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Disease Atlas · 消化器 · 症候群

中毒性巨大結腸症

Toxic megacolon

別名
中毒性巨大結腸Toxic colonic dilation
臓器系
消化器感染症
科目
PathophysiologyInternal MedicineSurgery
トピック
病態生理学 2-2:消化管:炎症性腸疾患内科学 S-31:クロストリディオイデス・ディフィシル感染症外科学 S-21:潰瘍性大腸炎の外科的側面外科学 A/09:イレウス(腸閉塞)の診断と治療
鑑別疾患
イレウス・腸閉塞先天性巨大結腸症
合併症
腹膜炎・消化管穿孔敗血症
治療薬
バンコマイシンメトロニダゾールヒドロコルチゾンインフリキシマブシクロスポリン
原因薬剤
ロペラミドモルヒネスコポラミン(デクス)イブプロフェン
原因微生物
Clostridioides difficile
症状
腹部膨満腹痛発熱頻脈意識変容
検査値
血算アルブミン乳酸
画像所見
腹腔内遊離ガス
原因となる疾患
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症潰瘍性大腸炎

🧠 全体像は「大腸の炎症が壁深部まで及び、腸管の神経筋機能そのものが破綻した」状態であり、大腸拡張という画像所見だけでは診断もも決まらない点が理解の核心になる。診断は画像所見(非閉塞性の大腸拡張>6 cm)+全身毒性(発熱・頻脈・・貧血のうち3つ以上)+重症徴候(意識変容・低血圧など)の3要素で確定する臨床診断であり、二大原因はなどのである。緊急疾患で、・オピオイド・・NSAIDsの中止と外科への談が、穿孔・敗血症への進展を防ぐ生命線になる。

病態

の炎症が壁深部・筋層まで及ぶと、と細菌産物がの発現を誘導し、平滑筋の弛緩と進行性の神経筋機能不全を介して大腸壁の緊張が失われる。この神経筋の麻痺そのものが非閉塞性の大腸拡張を生む——機械的な閉塞(腫瘍や癒着によるイレウス・腸閉塞)とは機序がまったく異なる点が、イレウス・腸閉塞先天性との鑑別で重要になる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonic mucosa'>大腸粘膜</span>の重症炎症<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>・C. difficile感染症など)"] --> B["炎症が壁深部・筋層へ進展"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory mediator'>炎症性メディエーター</span>・細菌産物が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='iNOS'>一酸化窒素合成酵素</span>を誘導"]
    C --> D["平滑筋の弛緩・神経筋機能不全"]
    D --> E["非閉塞性の大腸拡張<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse colon'>横行結腸</span>径 6 cm超が目安)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut wall'>腸管壁</span>の菲薄化・虚血"]
    F --> G["穿孔・壊死"]
    G --> H["腹膜炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic shock'>敗血症性ショック</span>"]

⚠️ ・オピオイド・・NSAIDsは、腸管運動をさらに抑制し、あるいは炎症・徴候を隠蔽することで病態を悪化させる。 症状の緩和を目的にこれらを投与することは、拡張の進行や穿孔徴候の見逃しに直結するため避ける。

臨床像

  • 腹部膨満・圧痛、発熱、頻脈、意識変容、腸雑音の低下・消失を認める。血性下痢が先行していた患者で、急に便回数が減ることは症状改善ではなく麻痺性拡張への移行を示唆しうる。
  • ステロイド投与中の患者では、などの症状が隠蔽されやすく、典型的な腹膜炎所見を欠いたまま穿孔が進行することがある。ステロイド使用中の症例で悪化があれば、所見の乏しさを理由に手術を遅らせない。
  • が全体の約48%を占めの8〜10%・Crohn大腸炎の約2.3%に合併し、急性重症に限れば約5%に生じる1
  • 感染性の原因としてはC. difficile感染症が最多であり、その頻度は1990年以前の0.4%から1990年以降4.3%へ上昇している1——の使用増加を背景とした劇症型C. difficile感染症の増加を反映すると考えられる。

診断

Jalan criteriaとして知られる3要素をすべて満たして臨床診断する1

要素 内容
①画像所見 を中心とする非閉塞性大腸拡張 6 cm超
②全身毒性(3つ以上) 発熱>38℃、頻脈>120/分、白血球>10,500/µL、貧血
③重症徴候(1つ以上) 意識変容、低血圧、、電解質異常
  • が第一選択の画像検査。穿孔が疑われる場合、を呈する場合、単純X線で判断がつかない場合はCTを行う。 を認めれば穿孔と診断し、緊急手術の適応となる。
  • 内視鏡的な全大腸検査(・注腸造影)は穿孔リスクを高めるため禁忌——診断のために無理に施行しない。

治療

外科へ直ちに相談することを治療の起点とし、内科的管理と並行して手術のタイミングを判断する。

  • 一般的な内科的管理:ICU相当での管理、輸液・・オピオイド・・NSAIDsの中止(穿孔・感染合併を想定)。
  • C. difficile感染症が原因の場合:高用量経口/経管バンコマイシン(500 mgを1日4回)+静注メトロニダゾールを投与し、イレウスでが届かない場合は直腸内バンコマイシンを検討する。
  • などが原因の場合:静注100 mgを6時間ごとに投与する。day 3までに反応不十分ならまたはによる救済療法と手術を並行して検討する。
  • 内科的管理は約半数の患者でするが、残りは手術を要する1
  • 手術適応:穿孔、壊死・虚血、亢進・、腹膜炎徴候、内科的治療(ステロイド3日+救済療法3日など)に反応しない病態の悪化、臓器不全1。緊急手術ではを基本とし、な吻合・骨盤操作は避ける。

⚠️ 手術を遅らせるほど死亡率は上がる。 C. difficile関連のでは、に至る前のが死亡率を45%から21%へ低下させたと報告されている1率は7.9%と報告され2、手術死亡率は2〜8%だが穿孔を伴えば40%以上、劇症感染では最大80%に達し、関連(・介入下)では0〜2%にとどまる1——この差の大部分は「どれだけ早く手術に踏み切れたか」で説明できる。

まとめ

  • は、大腸炎の炎症が壁深部へ及び神経筋機能が破綻して生じる非閉塞性の大腸拡張+全身毒性の臨床診断で、によるイレウス・先天性症とは機序が異なる。
  • 二大原因は(全体の約48%)とC. difficile感染症(感染性の原因として最多)。
  • 診断は画像(拡張>6 cm)+全身毒性徴候3つ以上+重症徴候1つ以上のJalan criteriaで確定する。内視鏡的全大腸検査は穿孔リスクのため避ける。
  • ・オピオイド・・NSAIDsを中止し、外科へ直ちに相談することが治療の起点。内科的管理は約半数でするが、穿孔・壊死・腹膜炎徴候・治療抵抗性があれば緊急手術()に進む。
  • が死亡率を大きく左右する——判断を先延ばしにするほど穿孔・のリスクが上がる。

出典

  1. 1.Toxic Megacolon(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)中毒性巨大結腸症の診断基準(Jalan criteria)は、①横行結腸を中心とする6 cm超の非閉塞性大腸拡張の画像所見、②発熱>38℃・頻脈>120/分・白血球>10,500/µL・貧血のうち3つ以上、③意識変容・低血圧・循環血液量減少・電解質異常のうち1つ以上——の3要素をすべて満たすこと。炎症性腸疾患が全体の約48%を占め、潰瘍性大腸炎の8〜10%・Crohn大腸炎の約2.3%に合併し、急性重症潰瘍性大腸炎に限れば約5%に生じる。Clostridioides difficile感染症は感染性の原因として最多で、その頻度は1990年以前の0.4%から1990年以降4.3%へ上昇した。内科的管理は止瀉薬・オピオイド・抗コリン薬の中止、広域抗菌薬、C. difficile関連では高用量経口バンコマイシン、重症潰瘍性大腸炎ではヒドロコルチゾン100 mgを6時間ごとに投与し、約50%で奏効する。手術適応は穿孔・壊死・腹腔内圧亢進/腹部コンパートメント症候群・腹膜炎徴候・治療抵抗性・臓器不全。死亡率は炎症性腸疾患関連で0〜2%、劇症感染で最大80%、穿孔合併で40%以上(術後は2〜8%)。C. difficile関連中毒性巨大結腸症では敗血症性ショックに至る前の早期手術が死亡率を45%から21%へ低下させた。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Toxic megacolon: a potentially lethal condition. Case report(Journal of Surgical Case Reports・2024)中毒性巨大結腸症全体の院内死亡率は最大7.9%に達しうる。閲覧 2026-08-10