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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬

ピペロニルブトキシド

piperonyl butoxide

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
科目
PharmacologyDermatology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs2-15: Pediculosis
承認適応
シラミ症

🧠 全体像:(PBO)は、それ自体にはがほとんど無い「」である。・の第一選択の一角であるは単独だと虫体ので速やかに分解されて効果が続かないため、PBOがその分解を阻害して有効濃度を保つ「介助役」として必ず配合される。単剤製剤は存在せず、PBOだけを処方・使用することはない。

位置づけ

の外用薬のうち、PBOは唯一「虫体を直接殺す薬」ではなく「他剤の効果を持続させる薬」という別カテゴリに属する。

薬剤 役割 標的
殺虫成分
(はほぼ無い) 虫体の(など)
殺虫成分(物理的機序) なし(気門を物理的に閉塞)

💡 「配合されている=両方にがある」ではない。 +という表記を見ると2つの殺虫成分が入っているように見えるが、実際に虫体のNa⁺チャネルへ作用して麻痺させるのはだけで、PBOは虫体側の解毒機構を止めているだけである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrethrins'>ピレトリン</span>が節足動物の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated Na+ channel'>電位依存性Na⁺チャネル</span>に結合し麻痺させる"] --> B["虫体は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microsome'>ミクロソーム</span>酸化酵素<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome P450, CYP'>シトクロムP450</span>)で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrethrins'>ピレトリン</span>を<br>急速に分解しようとする"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='piperonyl butoxide'>ピペロニルブトキシド</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome P450, CYP'>シトクロムP450</span>酵素を阻害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyrethrins'>ピレトリン</span>の分解が遅れ<br>有効濃度が維持される"]
    D --> E["殺虫効果が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synergistic'>相乗的</span>に増強される"]

⭐ PBO単独では虫体はほぼ死なない。 としての価値は「他剤の分解を止める」点に尽きるため、常になど殺虫成分とセットで評価する必要がある。

適応

領域 使いどころ
・ との配合剤として、の第一選択の一角を占める1

⚠️ 配合剤でも治癒率が資料によって大きく食い違う。 ある小児対象のでは、+PBO配合剤の治癒率が25.0%(10/40)にとどまり、ティーツリー・ラベンダー油群や物理的窒息作用の製品群の97.6%を大きく下回った2。地域の耐性・実地での塗布手技のばらつきが背景にありうるが、いずれにせよ「配合剤だから常に高い治癒率」とは限らない。

用法・用量

PBOに単独の用法・用量は存在しない。との配合製剤として使用し、代表的な製品(PBO 4%・0.33%)では以下の用法が示されている1。

  • 乾いた頭髪または患部へ十分量を塗布し、10分間だけ放置してから微温湯でよく泡立てて洗い流す
  • 生きた虫体が残っていれば7〜10日後にする
  • 洗浄後は目の細かい用ので死虫・を除去する
  • 家族など者を同時期に治療する

禁忌・注意

  • PBO自体の急性毒性は経口・吸入・経皮いずれも低く、皮膚・眼への刺激性もわずかである3
  • ()アレルギーの注意は、配合相手である(抽出物)由来ので、PBO自体の性質ではない——ただし製品としては同じが適用される1
  • の高用量で肝重量増加などの肝影響が報告されており、米国EPAは「ヒトに対するの可能性がある物質」に分類する一方、IARCは分類不能としている(ヒトでの実地使用量とは前提が異なる評価である点に注意)3
  • 2歳未満の小児ではの判断なしに自己判断で使用しない1
  • 目・・口腔・には使用しない

副作用

頻度 内容
高頻度 塗布部位の軽度な刺激感(配合剤としての報告で、PBO単独の寄与は分離できない)
注意 (誤って入った場合)
重篤・まれ アレルギー患者での配合剤としての呼吸困難・喘息様反応1

まとめ

  • それ自体にはがほとんど無いで、虫体のなどのを阻害し、配合相手(主に)の分解を遅らせて有効濃度を維持する。
  • 単剤製剤は存在せず、必ずなど殺虫成分との配合剤として使う。
  • ヒトへの急性毒性は低く皮膚・もわずかだが、高用量反復曝露での肝影響から米国EPAはの可能性がある物質に分類している(IARCは分類不能)。
  • アレルギーへの注意は配合相手の()由来のであり、PBO固有の性質ではない。
  • では配合剤の治癒率が資料により大きく異なり(25.0%〜報告により高値まで)、常に高い治癒率が保証されるわけではない。

出典

  1. 1.RID Lice Killing- piperonyl butoxide and pyrethrum extract shampoo(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2023)有効成分がピペロニルブトキシド4%とピレトリン0.33%(除虫菊抽出物換算)であること、乾いた頭髪に10分間だけ塗布し洗い流すこと、7〜10日後に再治療すること、2歳未満は医師相談を要すること、ブタクサアレルギーで呼吸困難・喘息発作の懸念があることを確認した閲覧 2026-09-22
  2. 2.A randomised, assessor blind, parallel group comparative efficacy trial of three products for the treatment of head lice in children - melaleuca oil and lavender oil, pyrethrins and piperonyl butoxide, and a 'suffocation' product(BMC Dermatology・2010)4〜12歳の学童123名を対象としたランダム化評価者盲検並行群間比較試験で、ピレトリン+ピペロニルブトキシド配合剤群の治癒率が最終治療翌日時点で10/40(25.0%)にとどまり、ティーツリー・ラベンダー油群(41/42、97.6%)・物理的窒息作用の製品群(40/41、97.6%)より有意に低かったこと(p<0.0001)を確認した閲覧 2026-09-22
  3. 3.Piperonyl Butoxide General Fact Sheet(National Pesticide Information Center (Oregon State University・米国EPA共同事業)・2017)ピペロニルブトキシドは単独では昆虫を殺さず、昆虫体内で殺虫成分を分解する酵素を阻害することで相乗効果を発揮する補助成分であること、経口・吸入・経皮いずれも急性毒性は低いこと、眼・皮膚への刺激性はわずかであること、EPAは「ヒトに対する発がん性の可能性がある物質」に分類する一方IARCは分類不能としていること、高用量反復投与動物実験で肝重量増加などの肝影響が報告されていることを確認した閲覧 2026-09-22