()によるの調節がこれに拮抗し、血栓の過形成を防いでいる。

のはで整理する。

機序・代表的な危険因子
最も重要な因子。手術・外傷・中心静脈カテーテル・炎症・喫煙によるでコラーゲンが露出し、凝固因子が活性化される
、術後不動、麻痺、心不全、長距離移動、静脈瘤、外部からの圧迫。血流のうっ滞は血小板と凝固因子の局所蓄積を促す
一次性(遺伝性):、G20210A変異、・・。二次性(後天性):、妊娠・、、、高齢、不動
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stasis'>血流停滞</span><br>(不動・術後・心不全・長距離移動)"] --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein'>深部静脈</span>内での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombus formation'>血栓形成</span>"]
    B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial damage'>血管内皮障害</span><br>(手術・外傷・中心静脈カテーテル・炎症)"] --> D
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercoagulability'>凝固能亢進</span><br>(悪性腫瘍・妊娠・エストロゲン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inherited thrombophilia'>遺伝性血栓性素因</span>)"] --> D
    D --> E["下肢・骨盤深部静脈血栓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein thrombosis'>DVT</span>)"]
    E --> F["血栓の遊離・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='embolization'>塞栓化</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary embolism, PE'>肺血栓塞栓症</span>"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous valves'>静脈弁</span>破壊・慢性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous hypertension'>静脈高血圧</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='post-thrombotic syndrome, PTS'>血栓後症候群</span>"]
    E --> J["線溶・器質化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recanalization'>再疎通</span>"]

💡 静脈血栓はフィブリンと赤血球に富む「」で、うっ滞・が主因となる。これに対し動脈血栓は血小板に富む「」で、巣の破綻などが主因となる。流れる血液中で層状に形成された血栓には、血小板・(白)と赤血球層(赤)がに重なるがみられ、生前性の血栓であることを示す所見として鑑別に用いられる。

血栓の転帰は、進展(血栓が拡大する)、溶解(による自然消退。古い血栓ほど抵抗性が強い)、(遊離して他部位を閉塞する)、器質化・(線維化した後にが形成され血流が部分的にする)のいずれかをたどる。では近位(大腿・より中枢)の血栓ほどして肺塞栓症を起こしやすく、遠位(下腿)の血栓は自然消退することも多いが、近位へ進展した場合は同様にリスクが上がる。

臨床像

片側性の下肢腫脹、・重苦しさ、熱感、紅斑・うっ血様の色調変化、の怒張、走行に沿う圧痛、左右差のある増加、を認める。無症候性のも少なくなく、身体所見だけでは診断も除外もできない。

身体所見 診察方法 意義
をさせ痛の有無をみる 感度・特異度がいずれも不十分で、陽性・陰性のみで診断・除外しない
下腿を圧迫し疼痛の有無をみる 同上。単独では診断的価値が低い
足底内側を圧迫し疼痛の有無をみる 同上

⚠️ などの誘発手技は血栓を機械的に刺激するおそれがあり、診断精度が低いことも合わせて、これらの所見だけで診断・除外の判断根拠にしてはならない。

呼吸困難、胸痛、頻呼吸・頻脈、めまい、失神、脱力を伴う場合は肺塞栓症への進展を示唆し、としての評価と蘇生を優先する。

診断

を評価したうえで、と画像検査を使い分ける。

Wells DVTスコア

項目 点数
+1
下肢の麻痺・、最近の +1
3日以上の、または12週以内の全身麻酔・による大手術 +1
+1
下肢全体の腫脹 +1
の10 cm下でよりが3 cm以上大きい +1
+1
非静脈瘤性の +1
の既往(記録あり) +1
と同程度以上に考えやすいがある −2

現在広く使われる2段階モデルでは2点以上を「の可能性が高い(likely)」、1点以下を「の可能性は低い(unlikely)」とする。unlikely かつ高感度陰性ならの確率は1.2%(95%信頼区間0.7〜1.8%)まで下がるが、がある患者ではが約2倍高く、この組合せでも「見逃し2%以下」というを超える1。旧来の3段階モデル(高・中間・低確率)を採用するプロトコルもあるため、使用するモデルと後続の検査アルゴリズムを混在させないことが重要である。⚠️ 大手術の項目は版で異なる。1997年のLancet原版は「4週以内」、2003年のNEJM改訂版は「12週以内の、全身麻酔またはを要する大手術」で、上表は後者を採っている。13研究10002例を統合した検証は4週で集計している1。施設プロトコルがどちらを使っているかを確認する。なお同検証は、再発を疑う例ではスコアに1点を加えることを提案している1。

はの分解産物で、感度は高いが特異度が低く、感染・炎症・悪性腫瘍・妊娠・術後・加齢でも上昇する。50歳超では(標準500 µg/L、すなわちFEU(フィブリノゲン等量単位)表記の測定系で「年齢×10 µg/L」)を用いることで、不要な画像検査を減らせる2。⚠️ DDU(単位)表記の測定系では値がおよそ半分になる(標準約230 µg/L、年齢調整は年齢×5)。自施設の測定系がどちらの単位で報告しているかを確認せずにを当てはめない。この年齢調整閾値はPEに続いてでも前向き管理研究で安全性が確認された——救急外来患者3205例の研究で、500 µg/L以上かつ未満として除外した161例に3か月の追跡で1例もが起こらず、75歳以上では陰性となる割合が8.7%から26.1%へ増えた3。いずれもが高くない患者に限って用いる。⚠️ 陽性は画像検査に進む根拠であり、それ単独で確定とはしない2。高いの患者では陰性だけでを除外しない。

が第一選択の画像検査であり、静脈のと血流所見を評価する。は侵襲的なためには行わず、超音波が不確定で臨床疑いが残る場合やの計画時などに限る。や悪性腫瘍が疑われる場合はを追加する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein thrombosis'>DVT</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wells DVT score'>Wells DVTスコア</span>などで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical pretest probability'>臨床的検査前確率</span>を評価"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unlikely'>低確率</span>"| C["高感度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D-dimer'>Dダイマー</span>"]
    C -->|"陰性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein thrombosis'>DVT</span>を除外"]
    C -->|"陽性"| E["下肢圧迫<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultrasound (US)'>超音波検査</span>"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='likely'>高確率</span>"| E
    E -->|"陽性"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein thrombosis'>DVT</span>と診断"]
    E -->|"陰性だが臨床的疑いが強い"| G["全下肢評価または約1週間後に再検・追加画像"]

連続超音波は「初回検査の1週間後に1回追加する」と定義されている2。

血栓性素因の評価

検査は急性期の診断そのものには不要であり、結果が治療期間や家族への対応を実際に変える患者に限って選択的に行う。

機序・特徴
への抵抗性により、第Va因子が不活化されにくくなる
G20210A変異 量が増加し、静脈血栓リスクが上昇する
トロンビン・などの抑制が低下する。ヘパリンへの反応が弱いことがある
第Va・VIIIa因子の不活化が低下する。VKA開始初期にを来しうる
の補因子活性が低下する

検査を考慮する場面は、若年での・再発性、通常でない部位の静脈血栓、強い家族歴、を示唆する動脈血栓・妊娠合併症などである。大手術など明確な一過性誘因を伴うではをルーチンに検査しない。急性血栓期・妊娠・肝疾患・抗凝固薬は・S、、の結果に影響するため、検査時期は専門的に判断する。一般的なMTHFR多型はの検査として推奨されず、を下げるだけでは再発は減らない。で潜在がんを考える場合も、病歴・診察、血算・生化学、年齢相応のがん検診を基本とし、無症状患者へ広範なやを一律に追加しない。

治療

抗凝固療法

がなければ、確定した急性では直ちにを開始する。

状況 選択の原則
経口治療が可能で禁忌なし ・はヘパリン先行を要しない初期増量レジメンを持つ。とは先行する注射抗凝固薬の後に開始する(下表)
初期に注射薬が必要 多くは・・などのをより優先する。のためヘパリン系を避ける場合は非ヘパリン抗凝固薬へ切り替える——ASH 2018は・・ダナパロイド・・のいずれかを条件付きで示唆し、5剤のどれかを第一選択に立ててはいない4
難治性の状況、迅速な中和が必要、重度腎障害 調節しやすいを検討する
ワルファリンを選ぶ場合 またはと重ねて開始し、が治療域で安定するまで併用する
妊娠 を基本とし、・ワルファリンは避ける
、重度腎障害など 病態と薬剤特性に応じて個別に選択する(ワルファリンなど)

⚠️ 「」と一括りにできない最大の点が、注射抗凝固薬を先行させるかどうかである。 英国emcに掲載されたSmPCで確認できる範囲では、/PEの治療と再発予防に適応をもつ4剤が2つの型に分かれ、しかも「先行が要る」側は少なくとも5日間という日数まで定められている。ここを取り違えると、直接内服へ切り替えた患者が実質的に無治療の期間を持つ方向にも、不要な注射を続ける方向にも倒れる。

薬剤 成人/PEの初期〜維持 注射抗凝固薬の先行 6か月以降の延長予防
15 mgを1日2回で3週間、その後20 mgを1日1回 不要(成人)5 10 mgを1日1回。再発リスクが高い例では20 mgを1日1回も考慮5
10 mgを1日2回で最初の7日間、その後5 mgを1日2回 不要6 6か月の治療を終えた後に2.5 mgを1日2回6
60 mgを1日1回(増量期を置かない) 必要。少なくとも5日間先行させ、はしない7 減量したは定めず、同じ用量のまま期間を個別化する(一過性危険因子なら少なくとも3か月、持続性危険因子や特発性ならより長く)7
150 mgを1日2回(増量期を置かない) 必要。少なくとも5日間先行させる8 同上。減量したは定めず期間を個別化する8

💡 増量期の有無と先行の要否は表裏である。 とは最初の3週間・7日間を増量して急性期を自力で覆うので注射薬が要らない。とには増量期が無く、その分の急性期を注射抗凝固薬が担う。のSmPCは「と初期のを同時に投与してはならない」と明記しており、重ねるのではなく置き換える。ワルファリンでを重ねるのと逆なので、同じ「先行」という語で覚えない。

⭐ はVKAより優先されるが(条件付き推奨)9、これは「どちらでもよい」の言い換えではない。腎機能・妊娠・・薬物相互作用・出血リスクのいずれかが該当すれば、LMWHや調節しやすい、あるいはワルファリンを選ぶ理由になる。

初期治療相は3〜6か月を基準とする。大きな一過性誘因(大手術、外傷、長期不動など)によるでは、原則としてこの初期治療の終了とともに抗凝固を中止する。一方、な持続危険因子(、自己免疫疾患など)を伴う場合やでは、出血リスクが高くない限り期限を定めない延長抗凝固とし、以後も定期的に継続の要否を再評価する。が再発した場合は無期限の抗凝固が強い推奨となる。ワルファリンを用いる場合の目標 2.0〜3.0も強い推奨である9。

⚠️ などによる血栓溶解(全身投与・カテーテル的投与)は、近位の大多数では抗凝固単独に劣後する(条件付き推奨)。ASH 2020がを考慮してよいとするのは、①肢を脅かす有痛性青股腫と、②・総に及ぶ症候性をもつ、出血リスクの低い選択された若年例——の2つだけで、同じ但し書きが「総より末梢にとどまるでの血栓溶解はまれであるべき」とも明記している9。近位(大腿・総大腿・)692例をしたATTRACT試験(16歳未満・75歳超、症状が14日を超える例、出血高リスク、などは除外)では、薬理学的機械的カテーテル血栓溶解を加えても6〜24か月のの発症率は47%対48%と変わらず、10日以内の大出血は1.7%対0.3%と増えた。ただし中等度〜重度のは18%対24%と少なく、Villaltaスコアも低かった——「を防ぐ」効果は限定的だが「重症化を減らす」側の効果は認められた、と読む10。

は、急性でがの場合、または抗凝固薬による重大な合併症が生じた場合が主たる適応である。中にもかかわらず再発する場合も検討されうるが、抗凝固が可能な患者へのルーチン留置は推奨されない。回収可能型を用い、抗凝固が安全に行えるようになり次第する9。

合併症

時期 合併症 内容
早期 近位下肢・骨盤静脈由来の血栓が遊離して肺動脈を閉塞する。とPEは同一疾患スペクトラムのとして扱う
晩期 の破壊・閉塞、、下腿機能低下により慢性を来す。疼痛、重感、、浮腫、色素沈着、を呈する
晩期(まれ) 肺塞栓症後に血栓が器質化・線維化し、がに上昇する

周術期の血栓予防

⚠️ は感度・特異度が低く、血栓を機械的に刺激するおそれもあるため、周術期のスクリーニング手段として用いない。

全入院患者でリスクと出血リスクの双方を評価し、病態・術式・麻酔法・腎機能に応じた施設プロトコル(術式別リスク評価ツールを含む)で予防法を選ぶ。

方法 適応・特徴
すべての患者に共通する基礎的予防。ただし高リスク例では単独では不十分
出血リスクが高く薬物予防ができない場合、または高リスク例で薬物予防と併用する
適切なサイズ選択と皮膚観察が必要。では慎重に用いる
多くの大手術で第一選択。腎機能と出血リスクで調整する
高度腎機能低下例や、迅速な中止が必要な場合の選択肢となる
主に股関節・置換術など選択されたで用いる。一般外科全体に一律には用いない

予防の開始時刻は一律の「術後6〜12時間」ではなく、術式別指針と止血状態で決める(例:股関節周囲骨折で出血リスクが低ければ術後6〜12時間、ではしばしば24〜48時間後)。・やカテーテルを用いる場合は、を避けるため、穿刺・留置・と抗凝固薬投与の間隔を薬剤・腎機能別の現行指針で確認し、一般外科向けの開始時刻をそのまま適用しない。

予防期間も入院中だけでなく、術後の可動性低下期間を含めて判断する。股関節置換・股関節周囲骨折では約1か月、置換では薬剤・指針により少なくとも10〜14日からの延長を検討する。腹部・骨盤の癌手術では、高リスクかつ大出血リスクが低ければ約4週間の延長予防を検討する。「一般外科は全員7〜10日」のように固定せず、手術・患者ごとに個別化する。

表在静脈血栓症(鑑別・関連病態)

に沿う疼痛、発赤、硬い物を認める。Duplex超音波で血栓長、伏在大腿・伏在接合部への近接、同時のの有無を評価する。

状況 対応の考え方
小範囲でから離れている 歩行、鎮痛、局所管理を基本とする
広範囲、または接合部に近い、リスクが高い 一定期間の抗凝固を検討する
へ進展している に準じて治療する

まとめ

  • は(・・)によって下肢・骨盤のに生じるであり、PEと合わせてを構成する。
  • などの身体所見は感度・特異度が不十分で、診断・除外の根拠にしない。
  • 診断はによるの評価に始まり、低確率では高感度(50歳超は)、高確率または陽性なら圧迫超音波へ進む。
  • 検査は急性期診断には不要で、若年・再発性や異常部位の血栓など、結果がを変える場合に選択的に行う。
  • 抗凝固が治療の柱であり、腎機能・妊娠・悪性腫瘍・相互作用・出血リスクに応じて・LMWH・・ワルファリンを選び、一過性誘因例は3〜6か月、慢性危険因子・例は延長抗凝固を再評価しながら継続する。
  • は4剤とも同じ使い方ではない。(15 mg 1日2回×3週→20 mg 1日1回)と(10 mg 1日2回×7日→5 mg 1日2回)は増量期で急性期を覆うので注射抗凝固薬の先行が要らず、(60 mg 1日1回)と(150 mg 1日2回)は少なくとも5日間の注射抗凝固薬を先行させてから開始する。
  • 血栓溶解とは、それぞれ選択された広範と抗凝固などに限定する。
  • 早期合併症の肺塞栓症、の・を防ぐには、周術期のリスク評価に基づく・機械的予防・薬物予防によるが同じ枠組みで重要になる。

出典

  1. 1.Exclusion of deep vein thrombosis using the Wells rule in clinically important subgroups: individual patient data meta-analysis(The BMJ・2014)13研究10002例の個別患者データを統合した解析で、Wellsルールの項目と配点が、活動性悪性腫瘍・下肢の麻痺/不全麻痺/ギプス固定・3日を超える臥床または大手術・深部静脈系に沿う限局性圧痛・下肢全体の腫脹・3 cmを超える下腿周径差・圧痕性浮腫・側副表在静脈・DVT既往が各+1点、DVTと同程度以上に考えやすい代替診断が−2点であること、Wellsルールでunlikely(1点以下)かつDダイマー陰性ならDVTの確率が1.2%(95%信頼区間0.7〜1.8%)と極めて低いこと、ただし悪性腫瘍のある患者では予測確率が約2倍高く、この組合せでも見逃し2%という安全域を超えることを確認した。なおこの統合データでは大手術の項目が「4週以内」として集計されている閲覧 2026-09-04
  2. 2.American Society of Hematology 2018 guidelines for management of venous thromboembolism: diagnosis of venous thromboembolism(American Society of Hematology・2018)検査前確率が低い(2段階モデルのunlikely)DVT疑い例ではDダイマーから始めて陽性なら圧迫超音波へ進む戦略を強く推奨し、検査前確率が高い(likely)例では超音波から始めることを提案すること、いずれの確率区分でもDダイマー陽性だけでDVTと診断しないよう推奨すること、連続超音波を「初回から1週間後の追加1回」と定義すること、50歳を超える外来患者では年齢調整Dダイマーカットオフ(年齢×10 µg/L。標準カットオフ500 µg/Lの測定系で用いる)が標準カットオフと同等に安全で診断的有用性を高めることを確認した閲覧 2026-09-04
  3. 4.American Society of Hematology 2018 guidelines for management of venous thromboembolism: heparin-induced thrombocytopenia(American Society of Hematology・2018)PMC6258919のHTML全文で確認した。推奨3.1が、急性HIT(血栓を伴う場合も伴わない場合も)でヘパリンを中止して非ヘパリン抗凝固薬を開始することを強い推奨(確実性は中)とする一方、薬剤の選択は「argatroban, bivalirudin, danaparoid, fondaparinux, or a direct oral anticoagulant (DOAC)」を条件付き推奨・非常に低い確実性で示唆するにとどめ、5剤のいずれかを第一選択に立てていないこと、推奨7.1が、過去のHITがある患者の静脈血栓塞栓症の治療・予防には未分画ヘパリン/低分子量ヘパリンではなく非ヘパリン抗凝固薬(apixaban, dabigatran, danaparoid, edoxaban, fondaparinux, rivaroxaban, or VKA)を用いることを強い推奨(確実性は非常に低い)としていることを確認した閲覧 2026-09-16
  4. 5.Xarelto 20mg film-coated tablets — Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium(英MHRA登録のSmPC)・2024)emc掲載の最終更新は2024年11月27日、本文の改訂日は2024年11月14日。4.1項が成人の深部静脈血栓症・肺塞栓症の治療と再発予防を適応とし、4.2項が急性期の推奨用量を15 mg 1日2回で最初の3週間、その後20 mg 1日1回としていること、成人ではこの適応に非経口抗凝固薬の先行を求めていないこと(5日間の先行が課されるのは体重50 kg超で18歳未満の小児の適応だけ)、少なくとも6か月の治療を終えたうえで延長予防が適応となる場合の推奨用量が10 mg 1日1回であり、合併症が複雑な例や10 mgで再発した例では20 mg 1日1回を考慮するとしていること、中等度(CrCl 30〜49 mL/分)・重度(CrCl 15〜29 mL/分)腎機能障害では最初の3週間は15 mg 1日2回のままで、その後の20 mg 1日1回については出血リスクが再発リスクを上回ると判断されるときに15 mg 1日1回への減量を考慮するとしていることを逐語で確認した閲覧 2026-09-16
  5. 6.Eliquis 5 mg film-coated tablets — Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium(英MHRA登録のSmPC)・2026)emc掲載の最終更新は2026年8月17日、本文の改訂日は2026年7月28日。4.1項が成人の深部静脈血栓症・肺塞栓症の治療と再発予防を適応とし、4.2項が急性期の推奨用量を10 mg 1日2回で最初の7日間、その後5 mg 1日2回としていること、非経口抗凝固薬の先行を求めていないこと、再発予防の推奨用量が2.5 mg 1日2回で、これはアピキサバン5 mg 1日2回または他の抗凝固薬による6か月の治療を終えてから開始すると表1に明記されていること、軽度・中等度腎機能障害ではこの適応で用量調節を要さず、重度腎機能障害(CrCl 15〜29 mL/分)では慎重投与、CrCl 15 mL/分未満と透析患者では推奨しないとしていることを逐語で確認した閲覧 2026-09-16
  6. 7.Lixiana 60mg Film-Coated Tablets — Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium(英MHRA登録のSmPC)・2025)emc掲載の最終更新は2025年9月26日、本文の改訂日は2025年7月24日。4.1項が成人の深部静脈血栓症・肺塞栓症の治療と再発予防を適応とし、4.2項が「The recommended dose is 60 mg edoxaban once daily following initial use of parenteral anticoagulant for at least 5 days」「Edoxaban and initial parenteral anticoagulant should not be administered simultaneously」と定めていることを逐語で確認した。増量期は置かれておらず、延長予防のための減量した維持量も定められていない(一過性危険因子なら少なくとも3か月、持続性危険因子または特発性ならより長く、として期間を個別化する)。減量基準はCrCl 15〜50 mL/分・体重60 kg以下・シクロスポリン/ドロネダロン/エリスロマイシン/ケトコナゾールの併用で30 mgとするもので、心房細動の適応と共通である閲覧 2026-09-16
  7. 8.Pradaxa 150 mg hard capsules — Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium(英MHRA登録のSmPC)・2025)emc掲載の最終更新は2025年1月16日、本文の改訂日は2025年1月。4.1項が成人の深部静脈血栓症・肺塞栓症の治療と再発予防を適応とし、4.2項の表1が「300 mg dabigatran etexilate taken as one 150 mg capsule twice daily following treatment with a parenteral anticoagulant for at least 5 days」と定めていることを逐語で確認した。増量期は無く、延長予防のための減量した維持量も定められていない(表2が、一過性危険因子なら少なくとも3か月、持続性危険因子または特発性ならより長く、として期間を個別化するとしている)。⚠️ DVT/PEでの110 mg 1日2回は薬物動態・薬力学解析に基づく推奨で、この臨床設定では検討されていないと本文が明記している閲覧 2026-09-16
  8. 9.American Society of Hematology 2020 Guidelines for Management of Venous Thromboembolism: Treatment of Deep Vein Thrombosis and Pulmonary Embolism(American Society of Hematology / Blood Advances・2020)初期治療(primary treatment)を3〜6か月とし6〜12か月より短い方を提案すること、一過性危険因子による誘発例は初期治療の終了とともに中止する一方、持続性危険因子による誘発例と非誘発例には無期限の二次予防を提案し、再発した非誘発例には強く推奨すること、VKAを使う場合の目標INRを2.0〜3.0とすることを強く推奨すること、初期治療ではDOACをVKAより条件付きで優先すること、近位DVTへ血栓溶解を上乗せしないことを提案し、有痛性青股腫や腸骨・総大腿静脈に及ぶ症候性DVTで出血リスクの低い若年例など限られた状況にとどめること、抗凝固が可能な患者ではDVTに下大静脈フィルターを併用しないことを提案し、抗凝固に禁忌がある場合は回収可能型を留置して抗凝固が可能になり次第抜去することを確認した。2026-09-16に全文(PMC7556153のHTML)を取り直し、推奨5の但し書きが逐語で「Thrombolysis is reasonable to consider for patients with limb-threatening DVT (phlegmasia cerulea dolens) and for selected younger patients at low risk for bleeding with symptomatic DVT involving the iliac and common femoral veins」「The use of thrombolysis should be rare for patients with DVT limited to veins below the common femoral vein.」であることと、「Primary treatment continues anticoagulant therapy for 3 to 6 months total and represents the minimal duration of treatment for the VTE.」であることを確認した。⚠️ 全文に「14 days」「within 14」は0件で、症状発現からの日数の限定はこのガイドラインには無い(それはATTRACT試験の組入れ基準である)。「経験のある施設」という但し書きも、DVTの推奨5ではなく肺塞栓症のカテーテル的血栓溶解の推奨の側にある閲覧 2026-09-04
  9. 10.Pharmacomechanical Catheter-Directed Thrombolysis for Deep-Vein Thrombosis(The New England Journal of Medicine・2017)抄録に加えて全文(PMC5763501のHTML。Europe PMCのfullTextXMLは404だがブラウザUA付きのPMC HTMLは返る)を確認した。急性の近位DVT(大腿・総大腿・腸骨静脈)692例を無作為化したATTRACT試験で、Methodsの除外基準が逐語で「younger than 16 or older than 75 years of age, were pregnant, had had symptoms for more than 14 days, were at high bleeding risk, had active cancer, had established post-thrombotic syndrome, or had had ipsilateral deep-vein thrombosis in the previous 2 years」であること、6〜24か月の血栓後症候群の発症率が薬理学的機械的カテーテル血栓溶解群47%対対照群48%(リスク比0.96)と差がなかった一方、中等度〜重度の血栓後症候群は18%対24%(リスク比0.73、P=0.04)と少なく、10日以内の大出血は1.7%対0.3%(P=0.049)と多かったことを確認した閲覧 2026-09-16