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Symptoms · Published

脂肪便

Steatorrhea

別名
脂肪性下痢
臓器系
消化器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-29:吸収不良と消化不良
関連疾患
小腸内細菌異常増殖

🧠 全体像は、脂肪が口から吸収されて管に入るまでの一連の過程——(胆汁酸によるによる分解)、②粘膜吸収(からの取り込み)、③リンパ輸送——のどこが破綻しても起こる1。原因を臓器名で覚えるのではなく、この3段階のどこで止まっているかで整理すると、検査の選び方(か、内視鏡生検か、画像か)が自然に決まる。

定義と用語の整理

患者は「便が油っぽい」「便器に浮く」「水で流れにくい」「悪臭が強い」と表現する。初期は軽微で見過ごされやすく、単なる下痢として語られることも多い。

な訴えだけの症候ではなく、数値で定義される。 確定診断は72時間便中脂肪定量で、通常の食事条件下で1日あたりの糞便脂肪排泄量が24時間換算で7gを超えると異常)と判定される1。この定量値そのものがであり、便の性状の記載だけでは診断が確定しない。単回の便性状だけでなく、体重減少や欠乏の随伴症状の有無を併せて聴取する。

病態生理:3段階のどこで止まっているか

段階 代表原因 機序の要点
によるなど)、胆汁うっ滞 不足、または胆汁酸不足での材料そのものが足りない
(細菌性) 異常増殖した細菌が胆汁酸をし、を妨げる2
②粘膜吸収 セリアック病Crohn病 絨毛障害・炎症で吸収面積そのものが減る
③リンパ輸送 管の閉塞・拡張でが運べない

同じ「」でも、①は・画像、②は内視鏡生検・血清学、③はリンパ系の評価というように、段階によって次に進む検査が変わる。 (FE-1)は72時間便中脂肪定量より簡便な代替検査で、200 μg/g未満で異常、100 μg/g未満でを示唆、50 μg/g未満は重症例に特異的とされる。ただしの影響は受けない一方、では希釈によりになるため半固形〜固形便で測定する3

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ が続くとA・D・E・K欠乏を来す1。ビタミンKで、ビタミンDで骨疾患、、ビタミンEで末梢神経障害・失調が生じうる。そのものより先に、これらの欠乏症状で医療機関を受診する例もある。

⚠️ 中高年での新規発症・体重減少を伴うは、を来すを鑑別に含める。の既往だけで説明しようとしない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steatorrhea'>脂肪便</span>を疑う訴え"] --> B["便スーダンIII染色でスクリーニング"]
    B --> C{"陽性か"}
    C -->|"陰性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steatorrhea'>脂肪便</span>以外の原因を再検討"]
    C -->|"陽性"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal elastase'>便エラスターゼ</span>、または72時間便中脂肪定量"]
    E --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal elastase'>便エラスターゼ</span>低値<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic insufficiency'>膵外分泌不全</span>を示唆)"}
    F -->|"はい"| G["画像検査で膵疾患を評価"]
    F -->|"いいえ"| H{"セリアック病を疑う所見か"}
    H -->|"はい"| I["セリアック血清学→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duodenal biopsy'>十二指腸生検</span>"]
    H -->|"いいえ"| J["SIBO呼気試験・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease, IBD'>炎症性腸疾患</span>精査など病歴別に進める"]

対症療法の考え方

原疾患の治療(除去食、SIBOの抗菌薬治療など)が中心だが、原因を問わずA・D・E・Kの補充は共通して検討する。極端なをさらに悪化させうるため、症状に応じた調整にとどめる。

まとめ

  • ・粘膜吸収・リンパ輸送の3段階のどこが破綻しても起こる。
  • SIBOでは細菌による胆汁酸のを妨げ、の破綻としてを来す。
  • 診断はスーダンIII染色によるスクリーニングから、または72時間便中脂肪定量へ進める。
  • A・D・E・K欠乏を見逃さない。体重減少を伴う新規発症はも鑑別に含める。
  • 対症的にはの補充を共通して行い、根本治療は原疾患ごとに異なる。

出典

  1. 1.Steatorrhea(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Pathophysiology節で脂肪吸収に胆汁酸・膵消化酵素・正常な小腸粘膜が必要でこのいずれかが欠けると脂肪便が生じること、過程が胆汁酸による乳化と膵リパーゼによる分解・ミセル形成と小腸粘膜での吸収・リンパ輸送の3段階からなること、Evaluation節でスーダンIII染色による便脂肪染色が初期スクリーニングで72時間便中脂肪定量(24時間換算7gを超えると異常)が確定検査、便エラスターゼは200 mcg/g以上が正常であること、脂肪吸収不全に伴いビタミンA・D・E・K欠乏が生じることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Small Intestinal Bacterial Overgrowth(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)小腸内細菌異常増殖では異常増殖した細菌が胆汁酸を脱抱合しミセル形成を妨げることで脂肪吸収不良を招き体重減少・下痢・脂溶性ビタミンA/D/K欠乏を来すこと、ビタミンB12は低下する一方細菌が産生する葉酸は正常〜高値になることを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Exocrine Pancreatic Insufficiency(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)72時間便中脂肪定量が脂肪便診断のゴールドスタンダードだが手間と時間を要すること、糞便エラスターゼ-1が非侵襲的で膵酵素補充療法の影響を受けない実用的な代替検査であり200 μg/g未満で異常・100 μg/g未満で膵外分泌不全を示唆・50 μg/g未満は重症例に特異的であること、水様便では希釈により偽低値になるため半固形〜固形便で測定すべきことを確認した閲覧 2026-08-11