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Symptoms · Published

脾腫

Splenomegaly

別名
脾腫大
臓器系
血液消化器
科目
Pathology
トピック
病理学 C/7:脾臓・胸腺の疾患病理学 C/17:脾腫を来す疾患病理学 C/5:慢性骨髄性白血病(CML)/慢性骨髄線維症病理学 C/46:肝の循環障害病理 C/50:肝硬変
関連疾患
COACH症候群Gaucher病サラセミアヒストプラズマ症回帰熱(シラミ媒介性)鎌状赤血球症劇症型痤瘡常染色体劣性多発性嚢胞腎先天性肝線維症先天代謝異常症多中心性Castleman病腸チフス分類不能型免疫不全症門脈圧亢進症有毛細胞白血病有毛細胞白血病バリアント塹壕熱濾胞性リンパ腫脾機能亢進脾辺縁帯リンパ腫脾捕捉症候群
スコア
GELF基準

🧠 全体像:脾腫は「大きさ」よりも機序で捉える所見である。同じ数センチの腫大でも、感染への反応性肥大なのか、腫瘍細胞そのものの浸潤なのか、なのか、単なる血液のうっ滞なのかで、も検査の進め方もまったく変わる。もう一つの軸はを伴うかどうか——脾腫とは同義ではなく、後者は「血球成分の除去が増加した」を指す別概念である。この2軸(機序・の有無)が鑑別と管理の骨格になる。

定義と用語の整理

脾臓は正常で長径11〜12cm・重量150g程度で、の下に通常は触知されない。になるには正常の約40%以上腫大している必要があり、で脾臓を触れた時点で脾腫はほぼ確定する(ただし肥満や術では偽陰性もある)。画像でのみ検出される軽度の腫大と、で触知できる脾腫は区別して考える。

大きさによる分類(重量ベース):

分類 重量 代表疾患
1000 g超 CMLリンパ腫マラリア
中等度 500〜1000 g 慢性うっ血性脾腫(門脈圧亢進)、急性白血病
軽度 500 g未満 急性脾炎(菌血症)、敗血症

著明な脾腫の鑑別は実質的に狭い。 (CML・)、リンパ系腫瘍、マラリア、のいずれかであることが多く、この短いリストを覚えておくと腫を見た瞬間に鑑別が絞れる。

💡 脾腫とは同義ではない。 は脾臓による血球成分の除去が亢進したを指し、貧血・・血小板減少(血小板は特にに隔離されやすい)を来す。脾腫があってもを伴わないことがあり、逆に軽度の脾腫でも著明なを来すことがある。

病態生理

脾腫の機序は5つに整理できる。

flowchart TD
    A["脾腫"] --> B["うっ血<br>門脈圧亢進・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='splenic vein occlusion'>脾静脈閉塞</span>・右心不全"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive hyperplasia'>反応性過形成</span><br>感染・炎症・自己免疫"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extramedullary hematopoiesis'>髄外造血</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow failure'>骨髄不全</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Myelofibrosis'>骨髄線維症</span>・重症溶血"]
    A --> E["浸潤"]
    A --> F["異常な血球の隔離・破壊<br>溶血性貧血"]
    E --> E1["腫瘍性:白血病・リンパ腫"]
    E --> E2["非腫瘍性:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gaucher disease'>Gaucher病</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloidosis'>アミロイドーシス</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span>"]
機序 代表疾患
うっ血 肝硬変による門脈圧亢進、、右心不全
結核SLE
、他の重度
浸潤(腫瘍性) CMLリンパ腫、白血病、CLL・
浸潤(非腫瘍性)
血球の異常な破壊 マラリア

⚠️ うっ血のカテゴリーには見落としやすい間接経路がある。を起こし、そこから門脈へ進展して門脈圧亢進を来すという経路で、脾腫の原因が肝疾患ではなく膵疾患ということがある。

緊急・見逃してはいけない疾患

⚠️ が典型だが、著明に腫大した脾臓(・マラリアなど)は軽微な外力やでも破裂しうる。左上腹部痛・圧痛に加え、横隔膜刺激による左肩への)、めまい、循環不安定を伴えば疑う。では発症後3〜4週間程度は接触の多いスポーツを避けるよう指導する。

⚠️ への移行:慢性の脾腫に発熱、急速な脾腫大、血球減少の進行が加われば、CMLのを含む血液腫瘍の進行を疑う。

⚠️ :著明な脾腫()、心内膜炎からの塞栓、鎌状赤血球症で生じる。突然の左上腹部痛・様の痛みが手掛かり。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["脾腫を疑う・触知"] --> B["超音波で確認・大きさを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='measuring'>計測</span>"]
    B --> C{"発熱・感染徴候があるか"}
    C -->|"あり"| D["感染性・反応性を評価<br>血液培養、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapid mononucleosis test'>単核球症迅速検査</span>"]
    C -->|"なし"| E{"肝疾患の所見があるか"}
    E -->|"あり"| F["門脈圧亢進を評価<br>肝機能、腹水、静脈瘤"]
    E -->|"なし"| G["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>を確認"]
    G --> H{"血球異常があるか"}
    H -->|"芽球・白血球著増"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow examination'>骨髄検査</span>で腫瘍性疾患を検索"]
    H -->|"溶血所見"| J["溶血性貧血の精査"]
    H -->|"正常"| K["浸潤性疾患・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malignant lymphoma'>悪性リンパ腫</span>を考慮<br>CT・生検"]

対症療法の考え方

脾腫そのものを縮小させる治療は基本的になく、原因疾患の治療が最優先である(例:CMLなら、肝硬変なら門脈圧亢進の管理)。脾腫に対する介入が独立して意味を持つのは次の場面に限られる。

  • の管理:著明な脾腫を認める間は接触スポーツ・腹部への外力を避ける。
  • 症候性の:輸血を要する重度の血小板減少・貧血が持続し、原因治療で改善しない場合にを検討する。
  • 後の感染対策:肺炎球菌・髄膜炎菌・b型などによる重症感染のリスクが生涯続くため、ワクチン接種と発熱時の早期受診指導が必須になる。

まとめ

  • 脾腫は大きさより機序(うっ血・・浸潤・血球の異常な破壊)で捉える。
  • 脾腫とは別概念。は血球成分の除去増加を指す機能的な状態。
  • 著明な脾腫(1000g超)の鑑別は狭く、・リンパ系腫瘍・マラリア・が中心。
  • で、著明に腫大した脾臓では軽微な外力でも生じうる。(左肩への)を見逃さない。
  • 脾腫そのものへの治療は原則行わず、原因疾患を治療する。は症候性のに限る。
  • による重症感染のリスクが生涯続き、ワクチン接種が必須。