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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

結節性痒疹

Prurigo nodularis

臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-05:皮膚炎・湿疹群の臨床病型と治療
鑑別疾患
扁平苔癬
関連疾患
慢性単純性苔癬
治療薬
トリアムシノロンデュピルマブネモリズマブ
症状
瘙痒掻破痕
原因となる疾患
HIV感染症・AIDS肝硬変原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎鉄欠乏性貧血慢性腎臓病
適応薬
デュピルマブネモリズマブ

🧠 全体像は、と同じそう痒―を病態の本体としながら、境界明瞭な局面ではなく孤立性の硬い結節を作るという臨床像の違いを持つ疾患である。手の届きにくい上背部正中部だけ病変を免れる徴候が診断の手掛かりになる一方、強いそう痒の背景には腎不全・肝・HIV感染・悪性腫瘍・鉄欠乏といった全身性疾患が隠れていることがあり、皮膚だけを診て終わらせない姿勢が求められる。治療は近年、そう痒そのものを標的とする生物学的製剤の登場で大きく変わりつつある。

病態

慢性の刺激が表皮の肥厚・を引き起こし、真皮には線維化と知覚の増生が生じるという点で、と共通のそう痒―を共有する。違いは、単純性苔癬が扁平な局面を作るのに対し、では限局したが反復されることで孤立性の硬い結節へと発展する点にある。皮膚神経終末の異常増生や、そう痒を伝えるIL-31経路を含む神経免疫学的な機序が、慢性化した強いそう痒を持続させると考えられている。

臨床像

  • 主に四肢伸側に好発し、肌色〜淡紅色の硬い丘疹・局面・結節が多発する1
  • 病変周囲にはを伴いやすく、二次的な細菌感染のリスクになる。
  • 徴候:手の届きにくい上背部正中部などはできないため病変を免れ、周囲だけに結節が分布する所見で、強い全身性そう痒を示唆する1

診断

臨床像(好発部位・徴候・を伴う硬い結節)で診断できることが多いが、強いそう痒を伴う例では背景の全身性疾患を必ず検索する

flowchart TD
    A["四肢伸側の硬い結節+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excoriation'>掻破痕</span>"] --> B["上背部正中部を免れるか(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='butterfly'>蝶形</span>徴候)"]
    B -->|"あり"| C["強い全身性そう痒を示唆"]
    C --> D["全<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood cell count'>血球算定</span>・生化学一般"]
    C --> E["甲状腺・肝・腎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional test'>機能検査</span>"]
    C --> F["HIV・B型/C型肝炎血清学"]
    C --> G["鉄関連検査(鉄欠乏の除外)"]
    D --> H["原因検索の結果に応じて内科的評価へ"]
    E --> H
    F --> H
    G --> H

強く推奨される検査は全、生化学一般、甲状腺・肝・腎、HIV血清学、B型/C型肝炎血清学である2全身性・代謝性の原因は症例全体の38〜50%に関与するとされ、その内訳としてが頻度の高い背景疾患の一つに挙げられている(38〜50%という数字は単独の割合ではない)2。肝胆道系では慢性B型肝炎、、自己免疫性などの胆汁うっ滞性そう痒が関連し、HIV感染も背景疾患として明記されている12はまれな全身性原因として位置づけられ、鉄関連検査はオプション検査に含まれる2。悪性腫瘍(など)が疑われる場合は血清・尿蛋白電気泳動を追加する2

鑑別診断

鑑別 手掛かり
同じそう痒―だがではなく境界明瞭な局面を作る
(肥厚性病型) 紫紅色・多角形丘疹やの有無、他部位の典型病変で見分ける
接触歴、・陰部などの好発部位、鏡検
治療抵抗性・進行性の場合は生検で除外する

治療

治療は「そう痒を抑えること」と「背景疾患を治療すること」の両輪で進め、局所治療から段階的に全身治療・生物学的製剤へ進む。

  1. 局所治療: 強力〜超強力など)や局所ステロイドを第一段階とし、の物理的遮断(爪切り、被覆)を併用する。
  2. 難治例: 、全身性免疫調節薬などを検討する。
  3. 生物学的製剤:近年、そう痒そのものを標的とするが治療を大きく変えた。 米国FDAは、成人のに対し(IL-4Rα抗体)を初めて承認し3、続いて(IL-31受容体A抗体)も成人のに承認された4。いずれも米国FDAの承認状況であり、他地域のでの適応・承認時期は別に確認する必要がある。が炎症カスケード(IL-4・IL-13)を遮断するのに対し、はそう痒を伝える神経シグナル(IL-31)そのものを標的とするというの違いがある。

まとめ

  • と同じそう痒―を共有するが、局面ではなく孤立性の硬い結節を作る。
  • 徴候(手の届きにくい上背部正中部を免れる分布)は強い全身性そう痒を示唆する所見である。
  • ・肝(胆汁うっ滞)・HIV感染・悪性腫瘍・鉄欠乏(まれ)など全身性疾患の検索を診療の要とする。
  • 治療はを基本とし、近年は米国FDAが承認したという生物学的製剤が治療の選択肢を広げた。

出典

  1. 1.Prurigo Nodularis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Introduction/History and Physical節で、四肢伸側を中心に多発する硬い肌色〜淡紅色の丘疹・局面・結節と定義し、手の届きにくい上背部正中部などが病変を免れる分布パターン(蝶形徴候)を特徴として記載。Epidemiology節では慢性腎不全・HIV感染・悪性腫瘍を背景疾患として挙げている。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Diagnostic Workup and Evaluation of Patients with Prurigo Nodularis(Medicines (Basel)・2019)強く推奨される検査として全血球算定・生化学一般・甲状腺機能・肝機能・腎機能検査・HIV血清学・B型/C型肝炎血清学を挙げ、「全身性・代謝性の原因」全体が結節性痒疹症例の38〜50%に関与するとする(慢性腎不全単独の割合ではない)。慢性腎不全・肝疾患(慢性B型肝炎、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性胆汁うっ滞性肝炎)を全身性関連原因の内訳として列挙。鉄欠乏性貧血はまれな全身性原因としてオプション検査の鉄関連検査に位置づけ、悪性腫瘍(非ホジキンリンパ腫など)のスクリーニングとして血清・尿蛋白電気泳動をオプション検査に挙げている。閲覧 2026-08-11
  3. 3.DUPIXENT (dupilumab) injection - Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2022)適応(Section 1.5)が「adult patients with prurigo nodularis」であることを確認。米国FDAが成人の結節性痒疹に対しデュピルマブを承認していることを確認した(このラベル自体には適応追加の承認年月の記載はなく、Initial U.S. Approvalは2017年=デュピルマブ全体の初回承認を指す)。閲覧 2026-08-11
  4. 4.NEMLUVIO (nemolizumab-ilto) for injection, for subcutaneous use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)・2024)米国FDAが成人の結節性痒疹に対しネモリズマブを承認していること、機序(IL-31受容体Aへ選択的に結合しIL-31シグナルを阻害するヒト化IgG2抗体)、用法用量が体重で分岐すること(初回60mg、以後は体重90kg未満で30mgを4週間隔、90kg以上で60mgを4週間隔)を確認した。閲覧 2026-08-11