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Drug Atlas · B29 Immunosuppressants / 免疫抑制薬 · 必修

シクロスポリン

ciclosporin

分類
Immunosuppressants / 免疫抑制薬
商品名(日本)
サンディミュンネオーラル
商品名(EU)
SandimmunNeoral
科目
Pharmacology
トピック
B29: Immunopharmacology II (Inhibitors of cytokine gene expression, 5-ASA derivatives)
承認適応
移植片対宿主病ベーチェット病尋常性乾癬再生不良性貧血赤芽球癆ネフローゼ症候群全身型重症筋無力症アトピー性皮膚炎川崎病
副作用
振戦歯肉増生
監視検査値
クレアチニン
影響検査値
カリウムマグネシウム
相互作用
アトルバスタチンアリスキレンアンブリセンタンイサブコナゾニウムイトラコナゾールエゼチミブエベロリムスオルリスタットカスポファンギンキヌプリスチン/ダルフォプリスチンクラリスロマイシンコール酸ジルチアゼムシンバスタチンタクロリムスダナゾールナルデメジンバシリキシマブピタバスタチンフェニル酪酸ナトリウムブリンシドフォビルペマフィブラートベロトラルスタットポサコナゾールボセンタンボリコナゾールリファキシミンレテルモビルロスバスタチン
対象疾患
Mooren潰瘍Still肺病変Sweet症候群Vogt-小柳-原田病壊疽性膿皮症間質性膀胱炎劇症型痤瘡血球貪食性リンパ組織球症再発性多発軟骨炎春季カタル成人発症Still病中毒性巨大結腸症潰瘍性大腸炎妊娠性類天疱瘡微小変化型ネフローゼ症候群蕁麻疹
原因となる疾患
移植関連血栓性微小血管症化膿性肉芽腫可逆性後頭葉白質脳症痛風

🧠 全体像:はcyclophilinという細胞質蛋白に結合してからを阻害する、(CNI)の元祖である。狙いは一貫して「T細胞に遺伝子を発現させない」ことだが、同じCNIのとは結合する()が違うだけで最終地点は同じ。だから両者の対比は「機序は同じ、副作用の毛色が違う」という形で問われる。腎毒性はCNI共通の弱点であり、有効域が狭いためなしでは使えない。

薬効群の中での位置づけ

は「T細胞の活性化スイッチをどの段階で止めるか」で整理すると全体が一枚の図になる。

段階 機序 代表薬 特徴
①遺伝子発現を止める(カルシニューリン阻害) cyclophilin/FKBP→カルシニューリン阻害→不活化 ・ 腎毒性が共通の弱点。TDM必須
②への反応(増殖)を止める(mTOR阻害) FKBP→mTOR阻害 機序が違うため腎毒性は少ない。創傷治癒遅延
③サイトカインシグナルを止める(阻害) /3阻害 経口低分子。心血管・悪性腫瘍の
③′サイトカイン産生を止める(PDE4阻害) PDE4阻害→↑ 免疫抑制が弱く不要
④リンパ球の移動を止める(S1P調節) S1P受容体調節 初回投与時の徐脈
⑤腸管局所だけで抑える(5-ASA) ・ 全身免疫抑制ではない

⭐ との使い分けは「同じ標的、違う副作用」で覚える。

結合する cyclophilin FKBP12
力価 基準 約10〜100倍強力(用量は少なくて済む)
腎毒性 あり(共通) あり(共通)
特徴的な副作用 ・・高血圧 ()・神経毒性
外用薬 なし あり()

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciclosporin'>シクロスポリンA</span>が細胞内に入る"] --> B["細胞質のcyclophilinに結合"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclosporin'>シクロスポリン</span>-cyclophilin複合体が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcineurin'>カルシニューリン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphatase'>脱リン酸化酵素</span>)を阻害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuclear factor of activated T cells'>NFAT</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dephosphorylation'>脱リン酸化</span>されず<br>細胞質にとどまる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuclear factor of activated T cells'>NFAT</span>が核内へ移行できない"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interleukin-2'>IL-2</span>遺伝子の転写が起こらない"]
    F --> G["T細胞が活性化されず増殖・分化できない"]

💡 は「を作らせない」薬であって、「に反応させない」薬ではない。 この一点が()との違いのすべてで、はが出たあとのを止める。

薬物動態

項目 値・特徴
製剤で大きく異なる。は胆汁分泌に依存しが大きかったが、は吸収が安定し現在の主流
分布 脂溶性が高く広く分布。血球への結合も大きい
代謝 で(腸管の・P糖蛋白の影響も受ける)
排泄 胆汁排泄が主体
半減期 約6〜24時間(が大きい)
モニタリング 有効域が狭いため(C0)またはピーク後2時間値(C2)で血中濃度を追跡する

⭐ 有効域が狭い(narrow therapeutic index)ため、を介した相互作用が即座に毒性・につながる。 ・・は濃度を上げ、リファンピシン・フェニトイン・は濃度を下げる。

適応

領域 使いどころ
移植 腎・肝・心などの臓器移植拒絶予防(導入・維持免疫抑制の中核)
血液 (造血幹細胞を攻撃するを抑える)
皮膚 難治性、難治性(・乾癬性・を含む)。難治性蕁麻疹にも用いられるが、日本の電子添文の効能又は効果には蕁麻疹は挙がっていない1
腎 ・依存性の。成人では、/のに対し、・リツキシマブ・系と並んでが単独や無治療より推奨される( 2021 推奨5.3.1.1、1C)2。小児のでは、またはがの初回選択として推奨される( 2025 推奨1.4.1.1、1C)3
リウマチ・ (のある場合)、および既存治療で効果不十分でのおそれのある活動性の・後部のぶどう膜炎。静注用免疫グロブリン不応(またはその予測)の急性期
神経 後ので、ステロイドが効果不十分または副作用で使いにくい場合
泌尿器 および/または注入に抵抗性のを伴う/(AUA 2022 推奨16、Option・Grade C。日本のではない)
血液・免疫 難治性

⚠️ 「ガイドラインが推奨している」と「承認された適応である」は別物である。 日本の電子添文(ネオーラル)が認めている効能又は効果は、臓器移植(腎・肝・心・肺・膵・小腸)の抑制/のおよびの抑制/(のある場合)およびその他のぶどう膜炎/(皮疹が全身の30%以上または難治性)・・乾癬性・/・/(型あるいは)///細胞移植に伴う免疫反応の抑制である1。⭐ の急性期は剤形で分かれる——この効能を持つのはネオーラル内用液10%だけで、10 mg・25 mg・50 mgのカプセル3剤の効能又は効果には挙がっていない1。⚠️ これは日本の電子添文の記載であり、他国の承認範囲は確認していない。

難治性間質性膀胱炎(Hunner型)への経口投与

米国AUAの2022年ガイドラインは推奨16で、逐語に Oral cyclosporine A may be offered particularly for patients with Hunner lesions refractory to fulguration and/or triamcinolone.(経口を提示してよい。とくにおよび/またはに抵抗性のを有する患者には)と述べ、Option・Grade C としている4。⚠️ “may be offered” は “should be performed” ではない。 Option は「利益と危険・負担の釣り合いがほぼ等しいか不明であるため、実施するかを臨床医と患者の判断に委ねる」な格付けで、同ガイドラインの Standard・Recommendation より弱い。

💡 効くのは「膀胱に炎症病変がある型」である。 3施設の44例をまとめたでは、全体のは59%だったが、のある群では85%(29/34)、病変のない群では30%(3/10)と大きく開いた。さらに群の29例のうち6例が有害事象で中止しており、最終的な成功率は68%(23/34)になる4。⚠️ この数値は後ろ向き観察研究のもので、ではない。

⚠️ 有害事象の頻度が高い。 を対照とした無作為化試験(本剤3 mg/kg/日 分2)では、6か月後に臨床的に意味のある改善を示したのが本剤群75%・対照群19%だった一方、有害事象の発現率は本剤群94%・対照群56%で、本剤群の重篤な有害事象3件はと上昇だった4。観察研究での有害事象発現率は30〜55%で、内訳は高血圧・・顔面の——この薬の代表的な副作用がそのまま現れる。

⚠️ 監視項目をガイドラインが名指ししている。 「本剤を服用する患者は、とくに腎機能と血圧について厳重な監視を受けるべきである」とし、監視プロトコルには肝毒性・・低血症・血液学的異常・悪性腫瘍(とくにとリンパ腫)のリスクも織り込むべきだとしている4。

用法・用量

適応で用量は大きく異なる。移植ではに高めの用量から開始し、を指標に減量していく。自己免疫疾患(乾癬・など)では2.5〜5 mg/kg/日をし、腎機能・血圧を見ながら調整する。Sandimmun原末からNeoralなど生物学的同等性が保証されていない製剤への切り替えは、血中濃度が変動するため慎重に行う。実際の用量は適応・年齢・体重・腎肝機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 日本の電子添文(ネオーラル)の禁忌は、疾患ではなく「併用している薬」で立っている。1 4項目のうち3項目が併用薬の規定である。

禁忌 理由
本剤の成分に対する過敏症の既往 —
(を除く)・ピタバスタチン・・・アリスキレン・ペマを投与中 いずれも相手薬の血中濃度が上昇して副作用が増強する。は本剤の濃度も上げ腎障害が相互に増強する。⚠️ だけは逆で、の濃度がする一方、本剤の血中濃度は約50%低下したという報告がある(がを誘導するため)
肝臓または腎臓に障害のある患者でを服用中 ⚠️ 中毒。肝腎障害という条件が付いた禁忌で、肝腎機能が保たれていれば併用注意にとどまる
生ワクチンを接種しないこと 免疫抑制下でが増殖し病原性をあらわしうる
  • ⚠️ スタチンとの相互作用は「注意」ではなく禁忌の水準に達する薬がある。 本剤はOATP1B1などの輸送体を阻害してスタチンの血中濃度を上げ、・のリスクを高める。これはを介さない別経路の相互作用で、などで代謝されるスタチンでは両経路が重なる。日本の電子添文はピタバスタチン(Cmax 6.6倍・ 4.6倍)と(Cmax 10.6倍・ 7.1倍)をに置いており、「注意」では済まない水準に達している1
  • ⚠️ 阻害薬(・・)との併用は血中濃度を上げ腎毒性を増強する。 逆に(リファンピシン・フェニトイン・)は濃度を下げのリスクを高める
  • ⚠️ との併用は禁忌である(を除く)。同じどうしで、本剤の代謝が阻害されるうえ腎障害などの副作用が相互に増強される1
  • 慎重投与:腎機能低下例(腎毒性がされる)、コントロール不良の高血圧、悪性腫瘍の既往
  • ⚠️ 療法を含むとの併用は発現のリスクを高めるため、やむを得ず併用するときは・の有無を定期的に観察する1
  • 長期使用で・のリスクが上がる

副作用

頻度 内容
高頻度 ・、高血圧、振戦、消化器症状
注意 (クレアチニン上昇)、高カリウム血症、低血症、脂質異常、・の美容的負担による低下
重篤・まれ 慢性腎障害への進行、、(PRES)、・

まとめ

  • の元祖。cyclophilinに結合してを阻害し、のを止めて遺伝子の転写を止める。
  • とは「同じ標的・違う副作用」:は・・高血圧、は・神経毒性が特徴的。
  • 腎毒性はCNI共通の弱点で、有効域が狭く(C0)またはでのモニタリングが必須。
  • 阻害薬(・マクロライド・)で血中濃度が上昇し、で低下する。narrow therapeutic indexゆえに相互作用がそのまま毒性・に直結する。
  • OATP1B1阻害を介してスタチンの血中濃度も別経路で上げる。
  • 予防だけでなく、・難治性・・など自己免疫疾患にも広く使われる。日本の電子添文では急性期の効能を持つのは内用液10%だけで、カプセル3剤には無い。
  • ⚠️ 禁忌は疾患ではなく併用薬で立っている(日本の電子添文)——(を除く)・ピタバスタチン・・・アリスキレン・ペマ、肝腎障害例での、生ワクチン。スタチンとの相互作用は「注意」ではなく禁忌の水準に達するものがある。
  • /では、/注入に抵抗性のに対してが AUA 2022 推奨16 で Option・Grade C とされる。はの有無で85%と30%に分かれるが、有害事象の発現率が高く、腎機能・血圧の厳重な監視を要する。
  • ()との違いは「を作らせない(CsA)」vs「に反応させない()」。

出典

  1. 1.ネオーラル内用液10%/ネオーラル10mgカプセル/ネオーラル25mgカプセル/ネオーラル50mgカプセル 電子添文(医薬品医療機器総合機構(ノバルティスファーマ)・2026)電子添文の全文(2026年5月改訂・第4版、YJコード 3999004M3021ほか)を取得して確認した。効能又は効果がカプセル3剤では臓器移植(腎・肝・心・肺・膵・小腸)の拒絶反応抑制、骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制、ベーチェット病(眼症状のある場合)及びその他の非感染性ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分であり視力低下のおそれのある活動性の中間部又は後部のものに限る)、尋常性乾癬(皮疹が全身の30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症・乾癬性関節炎、再生不良性貧血・赤芽球癆、ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合)、全身型重症筋無力症(胸腺摘出後の治療においてステロイド剤の投与が効果不十分又は副作用により困難な場合)、アトピー性皮膚炎(既存治療で十分な効果が得られない患者)、細胞移植に伴う免疫反応の抑制であること。⚠️ 川崎病の急性期(重症であり冠動脈障害の発生の危険がある場合)はネオーラル内用液10%の効能又は効果にのみ挙がり、カプセル3剤には挙がっていないこと。蕁麻疹は効能又は効果に挙がらず、全文で蕁麻疹が現れるのは川崎病の国内第III相試験の主な副作用(3.4%)としてのみであること。禁忌が4項目で、(1)成分過敏症、(2)タクロリムス(外用剤を除く)・ピタバスタチン・ロスバスタチン・ボセンタン・アリスキレン・ペマフィブラートを投与中の患者、(3)肝臓又は腎臓に障害のある患者でコルヒチンを服用中の患者、(4)生ワクチンを接種しないこと——であること。10.1併用禁忌にピタバスタチンでCmax 6.6倍・AUC 4.6倍、ロスバスタチンでCmax 10.6倍・AUC 7.1倍の上昇が記載され横紋筋融解症等の重篤な副作用のおそれが挙げられていること。10.2併用注意にPUVA療法を含む紫外線療法が皮膚癌発現のリスクを高めるとして挙がっていること。全文に「間質性膀胱炎」「膀胱」の語が0回であること。日本の電子添文の記載であり、他国の承認範囲は確認していない閲覧 2026-09-14
  2. 2.KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases(KDIGO・2021)全文PDF(Kidney International 2021;100:S1–S276)を取得して逐語確認した。Recommendation 5.3.1.1 は「We recommend cyclophosphamide, rituximab, CNIs, or mycophenolic acid analogs (MPAA) for the treatment of frequently relapsing/steroid-dependent MCD, rather than prednisone alone or no treatment (1C)」であり、成人の頻回再発/ステロイド依存性の微小変化型ネフローゼ症候群に対しカルシニューリン阻害薬を4つの選択肢の1つとして推奨している。最適な二次選択薬は定まっておらず、有効性・副作用・治療期間・費用と患者の希望で選ぶとしている。閲覧 2026-09-07
  3. 3.KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Nephrotic Syndrome in Children(KDIGO・2025)全文PDFを取得して逐語確認した。Recommendation 1.4.1.1 は「We recommend using cyclosporine or tacrolimus as initial second-line therapy for children with steroid-resistant nephrotic syndrome (1C)」であり、小児のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に対してカルシニューリン阻害薬を二次治療の初回選択として推奨している。⚠️ 本推奨は組織型に一言も触れていないので、組織型別の限定をこの出典に帰属させない。閲覧 2026-09-07
  4. 4.Diagnosis and Treatment of Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome(American Urological Association・2022)ガイドライン本文(表示は「Published 2011; Amended 2014, 2022」、誌上版は J Urol 2022;208(1):34-42)を自分で取得して逐語確認した。推奨16が「Oral cyclosporine A may be offered particularly for patients with Hunner lesions refractory to fulguration and/or triamcinolone.」で格付けが Option(Evidence Strength: Grade C)であること。Option の定義が「non-directive statements that leave the decision to take an action up to the individual clinician and patient because the balance between benefits and risks/burdens appears relatively equal or appears unclear」であること。3施設44例をまとめた後ろ向き研究で全体の奏効率が59%、Hunner病変のある群が85%(29/34)、病変のない群が30%(3/10)であり、Hunner病変群の29例のうち6例が有害事象で中止して最終的な成功率が68%(23/34)になること。ペントサンポリ硫酸を対照とした無作為化試験(本剤3 mg/kg/日 分2)で6か月後の臨床的に意味のある改善が本剤群75%・対照群19%、有害事象発現率が本剤群94%・対照群56%、本剤群の重篤な有害事象3件が血圧上昇と血清クレアチニン上昇であったこと。観察研究での有害事象発現率が30〜55%で高血圧・歯肉増生・顔面の多毛を含むこと。本文が「Patients taking CyA should have close monitoring, especially for renal function and blood pressure. A monitoring protocol should also take into account the risks of hepatotoxicity, hyperuricemia, hypomagnesemia, hematologic abnormalities and malignancies, especially skin cancer and lymphomas.」と述べていること閲覧 2026-09-14