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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

痒疹

Prurigo

臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-05:皮膚炎・湿疹群の臨床病型と治療
鑑別疾患
アトピー性皮膚炎虫刺症慢性単純性苔癬疥癬
合併症
丹毒・蜂窩織炎
治療薬
トリアムシノロンヒドロキシジンガバペンチンデュピルマブネモリズマブオロパタジン
症状
掻痒掻破痕
下位分類
結節性痒疹
適応薬
オキサトミド

🧠 全体像:痒疹は特定の疾患単位ではなく、強い掻痒を伴う丘疹・結節・局面が、掻痒との悪循環によって作られ・維持されるの総称である。経過期間6週間を境に急性・慢性に分け、慢性痒疹はさらに結節が優位な(など)、丘疹が優位な丘疹型、局面型・臍窩型・線状型に形態で細分される1。臨床で最も重要なのは、痒疹という「見た目のパターン」の背後に、のような的原因から、腎不全・肝疾患・悪性腫瘍・糖尿病・感染のような全身性の原因まで多様な基礎疾患が隠れうる点で、痒疹を診た時点で背景検索が診療の核になる。

定義・分類

痒疹は、強い掻痒を伴う丘疹・局面・結節を特徴とするの皮膚病変群であり、発症からの経過期間6週間を境に急性・亜急性(合わせて急性痒疹)と慢性痒疹に分けられる1。慢性痒疹はさらに、病変の主体をなす形態によって・丘疹型・局面型・臍窩型(を伴う)・線状型などに細分される1。は、この慢性痒疹のうち結節が優位な一亜型(chronic nodular prurigo)であり1、に硬い丘疹・結節が多発する定型像を持つ2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pruritus'>瘙痒</span>性丘疹・結節・局面"] --> B{"経過期間は?"}
    B -->|"6週間未満"| C["急性・亜急性痒疹"]
    B -->|"6週間以上"| D["慢性痒疹"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nodular type'>結節型</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prurigo nodularis'>結節性痒疹</span>)"]
    D --> F["丘疹型"]
    D --> G["局面型"]
    D --> H["臍窩型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>)"]
    D --> I["線状型"]

病態

慢性痒疹の病変は、掻痒との悪循環によって作られ、維持される。掻痒を感じてすると、表皮・真皮の機械的刺激とが神経終末をさらに感作し、掻痒がいっそう強まる——この循環が丘疹・結節を肥厚させ、慢性化させる1。では、脊髄における掻痒抑制経路の調節異常と末梢神経の感受性亢進というの変化に加え、や/経路を中心とするが掻痒シグナルを増幅するが中心的な役割を担うと考えられている1。

原因・基礎疾患

痒疹という臨床像の背景には、単一の原因ではなく複数の独立した基礎疾患がありうる。代表的な分類は次のとおりである1。

背景の分類 代表例
的原因 、、、
全身性原因 ・透析、肝硬変・などの胆汁うっ滞性肝疾患、、糖尿病、、感染
性・ 末梢神経障害、うつ病・不安症などの精神疾患を背景とする習癖
・原因不明 複数の要因が重なる例、精査でも原因が同定できない特発性の例

⚠️ 痒疹は「診断名」である前に「所見のパターン」である。 初診時には、的な既知疾患だけでなく、腎機能・肝機能・血算・血糖・検査などのスクリーニングを組み合わせて全身性の背景を除外する。

臨床像

強い掻痒を伴う孤立性〜多発性の丘疹・結節・局面が、左右対称に体幹・を中心に分布することが多い。を繰り返すため病変表面にはや色素沈着・を伴いやすく、慢性化すると硬く肥厚した結節()や潰瘍を伴う臍窩型に至る例もある1。

診断

診断は主に病歴とによる臨床診断である。急性か慢性か、単一皮疹か多発性かという経過・分布のに加え、基礎疾患の検索が診断の中心になる。皮膚生検は他疾患(、などの)との鑑別が必要な非定型例で行う。全身性の背景を疑う所見(体重減少、リンパ節腫脹、肝腎機能異常の既往など)があれば、血液検査・画像検査による背景疾患の精査を進める。

治療

治療は背景疾患の同定と治療を土台に、掻痒-を断つ段階的な対症療法を組み合わせる。第一段階は保湿と(など)による局所の炎症・掻痒の抑制で、日本では皮膚疾患に伴うそう痒に対してなどの抗ヒスタミン薬・も併用される。難治例では(など)や抗うつ薬、へ段階を進め、それでも制御不良な慢性痒疹には・などの生物学的製剤や阻害薬が選択肢になる1(ただし・の米国承認はに対するものであり、痒疹全般への適応ではない34)。も補助的に用いられる。

合併症

繰り返すによる皮膚バリア破綻は、・蜂窩織炎など二次的な細菌感染のリスクを高める。慢性の掻痒・不眠・外見の変化は生活の質を著しく損ない、精神的な負担も大きい。

まとめ

  • 痒疹は特定の疾患ではなく、掻痒との悪循環が作る丘疹・結節・局面というの総称であり、経過6週間で急性・慢性に、慢性はさらに・丘疹型・局面型・臍窩型・線状型に細分される。
  • 病態の中心は掻痒-で、脊髄レベルの掻痒抑制異常と末梢神経感作、・/を中心とするが関与する。
  • 背景にはなどの的原因から、腎不全・肝疾患・悪性腫瘍・糖尿病・感染などの全身性原因まで多様な基礎疾患がありうるため、診断時の背景検索が要になる。
  • 治療は基礎疾患の是正を土台に、・抗ヒスタミン薬から始め、・・生物学的製剤へ段階的に進める。

出典

  1. 1.Prurigo: review of its pathogenesis, diagnosis, and treatment(Anais Brasileiros de Dermatologia・2024)全文で、痒疹を「瘙痒性丘疹・局面・結節を特徴とする反応性過形成の皮膚疾患群」と定義し、発症からの経過期間6週間を分水嶺として急性・慢性に分類すること、慢性痒疹はさらに結節型・丘疹型・局面型・臍窩型(潰瘍化)・線状型などの臨床形態に細分されること、中枢の掻痒抑制経路の調節異常と末梢神経の感作、IL-31・IL-4/IL-13経路を中心とする免疫学的機序が掻痒-掻破サイクルを介して病変を維持すること、アトピー性皮膚炎・腎不全・肝疾患・内臓悪性腫瘍・糖尿病・HIV感染など複数の独立した基礎疾患が背景になりうること、治療は外用ステロイドから開始しガバペンチノイド・抗うつ薬・免疫抑制薬を経て生物学的製剤(デュピルマブ・ネモリズマブ)やJAK阻害薬に至る段階的アプローチが取られることを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Prurigo Nodularis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)結節性痒疹が、様々な原因による慢性痒疹に対する反復掻破の結果として発生する反応性の病態であること("thought to develop as a reaction to repeated scratching in patients with chronic prurigo")、四肢伸側を中心に多発する硬い丘疹・結節を特徴とすること、慢性腎不全・HIV感染・悪性腫瘍を背景疾患として挙げていることを確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.DUPIXENT (dupilumab) injection - Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2022)適応(Section 1.5)が「adult patients with prurigo nodularis」であることを確認。米国FDAが承認しているのは結節性痒疹に対してであり、痒疹全般への適応ではないことを確認した。閲覧 2026-09-05
  4. 4.NEMLUVIO (nemolizumab-ilto) for injection, for subcutaneous use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2024)米国FDAが成人の結節性痒疹に対しネモリズマブを承認していること(痒疹全般への適応ではない)を確認した。閲覧 2026-09-05