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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬

リンデン

lindane

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
科目
PharmacologyDermatology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs2-14: Scabies2-15: Pediculosis
承認適応
疥癬シラミ症
禁忌疾患
てんかんアトピー性皮膚炎
副作用
痙攣めまい頭痛

🧠 全体像(γ-、γ-BHC)は、に使われてきた有機塩素系の外用殺虫剤である。本稿の主眼は「どう効くか」ではなく「なぜ第一選択から外れたか」にある。が節足動物のNa⁺チャネルを開けたまま固定して麻痺させるのに対し、は中枢神経の抑制系(GABA_A受容体のCl⁻チャネル)を遮断してを起こす——標的がにも共通するためが乏しく、これが性の本体であり、各国での販売制限と「反復塗布は禁止」という用法の根にある。

薬効群の中での位置づけ

外部寄生虫症の外用治療薬は、標的分子ごとにが大きく異なる。

薬剤 標的 での 現在の位置づけ
節足動物のを開いたまま固定 高い(Na⁺チャネル構造の違い+速い代謝) の第一選択
GABA_A受容体のCl⁻チャネルを遮断 乏しい(にも同じ受容体が存在) 第二選択、多くの地域で入手が限られる
無脊椎動物特有の Cl⁻チャネルを活性化 高い(ヒトに標的がほぼ無い) ・耐性例の代替

⚠️ だけがヒトのニューロンにも同じ標的(GABA_A受容体)を持つ点で他の2剤と違う。 虫を殺す用量とヒトに害を及ぼす用量のが本質的に狭い。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lindane'>リンデン</span>が中枢神経の<br>GABA_A受容体-Cl⁻チャネル複合体に結合"] --> B["GABAによるCl⁻流入を遮断"]
    B --> C["生理的な神経抑制(過分極)が<br>働かなくなる(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disinhibition'>脱抑制</span>)"]
    C --> D["ニューロンが興奮しやすい状態になる"]
    D --> E["中枢神経系の異常興奮"]
    E --> F["けいれん・死亡例の報告"]
    G["GABA_A受容体は昆虫・ダニだけでなく<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mammal'>哺乳類</span>の脳にも存在"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective toxicity'>選択毒性</span>が乏しい"]
    H --> E

💡 とは機序が正反対である。 は虫体のNa⁺チャネルを「開けたまま」にして興奮・麻痺させるが、は宿主側の抑制性Cl⁻チャネルを「閉じたまま」にしてによる興奮を招く。動かす方向(開く vs 閉じる)が逆で、同じ「殺虫剤」という括りに入っているだけの別系統の薬剤である。

薬物動態

項目 値・特徴
外用(ローション・シャンプー)
脂溶性 高い。されやすく、脂肪組織へ蓄積する
吸収が増える条件 乳幼児・・広範な皮膚障害や炎症のある皮膚(バリア未熟・破綻)1
消失 脂肪組織への分布のためが大きく、緩徐になりうる

⚠️ 「最も危険な患者層で、最も吸収されやすい」という構図がある。 体重50 kg未満の患者はあたりのが相対的に増え性リスクが上がるとされ1、皮膚が薄い乳幼児・早産児ほどが増える。

適応

現在のは「治療薬」というより「他が使えないときの最終手段」である。

領域 使いどころ
で、など不耐または不応の場合に限る第二選択2

国際的には附属書Aにとして掲載され、農業用途は原則廃絶された一方、の第二選択医薬品用途にのみ適用除外がある3

用法・用量

  • 最大の実践的注意点は「反復塗布をしない」ことである。 が不完全なため数日〜1週間後の再塗布が前提になるが、単回塗布のみとし、症状が残っても追加塗布・をしない2
  • シャンプー製剤():乾いた髪に4分間だけ塗布して洗い流す1。ローション製剤():頸部以下へ塗布し8〜12時間後に洗い流す2
  • 症状が残っても自己判断で追加塗布しない。のリスクが上がる

禁忌・注意

  • ⚠️ けいれん性疾患てんかんを含むけいれんの既往・素因がある患者では禁忌に準じる
  • 早産児・:いずれもが増えるため用いない
  • など広範な皮膚障害・炎症、体重50 kg未満バリアの破綻や比で吸収・性リスクが上がる1
  • 妊娠・授乳中は他の選択肢を優先する

副作用

頻度 内容
中枢神経系 めまい頭痛、重篤例で痙攣
局所 刺激感・掻痒・
重篤・まれ けいれんに続く死亡例の報告

まとめ

  • はGABA_A受容体のCl⁻チャネルを遮断して中枢の抑制を外す有機塩素系殺虫剤。(Na⁺チャネルを開けたまま固定)とは標的も作用の向きも正反対である。
  • 標的受容体がにも共通するためが乏しく、これが性の本体である。
  • 乳幼児・早産児・・広範な皮膚障害ではが増え、最も危険な患者層で最も吸収されやすいという構図がある。
  • 第二選択にとどまり、単回塗布のみで反復禁止という用法制限がとの最も実践的な違いになる。
  • に指定され、第二選択医薬品用途にのみ適用除外が認められている。

出典

  1. 1.Lindane Lotion, USP 1%(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2009)リンデンローションが疥癬の第二選択薬(第一選択に不耐・不応の場合に限る)であること、単回塗布のみで反復使用が禁止されていること、けいれん・死亡例の報告があることを確認した閲覧 2026-08-02
  2. 2.Lindane Shampoo, USP 1%(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2011)リンデンシャンプーの用法(乾いた髪に4分間だけ塗布し反復しない)、体重50 kg未満の患者で神経毒性リスクが高まること、早産児・けいれん性疾患・角化型疥癬やアトピー性皮膚炎など吸収が増える皮膚状態が禁忌に含まれることを確認した閲覧 2026-08-02
  3. 3.The new POPs under the Stockholm Convention(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants (UNEP)・2009)リンデンが2009年(決定SC-4/15)にストックホルム条約附属書Aへ残留性有機汚染物質として掲載され、頭ジラミ症・疥癬の第二選択医薬品としての用途にのみ適用除外が認められていることを確認した閲覧 2026-08-02