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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

細菌性血管腫症

Bacillary angiomatosis

別名
桿菌性血管腫症
臓器系
感染症皮膚
科目
Medical MicrobiologyHistopathology
トピック
微生物学 2/23:パスツレラ・ムルトシダ、野兎病菌、バルトネラ属組織病理 H1-100:カポジ肉腫(真皮、HE染色)組織病理 H2-101B:カポジ肉腫の肉眼像と臨床鑑別
鑑別疾患
カポジ肉腫
関連疾患
猫ひっかき病
治療薬
エリスロマイシンドキシサイクリン
原因微生物
Bartonella henselaeBartonella quintana
原因となる疾患
HIV感染症・AIDS

🧠 全体像は、Bartonella henselaeBartonella quintanaによる血管増殖性の感染症で、同じ菌が宿主の免疫状態によってまったく別の病像を見せるという現象のもう一方の顔である。免疫正常者ならリンパ節に封じ込められて自然軽快するになるが、進行したHIV感染などで細胞性免疫が破綻すると、菌自身が血管内皮の産生を刺激し、隆起性の血管増殖性病変として全身へ広がる。臨床像はと酷似するが、は抗菌薬で治る——鑑別の実利はこの一点にある。

病原体と発症の背景

原因菌はBartonella henselae(ネコの引っかき傷が主な感染経路)またはBartonella quintanaが媒介し、劣悪な衛生環境での原因菌にもなる)である。

⚠️ 細胞性免疫不全(進行したHIV感染、CD4低値)のある宿主で発症する。 ある症例集積では、報告された6例中5例でCD4数が100/µL未満だった1。免疫抑制の程度が発症を左右する点はと対照的で、は免疫正常者にも起こる。

病態

flowchart TD
    A["Bartonella henselae/quintana感染"] --> B{"宿主の細胞性免疫は保たれているか"}
    B -->|"保たれている"| C["リンパ節に封じ込め<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cat scratch disease'>猫ひっかき病</span>として自然軽快"]
    B -->|"破綻している<br>(進行HIV感染などCD4低値)"| D["血管内皮に接着し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiogenic factor'>血管新生因子</span>の産生を誘導"]
    D --> E["隆起性の血管増殖性病変<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacillary angiomatosis'>細菌性血管腫症</span>"]
    D --> F["肝・脾への進展<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Peliosis hepatis'>肝紫斑病</span>"]

💡 免疫が破綻して初めて「腫瘍のように見える感染症」になる。 免疫正常者では細胞性免疫がBartonellaの局所増殖を速やかに制圧するため、リンパ節炎()で完結する。進行HIV感染などでこのブレーキが外れると、菌はに接着してVEGFなどのの産生を刺激し、自らが増殖できる血管網を作らせる。この機序が、隆起性の血管増殖性病変という一見腫瘍のような外観を生む。

猫ひっかき病との役割分担

同じ菌でも、宿主の免疫状態によって起こす病態はまったく異なる。

項目
宿主背景 免疫正常者 細胞性免疫不全(進行HIV感染、CD4低値など)
病態 リンパ節の 血管内皮の増殖性病変
経過 多くは自然軽快する 治療しなければ進行する
主な病変部位 所属リンパ節(腋窩など) 皮膚(全身)、肝・脾(
治療の位置づけ 多くは経過観察。有痛例にアジスロマイシン 抗菌薬治療が必須

臨床像

診断

  • 生検組織はH&E染色で内皮に裏打ちされた血管増殖を示し、Warthin-Starry染色)で菌塊が可視化される1。Gram染色・Giemsa染色でも桿菌が陽性となることがある2
  • はHHV-8関連の腫瘍細胞増殖であり、Warthin-Starry染色は陰性でHHV-8潜伏(LANA-1)免疫染色が陽性になる点で組織学的に区別できる。

治療

治療の第一選択はマクロライド()またはドキシサイクリンである1。軽症の皮膚限局例では12週間投与し、治療反応は開始後3〜4週で見え始める1

⚠️ 免疫不全がある間は長期投与を要し、短期で切るとする。 HIV患者では、CD4数が200/µLを超えた状態が6か月以上持続するまで治療を継続することが推奨されており1、実際の症例報告でもCD4が200/mm³を上回るまでドキシサイクリンを継続投与した例がある3。免疫状態が改善しないまま抗菌薬だけを短期で終えると、病変はする。根本的な対応は基礎にある免疫不全の是正(HIV感染ならART導入によるCD4回復)であり、抗菌薬治療はその回復までの橋渡しという位置づけになる。

まとめ

  • Bartonella henselaequintanaによる血管増殖性の感染症で、細胞性免疫不全(進行HIV感染など)があって初めて発症する。
  • 同じ菌でも、免疫正常者では(リンパ節炎、自然軽快)に、免疫不全者では(血管増殖性病変、進行性)になるという役割分担がある。
  • と臨床像が酷似するが、は抗菌薬で治る点が鑑別の実利であり、皮膚生検(Warthin-Starry染色陽性)で確定する。
  • 肝脾にも進展し、を来しうる。
  • 治療はマクロライド()またはドキシサイクリンで、免疫不全が続く間は長期投与を要し、短期で中止するとする

出典

  1. 1.Bacillary Angiomatosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)原因菌がBartonella henselaeまたはBartonella quintanaであること、ある症例集積では報告された6例中5例でCD4数が100/µL未満だったこと、組織所見はH&E染色で内皮に裏打ちされた血管増殖、Warthin-Starry染色で菌塊を認めること、治療の第一選択がマクロライド(エリスロマイシン)またはドキシサイクリンで軽症皮膚限局例は12週間投与し反応は開始後3〜4週で見えること、HIV患者ではCD4数が200/µLを超えた状態が6か月以上持続するまで治療を継続すべきこと、Bartonella henselaeが肝・脾の肝紫斑病(peliosis)を起こすこと閲覧 2026-08-12
  2. 2.Bacillary Angiomatosis(The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene・2014)症例報告として、皮膚病変が臨床的にカポジ肉腫・化膿性肉芽腫と区別できないこと、組織検査で修正銀染色により絡み合った桿菌の集塊が確認されたこと、HIV患者の症例でCD4数が200/mm³を上回るまでドキシサイクリンを継続投与したこと閲覧 2026-08-12
  3. 3.Cutaneous lesions of bacillary angiomatosis(Revista da Sociedade Brasileira de Medicina Tropical・2022)細菌性血管腫症がHIV感染・化学療法・移植後などの免疫不全患者に生じる日和見感染であること、皮膚病変がカポジ肉腫や化膿性肉芽腫と誤診されうるため皮膚生検が診断確定に不可欠であること、生検組織でGram染色・Warthin-Starry染色・Giemsa染色いずれでも桿菌が陽性となったこと閲覧 2026-08-12