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Microbe Atlas · 節足動物

Sarcoptes scabiei

ヒゼンダニ

分類
ダニ / MitesSarcoptes
科目
Dermatology
トピック
2-14: Scabies
原因となる疾患
疥癬

🧠 全体像内だけで一生を終える偏性のダニで、という一つの疾患を起こす。同じ種でありながら、宿主の免疫状態によって虫体数が桁違いに変わるという一点が臨床像・感染力・のすべてを左右する——免疫が保たれた宿主では虫体数はわずか10〜15匹にとどまるのに対し、細胞性免疫が働きにくい宿主では数百万匹にまで爆発的に増殖し、「角化型(ノルウェー)」という別人のような臨床像を呈する。

微生物学的な特徴

  • 節足動物門ダニ目に属する体長0.2〜0.4 mm程度の微小なダニ。肉眼では見えず、や鏡検で初めて確認できる
  • ヒトに寄生する変種はSarcoptes scabiei var. hominisと呼ばれる。他のに寄生する変種(イヌなど)は宿主特異性が高く、の変種がヒトに一過性の皮疹を起こしても内で世代を重ねることはできない
  • 雌成虫は内にトンネル()を掘り進みながら1日に2〜4個の卵を産み、をトンネル内に沈着させる1。トンネルは長さ1〜10 mm程度の細く波打った白色〜灰色の線で、先端に虫体を宿す小水疱・びらんを伴う1

病原性の仕組み

同じ種のダニが、宿主の免疫状態一つで「わずか10〜15匹」から「数百万匹」まで桁違いに増殖しうる。 これがという臨床像のそのものである。

病型 虫体数 免疫状態
10〜15匹程度1 細胞性免疫が虫体増殖を抑制している
角化型(ノルウェー) 数百万匹に達しうる1 ・重度の自己免疫疾患・糖尿病・や麻痺による能力の低下などで増殖抑制が働かない2

💡 臨床像の違いは、虫体数の違いから素直に説明できる。 ・丘疹・小水疱は少数の虫体・虫卵・排泄物に対するが主体だが、では虫体数そのものが厚い鱗屑・痂皮を作り出し、はむしろ乏しいことがある。虫体数の多さがそのまま感染力の高さに直結し、よりはるかに伝播しやすい。

感染経路と疫学

  • 主に長時間の直接で伝播する。では物品を介する感染は多くないが、虫体数が桁違いに多いでは衣類・寝具・家具からの伝播も起こりうる
  • 好発:閉鎖環境での集団生活(介護施設・病棟)、免疫抑制状態にある患者

起こす疾患

(詳しい臨床像・分布・治療は当該ノートを参照)。は厚い性の鱗屑・痂皮を特徴とし、免疫抑制・神経障害・高齢者に多い。

診断

  • でトンネル先端の虫体(頭部・胸部・が濃い三角形に見える“kite sign”、空気を含むトンネルの“wake sign”、糞塊がトンネル縁を着色する“grey-edged line sign”)を確認する。この所見の感度は98.3%、特異度は88.5%と報告される2
  • トンネル・丘疹をし、鏡検で虫体・虫卵・糞塊を直接確認する
  • は鱗屑中に多数の虫体・虫卵が容易に見つかる

治療と予防

による具体的な用法・用量はノートを参照。

⚠️ 治療後数週間続くと混同しない。 経口投与後にみられる一過性の増悪は、大量の虫体が急速に死滅する際に放出される抗原への反応であり1、生きた虫体が残存しているではない。新しいトンネル・丘疹が出現していなければ、の遷延だけでと判断しない。

まとめ

  • 内だけで生活環を完結する偏性のダニで、の起因種である。
  • では虫体数がわずか10〜15匹にとどまるのに対し、角化型(ノルウェー)では免疫抑制などを背景に数百万匹まで爆発的に増殖する——この桁違いの差が臨床像・感染力・を分ける。
  • 診断は(kite sign・wake sign・grey-edged line sign、感度98.3%・特異度88.5%)とトンネル・丘疹の鏡検による。
  • 治療後数週間続くは虫体死滅産物への反応であり、新規病変がなければではない。

出典

  1. 1.Scabies(StatPearls / NCBI Bookshelf (Ziebold C, Crane JS)・2025)通常疥癬では虫体数が10〜15匹程度にとどまるのに対し角化型疥癬では数百万匹に達しうること、疥癬トンネルは末端に小水疱・びらんを伴う短い波状の白線であり雌成虫が1日に2〜4個の卵を産んで糞塊(scybala)をトンネル内に沈着させること、経口イベルメクチン治療後の一過性瘙痒は大量の虫体死滅に伴う抗原放出によるもので治療後瘙痒は数週間持続しうるが治療失敗を意味しないことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Scabies: Epidemiology, Diagnosis, and Treatment(Deutsches Ärzteblatt International (Sunderkötter C, Wohlrab J, Hamm H)・2021)ダーモスコピーによる虫体・トンネルの所見(kite sign・wake sign・grey-edged line sign)の感度98.3%・特異度88.5%であること、免疫抑制・重度の自己免疫疾患・糖尿病・末期腎不全・掻爬能力の低下などが虫体数の制御不能な増殖(角化型疥癬)の危険因子であることを確認した閲覧 2026-08-10