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Drug Atlas · B35 Retinoid

アシトレチン

acitretin

分類
Retinoid
商品名(EU)
NeotigasonSoriatane
科目
PharmacologyDermatology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)皮膚科 3-20:乾癬の臨床型と治療
承認適応
乾癬毛孔性紅色粃糠疹
副作用
皮膚乾燥関節痛瘙痒爪囲炎
影響検査値
脂質パネル
相互作用
テトラサイクリンメトトレキサート
対象疾患
Hailey-Hailey病紅斑性角化症
原因となる疾患
ビタミンA過剰症毛細血管漏出症候群

🧠 全体像:はの中で角化症の薬という位置を占める。がを縮ませてを治すのに対し、は表皮の角化・分化の異常そのものを正す方向に働き、乾癬をはじめとする重症の角化症に用いる。⭐ この薬を学ぶ核心は半減期の話にある。 自身の半減期は約49時間と短いが、体内でへ逆されると半減期が約120日に跳ね上がり、脂肪組織に居座る。だから「飲酒を禁じる」「中止後3年間の妊娠回避」という一見過剰ながされる。⚠️ 日本ではは承認されておらず、前駆体にあたる(チガソン)が使われ続けている——同じ薬効群で国により使う分子が違う、珍しい例である。

薬効群の中での位置づけ

化合物 化学的な位置 主な使いどころ 日本での承認
の遊離酸() 重症乾癬・角化症1 ⚠️ 無い
のエチルエステル。高度に脂溶性 乾癬群・群・など2 ⭐ 有る(チガソン)
13-cis型 重症 無い
9-cis型 重症(経口)、(外用) 無い

⭐ 欧米はを捨ててへ移り、日本はを残した。 移った理由は半減期で、脂溶性の高いは脂肪組織に長く留まるのに対し、遊離酸のは49時間で消える1。⚠️ ところがは体内でへ戻りうるため、この利点は「飲酒しなければ」という条件付きになる——下のの節がこの薬の要である。

機序

添付文書は「の作用機序は不明である」と明記している1。(RAR)と(RXR)を介して表皮の増殖・分化・角化に関わる遺伝子発現を変えることが想定されているが、⚠️ 教科書的な説明として通用している機序であっても、文書の水準では確立していない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acitretin'>アシトレチン</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> B["核内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type 2'>レチノイド受容体</span>を介した<br>遺伝子発現の変化(想定)"]
    B --> C["表皮の増殖・分化・角化の正常化"]
    C --> D["乾癬・角化症の鱗屑と肥厚が軽減"]
    A --> E["⚠️ エタノールが存在すると<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='etretinate'>エトレチナート</span>へ逆<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esterification'>エステル化</span>される"]
    E --> F["高度に脂溶性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='etretinate'>エトレチナート</span>が<br>脂肪組織へ蓄積する"]
    F --> G["半減期が約120日へ延長し<br>催奇形性が長期にわたって残る"]

薬物動態

項目 値・特徴
投与 経口。主たる食事とともに1日1回1
の 49時間(33〜96時間、後)1
の 約120日(84〜168日、6か月投与後)1
逆 エタノールの存在下でがへ変換される1

⚠️⭐ 半減期が約60倍違う。 これが「飲酒禁止」と「中止後3年間の妊娠回避」の根拠であり、この薬の体系すべての出発点である。添付文書は極端な実例を挙げている——的な飲酒があったと報告されたある患者では、中止から52か月後の血漿とからが検出された1。

💡 「短い半減期の薬に長いがかかっている」という違和感は、が薬そのものではなくに向いていると理解すれば解ける。

適応

米国(アシトレチン)

成人の重症乾癬。生殖可能な女性では、他の治療に反応しないか、他の治療が禁忌である非妊娠患者に限って用いる1。

乾癬では、メトトレキサート・と並ぶのの1つとして位置づけられる。

日本(エトレチナート=チガソン)

日本の添付文書の効能・効果は「諸治療が無効かつ重症な下記疾患」として、次を挙げる2。

対象
乾癬群
群
ダリエー病
及び
及び

⭐ 日本の適応は米国よりはるかに広く、角化症全般に及ぶ。 、、、がいずれも名指しされている。💡 「角化の異常を正す薬」という性格は、乾癬だけを見ていると掴みにくい。 の並びを見ると、この薬効群がどこへ届く薬なのかが分かる。

⚠️ ここに挙がっていない使い方もある。 やではが試みられるが、いずれも対症的な位置づけであり、日本の添付文書上の適応ではない。

用法・用量

用量
(米国) 1日25〜50 mgを主たる食事とともに1回で開始。も患者の反応に応じて1日25〜50 mg1
(日本、成人) 1日40〜50 mgを2〜3回に分けて2〜4週間投与したのち、1日10〜30 mgを1〜3回に分けて投与2
(日本、幼小児) 1日1.0 mg/kgを1〜3回に分けて2〜4週間投与したのち、0.6〜0.8 mg/kg2

実際の用量は病型・重症度・施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️⚠️ 催奇形性と妊娠回避期間

の中心は妊娠である1。

項目 米国()1 日本()2
女性の避妊期間 治療開始1か月前から、治療中、中止後少なくとも3年間 投与中および中止後少なくとも2年間
避妊法 有効な方法を2種類同時に 記載は「避妊させること」
男性の避妊期間 — 投与中および中止後少なくとも6か月間
開始前の妊娠検査 感度25 mIU/mL以上の尿または血清妊娠検査で2回の陰性 —
飲酒 ⚠️ 妊娠可能な女性は治療中および中止後2か月間はエタノールを摂取してはならない(生成の防止) —
⚠️ 治療中および治療後少なくとも3年間はしない —

⚠️ 回避期間の年数は国と製剤で違う。 米国のは3年、日本のは女性2年・男性6か月である。同じ「」でも分子とが国ごとに違うため、年数を暗記するときは必ず「どの薬の、どの国の添付文書か」を添える。

💡 の禁止も同じ理屈から出ている。 血液を介して妊娠可能な人へ催奇形性物質が渡ることを防ぐためであり、「本人が妊娠しなければよい」という話ではない。

では2018年にEMAが、(・・)について妊娠予防プログラムを強化するよう勧告した——開始前・治療中・治療後の妊娠検査、少なくとも1つの有効な避妊法、リスク確認書と患者用リマインダーカードの導入である3。

💡 欧州でのの商品名は1つではない。 同じ照会の付属書Iには、多くの加盟国で流通する Neotigason と、フランスで承認されている Soriatane(Arrow Génériques)の両方が挙がっている4。⚠️ Soriatane を「米国の商品名」とだけ覚えない——米国ではが姿を消してのみになった一方、フランスでは現在も Soriatane の名で流通している。

そのほかの禁忌

米国()1 日本()2
重度の 肝障害のある患者
重度の 腎障害のある患者
に異常高値の血中脂質 —
本剤成分への過敏症 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
メトトレキサートとの併用 —
テトラサイクリン系との併用 —
— 製剤を投与中の患者・過剰症の患者

💡 禁忌の顔ぶれが国で違うのは、副作用の重なりをどこで切るかの違いである。 メトトレキサートは肝毒性が、テトラサイクリン系はが、製剤は毒性そのものが重なる。⚠️ どれも「同じ毒性を足し算しない」という同じ発想の別々の現れ方である。

警告の見出し

肝毒性・骨格系異常・脂質とへの影響・眼科的影響・膵炎・・・/1。

  • 肝毒性:・・・の上昇が約3人に1人に起こった1
  • 脂質:の上昇が66%、コレステロールの上昇が33%1。の追跡が要る

副作用

粘膜・皮膚の乾燥が中心で、頻度が非常に高い。乾癬患者525人のでは513人(98%)が有害事象を報告し、116人(22%)が主に粘膜・皮膚の有害事象のため試験を離脱した1。

頻度 内容
>75% ⭐
50〜75% 脱毛、皮膚の
25〜50% 鼻炎、、爪の異常、
10〜25% 悪寒、眼球乾燥、、、関節痛、⚠️ (既存病変の進行)、紅斑性発疹、、、、、べたつく皮膚

⭐ 単独で最も多いのはで、唯一 >75% の帯に入る1。💡 「は全身の粘膜を乾かす」と1つ覚えれば、・眼球乾燥・鼻炎・・がひと続きに理解できる。 と共通する副作用群である。

⚠️ この表にが入っていることを見落とさない。 上の「の見出し」に挙がる骨格系異常は、まれな重篤事象としてではなく10〜25%の頻度で既存病変の進行として報告されている1。長期投与で骨格の評価が要る根拠がここにある。

まとめ

  • はの遊離酸にあたるで、米国の適応は成人の重症乾癬。作用機序は添付文書上「不明」とされている。
  • ⭐ 半減期の対比がこの薬のすべてを説明する——49時間に対し、エタノール存在下で生じるは約120日。中止52か月後の血漿・からが検出された症例が添付文書に記載されている。
  • ⚠️ 米国では中止後3年間の妊娠回避、有効な避妊法2種類の同時使用、開始前の2回の妊娠検査、治療中と2か月間の(妊娠可能な女性)、治療中と3年間の禁止。
  • ⚠️ 日本ではは未承認で、(チガソン)が使われている。 避妊期間は女性が中止後少なくとも2年間、男性が6か月間。年数を覚えるときは薬と国をセットにする。
  • 日本の適応は乾癬群・群・・ダリエー病・・及び・・及びと、角化症全般に広い。
  • 禁忌にメトトレキサートとテトラサイクリン系の併用(米国)、製剤の併用と過剰症(日本)が入る。いずれも毒性の足し算を避ける発想。
  • は約3人に1人、上昇66%・コレステロール上昇33%。副作用はが中心で、⭐ >75%に達するのはただ1つ。⚠️ (既存病変の進行)が10〜25%に入る。
  • 欧州の商品名は Neotigason(多くの加盟国)と Soriatane(フランス)の両方がある。⚠️ Soriatane=米国だけ、ではない。

出典

  1. 1.Acitretin capsule, for oral use — Prescribing Information(Teva Pharmaceuticals USA / DailyMed(U.S. FDA)・2022)枠組み警告に「Acitretin must not be used by females who are pregnant, or who intend to become pregnant during therapy or at any time for at least 3 years following discontinuation of therapy.」および「Ethanol must not be ingested by female patients of childbearing potential either during treatment with acitretin or for 2 months after cessation of therapy.」と記載され、後者がエトレチナートの生成を防ぐためであること、妊娠可能な女性は治療開始1か月前・治療中・治療後少なくとも3年間、有効な避妊法を2種類同時に用いること、初回処方の前に感度25 mIU/mL以上の尿または血清妊娠検査で2回の陰性が必要であること、「Patients should not donate blood during and for at least 3 years following therapy with acitretin.」と記載されていること、「Etretinate was found in plasma and subcutaneous fat in one patient reported to have had sporadic alcohol intake, 52 months after she stopped acitretin therapy.」という症例記載があること、適応が成人の重症乾癬であり生殖可能な女性では他剤に反応しないか他剤が禁忌の非妊娠患者に限ること、機序が「The mechanism of action of acitretin is unknown.」とされていること、アシトレチンの反復投与後の終末相消失半減期が49時間(33〜96時間)、6か月投与後のエトレチナートの見かけの平均終末相半減期が約120日(84〜168日)であること、禁忌が重度の肝機能障害・重度の腎機能障害・慢性的に異常高値の血中脂質・本剤成分への過敏症・メトトレキサートまたはテトラサイクリン系との併用・生殖可能な女性における妊娠であること、用法が1日25〜50 mgを主たる食事とともに1回で開始し維持量も患者の反応に応じて1日25〜50 mgとすること、警告の見出しが肝毒性・骨格系異常・脂質と心血管系への影響・眼科的影響・膵炎・偽性脳腫瘍・毛細血管漏出症候群・剥脱性皮膚炎/紅皮症であること、AST・ALT・GGT・LDHの上昇が約3人に1人に起こったこと、中性脂肪の上昇が66%・コレステロールの上昇が33%に生じたこと、副作用の頻度(Table 3、乾癬患者525人の臨床試験)が、>75%=口唇炎、50〜75%=脱毛・皮膚の落屑、25〜50%=鼻炎・皮膚乾燥・爪の異常・瘙痒、10〜25%=悪寒・眼球乾燥・口内乾燥・鼻出血・関節痛・脊椎骨増殖症(既存病変の進行)・紅斑性発疹・知覚過敏・錯感覚・爪囲炎・皮膚萎縮・べたつく皮膚であること、臨床試験では525人中513人(98%)が有害事象を報告し116人(22%)が主に粘膜・皮膚の有害事象のため途中で試験を離脱したことを確認した閲覧 2026-09-04
  2. 2.チガソンカプセル10/チガソンカプセル25 添付文書(太陽ファルマ株式会社/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2024)2024年1月改訂(第2版)の添付文書を閲覧して確認した。警告に「本剤には催奇形性があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、妊娠する可能性のある女性には治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しない。やむを得ず投与する場合には使用上の注意を厳守すること。」とあり、女性については「投与中及び投与中止後少なくとも2年間は避妊させること。」、男性については「投与中及び投与中止後少なくとも6ヵ月間は避妊させること。」とされていること、禁忌が妊婦又は妊娠している可能性のある女性・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者・肝障害のある患者・腎障害のある患者・ビタミンA製剤を投与中の患者・ビタミンA過剰症の患者であること、効能・効果が「諸治療が無効かつ重症な下記疾患:乾癬群、魚鱗癬群、掌蹠角化症、ダリエー病、掌蹠膿疱症、毛孔性紅色粃糠疹及び紅斑性角化症、口腔白板症、口腔乳頭腫及び口腔扁平苔癬」であること、用法・用量が成人で1日40〜50 mgを2〜3回に分けて2〜4週間経口投与したのち1日10〜30 mgを1〜3回に分けて投与、幼小児で1日体重1 kgあたり1.0 mgを1〜3回に分けて2〜4週間投与したのち0.6〜0.8 mg/kgとすることを確認した。⚠️ 本剤の有効成分はエトレチナートであり、アシトレチンそのものは日本で承認されていない閲覧 2026-09-04
  3. 3.Updated measures for pregnancy prevention during retinoid use(European Medicines Agency・2018)2018年3月23日付のEMA文書(EMA/165360/2018)が、レチノイドの審査を完了し、経口レチノイドのうちアシトレチン・アリトレチノイン・イソトレチノインについて妊娠可能な女性に対する妊娠予防プログラム(妊娠検査を開始前・治療中・治療後に実施、少なくとも1つの有効な避妊法の使用、リスク確認書と患者用リマインダーカードの導入)を強化する必要があると勧告したことを確認した閲覧 2026-09-04
  4. 4.Annex I: List of nationally authorised medicinal products (retinoids Article 31 referral)(European Medicines Agency(CHMP)・2018)レチノイド第31条照会の付属書I(CHMP作成、2018年6月22日付PDF)を取得して確認した。アシトレチンを含有し各国で承認されている製品の一覧に、Neotigason(Actavis Group Ptc Ehf. ほか。オーストリア・クロアチア・キプロス・チェコ・デンマーク・エストニア・フィンランド・ギリシャ・ハンガリー・アイスランド・アイルランド・ラトビア・リトアニア・マルタ、ドイツはPuren Pharma、イタリアはAurobindo Pharma など)と、フランスの Soriatane(Arrow Génériques、アシトレチン10 mgカプセルおよび25 mgカプセル)の双方が掲載されていることを確認した。⚠️ すなわち Soriatane は米国の旧商品名であると同時に、フランスで現に承認されている欧州の商品名でもある閲覧 2026-09-04