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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

疱疹状皮膚炎

Dermatitis herpetiformis (Duhring disease)

別名
Duhring病デューリング疱疹状皮膚炎グルテン過敏性皮膚炎
臓器系
皮膚消化器免疫・膠原病
科目
PathologyDermatologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/100:水疱性皮膚疾患(天疱瘡・水疱性類天疱瘡・疱疹状皮膚炎)皮膚科 3-15:自己免疫性水疱症内科学 G-02:小腸疾患・吸収不良・消化不良
上位概念
セリアック病
鑑別疾患
自己免疫性水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)疥癬
合併症
非ホジキンリンパ腫無脾症・脾機能低下症
関連疾患
甲状腺機能低下症
治療薬
ダプソン
症状
掻痒小水疱皮疹
検査値
抗体価
禁忌薬
ヨウ化カリウム

🧠 全体像:はセリアック病の皮膚型であり、消化器症状の有無にかかわらずほぼ全例で程度差のある小腸絨毛障害を伴う。伸側面の極めて強い掻痒を伴う小水疱が特徴だが、のため受診時には水疱よりびらん・が目立つことが多い。確定診断は病変そのものではなく病変周囲の健常皮膚から採るDIFで、先端のIgA沈着を確認する。治療は生涯のが根本であり、はそれまでの症状を速やかに抑える対症療法にすぎない。

病態

(HLA-DQ2/DQ8)を持つ個体が食事中の()に曝露されると、腸管で2(tTG2)がをし、これに対するIgA抗体が産生される(セリアック病と共通の機序)。この抗tTG2 IgAが、構造の似た(TG3)とする。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝的素因</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='human leukocyte antigen'>HLA</span>-DQ2/DQ8"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gluten'>グルテン</span>摂取"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue transglutaminase, tTG'>組織トランスグルタミナーゼ</span>2(tTG2)が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gliadin'>グリアジン</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deamidation'>脱アミド化</span>"]
    C --> D["抗tTG2 IgA抗体を産生"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidermal transglutaminase 3'>表皮トランスグルタミナーゼ3</span>(TG3)と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-reactivity'>交差反応</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermal papilla'>真皮乳頭</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anchoring fibrils'>係留線維</span>部にIgA-TG3免疫複合体が沈着"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement activation'>補体活性化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil migration'>好中球遊走</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermal papilla'>真皮乳頭</span>先端に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic microabscess'>好中球性微小膿瘍</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anchoring fibrils'>係留線維</span>が破壊され<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subepidermal blister'>表皮下水疱</span>を形成"]

💡 セリアック病では抗tTG2 IgAがを傷害するのに対し、では同じ抗体がする標的(TG3)が皮膚にあるため、同じ自己免疫が臓器によって腸炎にも皮膚炎にもなると理解すると整理しやすい。

臨床像

  • 両側性・対称性の、極めて強い掻痒を伴う紅斑上の小水疱・丘疹。
  • 好発部位:肘・膝などの伸側面、、肩甲部、頭皮。
  • 掻痒が非常に強いため、受診時にはすでにされて水疱が破れ、びらん・痂皮・のみを認めることが多く、教科書的な小水疱そのものを見る機会は少ない。
  • 主に成人の疾患で、症例集積での診断時平均年齢は40〜50歳(男性がやや高齢)である。フィンランドでは1970年以降、診断時の平均年齢が上昇している(男性35→51歳、女性36→46歳)。小児は稀(フィンランドの症例集積で4%)だが、80歳を超えて診断される例もある1。
  • 消化器症状(下痢・腹部膨満など)を欠く患者が多いが、を行えばほぼ全例で軽度〜高度のを認める。

⭐ 「消化器症状がないから腸病変もない」と判断しない。はセリアック病の一表現型であり、無症候でも障害を伴っているとみなして対応する。

疫学

セリアック病そのものに比べると稀で、北欧系・白人での報告が多い。性差はセリアック病ほど女性優位ではなく、ほぼ同数か男性にやや多いとする報告もある。

主要な水疱性疾患との鑑別

特徴
抗体 IgA(抗TG3、する抗tTG2) IgG(抗BP180/BP230) IgA(抗原)
水疱の位置 表皮下 表皮下 表皮下
臨床像 伸側面の対称性・極めて強い掻痒を伴う小水疱。が目立つ 高齢者の。粘膜病変は通常なし 環状配列の水疱(“string of pearls”)。小児と成人の二峰性
DIF 先端のIgA の線状IgG+C3 の線状IgA
背景疾患 セリアック病 通常なし 薬剤(バンコマイシンなど)や特発性

⚠️ 極めて強い掻痒とだけではと区別できない。 は英国BASHHのガイドラインがを鑑別に挙げるほど紛らわしく、伸側面の対称性という分布と、先端のIgA沈着(DIF)で分ける。掻痒だけを頼りにしない。

⚠️ 「IgAが検出された=」と早合点しない。もIgAが主体だが、沈着パターンはの線状であり、のとは区別される。

診断

検体の採り方

  • 通常の病理組織:な水疱の縁を含む病変皮膚。
  • DIF:水疱そのものではなく、病変に隣接する見かけ上正常な皮膚から採取する。病変内では炎症により沈着IgAが融解・消失し偽陰性になりうるためである。

病理・DIF所見

検査 所見
通常の病理 、先端への好中球()、の
DIF 先端のIgA沈着(病理特徴的)

⚠️ DIFパターンは水疱性疾患の鑑別に直結する。はの線状IgG+C3、はの線状IgAであり、のIgAとは分布も抗体クラスの意味づけも異なる。詳細はノートを参照。

血清学

  • 抗(tTG2)IgA抗体、抗(TG3)IgA抗体を測定する。TG3抗体はより疾患特異性が高い。
  • セリアック病と同様、を除外するため総IgAを同時に確認する。
  • HLA-DQ2/DQ8はほぼ全例で陽性だが一般人口にも高頻度に存在するため、確定ではなく陰性による除外に用いる。
flowchart TD
    A["伸側面の対称性・強い掻痒を伴う小水疱を疑う"] --> B["病変近傍の正常皮膚からDIFを採取"]
    B --> C{"DIF所見は?"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermal papilla'>真皮乳頭</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granular'>顆粒状</span>IgA"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermatitis herpetiformis'>疱疹状皮膚炎</span>と確定"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basement membrane zone'>基底膜部</span>に線状IgG+C3"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bullous pemphigoid'>水疱性類天疱瘡</span>を考える"]
    D --> F["抗tTG2/抗TG3 IgA抗体を測定"]
    F --> G["ほぼ全例で小腸絨毛障害を伴うと想定し<br>セリアック病として管理"]

治療

治療 位置づけ
生涯の2 根本治療。皮疹・腸病変の双方を改善し、長期合併症のリスクも下げる。皮疹の消退には数か月を要し、免疫複合体がから消失するまでにも時間がかかる
除去食の効果が出るまでのの対症療法(数日以内に掻痒・新生水疱を抑える)2。開始前に活性を確認し、治療中は溶血性貧血・を血算・でモニタリングする

ダプソンの安全管理

  • 開始前:活性、血算、肝機能を確認する1。欠損例では重篤な溶血を起こしうるため、代替薬や低用量からの慎重な導入を検討する。
  • 開始後:血算を定期的に確認し、原因不明の・呼吸困難・チアノーゼ(酸素投与に反応しない)はを疑う所見として評価する。
  • 除去食がし皮疹が安定したら、は・中止を目指す。除去食を続けずのみに依存すると、皮疹は抑えられても小腸病変・長期合併症のリスクは残存する。

⚠️ ヨード(、、海藻など高ヨード食品)はを増悪させうるため、には可能な範囲で避ける。

合併症・経過

まとめ

  • はセリアック病の皮膚表現型で、抗tTG2 IgAがとして発症する。
  • 伸側面・・肩甲部に対称性で極めて痒い小水疱を生じるが、のため水疱自体は見えにくいことが多い。
  • 確定診断は病変近傍の正常皮膚から採取したDIFで、先端のIgA沈着を確認する。
  • 治療の中心は生涯のであり、は確認・溶血モニタリングのもとで用いるの対症療法にすぎない。
  • ほぼ全例にを伴い、や腸管関連リンパ腫の合併リスクにも留意する。脾萎縮・も一定の割合で伴い、皮疹の制御とは別に評価する。

出典

  1. 1.Dermatitis Herpetiformis: An Update on Diagnosis and Management(American Journal of Clinical Dermatology・2021)ダプソン開始前のG6PD活性確認と、開始1か月後に溶血リスクが最も高いこと。あわせて全文(PMC8068693)で、大規模症例集積での診断時平均年齢が40〜50歳(男性がやや高齢)で、フィンランドのコホートでは1970年以降に診断時平均年齢が男性35→51歳・女性36→46歳へ上昇したこと、小児は稀(フィンランドの症例集積で4%)で80歳超での診断例もあることを確認した閲覧 2026-08-01
  2. 2.S2k guidelines (consensus statement) for diagnosis and therapy of dermatitis herpetiformis initiated by the European Academy of Dermatology and Venereology (EADV)(European Academy of Dermatology and Venereology・2021)グルテン除去食が全例で第一選択、ダプソンは除去食が効くまでの急性期治療閲覧 2026-08-01
  3. 3.Splenic atrophy in dermatitis herpetiformis(British Medical Journal(Pettit JE, Hoffbrand AV, Seah PP, Fry L)・1972)全文(PMC1788027)を取得し、疱疹状皮膚炎の連続24例を脾スキャンと51Cr標識加熱処理赤血球のクリアランスで調べ、8例が明らかな脾萎縮を示したこと(うち3例はクリアランス半減時間が1時間を超え、スキャンで機能する脾組織を認めなかった)、クリアランスが正常だった残り16例でも脾の断面積の平均が42.0 cm2で正常値52.8 cm2より小さく16例中14例が52.8 cm2未満であったこと、Howell-Jolly小体が24例中7例の血液像で明らかであったこと、脾機能低下と小腸生検所見・葉酸の状態・レチクリン抗体・グルテン除去食またはダプソンによる治療との間に明らかな関係が無かったことを確認した閲覧 2026-09-05