皮膚科学

皮膚科学 · 2-15

シラミ症(頭ジラミ症・コロモジラミ症・ケジラミ症)

Pediculosis

前提:病態
節足動物媒介性細菌感染の起因菌
薬剤
ジメチコンスピノサドピペロニルブトキシドピレトリンフェノトリンペルメトリンマラチオンリンデン
微生物
Bartonella quintanaPediculus humanusPthirus pubisRickettsia prowazekii
疾患
シラミ症回帰熱(シラミ媒介性)発疹チフス塹壕熱
症状
掻破痕(掻破による皮膚出血)

🧠 全体像:はの寄生で、、、では生息場所・感染経路・治療が異なる。生きた虫体を確認して診断し、薬剤だけでなく毛髪または衣類環境を病型別に処理する。12

病型の比較

病型 病原体・生息場所 臨床像・感染 重要点
Pediculus humanus capitis。頭髪、特に・後頭部 頭皮掻痒、、。頭髪の直接接触で伝播 小児に多いがの徴候ではない
P. humanus humanus。衣類の縫い目に産卵し、吸血時のみ皮膚へ 衣類接触、体幹の丘疹・色素沈着・ 、、を媒介し得る1
Pthirus pubis。、、、まれに睫毛 性的接触が主。陰部掻痒、、 他の性感染症を評価する

はまたは衣類線維へし、のようには容易に動かない。ただし遠位に残る空のだけではを意味しない。

💡 だけがになる理由:3病型のうち、ヒトからヒトへ病原体を運ぶのはである。媒介するのはRickettsia prowazekii()、Bartonella quintana()、Borrelia recurrentis()である。は衣類に住み着くため、衣類を替えられない生活環境(戦争・災害・ホームレス状態)で問題になる。

診断

  • は生きた成虫・幼虫の確認で診断する。濡れた髪を細かいで梳くと検出しやすく、のみではの診断にならない。2
  • は衣類の縫い目に虫体・卵を探す。
  • はなどに虫体・卵を確認し、睫毛病変では眼科的に評価する。

治療

頭ジラミ症

米国は薬剤ごとに適用年齢を分けており、選択はここで決まることが多い。3

薬剤 米国での適用年齢
1%ローション(OTC) 生後2か月以上 9日目に生きた虫体が残れば反復
+(OTC) 2歳以上 9〜10日後に反復
5%ローション 生後6か月以上 7日後に反復
0.9%外用 生後6か月以上 卵にも効くため通常は不要。初回治療の7日後に生きた(這っている)虫体が見られる場合にのみ反復
0.5%ローション 生後6か月以上 多くは単回塗布で有効。医療者に相談せずにしない
0.5%ローション 6歳以上 7〜9日後に生きた虫体が残れば反復
経口(200または400 µg/kgの単回) 体重15 kg未満の小児と妊婦には使用しない 9〜10日後に反復する用法がある

⚠️ 1%とは、いずれも耐性による効果低下がありうると自身が明記している。3 適正に使ったのに生きた虫体が残るなら、同じ薬を三度繰り返さず作用機序の違う薬へ替える。

⭐ 日本で使える薬は米国と同じではない:日本ではの駆除に殺虫剤をとする外用薬が使われてきたが、2001年に初めて抵抗性個体が確認され、沖縄県で採集されたの96%が抵抗性を示した。これを受けて作用機序の異なる4%製剤(成虫・幼虫の気門を物理的に塞いで窒息させ、卵のも阻止する)のが行われ、抵抗性個体への有効性と安全性が確認されて、2021年に医薬部外品として承認・上市された。5 国内でに用いる外用薬は一般用医薬品(OTC)のフェノトリン製剤なので、海外文献の「1%」をそのまま国内の製品名に置き換えて読まない。

コロモジラミ症

入浴、清潔な衣類への交換、衣類・寝具・タオルの54℃以上の洗濯と高温乾燥が治療の中心である。適切な衛生・衣類処理ができれば、は通常不要である。

ケジラミ症

1%または+を用いる。直近3か月のへ通知し、全員の治療完了まで性行為を避ける。6 睫毛への寄生にはを使わず、やで窒息させる(→)。

⚠️ は神経毒性のため第一選択にせず、多くの地域で使用できない。が使用しないとしている対象は、・小児・高齢者・感染者・痙攣性疾患のある人・妊婦に加えて、体重110ポンド(約50 kg)未満の人との皮膚に刺激やただれ・びらんがある人である。3 可燃性の使用中は火気・熱源を避ける。

⭐ 体重の条項は小児・やせた思春期例でいちばん効く。年齢の項(「小児」)だけを見て線を引くと、体重の下限を落とす。

環境対策

  • 治療前2日間に使った衣類、帽子、寝具、タオルを洗濯・高温乾燥する。
  • 洗えない物は密封保管する。な家具・室内殺虫剤散布は不要である。
  • のために登校中の児童を即時帰宅させる必要はなく、治療開始後に登校できる。

まとめ

  • 頭・衣類・という生息部位から3病型を区別する。
  • 診断は活動性のある虫体・卵の確認で行う。
  • は、は衛生と衣類処理、は薬剤とパートナー管理が中心である。
  • 薬剤の選択は適用年齢で決まる部分が大きく、適正使用後に生きた虫体が残るなら耐性を疑って作用機序の違う薬へ替える(日本では4%製剤が2021年に承認された)。
  • を安易に使用せず、病型に合った環境対策を行う。

出典

  1. 1.Ectoparasites: Pediculosis and tungiasis(2020)頭・体・陰部のシラミ症という病型、吸血性外部寄生虫としての性質、およびコロモジラミが塹壕熱・回帰熱・発疹チフスの病原体を媒介し得ることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Head lice infestations: A clinical update(2018)頭ジラミ症の診断には生きた虫体の検出が必要であり、ペルメトリンまたはピレトリンが第一選択となることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Clinical Care of Head Lice(Centers for Disease Control and Prevention・2025)米国CDCの臨床ページ(2025年1月31日更新)で、OTCのピレトリン+ピペロニルブトキシドが2歳以上・1%ペルメトリンローションが生後2か月以上に承認されいずれも耐性による効果低下がありうること、処方薬では5%ベンジルアルコールローション・0.9%スピノサド外用懸濁液・0.5%イベルメクチンローションが生後6か月以上、0.5%マラチオンローションが6歳以上であること、再治療の目安がペルメトリンは9日目・ピレトリンは9〜10日後・ベンジルアルコールは7日後・マラチオンは7〜9日後に生きた虫体が残る場合で、スピノサドは卵にも効くため通常は再治療不要だが再治療するのは初回治療の7日後に生きた(這っている)虫体が見られる場合に限られること、イベルメクチンローションは医療者に相談せずに再治療しないこと、経口イベルメクチンは200または400 µg/kgを単回投与し9〜10日後に反復する用法があるが体重15 kg未満の小児と妊婦には使用しないこと、リンデンを使用しない対象が未熟児・小児・高齢者・HIV感染者・痙攣性疾患のある人・妊婦授乳婦に加えて体重110ポンド未満の人と寄生部位の皮膚に刺激やただれ・びらんがある人を含むことを確認した。2026-09-17に再取得して再治療条件とリンデンの全項目を確認した(cdc.govは素のcurlが403、WebFetchは200)閲覧 2026-09-17
  4. 4.Paediatrics: how to manage pediculosis capitis(2022)地域耐性が低ければペルメトリンまたはピレトリンが第一選択で、適正使用後の失敗かつ再感染が考えにくい場合はスピノサド・マラチオン・外用イベルメクチンなどへ切り替え、経口イベルメクチンは外用治療不応例に限る原則を確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.アタマジラミ, トコジラミ, ヒトスジシマカ, ネッタイシマカにおける殺虫剤抵抗性(国立健康危機管理研究機構(病原微生物検出情報 IASR Vol. 46 p240-241、2025年12月号)・2025)日本ではアタマジラミの駆除にピレスロイド系殺虫剤を有効成分とする外用薬が使われてきたが2001年に初めて抵抗性個体が確認され、沖縄県で採集されたアタマジラミの96%がピレスロイド抵抗性を示したこと、これを受けて作用機序の異なる4%ジメチコン製剤(成虫・幼虫の気門を物理的に塞いで窒息させ卵の孵化も阻止する)の臨床試験が行われ、2021年に医薬部外品として承認・上市されたことを確認した閲覧 2026-09-17
  6. 6.European guideline for the management of pediculosis pubis(International Union Against Sexually Transmitted Infections (IUSTI) Europe(掲載誌はJournal of the European Academy of Dermatology and Venereology 2017;31(9):1425-1428)・2017)2026-09-17にIUSTIが無償公開している全文PDF(iusti.org/wp-content/uploads/2019/12/PPubis.pdf)で確認した。抄録の逐語は First line therapy consists of permethrin or pyrethrins with piperonyl butoxide. Second line therapy contains phenothrin, malathion and oral ivermectin. Partner management needs a look-back period of time of 3 months. で、ケジラミ症の第一選択はペルメトリンまたはピレトリン+ピペロニルブトキシド、パートナー管理の遡及期間は3か月。DOIはCrossrefで解決を確認した(JEADV 2017;31(9):1425-1428)。閲覧 2026-09-17