疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

肉芽腫性リンパ球性間質性肺疾患

Granulomatous-lymphocytic interstitial lung disease

別名
GLILD
臓器系
呼吸器免疫・膠原病
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-51:免疫不全症内科学 S-05:間質性肺疾患
上位概念
間質性肺疾患
鑑別疾患
サルコイドーシス非ホジキンリンパ腫
関連疾患
リンパ球性間質性肺炎濾胞性細気管支炎
治療薬
免疫グロブリン静注療法プレドニゾロンリツキシマブアザチオプリンミコフェノール酸モフェチル
症状
労作時呼吸困難乾性咳嗽脾腫リンパ節腫脹
検査値
免疫グロブリン定量気管支肺胞洗浄
画像所見
小葉間隔壁肥厚結節性パターンすりガラス影コンソリデーション
元疾患
CTLA-4ハプロ不全症LRBA欠損症分類不能型免疫不全症

🧠 全体像:(GLILD)は、()に生じるのである。を「感染を繰り返す病気」と捉えているうちは見えてこないが、この合併症こそがの予後を最も大きく左右する——GLILDのある患者の生存期間中央値は13.7年で、無い患者の28.8年の半分以下になる1。で感染は減らせても、GLILDは別枠の治療を要する。「肺に肉芽腫があり、リンパ節が腫れ、脾臓が大きい」という像を見てと診断してしまうのが最大の落とし穴で、そこでを1回測るかどうかがになる。

定義と位置づけ

GLILDは、患者に生じ、肺のあるいは肉芽腫(またはその両方)を伴い、他の病態を検討し可能な限り除外した、臨床・画像・病理の3者で定義されるである。この定義は2017年の英国のに由来し、現在も使われている2。

💡 定義に「他の病態を除外して」が書き込まれている点が重要である。 GLILDは単一の病理所見の名前ではなく、除外を経て初めて名乗れる臨床・画像・病理の複合診断として設計されている。だから単独のではなくでの合意診断が標準になる3。

は複数のコホートの概算での約8〜20%とされる2。

病態と組織像

名前のとおり、肉芽腫性の要素とリンパ増殖性の要素が同じ肺に同居するのがこの疾患の本体である。

要素 組織像
肉芽腫性 非壊死性の肉芽腫。からなり、形成の程度は良好なものから不明瞭なものまで幅がある。を伴うことがある
リンパ増殖性 、、間質の。を伴うことが多い

いずれも2。やを伴うこともあり、肉芽腫を欠く関連のも存在する2。

⚠️ これは抗体不足の帰結ではない。 のから素直に導けるのはまでで、GLILDは(T細胞・B細胞サブセットの異常)という別の軸から生じる。で感染が制御できている患者にも出現しうるのはこのためである。

臨床像

  • とが中心で、進行するまで症状が乏しいことがある。症状が出てから探すのでは遅い。
  • ⭐ 肺だけの病気ではない。 GLILDはほぼ必発でリンパ節腫脹と脾腫を伴う2。の併存も多く、患者の「脾腫+リンパ節腫大+血球減少」はGLILDを探す合図になる。
  • の合併が多く、GLILD患者の31%にが認められたという報告がある1。

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common variable immunodeficiency'>CVID</span>と診断されている成人"] --> B["症状の有無によらず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution CT'>高分解能CT</span>でスクリーニング"]
    B --> C{"結節・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ground-glass opacity'>すりガラス影</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='consolidation'>コンソリデーション</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interlobular septal thickening'>小葉間隔壁肥厚</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower lung field'>下肺野</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchovascular bundle'>気管支血管束</span>周囲優位にあるか"}
    C -->|"無い"| D["定期的な再評価を継続"]
    C -->|"有る"| E["肺感染症を除外する"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchoalveolar lavage (BAL)'>気管支肺胞洗浄</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytic alveolitis'>リンパ球性肺胞炎</span>を確認"]
    F --> G["ガス交換評価を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary function test'>呼吸機能検査</span>で<br>障害の重症度を判定"]
    G --> H{"典型的な像か"}
    H -->|"典型的"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multidisciplinary team'>多職種チーム</span>の合意診断"]
    H -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-conventional'>非典型的</span>"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung biopsy'>肺生検</span>で組織学的に確認"]
    J --> I

⭐ 成人患者は症状の有無によらず全例をスクリーニングする——が第一の手段で、評価はで行い、ルーチンのは必須ではないがな像では必要になる3。診断過程では肺感染症を除外し、でを確認し、ガス交換の評価を含むで重症度を判定する3。

💡 これらの推奨の大半が条件付きにとどまるのは、エビデンスの確実性が低いためである3。「弱い推奨だから重要でない」ではなく、「証拠が薄い領域で国際的に足並みを揃えるための合意」として読む。

⚠️ サルコイドーシスと取り違えない

⚠️ ++という像は、そのままの像でもある。 ここで誤ると、ステロイドで一時的に改善するためにが固定し、という本来必要な治療が何年も行われない。分けるための実際的な手がかりは次のとおり。

手がかり GLILD
結節の分布 優位 優位
・ しばしば目立つ 通常は目立たない
免疫グロブリン IgG低値+IgAまたはIgM低値 通常は正常〜高値
感染の既往 反復する気道感染・が先行することが多い 特徴的でない

画像所見の対比は2。⚠️ を見たら免疫グロブリンを1回測る——この1本の検査がGLILDとを分ける最も安価な手段である。

もう一つの重要な鑑別はで、ではリンパ腫のリスクそのものが高いうえ、GLILDの結節・リンパ節腫大と画像上区別できないことがある。非典型例で生検が必要になる理由の多くはここにある。

治療

治療はの最適化を土台に、症状のある例・進行する例に免疫抑制を重ねるという順序で組む。

  1. を先に最適化する。 肺病変を伴わないでは0.4〜0.6 g/kg/月、を伴う例では0.6〜1.2 g/kg/月が用いられ、免疫抑制療法を始める前に最適化しておく2。
  2. 。 相当量をする方式が標準で、では換算0.3 mg/kg以上のステロイドにより72%が2年以上の寛解に至った2。
  3. リツキシマブ+またはの併用。 と自己免疫の病態にB細胞とT細胞の両側から介入する意図で用いられる2。
  4. 因が判明している例ではがある。 やではが症状・呼吸機能・所見を改善しうる2。

⚠️ だけではGLILDは治らない。 補充療法とGLILDの進行の関係は明らかでなく、開始年齢や増量が進行を抑えるかは分かっていない2。感染予防の柱ではあるが、GLILDそのものの治療として期待してはならない。一方で全例に免疫抑制が要るわけでもなく、補充の最適化だけで経過を見る例もある2。

予後

患者69例の後ろ向き解析では、58%がの肺合併症を有し、GLILD群の生存期間中央値は13.7年、非GLILD群は28.8年と有意な差があった1。⭐ の予後を決めるのは感染症ではなく、この種の合併症であるという理解が、無症状のうちからスクリーニングする根拠になっている。

まとめ

  • GLILDはに生じるので、肉芽腫性の要素とリンパ増殖性の要素が同じ肺に同居する。
  • 定義そのものに「他の病態の除外」が含まれ、臨床・画像・病理を統合したの合意診断として下す。
  • はの約8〜20%で、生存期間中央値13.7年対28.8年という差を生む予後である。
  • 成人は症状の有無によらずでスクリーニングし、感染を除外し、と(ガス交換を含む)で評価する。
  • ⚠️ との取り違えが最大の落とし穴。結節が優位であること、やが目立つこと、そして免疫グロブリンが低いことで分ける。
  • 治療はの最適化が土台で、ステロイド、リツキシマブ+またはと重ねる。補充療法だけではGLILDは治らない。

出典

  1. 1.Granulomatous-lymphocytic lung disease shortens survival in common variable immunodeficiency(The Journal of Allergy and Clinical Immunology(Bates CA, et al.)・2004)抄録(PMID 15316526)のResults節で、CVID患者69例の後ろ向き解析において58%が非感染性の肺合併症を有したこと、GLILD群(group 3A、13例)の生存期間中央値が13.7年で他群の28.8年より短かったこと(P<.001)、GLILD群の31%にリンパ増殖性疾患を認めたことを確認した。抄録は生存期間の起点(診断時・発症時など)を明示していないため、起点を特定した書き方はしない。本文は取得できず抄録のみ。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Approach to diagnosing and managing granulomatous-lymphocytic interstitial lung disease(eClinicalMedicine(Galant-Swafford J, et al.)・2024)本文で、GLILDが「CVID患者に生じ、肺のリンパ球浸潤あるいは肉芽腫(またはその両方)を伴い、他の病態を検討し可能な限り除外した、臨床・画像・病理で定義される間質性肺疾患」という2017年の英国の合意声明由来の定義で現在も扱われていること、複数コホートの概算でCVIDの約8〜20%に生じること、組織像が非壊死性で形成の程度がさまざまな類上皮組織球からなる肉芽腫(多核巨細胞を伴うことがある)と、濾胞性細気管支炎・結節性リンパ過形成・反応性胚中心を伴う間質のリンパ球浸潤との併存であること、HRCTでは結節・すりガラス影・コンソリデーション・小葉間隔壁肥厚が下肺野および気管支血管束周囲優位に分布し、上肺野優位でコンソリデーションやすりガラス影が目立たないサルコイドーシスと対照的であること、GLILDがほぼ必発でリンパ節腫脹と脾腫を伴うこと、免疫グロブリン補充療法の用量が肺病変を伴わないCVIDで0.4〜0.6 g/kg/月・慢性肺疾患では0.6〜1.2 g/kg/月とされ免疫抑制療法の開始前に最適化すべきこと、多施設研究でプレドニゾン換算0.3 mg/kg以上のステロイド単剤療法により72%が2年以上の寛解に至ったこと、リツキシマブとアザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルの併用がB細胞とT細胞の両方を標的とする意図で用いられること、CTLA-4ハプロ不全・LRBA欠損ではアバタセプトが症状・呼吸機能・CT所見を改善しうること、免疫グロブリン補充療法とGLILDの進行の関係は不明でありGLILD自体の治療にはならないことを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Clinical Practice Guideline for the diagnosis of Granulomatous-Lymphocytic Interstitial Lung Disease (GLILD) in patients with Common Variable Immunodeficiency Disorders (CVID) - an ERS Clinical Research Collaboration(European Respiratory Journal(Bintalib HM, et al.)・2026)抄録で、成人CVID患者全例にGLILDのスクリーニングを推奨し高分解能CTを優先すること、評価は多職種チームで行うこと、ルーチンの肺生検は必須ではないが非典型的な像では必要であること、診断過程で肺感染症を除外し気管支肺胞洗浄でリンパ球性肺胞炎を探すこと、ガス交換の評価を含む呼吸機能検査で障害の重症度を評価すること、エビデンスの確実性が低いため大半の推奨が条件付き推奨にとどまることを確認した(本文は出版社サイトが403で取得できず抄録のみ)。閲覧 2026-08-20