疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 先天性疾患

LRBA欠損症

LRBA deficiency

別名
LATAIELRBA欠損
臓器系
免疫・膠原病全身
科目
Internal MedicineMedical Genetics and Immunology (Immunology)
トピック
内科学 S-51:免疫不全症免疫学 6.2:免疫不全
上位概念
原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)
鑑別疾患
分類不能型免疫不全症
合併症
肉芽腫性リンパ球性間質性肺疾患
関連疾患
CTLA-4ハプロ不全症
治療薬
アバタセプトシロリムス免疫グロブリン静注療法プレドニゾロン
症状
脾腫リンパ節腫脹

🧠 全体像:は、CTLA-4を「リソソームへ捨てさせない」ための輸送蛋白が失われる疾患である。CTLA-4の遺伝子そのものは正常なのに、細胞内でCTLA-4が過剰に分解されてしまうため、⭐ とほぼ同じ臨床像(自己免疫・・)に行き着く——だからこそという同じが効く。ただし二つの疾患は遺伝形式が違う(は=)。⚠️ もう一つの違いはの位置づけで、では移植群と非移植群を比べた長期転帰の報告がある1。

病態——CTLA-4を分解から救う輸送蛋白

LRBA遺伝子の変異は、自己免疫・・からなる症候群を起こす2。この疾患を理解する鍵は、LRBAが免疫応答そのものを担う分子ではなく、CTLA-4の細胞内輸送を担う分子であるという点にある。

LRBAは小胞内でCTLA-4とする。LRBAが失われるとCTLA-4のが増え、FoxP3陽性と活性化したT細胞のCTLA-4蛋白量が減る。リソソーム分解をで阻害すると、細胞でもCTLA-4の消失が防げた——これがLRBAの役割を決定づけた実験である2。

flowchart TD
    A["LRBAの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biallelic'>二アレル性</span>変異<br>(LRBA蛋白の発現消失)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endosome'>エンドソーム</span>でCTLA-4を<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='recycling'>再循環</span>させられない"]
    B --> C["CTLA-4がリソソームへ運ばれ分解される<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turnover'>ターンオーバー</span>の増加)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='regulatory T cell (Treg)'>制御性T細胞</span>・活性化T細胞の<br>CTLA-4蛋白量が減る"]
    D --> E["自己免疫"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphoproliferation'>リンパ増殖</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organomegaly'>臓器腫大</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='humoral immunodeficiency'>液性免疫不全</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogammaglobulinemia'>低ガンマグロブリン血症</span>)"]
    D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abatacept'>アバタセプト</span>が有効<br>(CTLA-4<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fusion protein'>融合蛋白</span>で外から補う)"]

💡 との違いは「どこで足りなくなるか」だけである。 はが半分になって作られる蛋白が減る疾患、は作られた蛋白が捨てられてしまう疾患で、行き着く分子表現型は同じ「のCTLA-4不足」である。この共通性が、二つの疾患を同じで扱える理由になっている3。

遺伝形式と診断

⚠️ はの変異による疾患であり、片アレル変異で発症するとは遺伝形式が異なる。 22名のではホモ接合またはの変異が見つかっており、変異はLRBA蛋白の発現そのものを消失させる4。

診断は臨床基準・蛋白検出・を組み合わせて段階的に行う。この構成が診断の実際をよく表している4。

段階 判定
を満たす 93名
LRBA蛋白を発現しない ほぼ 24名
変異が確認された 22名(うち17変異が新規)

⭐ 蛋白発現の測定は診断だけでなく予後にも効く。 LRBA蛋白の残存発現がある患者では、免疫不全・活動性(IDDA)スコアが有意に低かった1。「発現が完全に消えているか、少しでも残っているか」が疾患の重さと相関する。

GLILDが疑われる患者では、治療標的が存在するためLRBAとCTLA-4の変異検索が最低限必須とされている3。

臨床像と検査所見

項目 頻度
95%
(脾腫・リンパ節腫脹) 86%
71%
57%

いずれもGámez-Díazらの確定22名コホートにおける主要な臨床合併症の頻度である4。

⚠️ T細胞「数」は正常なことが多い。 81%はT細胞数が正常であった一方で、73%が数の減少を示した4。⭐ ルーチンので異常が出ないので、を別に数えないと病態が見えない。

B細胞側では、の低下が80%、の低下が92%に認められ、67%でが不良であった4。この所見はと重なり、が様の病態として現れる理由になっている3。

肺では(GLILD)を生じ、LRBAはGLILDと関連する遺伝子の一つとして挙げられている3。

治療

治療は・免疫抑制・・の4層で考える。Gámez-Díazらの確定22名では、が7名、全身性の副腎皮質ステロイド()単剤またはとの併用による免疫抑制治療が15名、による治療成功が2名、死亡が3名であった4。

⭐ は病態から演繹された治療である。 の患者は、CTLA-4であるに劇的かつ持続的な改善で応答した2。実際、この臨床応答とLRBAが細胞内輸送を制御する蛋白と相同であることから「LRBAはCTLA-4を制御しているのではないか」という仮説が立てられ、機序の解明につながった。免疫抑制療法が無効であった例を含め、症状・・所見の改善が報告されている3。

⚠️ ただし「LRBA・CTLA-4変異例ほどの利益が大きい」という想定は、プラセボ対照試験で実証されていない3。

造血幹細胞移植をどう位置づけるか

29施設76名(追跡10年、範囲1〜52年)を移植群と非移植群に分けた国際的ながある1。

(24名) 非移植(52名)
生存 70.8%(17/24、追跡20か月) 82.7%(43/52、年齢範囲3〜69歳)
無治療での寛解 17名中12名(70.6%)——7名・良好な5名 免疫抑制を要していないのは43名中5名(11.6%)
死亡の内訳 いずれも非特異的な早期の —

⚠️ 数字の向きが逆を向いている。 だけを見れば非移植群のほうが高いが、非移植群のはほぼ全員が免疫抑制を続けている。IDDAスコアは移植で従来治療群より有意に低かった(P = .005)——またはを受けた患者でも、他の治療を受けた患者に比べてスコアは低かった1。つまり移植は「早期ののリスクと引き換えに、生涯の疾患活動性から解放されうる」選択である——著者らのも、免疫抑制を要する生涯にわたる疾患活動性と悪性腫瘍のリスクを、移植のリスクと天秤にかけるべきであるというものである1。

⭐ 移植の時機を決める因子は3つ。 が大きいこと・移植までの期間が長いこと・肺病変があることが、不良な転帰と関連していた1。「進んでから移植する」ほど結果が悪いという向きの所見である。

なお、GLILDに限って見ると、この76名コホートで移植を受けた24名のうち8名がGLILDを持ち、5名が・2名がに至った一方、24名中2名は移植後にGLILDを発症したと総説が要約している3。

まとめ

  • は、CTLA-4をリソソーム分解から救う輸送蛋白LRBAが失われることで、のCTLA-4が不足する()のである。
  • とは分子表現型が同じに帰着するため、という同じが効く。遺伝形式・診断手順(蛋白発現の測定)・移植の位置づけが二つの疾患を分ける。
  • 臨床像は95%、86%、71%、57%。T細胞数は81%で正常なのには73%で減少する。
  • はのリスクを負う代わりに、の70.6%が無治療の寛解に到達する。非移植例で免疫抑制を要していないのは11.6%にとどまる。
  • が大きいほど、移植までの期間が長いほど、肺病変があるほど転帰が悪い。

出典

  1. 1.Long-term outcome of LRBA deficiency in 76 patients after various treatment modalities as evaluated by the immune deficiency and dysregulation activity (IDDA) score(Journal of Allergy and Clinical Immunology(Tesch VK, et al.)・2020)29施設のLRBA欠損症76名(追跡期間中央値10年、範囲1〜52年)のうち24名が2005〜2019年に造血幹細胞移植を受けたこと、移植後の全生存率が70.8%(24名中17名、追跡期間中央値20か月)で死亡はいずれも非特異的な早期の移植関連死であったこと、非移植例52名のうち43名(82.7%、年齢範囲3〜69歳)が生存していること、移植生存者17名のうち7名が完全寛解・5名が無治療での良好な部分寛解(合わせて17名中12名=70.6%)である一方、非移植例で免疫抑制を要していないのは43名中5名(11.6%)にとどまること、免疫不全・免疫調節異常活動性(IDDA)スコアが移植生存者で従来治療群より有意に低かったこと(P = .005)、およびアバタセプトまたはシロリムスを受けた患者とLRBA蛋白の残存発現がある患者でも低かったこと、疾患負荷が大きいこと・移植までの期間が長いこと・肺病変があることが不良な転帰と関連したこと、悪性腫瘍のリスクと免疫抑制を要する生涯にわたる疾患活動性を移植のリスクと天秤にかける必要があることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03
  2. 2.Patients with LRBA deficiency show CTLA4 loss and immune dysregulation responsive to abatacept therapy(Science(Lo B, et al.)・2015)LRBA遺伝子の変異が自己免疫・リンパ増殖・液性免疫不全からなる症候群を起こすこと、LRBA欠損症の患者がアバタセプトに劇的かつ持続的な改善で応答したこと、LRBAがエンドソーム小胞内でCTLA4と共局在し、LRBAの欠損またはノックダウンがCTLA4のターンオーバーを増やしてFoxP3陽性制御性T細胞と活性化した従来型T細胞のCTLA4蛋白量を減らすこと、LRBA欠損細胞ではクロロキンによるリソソーム分解阻害がCTLA4の消失を防いだことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03
  3. 3.Approach to diagnosing and managing granulomatous-lymphocytic interstitial lung disease(eClinicalMedicine(Galant-Swafford J, et al.)・2024)CTLA-4ハプロ不全症とLRBA欠損症がいずれも免疫不全・自己免疫・リンパ増殖を特徴とするCVID様の病態を生じること、GLILDと関連する遺伝子としてCTLA-4・LRBA・NFKB1・TNFRSF13B・KMT2D・RAG1・STAT3・STAT1が挙げられること、IgG1-CTLA-4融合蛋白であるアバタセプトがCTLA-4変異およびLRBA変異の患者で自己免疫の制御に有効であり、免疫抑制療法が無効であった例を含めて症状・呼吸機能検査・CT所見を改善させたと報告されていること、GLILDが疑われる例では治療標的が存在するためLRBAとCTLA-4の変異検索が最低限必須とされること、LRBA・CTLA-4変異例がアバタセプトからより大きな利益を得るという想定はプラセボ対照試験では実証されていないこと、本総説がTeschらの76名コホートを引いて造血幹細胞移植を受けた24名のうち8名にGLILDがあり5名が完全寛解・2名が部分寛解に至った一方、24名中2名は移植後にGLILDを発症したと記していることを、PMC11338122の全文で確認した閲覧 2026-09-03
  4. 4.The extended phenotype of LPS-responsive beige-like anchor protein (LRBA) deficiency(Journal of Allergy and Clinical Immunology(Gámez-Díaz L, et al.)・2016)LRBA欠損症がLRBA蛋白の発現を消失させる二アレル性のLRBA変異による原発性免疫不全であること、93名がLRBA欠損症の可能性ありとして組み入れ基準を満たし、うち24名がLRBA蛋白を発現せず「probable」、22名が二アレル性変異により遺伝学的に確定した「definitive」と判定されたこと、確定22名の変異のうち17が新規でホモ接合または複合ヘテロ接合であったこと、主要な臨床合併症が免疫調節異常95%・臓器腫大86%・反復感染71%・低ガンマグロブリン血症57%であったこと、81%はT細胞数が正常であった一方で73%が制御性T細胞数の減少を示したこと、B細胞サブセットではクラススイッチ記憶B細胞の低下80%・形質芽細胞の低下92%が多く67%で特異抗体応答が不良であったこと、確定22名の転帰が死亡3名・造血幹細胞移植による治療成功2名・免疫グロブリン補充中7名・全身性副腎皮質ステロイド単剤またはステロイド節約薬との併用による免疫抑制治療中15名であったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-03