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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

扁平苔癬

Lichen planus

臓器系
皮膚免疫・膠原病
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 3-21:扁平苔癬
鑑別疾患
円板状エリテマトーデス環状肉芽腫結節性痒疹自己免疫性水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)尋常性乾癬舌痛症苔癬型薬疹白板症慢性単純性苔癬薬疹(SJS・TENを含む)扁平苔癬性類天疱瘡
合併症
脱毛症
続発疾患
皮膚有棘細胞癌
関連疾患
移植片対宿主病前頭部線維化性脱毛症
治療薬
トリアムシノロンタクロリムス
原因薬剤
ヒドロクロロチアジドプロプラノロールクロロキンメチルドパペニシラミンニボルマブ
原因微生物
C型肝炎ウイルス
症状
掻痒局面
適応薬
トリアムシノロンベタメタゾン

🧠 全体像:は、基底層を標的とするT細胞性のが、皮膚・粘膜・毛包・爪という複数の構造を並行して侵す炎症性疾患である。皮膚病変は自然消退するが、毛包・爪・びらん性粘膜の病変は不可逆的な瘢痕や機能障害を残し得るため、部位ごとにリスクを見極めて早期に治療介入するかどうかを判断することが臨床の要になる。

病態

T細胞が基底層のを様の標的として攻撃するが基本病理であり、これはに固有のではなく、や一部のとも共有される。

  • 、、不規則な
  • 基底層のとアポトーシス()
  • 表皮真皮境界に密な帯状の

感染との関連はで確認されている——患者における陽性のは4.48(95%CI 3.48〜5.77、84研究)である。ただし地域差が大きく、地域区分別ではアフリカ8.57・東南アジア7.73・東地中海5.95と高い一方、欧州3.78・西太平洋2.87と相対的に低い(はこの幅を「2.7〜8.57」と要約している)1。同一国内でも差があり、イタリアではCampania 1.91とBrescia 10.59に分かれる1。こうした地域差の大きさから、全例に検査を義務づける根拠にはならない。(など)、β遮断薬(など)、(など)、、といった従来からの原因薬に加え、近年は(など)が報告例の最多を占めるようになっており2、これら幅広い薬剤が同様の()を誘発し得るため、臨床的にも病理的にもと重なる。

臨床像

典型的皮膚病変

英語では6 Ps(pruritic, purple, polygonal, planar, papules, plaques:・紫紅色・多角形・平坦な丘疹・局面)と整理される。手関節、、、下腿に好発し、・外傷部位に新生するを認める。表面の白い()が診断の手掛かりになり、消退後はを残しやすい。

部位別の病型と注意点

病型・部位 所見 注意点
下腿などの強く痒い厚い局面 、、扁平上皮癌を鑑別
の、紅斑、びらん、潰瘍 びらん型は疼痛・摂食障害が強く、慢性例では扁平上皮癌リスクを監視
外陰・腟・陰茎病変 、びらん、瘢痕 癒着・狭窄を防ぐ専門管理が必要。外陰・腟・歯肉のびらん性病変が揃う病型は外陰腟歯肉症候群と呼ばれ、口腔と外陰を別々に診ていると見落とす
紅斑・鱗屑、 失われた毛包は再生しないため早期治療
縦溝、菲薄化、裂け、 永久的爪変形を残し得る
水疱性・潰瘍性病型 丘疹上の水疱、の難治性潰瘍など 、腫瘍を鑑別
病変に加え、正常皮膚にも BP180抗体・のを調べ、と区別
光線性病型 の・ が重要

診断

臨床像で診断できることも多いが、非典型、肥厚性、びらん性、治療抵抗性、腫瘍が疑われる病変では生検する。では(DIF)を併用し、やを鑑別する。

flowchart TD
    A["紫紅色・多角形・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pruritic'>掻痒性</span>丘疹"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wickham striae'>ウィッカム線条</span>を確認"]
    B --> C["皮膚のみ・典型像"]
    B --> D["非典型・肥厚性・びらん性・治療抵抗性"]
    C --> E["臨床診断で治療開始"]
    D --> F["生検(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal erosion'>粘膜びらん</span>はDIF併用)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lichen planus'>扁平苔癬</span>と確定、または他疾患・扁平上皮癌を除外"]

鑑別診断

鑑別 手掛かり
薬剤開始との時間関係、広範・光線部優位、粘膜病変が少ないことがある
、伸側分布、
光線部位、、萎縮・瘢痕
より均一な。異形成を生検で評価
・びらん、、DIFで

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lichen planus'>扁平苔癬</span>を診断"] --> B["皮膚のみ・限局"]
    A --> C["粘膜・頭髪・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nail lesion'>爪病変</span>"]
    B --> D["強力〜超強力<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topical corticosteroid'>外用副腎皮質ステロイド</span>と掻痒管理"]
    D --> E["広範・難治なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phototherapy'>光線療法</span>または全身治療"]
    C --> F["機能障害・瘢痕リスクを評価"]
    F --> G["早期の専門治療と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-term surveillance'>長期監視</span>"]
  • 限局皮膚病変:強力〜超強力(など)が基本。肥厚病変ではやを選択することがある。
  • 広範皮膚病変:、短期全身性ステロイド、、免疫調節薬などを重症度に応じて検討する。
  • 口腔・外陰病変:が従来からの第一選択である。ただし系統的レビューでの裏づけは強くなく、以下の確実性の評価はを対象とした試験(35試験1474例)に基づくもので、外陰病変を検証したものではない——接着基剤で外用したステロイドがより疼痛を消失させやすいという結果は確実性が低く、の改善についてはが出ていない。などのは、無効例や長期使用の副作用を避けたい場合のとして用いる。疼痛消失ではステロイドより優れる可能性が示唆されているが確実性は非常に低く、の改善は試験間で結果が一致していない3。カンジダ感染や刺激感といった副作用を監視する。
  • :毛包破壊を止めることが目標で、強力外用・ステロイドや全身を早期に検討する。
  • :⚠️ 皮膚病変と同じ感覚でを続けても効かない。 生検確定した81例(2016〜2024年、中国の単一施設・後ろ向き)の報告では、97.5%がを侵しており、追跡できた62例のうち最も効いたのは(とくにの紅斑を伴う例)で、・・はほとんど無効だった。経口はで中等度の効果、難治例では阻害薬が有望とされる。ただし全身ステロイドは中止後に42.9%がした4。同報告では44.4%が当初されており、は不可逆にする()ため、診断の遅れがそのまま永久変形になる。
    • ⚠️ これは単一施設の後ろ向き観察研究で、治療はされていない。重症例ほど全身治療が選ばれるといった適応が残るため、効果の大小をそのまま因果として読まない。

は(OPMD)として扱われる。協力センターが招集した国際会議の2021年合意報告でもOPMDの一覧に維持され、同時に口腔と慢性の口腔病変が新たに加えられた5。ただし転化率そのものは高くない。54研究24,277例のでは、口腔をまとめたが1.07%(95%CI 0.82〜1.32)で、内訳は0.94%、口腔1.95%、異形成6.31%であった(の取り方でも値は動き、2003年改訂基準を用いた群のでは0.86%)。⚠️ この「1.07%」は割合であって年率ではない。 同解析は平均追跡期間が16.8〜272.4か月と研究間で大きく異なることを明示したうえで、年率0.32%・月率0.027%と換算している。追跡期間が2年以上という基準を満たしたのは54研究中7研究にとどまり、長く追えばこれより高く出る余地がある。 同解析では紅色型の病変(3.52)、喫煙(1.79)、飲酒(3.27)、陽性(2.55)で転化のが高く、転化部位は(0.77%)・舌(0.67%)の順に多い6。⚠️ こうした因子を持つ例や、慢性びらん性の口腔・外陰病変・肥厚性病変で、治らない潰瘍、、急な増大があれば、扁平上皮癌を除外するためにする。

まとめ

  • 紫紅色・扁平・多角形・丘疹とが典型で、が共通病理である。
  • 皮膚だけでなく口腔、外陰、頭皮、爪を必ず診察する——部位によって不可逆的な瘢痕・機能障害のリスクが大きく異なる。
  • 性、爪、びらん性粘膜病変は瘢痕・永久変化を防ぐため早期治療する。
  • C型肝炎検査は地域疫学と個別リスクに基づいて判断し、全例一律には行わない。
  • 慢性びらん・潰瘍・は扁平上皮癌を除外する対象である。

出典

  1. 1.Bidirectional Association between Lichen Planus and Hepatitis C—An Update Systematic Review and Meta-Analysis(Journal of Clinical Medicine・2023)双方向のメタ解析。(1)扁平苔癬患者におけるHCV陽性は84研究の統合オッズ比4.48(95%CI 3.48〜5.77)で、WHO地域区分別ではアフリカ8.57(1.54〜47.76、2研究)・東南アジア7.73(2.85〜20.92、13研究)・東地中海5.95(2.50〜14.40、18研究)・アメリカ4.71(2.26〜9.82、7研究)・欧州3.78(2.86〜5.00、34研究)・西太平洋2.87(1.48〜5.56、9研究)と地域差が大きく、抄録はこれを「オッズ比2.7〜8.57」と要約している。本文3.4節は最も高いのがアフリカと東南アジアであると明記する。(2)逆向きの、HCV陽性者における扁平苔癬は15研究の統合オッズ比3.65(2.14〜6.24)で、東地中海でより高い(5.51、95%CI 1.40〜15.57)。⚠️ 5.51は(2)の値であり、(1)の東地中海(5.95)とは別の測定量なので混同しない。病変部位別では皮膚優位・多彩型が口腔優位より高い(5.95 vs 3.49)。同一国内でも幅があり、イタリアではCampania 1.91(1.43〜2.57)、Brescia 10.59(3.00〜37.35)。閲覧 2026-08-02
  2. 2.Cutaneous lichenoid drug eruptions: A narrative review evaluating demographics, clinical features and culprit medications(Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology・2023)免疫チェックポイント阻害薬が苔癬型薬疹の原因薬として報告例の約42%を占め最多となっており、β遮断薬・ACE阻害薬・抗マラリア薬・サイアザイド系利尿薬・メチルドパなど従来の原因薬と並ぶ主要な誘因になっている。閲覧 2026-08-02
  3. 3.Interventions for treating oral lichen planus: corticosteroid therapies(Cochrane Database of Systematic Reviews(Lodi G, et al.)・2020)35試験1474例を対象とした系統的レビュー。著者らの結論は「副腎皮質ステロイドは口腔扁平苔癬の第一選択であり続けてきた」であり、接着基剤等で外用したステロイドは偽薬より疼痛が消失しやすい可能性がある(相対危険1.91、95%CI 1.08〜3.36、2試験72例)が確実性は低く、臨床所見の改善と有害事象は結論が出ていない。カルシニューリン阻害薬(とくにタクロリムス)はステロイドより疼痛消失に優れる可能性が示唆されるが確実性は非常に低く、臨床所見の改善は試験間で結果が一致せず、有害事象も不確実である閲覧 2026-09-05
  4. 4.Nail Lichen Planus in 81 Patients: A Retrospective Study of Clinical Characteristics, Histopathological Features, and Long-Term Treatment Outcomes(The Journal of Dermatology・2025)生検で確定した爪扁平苔癬81例(2016〜2024年、中国の単一施設・後ろ向き)の解析。爪母病変が97.53%、当初の誤診が44.44%。治療の追跡ができた62例では全身副腎皮質ステロイドが最も有効で(とくに爪郭の紅斑を伴う例)、中止後42.86%が再燃した。経口アシトレチンは早期病変で中等度の効果、難治例ではJAK阻害薬が有望とされる一方、外用副腎皮質ステロイド・外用カルシニューリン阻害薬・ヒドロキシクロロキンはおおむね無効だった。⚠️ 無作為化されていない単一施設の観察研究であり、抄録の記述までを確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.Oral potentially malignant disorders: A consensus report from an international seminar on nomenclature and classification, convened by the WHO Collaborating Centre for Oral Cancer(Oral Diseases(WHO Collaborating Centre for Oral Cancer)・2021)口腔潜在的悪性疾患(OPMD)の名称と分類の更新報告。2005年の初回会議で挙げられた白板症・紅板症・増殖性疣贅性白板症・口腔扁平苔癬・口腔粘膜下線維症などの大半が定義の小改訂のみで維持され、今回新たに「口腔苔癬様病変」と「慢性移植片対宿主病の口腔病変」がOPMDの一覧へ追加された。慢性増殖性カンジダ症と口腔疣贅性過形成はOPMDとするには証拠不十分とされた閲覧 2026-09-05
  6. 6.Rate of Malignant Transformation Differs Based on Diagnostic Criteria for Oral Lichenoid Conditions: A Systematic Review and Meta-Analysis of 24,277 Patients(Cancers (Basel)・2023)54研究24,277例のメタ解析で、口腔苔癬様病変(OLC)全体の悪性転化率の統合割合は1.07%(95%CI 0.82〜1.32)、内訳は口腔扁平苔癬(OLP)0.94%、口腔苔癬様病変(OLL)1.95%、苔癬様粘膜炎異形成(LMD)6.31%。2003年改訂WHO診断基準を用いた群のOLP転化率は0.86%(95%CI 0.51〜1.22)で非2003基準群の1.01%より低かった。紅色型OLP病変(オッズ比3.52)、喫煙(1.79)、飲酒(3.27)、C型肝炎ウイルス陽性(2.55)で転化のオッズが高い。⚠️ これらは累積割合であって年率ではない——同論文は平均追跡期間が16.8〜272.4か月と研究間で大きく異なることを明記したうえで、年率0.32%・月率0.027%と換算しており、「追跡2年以上」という質基準を満たしたのは54研究中7研究のみと述べている。転化部位は頬粘膜0.77%・舌0.67%の順に多い。なおこの論文はOPMDの分類そのものを定めた文書ではない閲覧 2026-08-02