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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬

フェノトリン

phenothrin

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(日本)
スミスリン
科目
PharmacologyDermatology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs2-14: Scabies2-15: Pediculosis
承認適応
疥癬シラミ症
副作用
紅斑掻痒
監視検査値
AST・ALT
影響検査値
AST・ALT

🧠 全体像:フェノトリンは、と同じの外用でありながら、日本国内でに承認されている唯一の外用薬という一点で臨床的な重みが決まる。海外文献が「5%」と書く場面を、日本の実地ではフェノトリン5%ローション(スミスリンローション5%)に読み替える必要がある。同じ(フェノトリン)が、には医療用医薬品のローション5%として、には一般用医薬品(OTC)のシャンプー・パウダー(1%程度)として、区分・濃度・剤形がまったく別の製品として存在する点も混同しやすい。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 機序 日本での位置づけ
フェノトリン を開いたまま固定 に承認されている唯一の外用薬(医療用医薬品)。にはOTC製品として別に流通
同じ標的() 海外では・双方の第一選択だが、日本ではの効能を持たない
glutamate-gated Cl⁻チャネルを活性化 経口。や外用が難しい例、フェノトリン不応例の併用相手

⭐ 同じ標的分子(Na⁺チャネル)を持つ薬でも、国によって承認の有無がまったく異なる。 フェノトリンとはどちらもでNa⁺チャネルへの作用機序を共有するが、日本の保険診療でに使えるのはフェノトリンだけである1。

機序

flowchart TD
    A["フェノトリンが節足動物の<br>神経細胞膜へ到達"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated Na+ channel'>電位依存性Na⁺チャネル</span>に結合"]
    B --> C["チャネルの不活性化を遅らせ<br>開いたまま固定する"]
    C --> D["Na⁺流入が持続し脱分極が反復"]
    D --> E["神経・筋の異常興奮→麻痺→虫体の死滅"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mammal'>哺乳類</span>Na⁺チャネルへの親和性が低く<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous (transdermal) absorption'>経皮吸収</span>もわずか"] --> G["高い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective toxicity'>選択毒性</span>"]

💡 に共通する機序である。 フェノトリンもと同じく、無脊椎動物とのNa⁺チャネル構造の違いを利用してを得ている。薬効薬理上のは「神経細胞のNa⁺チャネルに作用してを示す」とだけ添付文書に記載され、のように詳細なの機序が書き分けられているわけではない1。

薬物動態

項目 値・特徴
外用(ローション5%、用)
に共通してわずかとされる
不完全。少なくとも2回の塗布が前提となる

⚠️ 少なくとも2回の塗布が用法そのものに組み込まれている。 1週間隔で1回1本(30 g)を塗布し、の不完全さを反復塗布で補う設計はと共通する1。

適応

領域 使いどころ
用ローション5%(医療用医薬品) の日本国内での標準的な外用薬。・爪では有効性及び安全性は確立していないと添付文書に明記される1
用シャンプー・パウダー(一般用医薬品) (・)に対する日本初のOTC駆除薬として1981年に発売されたのが始まりで、以後シャンプータイプなどが加わっている

⚠️ 同じ成分でも、用と用は別の製品である。 用ローション5%はの処方を要する医療用医薬品で頸部以下の全身に塗布するのに対し、用はOTCで頭髪など患部にのみ使用する。「フェノトリンだから同じ使い方でよい」と考えない。

用法・用量

(ローション5%):1週間隔で1回1本(30 g)を頸部以下(頸部から足底まで)の皮膚に塗布し、塗布後12時間以上経過してから洗浄・除去する。少なくとも2回塗布する1。小児では塗布量を適宜減量するが、は実施されていない1。

日本学会の診療ガイドラインでは、体重15 kg以上の患者にフェノトリン外用が推奨度A、生後2か月以上15 kg未満の小児・生後2か月未満の乳児・妊婦・には推奨度C1(行うことを考慮してもよいが十分な根拠が無い)として位置づけられている。詳しくはノートを参照。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者1
  • ⚠️ ・爪では有効性・安全性が確立していない。 とは病態(虫体数が桁違いに多い)が異なるため、これらの病型には別途内服との併用を検討する1
  • 妊婦は治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用し、は使用時に授乳の継続または中止を検討する1
  • 眼・粘膜には使用しない
  • ⚠️ 全体で耐性の懸念が報告されている。 ではNa⁺チャネルのを背景とする耐性が地域によっては85〜99%に達するとされ2、でも同様のkdr関連変異(M918L)が治療不応例から高頻度に検出されている3。フェノトリンとは同じを標的とするため、これらの耐性機構が理論上はフェノトリンの効果にも影響しうる点を踏まえておく

副作用

頻度 内容
高頻度 皮膚炎(2.0%)、紅斑、掻痒1
・上昇(各2.0%)1
重篤・まれ 接触性皮膚炎、水疱1

まとめ

  • と同じの外用(を開いたまま固定し麻痺・死滅させる)だが、日本国内でに承認されている唯一の外用薬という点が最大の特徴。
  • 用はローション5%を1週間隔で1回1本、12時間以上経過後に洗浄、少なくとも2回塗布。用はOTCのシャンプー・パウダーで別製品である。
  • ・爪では有効性・安全性が確立していない。妊婦・・小児では使用経験が限られ、日本学会ガイドラインでも推奨度C1にとどまる。
  • 主な副作用は皮膚炎・/上昇(各2.0%)。禁忌は成分への過敏症の既往のみ。
  • と標的分子(Na⁺チャネル)を共有するため、・で報告されている耐性()が理論上はフェノトリンの効果にも影響しうる。

出典

  1. 1.スミスリンローション5% 電子添文(2023年10月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/クラシエ薬品株式会社・2023)日本で疥癬に承認されている外用薬がピレスロイド系のフェノトリン5%ローション(スミスリンローション5%)であり、効能又は効果が疥癬のみであること、用法が「1週間隔で1回1本(30 g)を頸部以下(頸部から足底まで)の皮膚に塗布し、塗布後12時間以上経過してから洗浄・除去」で少なくとも2回塗布すること、禁忌が本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者のみであること、角化型疥癬・爪疥癬における有効性・安全性は確立していないと5.2に明記されること、薬効薬理としてピレスロイド系化合物が神経細胞のNa⁺チャネルに作用して殺虫作用を示すこと、妊婦は治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用し授乳婦は使用時に授乳の継続又は中止を検討すること、小児では塗布量を適宜減量し臨床試験は実施されていないこと、主な副作用が皮膚炎2.0%・AST上昇2.0%・ALT上昇2.0%で接触性皮膚炎・水疱などの発現報告があることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Evaluation of resistance of human head lice to pyrethroid insecticides: A meta-analysis study(Heliyon (Abbasi E, et al.)・2023)頭ジラミのピレスロイド系薬剤への耐性は地域差が大きく、一部地域で85〜99%に達することを確認した閲覧 2026-08-02
  3. 3.Detection of a knockdown mutation in the voltage-sensitive sodium channel associated with permethrin tolerance in Sarcoptes scabiei var. hominis mites(Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology・2023)疥癬の起因虫であるヒゼンダニにも電位依存性Na⁺チャネルのkdr関連変異(M918L)が検出され、ペルメトリン治療不応例で高頻度に見られたことを確認した閲覧 2026-08-02