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Disease Atlas · 消化器 · 症候群

蛋白漏出性胃腸症

Protein-losing enteropathy

別名
PLE
臓器系
消化器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-29:吸収不良と消化不良内科学 G-02:小腸疾患・吸収不良・消化不良内科学 G-01:食道・胃疾患
鑑別疾患
ネフローゼ症候群肝硬変
症状
浮腫腹水下痢
検査値
アルブミンリンパ球減少血清免疫グロブリン
原因となる疾患
腸リンパ管拡張症

🧠 全体像は単一の疾患ではなく、消化管からが漏れ出る速度が肝での産生を上回った状態を指す症候群である。低アルブミン血症の原因として(腎からの喪失)や肝硬変(産生低下)と並んで鑑別に挙がるが、を見分ける鍵は機序が3通りに分かれることと、そのうちリンパ管閉塞型だけがアルブミンに加えてリンパ球・免疫グロブリンまで一緒に失わせるという一点にある。だからこそこの型ではの浮腫だけでなく、による易感染性という別種の問題が前景に立つ。

病態:3つの機序

蛋白漏出の機序は、障害される腸管の部位と性状によって3群に整理できる1

機序 代表疾患 特徴
粘膜のびらん・潰瘍 Crohn病)、消化管悪性腫瘍、消化性潰瘍のびらん 蛋白が血漿成分ごと創面から滲出する
非びらん性の粘亢進 セリアック病 上皮間の破綻などで蛋白が漏れる
リンパ管閉塞・間質圧上昇 原発性、Fontan循環、右心不全 アルブミンだけでなくリンパ球・免疫グロブリンも喪失

リンパ管閉塞型が特別なのは、失われるものの中身が違うからである。 びらん型・透過性亢進型は血漿成分全般が漏れるがリンパ系そのものは保たれるのに対し、リンパ管閉塞型では拡張・破綻した腸リンパ管から蛋白に富むリンパ液そのものへ漏出するため、リンパ球・免疫グロブリンまで一緒に失われる2。この経路はを来し、感染・敗血症のリスクを高める2

flowchart TD
    A["消化管からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein loss'>蛋白喪失</span>が肝産生を上回る"] --> B{"機序は?"}
    B -->|"粘膜のびらん・潰瘍"| C["IBD・消化管悪性腫瘍・消化性潰瘍"]
    B -->|"非びらん性の透過性亢進"| D["セリアック病・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloidosis'>アミロイドーシス</span>など"]
    B -->|"リンパ管閉塞・間質圧上昇"| E["原発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal lymphangiectasia'>腸リンパ管拡張症</span>・Fontan循環・右心不全"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoalbuminemia'>低アルブミン血症</span>・浮腫・腹水"]
    D --> F
    E --> F
    E --> G["リンパ球・免疫グロブリンも同時に喪失"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphopenia'>リンパ球減少</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogammaglobulinemia'>低ガンマグロブリン血症</span>"]
    H --> I["易感染性"]

臨床像

アルブミン血症を反映する浮腫腹水・胸水がで、原因によって下痢・腹痛を伴う。リンパ管閉塞型では反復する感染症、原発性では小児期からのを契機に発見されることもある。Fontan循環に伴うは、術後数年〜数十年を経て顕在化することが多く、いったん発症すると予後不良因子になる。

診断

アルブミン血症を認めたら、まず腎性(:蛋白尿)と肝性(肝硬変:産生低下)の喪失経路を除外し、消化管からの喪失を疑う。

  • 24時間便中α1-アンチクリアランス:α1-アンチは消化管内でほとんど分解されないであるため、便中への排泄増加が消化管蛋白漏出の直接的な指標になる1
  • テクネシウム99m標識ヒト:便中α1-アンチクリアランスの代替・補完検査で、漏出部位の局在評価にも用いられる1
  • リンパ管閉塞型を疑う所見(血清免疫グロブリン低下を伴う)があれば、内視鏡生検や画像検査で原発性・Fontan循環関連の病態を積極的に検索する。

治療:原疾患の治療が主体

そのものに対する特異的な薬物治療はなく、原疾患の治療が管理の中心になる1

  • 肥厚に伴う漏出で、内科的治療に抵抗する重症例では胃切除を要することがある。
  • 原発性:低脂肪・(MCT)食がによるリンパ管拡張の助長を避ける基本的なになる。
  • :原発性では、リンパ管圧を下げて腸管からの蛋白漏出を減らす効果が報告されている1
  • Fontan循環関連:上昇そのものが病態の根幹であるため、血行動態の最適化(・不整脈管理など)やリンパ管への介入的治療(リンパ管造影下塞栓術など)が、対症的なアルブミン補充にとどまらない病態生理に基づく治療として位置づけられる2
  • SLE関節リウマチなど)に伴う場合は、原疾患の免疫を強化する。

まとめ

  • は単一疾患ではなく、消化管からのが産生を上回った状態を指す症候群であり、機序は粘膜のびらん・潰瘍、非びらん性の透過性亢進、リンパ管閉塞・間質圧上昇の3つに大別される。
  • リンパ管閉塞型だけがアルブミンに加えリンパ球・免疫グロブリンも喪失し、と易感染性を来す——原発性・Fontan循環・右心不全がこの型の代表である。
  • 診断は24時間便中α1-アンチクリアランスが中心で、テクネシウム99m標識ヒトが局在評価を兼ねた代替検査になる。
  • 治療は原疾患(・原発性・Fontan循環・など)ごとに異なり、Fontan循環関連では血行動態の最適化やリンパ管への介入的治療が病態生理に基づく治療として重要になる。

出典

  1. 1.Protein-Losing Enteropathy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)蛋白漏出性胃腸症の機序は、胃・十二指腸などのびらん・潰瘍による漏出、セリアック病やアミロイドーシスなど粘膜透過性亢進によるびらんを伴わない漏出、原発性腸リンパ管拡張症やFontan術後・右心不全・収縮性心膜炎など間質圧上昇・リンパ管閉塞による漏出の3つに大別されること、診断は24時間便中α1-アンチトリプシンクリアランスが主な検査でありテクネシウム99m標識ヒト血清アルブミンシンチグラフィが代替検査となること、原疾患(メネトリエ病・原発性腸リンパ管拡張症・Fontan術後・混合性結合組織病やSLE・RAなどの膠原病を含む)の治療が主体であること、オクトレオチドは原発性腸リンパ管拡張症とメネトリエ病でリンパ管圧を下げ腸管からの蛋白漏出を減らす効果があるとされていること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Protein-losing enteropathy in Fontan circulation: Pathophysiology, outcome and treatment options of a complex condition(International Journal of Cardiology Congenital Heart Disease・2022)Fontan術後の蛋白漏出性胃腸症は中心静脈圧上昇に伴う肝・門脈系からのリンパ産生増加がリンパ管うっ滞とリンパ管拡張を来し、蛋白に富むリンパ液が慢性的に腸管腔へ漏出することで生じること、この経路では低ガンマグロブリン血症とリンパ球減少を来し感染・敗血症のリスクを高めること、治療は病態生理に応じた血行動態の最適化やリンパ管への介入的治療を含み対症療法にとどまらないこと閲覧 2026-08-11