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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

回帰熱(シラミ媒介性)

Louse-borne relapsing fever

別名
流行性回帰熱
臓器系
感染症全身
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 2/30:ボレリア属微生物学 5/9:節足動物媒介性細菌感染の起因菌(一覧)皮膚科 2-15:シラミ症
関連疾患
発疹チフス塹壕熱
治療薬
ドキシサイクリンペニシリンGエリスロマイシン
原因微生物
Borrelia recurrentis
症状
発熱頭痛筋肉痛脾腫肝腫大黄疸
原因となる疾患
シラミ症

🧠 全体像媒介性)はBorrelia recurrentisを介して起こす、を持たないヒト--ヒトのである。同じ「」でも、ダニが媒介するBorrelia duttoniiB. hermsiiなどが起因菌)とはベクター・疫学・臨床経過が異なる別カテゴリーであり、本ノートは媒介型に限って扱う。 病態の核心はによるで「発熱→無熱→発熱」を繰り返す点は共通するが、治療開始後に高頻度で重篤なを起こすことが臨床上最大の注意点である。

ダニ媒介型との違い

項目 媒介(本ノート) ダニ媒介
起因菌 Borrelia recurrentis B. duttoniiB. hermsiiB. crociduraeなど複数種
ベクター Pediculus humanus corporis Ornithodoros属)
リザーバー ヒトのみ などの動物
疫学 戦争・難民キャンプ・災害後の集団発生(流行性) 森林・洞窟居住地での
1エピソードあたりの発熱発作回数 典型的に1〜2回 典型的に3〜7回(最大10回)

発作回数は直感に反する。 媒介型は動物宿主を経ずヒト集団内で完結するため、むしろ発作の回数はダニ媒介型より少ない(通常1〜2回にとどまる)——しかし1回あたりの重症度・致死率は媒介型の方が高い1。「発作の多さ=重症」という短絡をしないこと。B. recurrentisは遺伝的にダニ媒介型のB. duttoniiB. crociduraeと極めて近縁で、同一ゲノム種のエコタイプとみなされている1

病態と感染経路

は吸血時に菌を注入するのではなく、吸血中に潰されるかされた際に、の体液()中の菌が皮膚の傷から侵入する——刺咬による接種とはが異なる。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='body louse'>コロモジラミ</span>の体液中の<br>Borrelia recurrentis"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='curettage'>掻爬</span>・圧潰で皮膚から侵入"]
  B --> C["菌血症・第1回発熱発作"]
  C --> D["抗体が菌を溶解し無熱期へ"]
  D --> E["表面蛋白の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antigenic variation'>抗原変異</span>で再増殖"]
  E --> F["第2回発熱発作<br>(多くは1〜2回で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resolution'>終息</span>)"]
  C --> G["治療開始"]
  G --> H["大量の菌の急激な溶解"]
  H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Jarisch-Herxheimer reaction'>Jarisch-Herxheimer反応</span><br>(高頻度・重篤)"]

臨床像

3〜7日間の高熱発作と、それに続く数日間の無熱期を1〜2回繰り返す(ダニ媒介型では3〜7回に及ぶ)。頭痛・筋肉痛・関節痛を伴い、重症例では脾腫黄疸を合併する。

診断

  • 発熱期のをGiemsa染色またはしてする。菌体が比較的大きく、通常ので直接視認できる点が診断上の強みである
  • 無熱期は血中の菌体密度が下がるため検出感度が落ちる。発熱発作のタイミングでの採血が重要
  • 血清学()・PCRも利用できるが、のため血清診断の解釈は複雑になりうる

治療

⚠️ が高率かつ重篤——の治療で最大の注意点。 治療開始後2時間以内など数時間以内に、報告例の過半数(体系的レビューでは2,618例中55.8%)で発熱・悪寒・血圧低下をきたす2。大量に死滅したスピロヘータからTNF-α・IL-6・IL-8が急激に放出されることによる。抗菌薬の副作用や病状悪化と誤認せず、(治療開始2時間前後の投与が重症度軽減に有用とされる)と輸液による支持療法で対応する。

未治療の致死率は集計方法により差が大きく、確定診断例では約10.2%、臨床診断例を含めても約6%だが、ナイジェリアでの報告(68例中32例が死亡、うち52例は刑務所由来で刑務所症例に限ると57.69%)では47.1%に達したとする報告もある2。妊娠中の感染は特にリスクが高く、206例の解析で70.9%に流産・早産などの有害な妊娠転帰が観察された2

予防

衛生環境の改善との駆除(防虫剤処理、衣類の・交換)が中心で、ワクチンはない。

まとめ

  • 媒介性)はB. recurrentisが動物宿主を介さずヒト--ヒトで伝播する流行性疾患で、ダニ媒介のとは別カテゴリーである。
  • ダニ媒介型より発熱発作の回数は少ない(典型的に1〜2回)が、重症度・致死率はより高い。
  • 診断は発熱期のによるが有用。
  • 治療はドキシサイクリンまたはペニシリンの短期投与だが、⚠️ が高頻度(過半数)かつ重篤に起こる点が最大の注意点である。
  • 未治療致死率・妊娠転帰は報告によって幅があり、衛生環境が極端に悪い集団発生では致死率が跳ね上がる。
  • 同じが媒介するとは起因菌の属が異なる別疾患である。

出典

  1. 1.Louse-borne relapsing fever—A systematic review and analysis of the literature: Part 2—Mortality, Jarisch–Herxheimer reaction, impact on pregnancy(PLoS Neglected Tropical Diseases(Kahlig P, Neumayr A, Paris DH)・2021)報告2,618例中1,452例(55.8%)にJarisch-Herxheimer反応がみられたこと、未治療例の致死率は解析対象により6%(臨床診断例991例を含む集計)〜10.2%(顕微鏡・PCR確定例577例)で、Table 2のナイジェリアでの報告(68例中32例死亡)では47.1%に達しこの内52例は刑務所由来で刑務所症例に限ると57.69%(30/52)になること、極端な事例を除くと全体では約3.1%まで下がること、妊娠206例中70.9%(高精度診断例122例に限ると76.2%)で有害な妊娠転帰が観察されたことを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Relapsing Fever(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)シラミ媒介回帰熱の流行では典型的に発熱発作は1〜2回にとどまるのに対し、地方病性のダニ媒介回帰熱では症状消退までに3〜7回の再発がみられること、B. recurrentisはB. duttonii・B. crocidurae(ダニ媒介回帰熱の起因菌)と遺伝的に極めて近縁で単一のゲノム種のエコタイプとみなされていること、治療はドキシサイクリン100 mgを1日2回7〜10日間投与すること、妊婦・8歳未満の小児にはペニシリンまたはエリスロマイシンが望ましい薬剤とされることを確認した閲覧 2026-08-11