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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

シラミ症

Pediculosis

別名
Lice infestation頭ジラミ症コロモジラミ症ケジラミ症
臓器系
感染症皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 2-15:シラミ症
鑑別疾患
寄生虫妄想
合併症
細菌性皮膚感染症(伝染性膿痂疹・毛包炎・せつ・よう)
続発疾患
発疹チフス塹壕熱回帰熱(シラミ媒介性)
関連疾患
疥癬
治療薬
ペルメトリンイベルメクチンピレトリンフェノトリンスピノサドマラチオンリンデン
原因微生物
Pediculus humanus(ヒトジラミ)Pthirus pubis(ケジラミ)
症状
掻痒
適応薬
ジメチコンスピノサドピペロニルブトキシドピレトリンフェノトリンペルメトリンマラチオンリンデン

🧠 全体像:はの寄生であり、・・では生息場所・感染経路・治療がそれぞれ異なる。生きた虫体を確認して診断し、薬剤だけでなく毛髪または衣類環境を病型別に処理するのが原則である。

病型の比較

病型 病原体・生息場所 臨床像・感染 重要点
Pediculus humanus capitis。頭髪、特に・後頭部 頭皮掻痒、、。頭髪の直接接触で伝播 小児に多いがの徴候ではない
P. humanus humanus。衣類の縫い目に産卵し、吸血時のみ皮膚へ 衣類接触、体幹の丘疹・色素沈着・ 、、(媒介性)を媒介しうる
Pthirus pubis。、、、まれに睫毛 性的接触が主。陰部掻痒、、 他の性感染症を評価する

はまたは衣類線維へし、のようには容易に動かない。ただし遠位に残る空のだけではを意味しない。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematophagous'>吸血性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='louse'>シラミ</span>の寄生"] --> B["頭髪:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pediculosis capitis'>頭ジラミ症</span><br>直接接触で伝播"]
  A --> C["衣類の縫い目:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pediculosis corporis'>コロモジラミ症</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidemic typhus'>発疹チフス</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trench fever'>塹壕熱</span>を媒介"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pubic hair'>陰毛</span>など:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pediculosis pubis'>ケジラミ症</span><br>性的接触で伝播"]
  B --> E["掻痒・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excoriation'>掻破痕</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary infection'>二次感染</span>"]
  C --> E
  D --> E

診断

  • は生きた成虫・幼虫、または頭皮から約6 mm以内の生きた卵を確認する。濡れた髪を細かいで梳くと検出しやすい。
  • は衣類の縫い目に虫体・卵を探す。
  • はなどに虫体・卵を確認し、睫毛病変では眼科的に評価する。

治療

頭ジラミ症

⭐ 日本で使える薬は米国と同じではない:日本でもの駆除には殺虫剤をとする外用薬が使われてきたが、2001年に初めて抵抗性個体が確認され、沖縄県で採集されたの96%が抵抗性を示した。これを受けて作用機序の異なる4%製剤のが行われ、抵抗性個体への有効性と安全性が確認されて、2021年に医薬部外品として承認・上市された3。国内でに用いる外用薬は一般用医薬品(OTC)のフェノトリン製剤なので、海外文献の「1%」をそのまま国内の製品名に読み替えない。

💡 が耐性に左右されないのはなぜか:は神経に作用する殺虫剤ではなく、成虫・幼虫の気門(呼吸口)を物理的に塞いで窒息させ、あわせて卵のも阻止する油である3。効果がの構造に依存しないため、を持つ集団にもそのまま効く。が効かないときに「同じ神経毒性の薬を繰り返す」のではなく作用機序を替えるという原則の具体例である。

💡 なぜが効かなくなるのか:薬剤はのを開いたまま固定し、速やかな(麻痺)を起こす。このチャネル遺伝子に点変異(M815I・T917I・L920F)が入るとチャネルが薬剤に鈍感になり麻痺が起こらない——これがである。なかでも T917I が耐性の主因だとする部位特異的変異導入の実験がある(この報告自身の結果ではなく、背景として引用されている別研究である)。耐性アレルが蓄積した集団では、1%に60分曝露しても95.97%(191/199)が生存したと報告されている4。

コロモジラミ症

入浴、清潔な衣類への交換、衣類・寝具・タオルの54℃以上の洗濯と高温乾燥が治療の中心である。適切な衛生・衣類処理ができれば、は通常不要である。

ケジラミ症

1%リンス、または+を患部へ塗布し、いずれも10分後に洗い流す5。症状が続く場合は1週間後に再評価する。へ通知し、双方の治療完了まで性行為を避ける。

⚠️ パートナーを何か月遡るかは指針で異なる。 の性感染症治療ガイドライン2021は「直近1か月のを治療する」と書き5、IUSTIの欧州ガイドライン2017は「パートナー管理には3か月の遡及期間が必要」と書いている6。どちらかが誤りなのではなく採っている遡及期間そのものが違うので、症例に当たるときはどの指針に従う施設かを確かめる。迷う場合は長いほうを採れば取りこぼしが減る。

⚠️ 睫毛へのにはを使わない。またはを眼瞼縁へ1日2回・10日間塗布して窒息させる5。詳細はを参照。

⚠️ は神経毒性のため第一選択にせず、多くの地域で使用できない。可燃性の使用中は火気・熱源を避ける。

環境対策

  • 治療前2日間に使った衣類、帽子、寝具、タオルを洗濯・高温乾燥する。
  • 洗えない物は密封保管する。な家具・室内殺虫剤散布は不要である。
  • のために登校中の児童を即時帰宅させる必要はなく、治療開始後に登校できる。

まとめ

  • 頭・衣類・という生息部位から3病型を区別する。
  • 診断は活動性のある虫体・卵の確認で行う。
  • は、は衛生と衣類処理、は薬剤とパートナー管理が中心である。
  • 日本でも抵抗性が広がっており、2021年に医薬部外品として承認された4%製剤が作用機序の異なる選択肢である。
  • のパートナー遡及期間は(1か月)とIUSTI欧州ガイドライン(3か月)で異なる。
  • を安易に使用せず、病型に合った環境対策を行う。

出典

  1. 1.Head Lice(American Academy of Pediatrics・2022)1%ペルメトリン/ピレトリンが依然として頭ジラミ症の第一選択で、耐性・治療失敗時にはベンジルアルコール・マラチオン・スピノサド・イベルメクチン(外用/経口)を検討し、リンデンは神経毒性のため推奨されないことを確認した閲覧 2026-08-02
  2. 2.Evaluation of resistance of human head lice to pyrethroid insecticides: A meta-analysis study(Heliyon (Abbasi E, et al.)・2023)20研究のメタ解析で頭ジラミのピレスロイド耐性の頻度が全体59%(95% CI 50〜68%)、ペルメトリンに限れば65%と推定され、2004年以前の33%から2015年以降は82%へ上昇していること、治療前に地域の耐性状況を踏まえて薬剤選択すべきことを確認した閲覧 2026-08-02
  3. 3.アタマジラミ, トコジラミ, ヒトスジシマカ, ネッタイシマカにおける殺虫剤抵抗性(国立健康危機管理研究機構(病原微生物検出情報 IASR Vol. 46 p240-241、2025年12月号)・2025)日本ではアタマジラミの駆除にピレスロイド系殺虫剤を有効成分とする外用薬が使われてきたが2001年に初めて抵抗性個体が確認され、沖縄県で採集されたアタマジラミの96%がピレスロイド抵抗性を示したこと、これを受けて作用機序の異なる4%ジメチコン製剤(成虫・幼虫の気門を物理的に塞いで窒息させ卵の孵化も阻止する)の臨床試験が行われ、ピレスロイド抵抗性個体への有効性と安全性が確認されて2021年に医薬部外品として承認・上市されたことを確認した閲覧 2026-09-17
  4. 4.A comprehensive survey of permethrin resistance in human head louse populations from northwest Iran: ex vivo and molecular monitoring of knockdown resistance alleles(Parasites & Vectors・2023)頭ジラミのピレスロイド耐性が電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子のM815I・T917I・L920Fの点変異による神経の薬剤不感受性(kdr)で起こり、同論文が背景として引用する部位特異的変異導入の実験ではT917Iがペルメトリン耐性の主因とされること(同論文自身の結果ではない)、同論文の実験では1%ペルメトリンへの60分曝露で95.97%(191/199)が生存したことを確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.Ectoparasitic Infections — Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention・2021)ケジラミ症の推奨治療が1%ペルメトリンクリームリンスまたはピレトリン+ピペロニルブトキシドの患部塗布・10分後洗浄であること、症状が続く場合は1週間後に再評価すること、睫毛病変には殺シラミ薬ではなく眼軟膏またはワセリンを眼瞼縁へ1日2回・10日間塗布することを確認した。2026-09-17にWayback Machine経由でMMWR Recomm Rep 2021;70(RR-4)の本体(cdc.gov は素の curl でもブラウザUAでも403)を取得し、パートナー管理の節が逐語で Sex partners within the previous month should be treated. と書いていることを確認した(遡る期間は1か月)。閲覧 2026-09-05
  6. 6.European guideline for the management of pediculosis pubis(International Union Against Sexually Transmitted Infections (IUSTI) Europe(掲載誌はJournal of the European Academy of Dermatology and Venereology 2017;31(9):1425-1428)・2017)2026-09-17にIUSTIの公式サイトが無償で置いている全文PDF(iusti.org/wp-content/uploads/2019/12/PPubis.pdf。DOIのリンク先はWileyのため本文は closed だが、DOIはCrossrefで解決を確認した)を取得して確認した。パートナー管理の節の逐語は Partner management for pediculosis pubis is required with a look-back period of time of 3 months. で、遡る期間は3か月。第一選択はペルメトリンまたはピレトリン+ピペロニルブトキシド、第二選択はフェノトリン・マラチオン・経口イベルメクチン。治療終了1週間後にフォローアップ受診を置く。閲覧 2026-09-17