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Symptoms · Published

掻破痕(掻破による皮膚出血)

Excoriation

別名
掻破痕掻き壊しexcoriation
臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-01:皮膚の原発疹・続発疹皮膚科 2-15:シラミ症皮膚科 3-17:肝疾患の皮膚症状
関連疾患
結節性痒疹発疹チフス慢性単純性苔癬
スコア
EASI(湿疹面積・重症度指数)POEM(患者主体の湿疹評価尺度)SCORAD(アトピー性皮膚炎重症度スコア)

🧠 全体像は、そう痒を感じた患者が自ら掻いた結果として皮膚に残る外力によるである。凝固異常のように体の内側で止血機構が壊れているのではなく、爪という外力が表皮〜真皮を線状に傷つけて点状・線状の出血をつくる。だから診断の主軸は「なぜ血が止まらないか」ではなく「なぜそこまで掻いたか」——そう痒の強さとその背景疾患を読むことにある。

定義と用語の整理

まず出血(凝固異常による全身性との違いを明確にしておく。は、という外力で表皮〜真皮が線状に欠損し、そこから点状・線状に出血・するであり、止血機能そのものの異常を意味しない。ただし両者はではなく、凝固異常や血小板減少があると、同じ強さのでもより目立つ出血・紫斑を来すため独立した軸ではなく交差する。

との役割分担も整理しておく。

用語・所見 皮膚の変化
(本項) 直後〜数日 表皮〜真皮の線状欠損。出血・
慢性・反復したの帰結 皮溝の増強を伴う。出血は目立たない
紫斑・点状出血 の有無を問わない への赤血球漏出。凝固異常・血小板減少を疑う所見

は「今まさに掻いている」ことを示し、は「長く掻き続けてきた」ことを示す。同じそう痒—の異なる時間断面として捉えると、の記述と重複せずに済む。

病態生理

の形と分布は、背景を推定する手がかりになる。

形・分布 示唆する背景
線状で爪の届く範囲に一致 単純なの反映。そう痒の強さがそのまま形になる
円形・掘れ込んだ結節状 、皮膚などの反復的な
上背部正中など手の届かない部位を免れる分布( 強い全身性そう痒を示唆する1

背景疾患は、そう痒がどこから来ているかという機序で群にまとめると理解しやすい。

💡 一次性皮膚疾患・全身性そう痒の機序そのものは掻痒に譲り、本項では「そう痒の結果として皮膚に何が残るか」だけを扱う。

⚠️ 見逃してはいけないもの

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excoriation'>掻破痕</span>を認める"] --> B{"形と分布はどうか"}
    B -->|"線状で爪の届く範囲"| C["単純な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scratching (excoriation)'>掻破</span>の反映"]
    B -->|"円形・掘れ込んだ結節状"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prurigo nodularis'>結節性痒疹</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delusional parasitosis'>寄生虫妄想</span>などを考慮"]
    B -->|"手の届かない部位を免れる"| E["強い全身性そう痒を示唆"]
    C --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary lesion (skin)'>原発疹</span>を伴うか"}
    D --> F
    E --> F
    F -->|"あり"| G["皮膚原発性疾患を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='atopic dermatitis, AD'>アトピー性皮膚炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scabies'>疥癬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pediculosis'>シラミ症</span>など"]
    F -->|"なし"| H["全身性そう痒の原因を検索<br>肝胆道系・腎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood dyscrasias'>血液疾患</span>"]
    G --> I["凝固異常・血小板減少の合併と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary infection'>二次感染</span>の有無を確認"]
    H --> I

介入の考え方

介入は3段に分けて考える。

  1. そのものの物理的遮断:爪を短く切る、就寝時の手袋、患部の被覆。自体を治す薬はなく、爪という「凶器」を届かなくすることが直接的な対応になる。
  2. そう痒そのものの治療:機序に応じた対症療法は掻痒に譲る。ヒスタミン依存性か非依存性かで効く薬が異なる。
  3. 背景疾患の検索と治療:一次性皮膚疾患、全身性そう痒、精神科的背景のいずれかを特定し、原疾患を治療する。にはなどのとSSRIなどの薬物療法を組み合わせ2には抗精神病薬による治療反応が良好とされる3を合併していれば、の遮断と並行して個別に抗菌薬・抗ウイルス薬を追加する。

まとめ

  • という外力によるで、凝固異常による全身性のとは独立して考えるが、両者は交差しうる(凝固異常があると同じでもより目立つ出血・紫斑になる)。
  • とは同じそう痒—の異なる時間断面で、は急性の傷、は慢性の肥厚として役割分担する。
  • 形(線状・円形掘れ込み)と分布(爪の届く範囲・)が背景疾患を推定する手がかりになる。
  • 背景疾患は一次性皮膚疾患、全身性そう痒、精神科的背景の3群で整理し、皮疹に乏しい全身性そう痒の悪性腫瘍・胆汁うっ滞、の見逃し、を見逃さない。
  • 介入はの物理的遮断、そう痒自体の治療、背景疾患の検索・治療の3段で組み立てる。

出典

  1. 1.Prurigo Nodularis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)結節性痒疹の病変はそう痒のため掻破され掻破痕を伴いやすく二次的な細菌感染のリスクになること、手の届きにくい上背部正中部などが病変を免れる分布パターン(蝶形サイン)を来すこと、強いそう痒を伴う例では腎疾患・肝疾患・甲状腺疾患・HIV感染・悪性腫瘍・寄生虫感染など全身性そう痒の背景疾患を検索すべきことを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Delusions of parasitosis(DermNet NZ・2021)寄生虫妄想が生物に寄生されているという固定した誤った信念であり、患者が皮膚の破片や痂皮を虫と誤認し証拠として持参する所見(マッチ箱徴候)を伴うこと、原因不明の一次性と甲状腺機能低下症・ビタミンB12欠乏・認知症・精神疾患・薬物乱用などによる二次性に分かれること、抗精神病薬で60〜100%が有意に改善したとされることを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Compulsive skin picking, neurotic excoriations(DermNet NZ・2014)皮膚むしり症が自分の皮膚を反復して掻き壊し出血や瘢痕化に至る疾患であり、大うつ病・不安障害・強迫症などの精神疾患を併存しやすいこと(強迫症の併存率52%の報告)、習慣逆転法・曝露反応妨害法などの心理療法とSSRIなどの薬物療法を治療の中心とすることを確認した。閲覧 2026-08-04