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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬

ペルメトリン

permethrin

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(EU)
Lyclear
科目
PharmacologyDermatology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs2-14: Scabies2-15: Pediculosis
承認適応
疥癬シラミ症
副作用
灼熱痛掻痒紅斑

🧠 全体像:は由来の天然を合成的に安定化させたの外用であり、との第一選択である。節足動物のを開いたまま固定し、神経を持続的に脱分極させて麻痺・死滅に追い込む。Na⁺チャネルへの親和性が低いうえがごくわずかで、吸収分もエステラーゼで速やかに分解されるため、外用薬でありながらはほとんど問題にならない。この「局所にとどまる」性質が、経口で全身に薬が回るとの使い分けの土台になる。同じでもでは5%、では1%と濃度と塗布範囲がまったく異なる点は混同しやすい。

薬効群の中での位置づけ

の治療薬は、標的とする受容体・チャネルで3系統に分かれる。

薬剤 機序 経路 得意な場面
を開いたまま固定 外用 妊娠・授乳・乳幼児などを避けたい場面の第一選択
glutamate-gated Cl⁻チャネルを活性化 経口(一部外用) 、広範囲・集団感染、外用が難しい例
受容体を遮断 外用 神経毒性のため第一選択から外れ、多くの地域で使用制限

⭐ 標的分子(Na⁺チャネル vs Cl⁻チャネル)の違いが、そのままと使い分けにつながる。 局所にとどまるは妊娠・授乳・乳幼児で選びやすく、経口のは塗り残しが起こらずのような病型に向く。両者を併用することもある。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='permethrin'>ペルメトリン</span>が節足動物の<br>神経細胞膜へ到達"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated Na+ channel'>電位依存性Na⁺チャネル</span>に結合"]
    B --> C["チャネルの不活性化を遅らせ<br>開いたまま固定する"]
    C --> D["Na⁺流入が持続し脱分極が反復"]
    D --> E["神経・筋の異常興奮→麻痺→虫体の死滅"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mammal'>哺乳類</span>Na⁺チャネルへの親和性が低く<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous (transdermal) absorption'>経皮吸収</span>もわずかで速やかに失活"] --> G["高い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective toxicity'>選択毒性</span>"]

💡 は1つの理由ではなく、構造・吸収・代謝の3つが重なって成り立つ。 とはNa⁺チャネルの構造が異なり結合しにくいこと、皮膚から血中へほとんど移行しないこと、移行した分もエステラーゼで速やかに失活することである。「無脊椎動物にしかない受容体」という1点でを得るとは対照的である。

薬物動態

項目 値・特徴
外用(・ローション)
健常皮膚からはごくわずか(数%程度)
代謝 吸収分は肝臓・皮膚のエステラーゼで速やかに加水分解
排泄 代謝物は主に
不完全。生き残った虫卵からのに備え反復塗布が前提となる

⚠️ が不完全であることが、反復塗布という用法の根拠になる。 1回の塗布で成虫・幼虫は死滅しても、殻の中の虫卵の一部は生き残りうる。のタイミングに合わせて数日〜1週間後に再塗布し、取りこぼした世代を断つ。

適応

⚠️ 日本の保険診療でに用いる外用薬はではない。 国内で「」を効能・効果として承認されている外用薬は、同系統のフェノトリン5%ローション(スミスリンローション5%)であり、用法は「1週間隔で1回1本(30 g)を頸部以下(頸部から足底まで)に塗布し、12時間以上経過してから洗浄・除去」、少なくとも2回塗布する1。・爪での有効性・安全性は確立していないと明記されている1。海外のガイドラインを読むときは「5% permethrin」を国内のフェノトリンに読み替えて考える。

用法・用量

  • (5%):全身へ塗布し、一定時間後に洗い流したうえで反復する。⚠️ 塗布範囲と放置時間の指定は資料・国で食い違う——米国 2021は「頸部以下・8〜14時間」、英国BASHH 2025は「眼の周囲を避けて頸部・顔・耳・頭皮を含む全身に薄く、粘膜は避け、12時間後に洗い流す」とする2。詳しい比較はノートを参照
  • BASHH 2025の実務上の指示:頭頸部への塗布は全例に勧めるがとくに65歳超と免疫不全者で重要。12時間以内に手を洗ったら手に塗り直す。成人の多くは1回1本(30 g)で足りるが2本(60 g)を要することもある。1回では全身を覆いきれないことが多いため1〜2週後に再塗布する2。⚠️ 乳幼児では頭皮・・顔面まで塗布範囲を広げる——この年齢ではでも頭頸部に病変が及ぶ
  • ・(1%製剤):頭髪またはなど患部にのみ用い、が不十分な製剤では約7〜10日後に反復する3
  • 濃度(5% vs 1%)と塗布範囲(全身 vs 患部のみ)が病型で別物であり、取り違えない

禁忌・注意

  • 植物()や他の薬剤への既知の過敏反応がある患者では避ける
  • 生後2か月未満の乳児では安全性・有効性が未確立
  • 妊娠・授乳中はのわずかさを踏まえ使用可能と判断されやすい
  • ⚠️ (Pediculus humanus capitis)への耐性は地域差が大きく、一部地域では既に高率に達している。 Na⁺チャネルのを背景とする抵抗性が報告されており、地域の耐性状況を踏まえた選択が求められる4。側でも同様のkdr関連変異(M918L)が治療不応例から高頻度に検出されている5
  • ⚠️ の耐性は資料で評価が割れている。 英国BASHH 2025は、への臨床的感受性低下が欧州から報告され耐性のも解明されつつある一方で、した患者でこれらの変異が実際に出現したという確認された証拠は現時点で無いと評価している2。ただしBASHHが耐性のとして引く文献は2000〜2010年のもので、上記のM918L報告(2023年)は引用されていない5。「変異は見つかっている/それがだと確定してはいない」という二段構えで扱い、どちらか一方だけをとして覚えない。第一選択の失敗が確認された場合は、経口と外用薬(5%・0.5%・25%安息香酸ベンジル)の併用を、可能なら服薬・塗布を見届ける形で検討する2
  • 眼・粘膜には使用しない

副作用

頻度 内容
高頻度 塗布部位の・刺すような感覚、掻痒、紅斑
注意 一過性の感、
重篤・まれ 、まれなアレルギー反応

⚠️ をと混同しない。 の掻痒は虫体・虫卵・へのが本体であり、虫体死滅後も抗原が皮膚に残る間は数週間続きうる。新しい病変が出ていなければ、掻痒の遷延だけでとは判断しない。

まとめ

  • の外用。節足動物のを開いたまま固定し、持続的な脱分極で麻痺・死滅させる。
  • 親和性の低さ・わずかな・エステラーゼによる速やかな失活の3点がの土台であり、外用ゆえはほとんど問題にならない。
  • には5%(全身塗布)、には1%(患部塗布)と濃度・塗布範囲が病型で異なる。が不完全なため、いずれも数日〜1週間後の反復塗布が前提になる。
  • ・ともにNa⁺チャネルのを背景とした耐性報告があり、地域差を踏まえた選択が必要になってきている。
  • 治療後数週間続く掻痒()は過敏反応の遷延であり、新規病変が無ければのではない。
  • 日本ではにではなくフェノトリン5%ローションを用いる(頸部以下、12時間以上、1週間隔で少なくとも2回)。海外ガイドラインの「5% permethrin」との対応を意識する。

出典

  1. 1.スミスリンローション5% 電子添文(2023年10月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/クラシエ薬品株式会社・2023)日本で疥癬に承認されている外用薬が同じピレスロイド系のフェノトリン5%ローション(スミスリンローション5%)であり、用法が「1週間隔で1回1本(30 g)を頸部以下(頸部から足底まで)の皮膚に塗布し、塗布後12時間以上経過してから洗浄・除去」で少なくとも2回塗布すること、角化型疥癬・爪疥癬における有効性・安全性は確立していないと5.2に明記されることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.British Association for Sexual Health and HIV National Guideline on the Management of Scabies in adults 2025(British Association for Sexual Health and HIV (BASHH)・2025)疥癬の5%ペルメトリンクリームについて、成人・小児とも眼の周囲を避けて頸部・顔・耳・頭皮を含む全身に薄く塗布し(粘膜には塗らない)、頭頸部への塗布は全例に勧めるがとくに65歳超と免疫不全者で重要であること、12時間後に洗い流し12時間以内に手を洗った場合は手に塗り直すこと、成人の多くは1回1本(30 g)だが2本(60 g)を要することもあること、1回の塗布では全身を覆いきれないことが多いため1〜2週後に再塗布すること、ペルメトリンへの臨床的感受性低下が欧州から報告され耐性の分子経路も解明されつつある一方で治療失敗例で変異が実際に出現したという確認された証拠は現時点で無いこと、第一選択の失敗が確認された場合は経口イベルメクチンと外用薬(5%ペルメトリン・0.5%マラチオン・25%安息香酸ベンジル)の併用を検討することを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Head Lice(American Academy of Pediatrics・2022)1%ペルメトリンが頭ジラミ症の第一選択であり、殺卵効果が不十分な製剤では約7〜10日後に反復治療することを確認した閲覧 2026-08-02
  4. 4.Evaluation of resistance of human head lice to pyrethroid insecticides: A meta-analysis study(Heliyon (Abbasi E, et al.)・2023)頭ジラミのペルメトリン系薬剤への耐性は地域差が大きく、一部地域で85〜99%に達することを確認した閲覧 2026-08-02
  5. 5.Detection of a knockdown mutation in the voltage-sensitive sodium channel associated with permethrin tolerance in Sarcoptes scabiei var. hominis mites(Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology・2023)疥癬の起因虫であるヒゼンダニにも電位依存性Na⁺チャネルのkdr関連変異(M918L)が検出され、ペルメトリン治療不応例で高頻度に見られたことを確認した閲覧 2026-08-02