組織病理学

組織病理学 · H2-101B

カポジ肉腫の肉眼像と臨床鑑別

SPECIMEN - Kaposi sarcoma

描出疾患
カポジ肉腫
疾患
カポジ肉腫細菌性血管腫症

🧠 全体像:はHHV-8(human herpesvirus 8)関連ので、下肢・足部・顔面などに無痛性の紫紅色斑・局面・結節として現れる。なお2020年の軟部腫瘍分類(第5版)では、は良性でも悪性でもなく「中間群」に置かれており、の悪性群は類上皮との2つだけである1。2013年分類に基づく説明では、中間群のうち「稀に転移する」群に当たる2。臨床的に悪性腫瘍として扱う点は変わらないが、分類上の位置づけは中間群であることを押さえておく。組織発生機序・病期別形態・四つの疫学型・治療のは(真皮、HE染色)に整理済みのため、本項目では肉眼・とに焦点を当てる。

肉眼・臨床所見

紫紅色の無痛性斑・局面・結節が下肢、足部、顔面に好発し、、口腔、リンパ節にも生じうる。免疫抑制患者(感染、臓器移植後など)で高頻度にみられる。組織学的にはの増殖、赤血球を含む、、、からなる。

flowchart TD
    A["下肢・足部・顔面の無痛性紫紅色病変"] --> B["免疫状態・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>感染歴を確認"]
    B --> C["生検でHHV-8関連の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spindle cells'>紡錘形細胞</span>増殖を確認"]
    C --> D["LANA-1免疫染色でHHV-8感染を確認"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Kaposi sarcoma'>カポジ肉腫</span>と確定・疫学型を分類"]

臨床鑑別

鑑別疾患 鑑別点
Bartonella属感染。抗菌薬で改善し、HHV-8陰性
が多く、急速に増大する病変
血管腫 良性の血管増殖で、増殖を欠く
紫斑・血管炎 へののみで、を欠く

紫紅色の皮膚病変というだけでは確定できず、HHV-8(LANA-1)の免疫染色による確認が鑑別の要となる。陽性患者のを比較した検討では、LANA陽性は24例中22例(92%)に対し非の13例では0例だった3。

⚠️ HHV-8の陽性は鑑別の決め手にならない。 同じ検討ではの全例に加え、非の血管腫4例でもHHV-8を検出した。腫瘍内の血中単核球に潜むウイルスまで拾ってしまうためで、判断に迷う血管性増殖ではよりLANA免疫染色を優先する3。

発生要因と治療の要点

性的接触、唾液、血液、移植関連など複数の経路でHHV-8が伝播し、免疫抑制状態が発症の主因となる。唾液の位置づけは大きく、のないHHV-8男性50人では検体の30%からウイルスが検出されたのに対し肛門・性器検体は1%にとどまり、口腔から検出されたウイルス量(対数値)の中央値は他のすべての部位の約2.5倍だった4。治療は免疫状態と病変範囲に応じて選択し、関連型ではを基盤とする。⚠️ はを増悪させうるため、安易に投与しない。移植を受けていない患者で治療中にが出現した10例の報告では、いずれも予後不良で、を得るにはの中止が必要とされている5。四つの疫学型(・・医原性移植関連型・関連型)、病期別の組織形態、の詳細は(真皮、HE染色)を参照する。

まとめ

  • 無痛性の紫紅色斑・局面・結節という肉眼像から本症を疑う。
  • ・・紫斑などとの鑑別にはLANA-1免疫染色が有用である(の92%で陽性、非では陰性)3。
  • 免疫抑制状態が発症の主因であり、関連型ではを基盤とする。

出典

  1. 1.The 2020 WHO Classification of Soft Tissue Tumours: news and perspectives(Pathologica・2021)2020年WHO軟部腫瘍分類(第5版)の血管性腫瘍の表では、カポジ肉腫は良性でも悪性でもなく中間群に置かれる。中間群にはカポジ型血管内皮腫、網状血管内皮腫、乳頭状リンパ管内血管内皮腫、複合型血管内皮腫、カポジ肉腫、偽筋原性血管内皮腫が並び、悪性群は類上皮血管内皮腫と血管肉腫の2つのみである。なお本総説の表IV自体は、この6つをまとめて「Intermediate (locally aggressive)」という1つの見出しの下に並べており、局所侵襲性と稀に転移する群を表の上では分けていない(カポジ肉腫を「稀に転移する」群とする記述は本総説には無い)。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Tumor-Associated Protein Profiles in Kaposi Sarcoma and Mimicking Vascular Tumors, and Their Pathological Implications(International Journal of Molecular Sciences・2019)カポジ肉腫はHHV-8感染により生じる中間悪性度・稀に転移する血管性腫瘍と位置づけられ、皮膚・軟部の血管性腫瘍は良性/中間(局所侵襲性)/中間(稀に転移)/悪性の4群に分類されること(全文の考察で、この4群を2013年WHO軟部・骨腫瘍分類のものとして引いている)を確認した閲覧 2026-09-24
  3. 3.Latency-associated nuclear antigen expression and human herpesvirus-8 polymerase chain reaction in the evaluation of Kaposi sarcoma and other vascular tumors in HIV-positive patients(Modern Pathology・2005)HIV陽性患者から得たカポジ肉腫24例と非カポジ肉腫血管腫瘍13例(血管腫12・類上皮血管内皮腫1)でLANA免疫染色を比較すると、LANA陽性はカポジ肉腫24例中22例(92%)、非カポジ肉腫は13例中0例であった。一方リアルタイムPCRはカポジ肉腫全例に加え非カポジ肉腫4例(いずれも血管腫)でもHHV-8を検出したため、判断に迷う血管性増殖ではHHV-8 PCRよりLANA免疫染色が適する閲覧 2026-08-24
  4. 4.Mucosal shedding of human herpesvirus 8 in men(The New England Journal of Medicine・2000)Europe PMC の抄録(PMID 11070101)を読み直して確認した。カポジ肉腫のないHHV-8血清陽性の男性間性的接触者50人のうち30人(60%)で粘膜検体からHHV-8を検出。中咽頭検体の30%で陽性だったのに対し肛門・性器検体は1%(P<0.001)。血清陽性者の39%では、連日採取した日のうち35%超で唾液からHHV-8が検出された。⚠️ ウイルス量については "The median log titer of HHV-8 from the oral cavity was approximately 2.5 times as high as the titer at all other sites" とあり、**対数値の中央値が他のすべての部位の約2.5倍**という記述である(「約2.5対数高い」=約300倍ではない)。in situハイブリダイゼーションで口腔上皮細胞にHHV-8のDNAとmRNAを認めた。HIV陰性の男性間性的接触者92人では、カポジ肉腫のあるパートナーとの性交歴・HIV陽性パートナーとのディープキス・亜硝酸アミルの吸入が独立した危険因子だった。閲覧 2026-09-27
  5. 5.The appearance of Kaposi sarcoma during corticosteroid therapy(Cancer・1993)移植を受けていない患者で糖質コルチコイド治療中にカポジ肉腫が出現した10例(男6・女4、42〜79歳。自己免疫疾患5例、リンパ増殖性疾患2例、免疫系と無関係な疾患3例)を報告し、これ以前にも非移植例39例の報告がある。いずれも予後は不良で、臨床的寛解を得るには糖質コルチコイドの中止が必要と結論している閲覧 2026-08-24