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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

疥癬

Scabies

別名
Sarcoptes scabiei infestation
臓器系
感染症皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 2-14:疥癬
鑑別疾患
アトピー性皮膚炎ジアノッティ・クロスティ症候群ばら色粃糠疹寄生虫妄想後天性穿孔性皮膚症脂漏性皮膚炎尋常性乾癬接触皮膚炎虫刺され梅毒疱疹状皮膚炎痒疹
合併症
細菌性皮膚感染症(伝染性膿痂疹・毛包炎・せつ・よう)丹毒・蜂窩織炎
関連疾患
シラミ症
治療薬
ペルメトリンイベルメクチンリンデンフェノトリン
原因微生物
Sarcoptes scabiei(ヒゼンダニ)
症状
小水疱掻痒丘疹
適応薬
クロタミトンスピノサドフェノトリンペルメトリンリンデン安息香酸ベンジル

🧠 全体像:はSarcoptes scabiei var. hominisが内へ潜り、虫体・虫卵・に対するで強い夜間掻痒を起こす感染症である。本人だけでなく同居者・を同時に治療してを断つのが核心となる。

病態と感染経路

主に長時間の直接で伝播する。では物品を介する感染は多くないが、虫体数が非常に多いでは衣類・寝具・家具も感染源となる。

flowchart TD
  A["感染者との濃厚な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin-to-skin contact'>皮膚接触</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adult female worm'>雌成虫</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum corneum'>角層</span>内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burrow'>疥癬トンネル</span>を形成"]
  B --> C["虫卵・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excreta'>排泄物</span>を沈着"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed-type hypersensitivity (DTH)'>遅延型過敏反応</span>"]
  D --> E["夜間に強い掻痒・丘疹・小水疱"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scratching (excoriation)'>掻破</span>"]
  F --> G["湿疹化・細菌性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary infection'>二次感染</span>"]

初感染では感作に2〜6週かかるが、では1〜4日で症状が出ることがある。無症状潜伏期にも伝播しうる。

臨床像

病型 特徴
夜間増悪する全身掻痒。、手関節、腋窩、臍周囲、腰、臀部、乳房、男性の丘疹・小水疱・
数mm〜1 cm程度の細い線。先端に黒点状の虫体を認めることがある
乳幼児・高齢者 頭頸部、顔、手掌、足底にも病変が及びうる
免疫抑制・神経障害・高齢者などに多い。厚い鱗屑・痂皮と多数の虫体を伴い、掻痒が弱い場合もある。感染力が極めて高い

⭐ ・手関節・のと、同居家族内での同時発症が診断の重要な手掛かりになる。

⚠️ で臨床像が崩れたを見逃さない。 を使うと臨床像が変わり、湿疹に似たな丘疹が広範に出る。症状は隠れるが感染性は残っている——英国BASHH 2025はこれを scabies incognito と呼んでいる1。掻痒に対して漫然とステロイドを塗ってから紹介されてくる例では、この可能性を考える。

を繰り返すとが破綻し、や蜂窩織炎などの細菌性を合併しやすい。特に掻痒の強い小児例やで頻度が高い。

診断

  • 典型分布、夜間掻痒、の同症状から疑う。
  • でトンネル先端の虫体を確認する。
  • トンネル・丘疹をし、鏡検で虫体、虫卵、を確認する。
  • テープ法:透明テープの面をなどの病変へしっかり当て、数秒後に剥がしてそのままガラスに貼り付けて鏡検する。と組み合わせてもよい1。
  • トンネル墨汁試験(BIT):疑わしい丘疹に黒または青のインクを塗り、アルコールで表面のインクを拭き取る。トンネル内に残ったインクが線状に浮かべば陽性1。
  • ⚠️ 鏡検の感度は46〜90%と幅がありが高い。一方で特異度は100%である1。つまり陽性なら確定、陰性でも否定できないという非対称な検査であり、臨床的疑いが強ければ鏡検陰性で除外しない。

2020年に国際制圧同盟(IACS)が、確実性の異なる3段階・8小分類からなる合意を定めた。鏡検が使えない現場でも診断の水準を揃えられるよう設計されている2。

段階 小分類 内容
A:確定 A1 皮膚検体ので虫体・虫卵・糞を確認
A:確定 A2 高倍率の画像機器で虫体・虫卵・糞を確認
A:確定 A3 で虫体を確認
B:臨床的 B1
B:臨床的 B2 男性の典型的皮疹
B:臨床的 B3 典型的皮疹が典型的分布にあり、かつ病歴項目2つ
C:疑い C1 典型的皮疹が典型的分布にあり、かつ病歴項目1つ
C:疑い C2 な皮疹または分布で、かつ病歴項目2つ

病歴項目は H1:掻痒、H2:接触歴の陽性、の2つである。

⚠️ BとCは確定診断ではない。他のがより可能性が低いと判断できる場合にのみ、臨床的・疑いと診断してよい2。

鑑別診断

は他の皮膚疾患と取り違えられやすく、疑うこと自体が診断の第一歩になる。英国BASHH 2025は、とそれぞれについてを別々に列挙している——顔ぶれが入れ替わるためである1。

病型 鑑別に挙がる疾患 見分ける手がかり
・、様反応、、、、、、、二期梅毒 ・手関節・という分布、、夜間増悪、の同症状。結節を作る例ではリンパ腫・も挙がる
、湿疹、、、、皮膚リンパ腫 厚い痂皮状鱗屑の中に多数の虫体・虫卵が容易に見つかること。掻痒が乏しくても否定しない

⭐ 二期梅毒とは、側からも側からも互いに鑑別に挙がる。 体幹の紅斑という共通の見た目に対し、はトンネルと分布、梅毒は・粘膜病変と血清学的検査、はとに沿う分布で切り分ける。

治療

病型 治療
5%の外用と、経口200 µg/kgの2つが第一選択で、の系統的レビューでは有効性が同等とされる。どちらを選んでも初回の7〜14日後に2回目を行う1。塗布範囲と放置時間は資料で違う(下記⚠️)
経口の実際 1日目に投与し、2回目は8日目(必要なら15日目まで遅らせてよい)1。米国 2021は「14日後に反復」と書く3。体重15 kg超で承認されており1、15 kg未満では安全性が確立していない3
経口と外用との3者併用。 2021は経口200 µg/kgを1・2・8・9・15日目(重症例では22・29日目を追加)に投与し、5%の全身塗布を7日間連日、その後は治癒まで週2回反復するとし3、BASHH 2025は重症度3段階に応じて28日間で3回・5回・7回の経口200 µg/kgとする1。隔離・感染対策を徹底する

💡 経口で2回目が要るのは、この薬が殺卵性を持たないからである。 1回目で成虫・幼虫は麻痺・死滅しても、殻の中の虫卵はすり抜ける。して次の世代が成虫になる前に2回目を当てる、という設計であり、外用の反復塗布と理屈は同じである。

⚠️ を空腹時に飲むか食後に飲むかは、資料の立場が割れている。 製造販売業者の(SmPC)は空腹時の服用を指示するが、BASHH 2025は「食事とともに服用するとと真皮への移行が高まる可能性がある」と付記している1。の虫体は皮膚にいるので、真皮濃度が上がるかどうかがそのまま治療効果に効く、というのが食後投与を支持する側の論拠である。

💡 で外用と経口を併用するのは、虫体数が桁違いに多く角質が厚いためである。外用の単回塗布だけ、あるいは経口単独では、相当なが起こりうる( 2021 の原文は “might occur” で、頻度を断定していない)3。BASHH 2025はとして乳酸と尿素の製剤を挙げ、細菌感染を伴うことが多いための追加をしばしば要するとし、伝播リスクのためなどの臨床的必要が無い限り入院は避け、早期に医が関与することを勧めている1。

⚠️ ・爪では、日本で承認されている外用薬の有効性・安全性が確立していない。 フェノトリン5%ローションの電子添文は5.2で「及び爪における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)」と明記している4。厚い痂皮が薬剤の浸透を妨げる病型であり、との併用が要る所以でもある。

外用薬の塗布範囲・放置時間は資料と国で違う

⚠️ どれか一つを唯一の正解として覚えない。 同じ「5%(あるいは同系統の外用薬)を全身に塗る」でも、範囲と時間の指定は資料ごとに異なる。

資料 塗布範囲 放置時間 反復
米国 20213 頸部以下の全身 8〜14時間 —
英国BAD/BSPAD 20235 眼の周囲を避けるほかは、体幹・頸部・頭皮・顔を含む皮膚のすべて(製品の説明書が頭皮・顔を避けるよう示唆することがあるが、これらの部位も治療するのが最善) 12時間以上(12時間後にもう一度塗って計24時間とする方法も挙げる) 7日後
英国BASHH 20251 頸部・顔(眼の周囲は避ける)・耳・頭皮を含む全身に薄く。粘膜には塗らない。頭頸部への塗布は全例に勧めるが、とくに65歳超と免疫不全者で重要 12時間後に洗い流す。12時間以内に手を洗ったら手に塗り直す 1〜2週後
日本(フェノトリン5%ローション)4 頸部以下(頸部から足底まで) 12時間以上 1週間隔で少なくとも2回

💡 範囲の食い違いは臨床的に一方向の危険を持つ。 本ノートが上で述べたとおり乳幼児・高齢者・免疫不全者では頭頸部・顔にも病変が及ぶので、頸部以下だけを塗ると取り残す。BASHH 2025が全例に頭頸部塗布を勧める理由もここにある。逆に、日本の承認用法は頸部以下なので、頭頸部に病変がある例では承認範囲を超える塗布になることを踏まえて判断する。

⚠️ BASHH 2025は塗布の実務も具体的に定めている——爪は事前に切り、手指・手関節・爪の下・間・周囲・足底・・に念入りに塗る。指輪などは外し、外せなければずらして下にも塗る。熱い入浴・シャワーの直後を避け、冷えた清潔な乾いた皮膚に塗り、乾いてから着衣する。成人は1回1本(30 g)が目安だが、2本(60 g)を要することもある1。

日本で使える薬と推奨度

⚠️ 海外のガイドラインが「5%」と書く場面で、日本の保険診療で使う外用薬は同じのではなくフェノトリン5%ローションである。 効能・効果は「」で、頸部以下に1週間隔で塗布する4。経口は日本でもに保険適用がある。

日本学会の診療ガイドライン(第3版追補、2018年)は、患者ごとに推奨度を分けている6。

患者 推奨度A 推奨度C1(行うことを考慮してもよいが十分な根拠が無い)
体重15 kg以上 フェノトリン外用、内服 イオウ剤外用、クロタミトン外用、安息香酸ベンジル外用
生後2か月以上・体重15 kg未満の小児 — フェノトリン外用、イオウ剤外用、クロタミトン外用
生後2か月未満の乳児 — フェノトリン外用
妊婦 — フェノトリン外用、イオウ剤外用、クロタミトン外用
— フェノトリン外用
  • ⚠️ 15 kg未満・乳児・妊婦・に推奨度Aの選択肢が無い。 フェノトリンはこれらの群で「安全性が確立していない(使用経験がない)」ため、患者・保護者へ十分に説明し同意を得たうえで使う。では使用時に少なくとも1週間授乳を中止する6。
  • ⚠️ は体重15 kg未満の小児への安全性が確立しておらず、妊婦への安全性も確立していない(で催奇形性あり)6。
  • クロタミトンは保険適用外(保険審査上は認められている)、安息香酸ベンジルは特殊製剤のため患者への説明と同意が要る6。
  • ⭐ 同ガイドラインは「成人ので顔面・頭部への外用が不要とされる理由は不明である」と正直に書いている。 小児と高齢者ではでも顔面・頭部からが検出されることがあり、顔面の角化性病変の内に虫体が寄生した症例報告もある6。頸部以下という国内の用法は、根拠が確立しているというより慣行に近いものとして扱う。

妊娠・授乳

⚠️ 妊娠・授乳中はなどの外用薬を用いる。 2021は「が妊婦にもたらすリスクは低いと考えられ、授乳とも両立しうるが、妊婦・での使用データが限られるためが望ましい治療である」とする3。英国BASHH 2025はさらに踏み込み、経口は妊娠中には推奨しない(胎児・授乳中の乳児に対する安全性が不確実であることと、外用より有効性が優れる根拠が無いことの2点を理由に挙げる。Grade 2D)としている1。

⚠️ ただし「は妊娠中禁忌/安全性が否定されている」と読み替えない。 BASHH 2025の理由づけは「不確実」と「の根拠が無い」であって、危険性が示されたという主張ではない。BAD/BSPAD 2023 が妊娠・授乳・乳児について「特定の研究が無い」と述べているのは(・・安息香酸ベンジル)についてであり、についてではない5。日本のフェノトリンローションも妊婦は有益性投与、は継続・中止を検討する扱いである4。

⚠️ 授乳の扱いは資料の時点で違う。 日本学会のガイドライン(2018年)はフェノトリン使用時に「少なくとも1週間授乳を中止する」とするが6、その後改訂された電子添文(2023年10月)の9.6は「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」で、一律の中止を求めていない4。新しいのは電子添文の側である。

⚠️ 授乳中は、乳頭に付いた薬剤を授乳前に除去し、授乳後に塗り直す1。

⚠️ は神経毒性があり第一選択ではない。 2021 は代替レジメンとして「1%を頸部以下の全身に薄く塗り8時間後に十分に洗い流す」を挙げるにとどめる3。、妊娠・授乳、乳幼児、高齢者、けいれんリスク、広範な皮膚障害では用いない。

接触者と環境対策

  • 同居者、性的接触者、を同日に治療する。発症の2か月前まで遡ってを洗い出す1。
  • 無症状のも治療する。 感染から発症までに6週間かかりうるため、症状が無いことは未感染の証拠にならない1。も指標症例と同様に、7〜14日あけた2回の治療を完了する。
  • 治療前3日間に使用した衣類・寝具・タオルを高温洗濯・高温乾燥する。
  • 洗えない物は密封袋に少なくとも72時間から1週間保管する。−10℃以下で5時間以上凍結させる方法もある1。
  • 殺虫剤の室内散布やマットレス廃棄は通常不要である。
  • 性行為を含む濃厚なは、本人との双方が治療を済ませ、寝具・衣類の対策を行ったうえで、初回12時間塗布の終了から24時間以上、または経口初回投与から24時間以上あけるまで控える1。
  • 性感染症としての側面があるため、他の性感染症のスクリーニングを提案する1。
  • 介護施設・寄宿舎・刑務所などの閉鎖環境で、疫学的につながる2例以上が8週間以内に発生したときは、地域の感染対策担当へ連絡する1。

治療後の掻痒と治療失敗

⚠️ 掻痒が続くこと自体はではない。 の掻痒は虫体・虫卵・に対するが本体なので、虫が死んでも抗原が皮膚に残る間は続く。

資料 治療後の掻痒・皮疹の経過
米国 20213 通常2週間未満で軽快する。2週を超える持続は、耐性・塗布不良を含む複数の要因を評価する
英国BASHH 20251 通常2〜4週で改善するが、3分の1では4週〜3か月続く(症状消失までの中央値52日)。これは虫体・虫卵がされたあとでも起こる
日本の電子添文4 の死滅後もアレルギー反応として全身の掻痒が遷延することがある。掻痒が持続しても、特徴的な皮疹の発生や感染が認められない場合は漫然と再塗布しない
  • そのものへの対処は、クロタミトン10%(1日2〜3回)またはで行う。湿疹化した部位には、夜間には鎮静性抗ヒスタミン薬が睡眠の助けになるが、掻痒の機序そのものを治すわけではない1。

  • ⭐ 「治療が効いていない」と判断する根拠は、掻痒の持続ではなく虫の存在である。 治療完了から7日を超えて新しいや虫体が見えるときは追加治療の適応になる1。最終投与から4週を超えて掻痒が続くときは、鏡検・テープ法・で再評価する。

  • に見えるとき、まず疑うのはではない。診断そのものの誤り、外用薬・衛生習慣による皮膚炎、塗り方の不備、7〜14日後の2回目を行っていないこと、角化した皮膚・爪への薬剤浸透不良、免疫抑制、未治療のや寝具からの、、の処方・服用の誤りが挙がる1。

  • 実際に治療が失敗することもある。2018年のでは治癒率が74〜93%、68〜86%であり、そもそも100%効く薬ではない1。の徹底が重要で、は単回投与(失敗率15.2%)より2回投与(7.1%)のほうが失敗率が低い7。

  • ⚠️ 耐性は「懸念されているが確定していない」段階にある。 英国BASHH 2025は、への臨床的感受性低下が欧州から、への感受性低下が流行地から報告され、両薬について耐性のも解明されつつある一方で、した患者でこれらの変異が実際に出現したという確認された証拠は現時点で無いと評価している1。英国BAD/BSPAD 2023は耐性を示す変異虫体の報告があるとしており5、のが長期的に上昇していることも報告されている7。日本学会のガイドラインは、抵抗性は存在する(オーストラリアから、を多量・多数回使用した症例で報告されている)とする一方、フェノトリン抵抗性の報告は現在まで無いが、フェノトリン抵抗性のが存在する以上、適正な用法・用量で使わなければ出現しうると注意を促している6。どちらか一方を唯一のとして覚えず、「疑うが決めつけない」姿勢で扱う。

  • 💡 で外用と内服を併用する理由には、耐性の誘発予防も含まれる。 治療期間が長くなる病型なので、単剤を長く当て続けると抵抗性を誘発しかねない——日本学会はこの理由からフェノトリン外用と内服の併用を勧めている6。

  • 第一選択の失敗が確認された場合は、経口と外用薬(5%、0.5%、25%安息香酸ベンジルのいずれか)の併用を、可能なら服薬・塗布を見届ける形で検討する1。

まとめ

  • は内のとその抗原への過敏反応で、夜間掻痒を起こす。
  • ・手関節・のとが重要な手掛かりである。
  • の第一選択は5%外用と経口200 µg/kgの2つで有効性は同等とされ、いずれも7〜14日後の2回目が必須。角化型は経口・外用・を併用する。
  • 外用薬の塗布範囲と放置時間は資料と国で違う(・日本は頸部以下、英国は頭頸部・顔を含む全身)。乳幼児・高齢者・免疫不全者では頭頸部を外さない。
  • 日本でに用いる外用薬はではなくフェノトリン5%ローションで、日本学会は体重15 kg以上に対しフェノトリン外用と内服をともに推奨度Aとする。15 kg未満・乳児・妊婦・には推奨度Aの選択肢が無い。
  • 妊娠・授乳中は外用薬を用いる。ただし「が妊娠中に危険と示された」わけではない。
  • 治療後の掻痒は数週間〜数か月続きうる。追加治療の根拠は掻痒の持続ではなく、新しいトンネル・虫体の存在である。
  • の同時治療と衣類・寝具対策が防止の核心である。発症2か月前まで遡り、無症状のも治療する。

出典

  1. 1.British Association for Sexual Health and HIV National Guideline on the Management of Scabies in adults 2025(British Association for Sexual Health and HIV (BASHH)・2025)通常疥癬の第一選択が5%ペルメトリンクリーム外用と経口イベルメクチン200 µg/kgの2つで、無作為化比較試験の系統的レビューで有効性は同等とされ、いずれを用いても初回の7〜14日後に2回目を行うこと(イベルメクチンは1日目と8日目、必要なら15日目まで)、イベルメクチンが体重15 kg超で承認されており製造販売業者のSmPCは空腹時服用を指示するが食後服用は生物学的利用能と真皮移行を高めうること、ペルメトリンは眼囲を避けて頸部・顔・耳・頭皮を含む全身に薄く塗り(粘膜は避ける)12時間後に洗い流し(12時間以内に手を洗ったら手に再塗布)、頭頸部塗布は全例に勧めるがとくに65歳超と免疫不全者で重要で、爪を切り指趾間・爪下・乳輪周囲・足底・臀裂・外陰部に念入りに塗り、冷えた清潔な乾いた皮膚に塗って乾いてから着衣し、成人は1回30 g(最大60 g)を要し1〜2週後に再塗布すること、角化型疥癬は重症度3段階に応じ経口イベルメクチン200 µg/kgを28日間で3・5・7回投与し外用殺虫薬と角質溶解薬(乳酸・尿素)を併用し全身抗菌薬をしばしば要すること・重症敗血症などの臨床的必要が無い限り入院を避け早期に皮膚科医が関与すること、妊娠・授乳中はペルメトリンを用い経口イベルメクチンは胎児・乳児への安全性が不確実で外用より優れる根拠も無いため推奨しないこと(Grade 2D)・授乳時は乳頭の薬剤を除去し授乳後に塗り直すこと、診断では粘着テープ法(テープの粘着面を病変に当て数秒後に剥がしてスライドへ)とトンネル墨汁試験が使え、鏡検の感度は46〜90%と術者依存だが特異度は100%で陰性でも疥癬を除外できないこと、外用ステロイド使用後のscabies incognitoでは症状が隠れても感染性が残ること、通常疥癬の鑑別に伝染性膿痂疹・毛包炎・丘疹性蕁麻疹様反応・アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎・疱疹状皮膚炎・乾癬・脂漏性皮膚炎・ばら色粃糠疹・二期梅毒・(結節例の)リンパ腫と偽リンパ腫が、角化型疥癬の鑑別に乾癬・湿疹・Darier病・毛孔性紅色粃糠疹・掌蹠角化症・皮膚リンパ腫が挙がること、接触者は発症2か月前まで遡って把握し無症状でも治療すること(発症までに6週間かかりうるため)・洗えない物は−10℃以下で5時間以上凍結する方法もあること・ペルメトリン初回12時間塗布終了から24時間以上または経口イベルメクチン初回投与から24時間以上あけるまで濃厚な皮膚接触を控えること・他の性感染症のスクリーニングを提案すること・閉鎖環境で疫学的に関連する2例以上が8週間以内に出たら感染対策担当へ連絡すること、治療後の掻痒・皮疹は通常2〜4週で改善するが3分の1では4週〜3か月持続し(症状消失までの中央値52日)虫体・虫卵が根絶されていても起こりうること・治療後掻痒にはクロタミトン10%クリーム1日2〜3回または保湿剤を用いること(Grade 1C)、治療完了から7日を超えて新しい疥癬トンネルや虫体が見えるときは追加治療の適応であること、治療失敗に見える原因として診断の誤り・薬剤や衛生習慣による皮膚炎・塗布不良・7〜14日後の2回目未施行・角化皮膚や爪への浸透不良・免疫抑制・未治療接触者や寝具からの再感染・寄生虫妄想・イベルメクチンの処方や服用の誤りが挙がること、2018年のメタ解析で治癒率がペルメトリン74〜93%・イベルメクチン68〜86%であること、ペルメトリンへの臨床的感受性低下が欧州から・イベルメクチンへの感受性低下が流行地から報告され耐性の分子経路も解明されつつあるが治療失敗例で変異の出現が確認された証拠は現時点で無いこと、第一選択の失敗が確認された場合は経口イベルメクチンと外用薬(5%ペルメトリン・0.5%マラチオン・25%安息香酸ベンジル)の併用を可能なら管理下で検討することを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.The 2020 International Alliance for the Control of Scabies Consensus Criteria for the Diagnosis of Scabies(International Alliance for the Control of Scabies / British Journal of Dermatology・2020)2020年IACS診断基準が3段階・8小分類(A1〜A3の確定、B1〜B3の臨床的、C1〜C2の疑い)からなり、病歴項目が掻痒と接触歴の2つであること、臨床的・疑い疥癬は他の鑑別診断が疥癬より可能性が低いと判断できる場合にのみ下すべきことを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Ectoparasitic Infections — Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention・2021)経口イベルメクチンは14日後に2回目投与、角化型疥癬は経口イベルメクチン200 µg/kgを1・2・8・9・15日目(重症例は22・29日目を追加)に投与し、5%ペルメトリンクリームの全身塗布を7日間連日、その後治癒まで週2回反復すること、外用殺虫薬の単回塗布または経口イベルメクチン単独では相当な治療失敗が起こりうること("might occur")、治療後の発疹・掻痒は通常2週間未満で軽快し、2週を超える持続は耐性や塗布不良による治療失敗を含む複数の要因を評価すべきことを確認した閲覧 2026-08-02
  4. 4.スミスリンローション5% 電子添文(2023年10月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/クラシエ薬品株式会社・2023)日本で疥癬に承認されている外用薬がフェノトリン5%ローション(スミスリンローション5%)であり、用法が「1週間隔で1回1本(30 g)を頸部以下(頸部から足底まで)の皮膚に塗布し、塗布後12時間以上経過してから洗浄・除去」で、少なくとも2回の塗布を行い2回目以降は1週ごとに検鏡を含めて効果を確認して再塗布を考慮すること、5.2に「角化型疥癬及び爪疥癬における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)」と明記されること、禁忌が成分への過敏症の既往のみであること、8.2に「ヒゼンダニの死滅後もアレルギー反応として全身の瘙痒が遷延することがある。瘙痒が持続しても、特徴的な皮疹の発生や感染が認められない場合には、漫然と再塗布しないこと」とあること、潰瘍・びらん面への塗布を避け眼・粘膜には使用しないことを確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.Management of Scabies in the UK: Expert Consensus Guidance(British Association of Dermatologists / British Society for Paediatric Dermatology・2023)ペルメトリンは7日後に再塗布、イベルメクチンは非殺卵性のため7日後に2回目投与、ピレスロイド耐性を示す変異虫体の報告があることを確認した閲覧 2026-08-02
  6. 6.疥癬診療ガイドライン(第3版追補)(日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会・2018)表2「患者ごとの疥癬治療薬」が、体重15 kg以上ではフェノトリン外用とイベルメクチン内服をともに推奨度A、イオウ剤外用・クロタミトン外用・安息香酸ベンジル外用をC1とし、生後2か月以上で15 kg未満の小児・生後2か月未満の乳児・妊婦・授乳婦ではフェノトリン外用をC1(安全性が確立していないため説明と同意のうえで使用し、授乳婦では使用時に少なくとも1週間授乳を中止する)とすること、表1がイベルメクチンについて体重15 kg未満の小児への安全性は確立しておらず妊婦への安全性も確立していない(動物実験で催奇形性あり)とし、クロタミトンが保険適用外(保険審査上は認められている)で安息香酸ベンジルが特殊製剤のため患者への説明と同意を要すると注記すること、「成人の通常疥癬で顔面・頭部への外用が不要とされる理由は不明である」「小児と老人では通常疥癬でも顔面や頭部からヒゼンダニが検出されることがある」と述べていること、イベルメクチン抵抗性ヒゼンダニはオーストラリアからイベルメクチンを多量・多数回使用した症例で報告があり存在するが、フェノトリン抵抗性ヒゼンダニの報告は現在までなく、角化型疥癬では薬剤抵抗性の誘発予防のためフェノトリン外用とイベルメクチン内服の併用を勧めることを確認した。第3版(2015年)の英語版は2017年に公表され、その後新たな抗疥癬薬・治療法は登場していないため第4版の作成を延期したと追補の冒頭に明記されている。閲覧 2026-09-05
  7. 7.Failure of scabies treatment: a systematic review and meta-analysis(British Journal of Dermatology・2023)1983〜2021年の研究でペルメトリンの治療失敗率が年0.58%ずつ増加し、経口イベルメクチンも単回投与(失敗率15.2%)より2回投与(7.1%)のほうが失敗率が低いことを確認した閲覧 2026-08-02