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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

ベーチェット病

Behçet disease

別名
BDベーチェット症候群
臓器系
免疫・膠原病
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 R-07:小血管炎
上位概念
血管炎
鑑別疾患
Crohn病単純ヘルペスウイルス感染症
合併症
肺動脈瘤深部静脈血栓症大動脈瘤
治療薬
コルヒチンアザチオプリンインフリキシマブアダリムマブアプレミラストシクロホスファミドプレドニゾロンメチルプレドニゾロンシクロスポリンAメサラジンインターフェロンα
症状
関節痛出血皮疹腹痛喀血口内炎外陰部潰瘍前房蓄膿
スコア
国際Behçet病基準

🧠 全体像は、動脈・静脈を問わずあらゆる血管径を侵しうる稀なで、その臨床像は反復性を核に、、皮膚病変、ぶどう膜炎、血管病変、消化管病変、神経病変へと臓器別に広がる。単一の確定的検査はなく、の組合せで診断する。治療は「粘膜皮膚は中心、眼・血管・神経・消化管は臓器を脅かす重症病変として早期に・生物学的製剤」という臓器別の重み付けが2018年EULAR勧告の骨子であり、2025年改訂ではこのうち眼・血管・神経病変への(特に)の早期投入がさらに強化された。1

概要・病態

  • 地中海東岸から東アジアにかけての「シルクロード」沿いにが高い地理的分布を示し、HLA-B51との関連が知られる。
  • 病理学的には血管壁のが特徴で、健常皮膚への軽微な穿刺・注射に対して過剰な炎症反応(丘疹・膿疱)を来すは、好中球の反応性亢進というの病態を反映する所見である。
  • ANCA関連血管炎・IgA血管炎のように血管径が一定のと異なり、細血管から大動脈まで動脈・静脈のいずれも障害しうる点が病態理解の出発点になる。

臨床像

  • 臓器ごとに障害パターンと重症度が大きく異なるため、初発臓器と経過中の新規臓器出現の両方を追う。
臓器 主な所見 特記事項
口腔 反復性(ほぼ必発) 診断の中核所見
(有痛性、瘢痕を残すことがある) 男性は陰嚢、女性はに好発
皮膚 パセルギー陽性を伴うことがある
再発性ぶどう膜炎(前部・後部・ 後部・は失明リスクが高い緊急病態
血管 静脈病変が動脈病変より高頻度。は喀血で致死的
関節 非びらん性の大関節炎・関節痛 通常は変形を残さない
消化管 優位の潰瘍、腹痛、出血・穿孔 Crohn病との鑑別が問題になる(
神経 脳幹優位の実質病変、 実質病変は予後不良因子

⚠️ 後部・は、それぞれ失明・致死的喀血に直結しうる臓器・生命を脅かす病変であり、診断確定を待たず専門科と連携して早期に強力な治療を開始する対象である。

診断

  • 単独で確定できる血液検査・画像検査はなく、の組合せによる分類基準を診断の枠組みとして用いる。国際的に広く使われる(International Criteria for Behçet's Disease, 、2014年)は、を各2点皮膚病変・神経病変・血管病変を各1点として合計4点以上と分類する。は施行した場合に限り陽性で1点を任意加点する(未施行なら加点しない)。旧来の国際研究グループ(ISG、1990年)基準はを必須項目とする方式だったが、が無くても他所見の組合せで分類できる点で感度が高い。2
  • HLA-B51陽性は診断を支持するが、感度・特異度とも診断確定には不十分で、陰性でも否定できない。
  • 注射などによる皮膚穿刺後24〜48時間で丘疹・膿疱形成をみる)は地域差が大きいが、陽性なら診断を後押しする。
  • 口腔病変の見た目だけでは鑑別できないは通常のと形態的に同一の円形・境界明瞭な有痛性潰瘍で、両者を分けるのは所見そのものではなく月数回以上の反復他臓器所見(・パセルギー)の有無である。歯肉を含みやすく多数の小水疱が融合してできるとは、水疱が先行するか、歯肉を侵すか、免疫抑制の有無で区別する。

治療

  • 治療は疾患活動性を一律に扱わず、侵されている臓器と重症度で戦略を分ける。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Behçet disease'>Behçet病</span>の診断"] --> B{"侵されている臓器"}
    B -->|"粘膜皮膚・関節"| C["局所治療+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colchicine'>コルヒチン</span><br>難治例に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>またはTNF阻害薬"]
    B -->|"眼(後部・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panuveitis'>汎ぶどう膜炎</span>)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunosuppressant'>免疫抑制薬</span>を全例併用(GC単独は不可)<br>視力<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor cells'>脅威</span>所見は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span>を早期併用"]
    B -->|"血管(静脈・動脈瘤)"| E["急性期は高用量GC+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary artery aneurysm'>肺動脈瘤</span>は抗凝固単独にしない"]
    B -->|"神経(実質病変)"| F["高用量GC+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span>早期併用<br>維持は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-TNF agent'>抗TNF薬</span>"]
    B -->|"消化管"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-aminosalicylate'>5-ASA製剤</span>/グルココルチコイド、難治例に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-TNF agent'>抗TNF薬</span>"]
  • 粘膜皮膚病変:口腔・には局所グルココルチコイドを第一選択とし、頻回再発例や状を伴う場合はとして用いる。難治性・重症例ではに加え、皮膚粘膜病変に特化した)やTNF阻害薬を検討する。を適応にFDA承認された最初かつ唯一の薬剤で、では投与12週時の潰瘍群22.3%に対し群52.9%だった。3
  • :ぶどう膜炎と診断したらを全例に導入し、グルココルチコイド単独療法にはしない。後部・は全身グルココルチコイドとを軸とするが、視力を脅かす後眼部の重症炎症では、モノクローナル抗TNFα抗体(を優先)を他のと併用して早期から用いる方針が2018年EULAR勧告で示され、2025年改訂ではこの早期併用がさらに強調された。αも選択肢として残る。1
  • 血管病変:急性は抗凝固薬単独ではなく、グルココルチコイド+による免疫抑制を治療の主軸とする。これはの静脈血栓が血管壁の炎症由来で、炎症を制御しないまま抗凝固だけを行っても再発しやすく、合併例では抗凝固が喀血のリスクを高めうるためである。2025年EULAR改訂では急性期の血管病変にを早期から併用し、維持療法としてを継続する方針がより強く推奨されており、最重症例ではを用いる。は免疫を先行させ、必要に応じて外科的・を検討する。1
  • 神経病変:実質病変にはまたはを用いるが、2025年EULAR改訂では眼・血管病変と同様になどの早期併用が支持されている。にはグルココルチコイド+短期のを用いる。1
  • 消化管病変やグルココルチコイドを初期治療とし、難治例・重症例ではまたはを追加する。Crohn病の腸管病変と類似するため、鑑別には全身の他臓器所見(口腔・、パセルギー)を統合する。

まとめ

  • は動脈・静脈を問わないで、反復性を核に眼・血管・神経・消化管など多臓器を侵す。
  • 診断は単一検査ではなくの組合せ(基準:各2点、皮膚・神経・血管病変各1点、パセルギー陽性は任意加点1点、4点以上)による。の見た目だけでは通常のと区別できず、反復パターンと他臓器所見の有無で鑑別する。
  • 後部・は、それぞれ失明・致死的喀血のリスクがある臓器・生命を脅かす病変として早期に強力な治療を要する。
  • 粘膜皮膚病変はが中心だが、眼・血管・神経の重症病変はグルココルチコイド+を基本に、を優先)を早期併用する方針が2025年EULAR改訂でさらに強化された。
  • 血管Behçetの静脈血栓は抗凝固単独ではなく免疫を主軸とし、合併では抗凝固のリスクを個別に判断する。

出典

  1. 1.EULAR recommendations for the management of Behçet's syndrome: 2025 update(European Alliance of Associations for Rheumatology (EULAR)・2025)2018年版からの最大の変更点として、眼病変(特に視力を脅かす後部・汎ぶどう膜炎)・血管病変・神経病変でモノクローナル抗TNFα抗体(インフリキシマブを優先)をより早期から用いる方針が強化されたこと、ぶどう膜炎では免疫抑制薬を全例に用いグルココルチコイド単独治療をしないこと、粘膜皮膚・関節病変では引き続きコルヒチンを第一選択としアプレミラストやTNF阻害薬を難治例の選択肢とすることを確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.The International Criteria for Behçet's Disease (ICBD): a collaborative study of 27 countries on the sensitivity and specificity of the new criteria(International Team for the Revision of the International Criteria for Behçet's Disease・2014)ICBDの配点は眼病変・口腔アフタ・性器アフタが各2点、皮膚病変・神経病変・血管病変が各1点、パセルギーテスト陽性を任意加点(施行した場合のみ)1点とし、合計4点以上でBehçet病に分類することを確認した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.FDA approves apremilast (Otezla) for oral ulcers associated with Behçet's disease(U.S. Food and Drug Administration・2019)アプレミラスト30mg1日2回がBehçet病に伴う口腔潰瘍の適応でFDA承認された初めての治療薬であり、第III相RELIEF試験で12週時の潰瘍完全奏効率がプラセボ22.3%に対しアプレミラスト52.9%だったことを確認した。閲覧 2026-08-02