検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

免疫グロブリン定量

Serum immunoglobulin levels

別名
血清免疫グロブリンIgG・IgA・IgM定量
臓器系
免疫・膠原病
科目
Immunology
トピック
免疫学 6.2:免疫不全
関連疾患
蛋白漏出性胃腸症腸リンパ管拡張症

🧠 全体像は、IgG・IgA・IgMを単独ではなく組み合わせて読むパネル検査である。1項目の異常値ではなく、「どのクラスがどう動くか」というパターンの切り分けに直結する——全クラスが揃って低下するのか、IgAだけが欠けるのか、IgGだけが低くIgMは保たれる(あるいは高い)のか、単クローン性に増えるのか。この型読みさえ押さえれば、乳児期の生理的な低下から成人発症のまで一枚の地図に整理できる。もう一つの軸は年齢である——母体移行IgGが減衰する乳児期には生理的ながあり、成人のをそのまま乳児に当てはめて低値と判定しない。さらに、免疫グロブリン値だけで不全を確定してはならず、ワクチン抗原への抗体応答(機能評価)と対で見ることが診断の要になる。

何を測っているか

血清免疫グロブリンは、B細胞が抗原刺激を受けて分化した形質細胞が産生する。クラス()ごとに主な役割が異なる。

クラス 主な役割
IgG 血中で最も多い抗体クラス。(新生児の受動免疫)
IgA 粘膜面(気道・消化管)での局所防御の中心
IgM で最初に産生される抗体、能が強い

は、これらのクラスの産生量を反映するが、機能(実際に病原体を認識し中和できるか)までは保証しない。この限界を補うのがワクチン抗体応答である(後述)。

基準値と単位

単位はmg/dL。⭐ 年齢が必須である。

  • 乳児期: 胎盤を通過した母体由来のIgGが減衰する一方、乳児自身のIgG産生はまだ立ち上がっていないため、生後3〜6か月ごろに生理的の谷ができる。これは病的意義を持たない正常な経過である1
  • 生後6か月を過ぎてもIgG値が年齢平均より2SD以上低いまま持続する場合をいい、生理的な谷との違いは持続期間にある。多くは2〜6歳までに自然にへ回復する1
  • 成人: 年齢とともに上昇し思春期以降に成人に達する。成人のをそのまま乳児・幼児に適用すると、生理的な低値を病的と誤判定する。

高値の意味 / 低値の意味

「どのクラスがどう動くか」のパターンでを切り分ける。

パターン 代表疾患 機序
全クラス(IgG・IgA・IgM)低下 X連鎖無血症(XLA) XLAはからの分化停止(B細胞そのものが存在しない)、CVIDはB細胞は存在するが形質細胞への最終分化ができない
IgA単独低下(他クラスは正常) B細胞の部分的障害。の中で最も頻度が高い(多くは無症候性)
IgG低下+IgMは正常〜高値 T細胞のCD40Lが欠損しB細胞のCD40と結合できないためが起こらない
IgE高値 高IgE症候群 STAT3等の変異によるTh17分化障害を背景に、易感染性・湿疹・IgE著増を来す
単クローン性の増加(M蛋白) ・MGUS 単一クローンの形質細胞が単一クラス・単一軽鎖型の免疫グロブリンを過剰産生する

💡 表の上2段(全クラス低下・IgA単独低下)はの産生量そのものが落ちる病態、という一段階だけが止まる病態、単クローン性増加は腫瘍性形質細胞による過剰産生という、機序のレベルが異なる3系統として理解すると整理しやすい。

⚠️ 測定上の注意

  • 免疫グロブリン補充療法中は評価できない。 静注・された外因性のIgGが測定値に加算されるため、補充療法中のIgG値は患者自身の産生能を反映しない。補充療法の適応判断は、治療開始前の値と臨床経過(感染頻度)で行う。
  • 二次性の低下を除外する。 など性の病態では、免疫グロブリンも喪失するため二次性に低値となる。・HIV感染症など既知の二次性原因を除外したうえでを疑う2
  • IgGサブクラス(IgG1〜4)は別項目である。 総IgG値が正常でも特定のサブクラスだけが欠損する例があり、疑う場合は別途サブクラス測定を依頼する。

経時変化とモニタリング

ワクチン抗体応答(機能評価)と対で見ることが診断の要である。 免疫グロブリン値は産生「量」を示すにすぎず、実際に病原体を認識・中和できる「機能」を保証しない。不全のスクリーニングでは、血清免疫グロブリン値・血清特異に加えて追加接種()への抗体応答を組み合わせて評価することが標準的なアルゴリズムに組み込まれている3。免疫グロブリン値が境界域でも、ワクチン抗原への特異抗体反応が良好であれば不全は否定的に傾き、逆に値が正常でも抗体応答が不良なら特異抗体産生不全症などを疑う。

まとめ

  • はIgG・IgA・IgMを組み合わせて読むパネル検査で、「どのクラスがどう動くか」というパターンがの切り分けに直結する。
  • 全クラス低下(XLA・CVID)、IgA単独欠損(最多の)、IgG低下+IgM正常〜高値()、IgE高値(高IgE症候群)、単クローン性増加(・MGUS)という代表的パターンを覚える。
  • 年齢が必須で、乳児期は母体移行IgGの減衰による生理的があり、成人基準で判断しない。
  • 免疫グロブリン補充療法中は評価できず、蛋白の病態による二次性低下を除外する。IgGサブクラスは別項目である。
  • ワクチン抗体応答(機能評価)と対で見ることが診断の要であり、産生量(免疫グロブリン値)だけで不全を確定しない。

出典

  1. 1.Diagnostic criteria: Common Variable Immunodeficiency (CVID)(European Society for Immunodeficiencies (ESID)・2014)液性免疫不全の「ほぼ確実(probable)」基準が年齢平均より2SD以上のIgG低下に加えIgAまたはIgMの少なくとも一方の2SD以上の低下を前提とすること(年齢調整済み基準値で判定する必要性)、判定にはワクチン抗原への特異抗体反応不良または同種血球凝集素の欠如という機能的評価を併せて確認する必要があること、低ガンマグロブリン血症の既知の原因(蛋白喪失性腸症・ネフローゼ症候群など)の除外が診断の前提であることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Transient Hypogammaglobulinemia of Infancy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)生理的低ガンマグロブリン血症が生後3〜6か月に母体移行IgGの減衰と乳児自身のIgG産生の立ち上がりの谷間として生じること、一過性低ガンマグロブリン血症(THI)は生後6か月を過ぎてもIgG値が年齢平均より2SD以上低いまま持続する点で生理的な低下と区別されること、多くは2〜6歳までに基準値へ回復することを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Practice parameter for the diagnosis and management of primary immunodeficiency(American Academy of Allergy, Asthma & Immunology / American College of Allergy, Asthma & Immunology(Bonilla FA, et al., J Allergy Clin Immunol)・2015)液性免疫のスクリーニング検査(Table IV)が血清免疫グロブリン値・血清特異抗体価・追加接種への抗体応答・総B細胞数のフローサイトメトリーを組み合わせるべきとされ、免疫グロブリン値だけでなくワクチン(追加免疫)への抗体応答を対で評価することが液性免疫不全の診断アルゴリズムに組み込まれていることを確認した。閲覧 2026-08-11