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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

塹壕熱

Trench fever

別名
五日熱
臓器系
感染症循環器
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 2/23:パスツレラ・ムルトシダ、野兎病菌、バルトネラ属微生物学 5/1:皮膚・創傷感染を起こす細菌(一覧)とその診断皮膚科 2-15:シラミ症
合併症
感染性心内膜炎
関連疾患
回帰熱(シラミ媒介性)発疹チフス
治療薬
ドキシサイクリンゲンタマイシン
原因微生物
Bartonella quintana
症状
発熱頭痛倦怠感骨痛脾腫
原因となる疾患
シラミ症

🧠 全体像Bartonella quintanaを介してヒト-ヒト間で完結する感染症で、リザーバーは動物ではなくヒト自身である。第一次世界大戦の塹壕で大流行したことに由来する病名だが、現代ではホームレス状態・貧困・戦時下・を背景に再興している「同じ疫学的文脈の病気」として理解する。急性の周期性発熱にとどまらず、血液という慢性・重篤な顔も持つ点が臨床上の要点である。

病原体と感染経路

  • 媒介動物は(体虱)。感染した糞便が、によって生じた皮膚の創から侵入することで成立し、と同じ「刺咬ではなく糞便を掻き込む」様式をとる
  • ヒトが唯一のリザーバーで、を介さない
  • 危険因子はホームレス状態・貧困・寒候・寄生・慢性アルコール使用で、ホームレスシェルターでの調査では検査対象の30%がB. quintana抗体陽性、14%が菌血症であったと報告されている1
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='body louse'>コロモジラミ</span>の糞便中の<br>Bartonella quintana"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scratching (excoriation)'>掻破</span>創から皮膚へ侵入"]
  B --> C["菌血症"]
  C --> D["急性感染<br>五日熱(5日周期の発熱)"]
  C --> E["慢性・無症候性の菌血症"]
  E --> F["血液<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culture-negative endocarditis'>培養陰性心内膜炎</span>"]
  C --> G["免疫不全者<br>(進行したHIV感染症など)"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacillary angiomatosis'>細菌性血管腫症</span>"]

臨床像

病態 特徴
急性 発熱(5日周期で再発する五日の発熱が代表的)、頭痛、感、脛骨などの激しい疼痛。しばしば38.4℃を超える発熱と脾腫、体幹主体のを伴う2
慢性菌血症 無症候性〜軽症のまま持続することもある
ホームレス状態の患者における血液の代表的な原因の一つ。多くは既存の弁膜異常を伴わない患者に発症する
免疫不全者(進行したHIV感染症など)で、B. henselaeと共通の病態として起こる

Bartonella属は血液の代表的な原因菌である。 フランスの症例集積では血液の約20%をBartonella属が占めるとされ2、48例の心内膜炎報告のうち38例がB. quintana感染によるものだったとする調査もある1

診断

  • 標準の血液培養では発育がきわめて遅く、には陰性となりやすい。を疑う場合は、または血清学(IFA)・弁組織PCRの追加を要する
  • B. henselaeとの血清学的があり、菌種の確定にはPCRが必要になることがある

治療

  • 急性・慢性菌血症(心内膜炎を伴わない場合)ドキシサイクリン100〜200 mgを1日1回4週間、3 mg/kgを最初の14日間併用する2
  • 心内膜炎:ドキシサイクリン+の併用が基本で、多くはを要する
  • 慢性期を治療せずに放置すると心内膜炎へ移行しうるため、無症候性の菌血症でも治療の対象になる

予防

の駆除(殺虫剤処理・衣類の洗濯・入浴)と、ホームレス状態にある集団への衛生支援が中心で、ワクチンは存在しない。

まとめ

  • B. quintanaによる媒介感染症で、ヒトのみがリザーバーとなる。
  • 急性期は5日周期の再発熱(五日熱)と痛が特徴的で、現代ではホームレス状態・貧困・戦時下と結びつく。
  • 血液の代表的な原因菌であり、免疫不全者ではも起こしうる。
  • 治療はドキシサイクリン+が基本で、無症候性菌血症も治療対象になる。
  • 同じが媒介する媒介性)とは起因菌の属が異なる別疾患である。

出典

  1. 1.Trench Fever(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)五日熱型の周期性発熱は5日ごとに再発ししばしば38.4℃を超え脾腫・体幹主体の斑丘疹性発疹を伴うこと、感染は感染したシラミの糞便を接種することで成立すること、心内膜炎を伴わない急性・慢性感染の治療はドキシサイクリン100〜200 mgを1日1回4週間投与しゲンタマイシン3 mg/kgを最初の14日間併用すること、フランスのFournierらによる症例集積ではBartonella属が血液培養陰性心内膜炎の約20%を占めると報告されていることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Bartonella quintana Characteristics and Clinical Management(Emerging Infectious Diseases (CDC)・2006)ホームレスシェルターでの調査で検査対象71人中30%がB. quintana抗体陽性、14%が菌血症であったこと、2000〜2003年の4年間に調査した非入院ホームレス930人中5.4%が菌血症であったこと、930人中22%にシラミ寄生があったこと、48例の血液培養陰性心内膜炎のうち38例がB. quintana感染によるものであったという報告があること、B. quintanaとB. henselaeが細菌性血管腫症の2大起因菌であることを確認した閲覧 2026-08-11