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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

ダブラフェニブ+トラメチニブ

dabrafenib + trametinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
タフィンラー(ダブラフェニブ)メキニスト(トラメチニブ)
商品名(EU)
Tafinlar(dabrafenib)Mekinist(trametinib)
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
承認適応
悪性黒色腫非小細胞肺癌甲状腺癌(米国は未分化癌・EUは分化癌、日本は適応なし)有毛細胞白血病(日本のみ)神経節膠腫(低悪性度神経膠腫として)多形黄色星細胞腫(低悪性度神経膠腫として)低悪性度神経膠腫
副作用
発熱皮疹視力低下
監視検査値
左室駆出率
対象疾患
頭蓋咽頭腫
原因となる疾患
MEK阻害薬関連漿液性網膜症

🧠 全体像:は、MAPK経路(RAS→RAF→MEK→ERK)を2箇所で同時に遮断する設計の併用療法。を単剤で使うと、上流のBRAFを塞いだ代償として下流のMEKが別経路から再活性化され耐性が生じやすく、しかも・が誘発されるというな副作用が出る。を併用することでこの再活性化を防ぎ、耐性が出るまでの期間を延ばすと同時に、皮膚腫瘍のも下げる——「1剤の弱点をもう1剤ので補う」という合理的な合剤設計の代表例。

薬効群の中での位置づけ

MAPK経路を狙う薬はBRAF単独か、BRAF+MEKの二重遮断かで大きく分かれる。

阻害点 代表薬 特徴
BRAF単独阻害 単剤(歴史的には単剤使用もあったが現在は併用が標準) MEK再活性化による耐性・のリスクが単剤では高い
BRAF+MEK二重阻害 耐性抑制・皮膚腫瘍抑制の両面で単剤より優れる。現行の標準的な使い方
KRAS G12C阻害 同じMAPK経路のさらに上流(RAS自体)を直接狙う、別のに対する薬

⭐ はと組み合わせて使うのが標準である。⚠️ ただし「単剤の適応が無い」わけではない——米国添付文書はを未治療の・に対する単剤としても承認しており1、のも12歳以上の・について「単剤または併用」と書く。そのうえではによる前治療後に増悪した患者では単剤の臨床活性が示されていないと明記している2。💡 単剤が退いたのは上の適応が消えたからではなく、併用のほうが成績が良いからである。

機序

flowchart TD
    A["BRAF V600変異<br>(V600E・V600Kなど)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>BRAFが<br>RAS非依存的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive activation'>恒常活性化</span>"]
    B --> C["MEKを持続的にリン酸化"]
    C --> D["ERKが持続的に活性化"]
    D --> E["腫瘍細胞の異常増殖"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dabrafenib'>ダブラフェニブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>BRAFを選択的に阻害"] --> G["BRAF単独阻害"]
    G -.->|"単剤の弱点"| H["MEKが別経路(CRAFなど)から<br>再活性化され耐性が生じる"]
    H -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paradoxically'>逆説的</span>な副作用"| I["正常細胞でMAPK経路が<br>かえって活性化し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutaneous squamous cell carcinoma'>皮膚扁平上皮癌</span>を誘発"]
    J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trametinib'>トラメチニブ</span>がMEKを直接阻害"] --> K["BRAF阻害後の再活性化経路も遮断"]
    G --> K
    K --> L["MAPK経路を2箇所で遮断<br>→耐性抑制・皮膚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor risk'>腫瘍リスク</span>低下"]

💡 なぜ単剤で皮膚腫瘍が増えるのか。 BRAF野生型の正常細胞(特にを併せ持つ細胞)では、がCRAFという別のRAFをに活性化してしまい、MAPK経路がかえって亢進する(paradoxical activation)。でMEKを直接止めれば、この経路のどちらから来ても最終的に遮断できる。

薬物動態

項目 値・特徴
の代謝 ・CYP2C8で代謝。同時に・CYP2C9・CYP2C8のでもあり、他剤の血中濃度を下げうる(の効果減弱を含む)
の代謝 主に加水分解(代謝への依存度は低い)
半減期 約8時間、約5日(長い)

⚠️ はとして働くため、経口避妊薬の効果を弱める。 妊娠可能な患者には非の避妊法を追加で説明する。

適応

⚠️ は3極でまったく一致しない。 「BRAF V600変異陽性なら何にでも使える薬」ではなく、どの国の文書を読んでいるかで適応の集合が変わる。

適応 (SmPC 4.1)2 日本(電子添文 4.)3 1
悪性黒色腫(・転移性) あり(12歳以上、BRAF V600変異) あり あり(BRAF V600EまたはV600K)
悪性黒色腫の あり(12歳以上、Stage IIIの完全切除後) あり あり(リンパ節転移を伴い完全切除された例)
あり(成人の進行例) あり(な進行・再発) あり(転移性、BRAF V600E)
(BRAF V600E、に抵抗性または不適で前治療中・後に増悪した局所進行・転移例) 適応なし (ATC)(BRAF V600E、満足な局所領域治療の選択肢が無い局所進行・転移例)
BRAF V600E変異陽性の固形腫瘍(臓器横断) 適応なし あり(標準的な治療が困難な進行・再発。結腸・を除く) あり(1歳以上、前治療後に増悪。で、有効性の検証は確認試験に委ねられている)
(・など) 適応なし あり あり(小児1歳以上)
(再発・難治性) 適応なし あり 適応なし
漿液性卵巣癌(がん化学療法後に増悪) 適応なし あり。⚠️ ここだけ単剤(との併用ではない) 適応なし

⚠️ の書き分けを潰さない。 米国が承認しているのは、が承認しているのはで、対象が正反対のである。日本の電子添文にはそもそもの適応が無い3。⚠️ 米国の臓器横断適応には「結腸には適応しない」という Limitations of Use が付いている——BRAF阻害へのが知られているためである1。

用法・用量

1日2回150 mg+1日1回2 mgを併用する。⭐ は空腹時に投与する3。小児では体重に応じてを減量し、日本ではと小児用ドライシロップで刻みが異なる3。

⭐ 投与期間の考え方が適応で違う。 ・転移例(悪性黒色腫・固形腫瘍・・)と小児はまたは許容できない毒性まで続けるが、悪性黒色腫のだけは最長1年(日本の電子添文では12か月まで)である13。

発熱・・心機能低下・に応じて・減量する。実際の用量・は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ 発熱:本併用療法に特徴的な副作用で、高熱・悪寒を伴うことがある。重症例ではし後に減量再開する
  • 心機能低下:投与前後でを評価する
  • ⚠️ は「どちらの薬の毒性か」で分けて覚える(下記の独立した節を参照)。要点だけ挙げると、剥離(関連)とは側、ぶどう膜炎は側の毒性で、必要な処置も薬も別である14
  • の効果減弱:の誘導作用により効果が下がるため、妊娠可能な患者には非避妊法を追加する
  • BRAF野生型腫瘍への投与はparadoxical activationによりを促進しうるため、投与前にBRAF変異の確認が必須

眼毒性——2剤の毒性が別々に重なる

⚠️ 「がある」で止めると管理を誤る。 この併用のは由来のの障害と由来のぶどう膜炎という別系統が重なったもので、頻度も対処も違う。

事象 由来する薬 頻度 対処
剥離(RPED)=関連 による監視を組み込んだ併用131例の試験で5%(うち1例がを)。小児の併合安全性集団では1%未満1 。3週以内に消退すれば同用量または減量で再開、3週で改善が無ければ減量再開または永続中止1。はGrade 1なら月1回の網膜評価を続けて治療継続、Grade 2〜3で最長3週・改善時は0.5 mg減量2
(RVO) 単剤の併合安全性集団で0.6%。⚠️ 併用の併合安全性集団では症例が無かった1(の併用の頻度表にもRVOは挙がらない2。日本の電子添文は「頻度不明」に置く3) ⚠️ 視力障害の訴えには24時間以内に眼科評価。RVOが確認されたら永続中止(併用中の側は不要)12
ぶどう膜炎(・を含む) 単剤で成人1%、併用で成人2%、小児1.2%。市販後に両眼性の・両眼性の報告4 なら眼局所治療(ステロイド点眼・)を行い、は用量を変えず継続する。 重度()または局所治療に反応しない軽度・中等度では最長6週し、Grade 0〜1へ改善すれば再開。Grade 2以上が6週を超えて持続すれば永続中止4。⚠️ ぶどう膜炎では側のは要らない12

💡 なぜMEK阻害でRPEDが起きるのか。 MAPK(MEK/ERK)経路は腫瘍細胞だけでなくのと水輸送ポンプにも関与している。MEKを止めると正常なの機能が一時的に落ち、に漿液が貯留する——これが関連(MEKAR)である、というのが教科書的に置かれている説明である。⚠️ ただしこの機序は確立していない。 25例の形態解析を行った原著自身が、根拠に挙がるの1調節の in vitro 研究はむしろMEK阻害では液が貯まらない方向を示唆すること、障害の座がにあるならCSCと同じく多画像での異常が検出されるはずなのに検出されないことを、この仮説の弱点として明記している5。⭐ 機序の説明は未確定でも、クラス毒性であること自体は文書が示している——でもが独立したとして立てられている。

⚠️ RPEDを(CSC)と同一視しない。 を投与中にを来した25例50眼・313をで解析したでは、92%が両眼性、77%が多発性、83.3%で少なくとも1がにかかっており、すべての液体貯留はとの間(interdigitation zone と保たれたのあいだ)に生じ、も網膜内浮腫も高反射ドットも認められなかった5。⭐ 最も明快な違いは厚である——同研究では・液体貯留時・消退時のあいだで厚に統計学的な差が無く、値も正常範囲内だった。CSCで確立しているがMEKARには無い5。⚠️ 「ステロイドで治す」と考えないこと——CSCではステロイドはむしろ誘因であり、MEKARに対しても添付文書が求めているのは・減量と眼科評価であってステロイド投与ではない。

⭐ 経過も掴んでおく。 同研究では薬剤開始からでが最初に検出されるまでの中央値が14日(80%が1サイクル目で異常所見)、消退までの中央値が32日で、全眼でに消退し薬剤中止を要さなかった。症状があったのは48%の患者で、最多は、ほかにもみられた。液体貯留時にSnellen視力がから2行を超えて低下した眼は無く、消退時には全眼がから1行以内に戻っていた5。⚠️ ただしこれは症状または試験プロトコルによって眼科評価を受けた25例の単施設であり、無症状例をどれだけ拾えたかは著者ら自身が限界として認めている。

⚠️ RVOの素因がある患者には注意が要る。 のはRVOの既往がある患者にはを推奨しないとし、コントロール不良の緑内障・・コントロール不良の高血圧・コントロール不良の糖尿病・や症候群の既往といった素因を持つ患者での安全性は確立していないと明記する2。💡 実際、悪性黒色腫の主要試験(COMBI-d/COMBI-v)はRVO・RPEDの既往がある患者を除外して行われている1——「試験で頻度が低かった」という数字は、そもそも素因を持つ人を組み入れていない集団のものである。

⭐ 日本の電子添文は「8. 重要な基本的注意」で、・剥離・等の重篤な眼障害が報告されているとして、定期的に眼の異常の有無を確認し、異常時は速やかに受診するよう患者を指導することを求めている3。眼科評価を治療計画にあらかじめ組み込む。

副作用

頻度 内容
高頻度 発熱(本併用に特徴的)、皮疹、悪寒、疲労、悪心
注意 心機能低下、関節痛、・・ぶどう膜炎(日本の電子添文で・ぶどう膜炎・視力障害が1〜10%未満)3
重篤・まれ 剥離(関連)、、(のリスクは単剤より低いが残存)、重篤な出血

まとめ

  • ()と()を組み合わせ、MAPK経路を2箇所で遮断する併用療法。
  • BRAF単剤の弱点(MEK再活性化による耐性、の誘発)をMEK阻害の併用で補う設計。
  • ⚠️ は3極で一致しない。 悪性黒色腫(を含む)とは共通だが、は米国が・がで対象が逆、日本には適応そのものが無い。 臓器横断の固形腫瘍・は日本と米国のみ、と漿液性卵巣癌は日本のみで、後者は単剤である。投与前のBRAF変異確認が必須。
  • 発熱が本併用療法に特徴的な副作用で、・減量の判断基準になる。
  • ⚠️ は2剤で別物である。 側の剥離(関連)はして3週で消退を確認、は24時間以内の眼科評価と永続中止。側のぶどう膜炎はなら点眼治療のまま継続でよい。MEKARはとは違いが厚くならず、多くは薬剤中止を要さずに消退する。
  • はでもあり、の効果を弱める点に注意する。
  • BRAF野生型腫瘍への誤投与はparadoxical activationにより増殖を促進しうる。

出典

  1. 1.MEKINIST (trametinib) tablet, film coated / MEKINIST (trametinib) powder, for solution — full prescribing information(Novartis Pharmaceuticals Corporation(DailyMed)・2025)全文を確認した。文書自身の改訂表示は Revised March 2025(DailyMed の掲載は 2026-05-20)。1. の適応は単剤(BRAF阻害薬未治療の切除不能・転移性悪性黒色腫)と、ダブラフェニブ併用での悪性黒色腫・リンパ節転移を伴う悪性黒色腫の術後補助療法・転移性非小細胞肺癌・局所進行または転移性の甲状腺未分化癌(ATC)・BRAF V600E変異陽性の切除不能または転移性固形腫瘍(1歳以上、迅速承認)・小児1歳以上の低悪性度神経膠腫で、1.7 Limitations of Use は結腸直腸癌への適応が無いことを明記する。5.6 Ocular Toxicities は、単剤の併合安全性集団で網膜静脈閉塞(RVO)が0.6%、ダブラフェニブ併用の併合安全性集団では RVO の症例が無かったとし、RVO は黄斑浮腫・視機能低下・血管新生・緑内障をきたしうるとする。視力障害の訴えには24時間以内に眼科評価を行い、RVO が確認されたら永続中止する。網膜色素上皮剥離(RPED)は両眼性・多発性のことがあり、網膜の中心黄斑部にもそれ以外にも生じうる。ダブラフェニブ併用の成人では、光干渉断層計による眼科モニタリングを組み込んだ131例の試験で RPED が5%(うち1例に視野欠損症状)に生じ、小児の併合安全性集団では1%未満であった。RPED と診断したら休薬し、3週間以内に消退が確認されれば同用量または減量で再開、3週間で改善が無ければ減量再開または永続中止とする。2.4 の表も RPED は最長3週間の休薬、RVO は永続中止と定める。2.5 でダブラフェニブ側の非皮膚悪性腫瘍とぶどう膜炎については本剤の用量調節は不要とする。2.3 の投与期間は、切除不能・転移性の悪性黒色腫/固形腫瘍・転移性NSCLC・ATC では病勢進行または許容できない毒性まで、術後補助療法では再発または許容できない毒性まで最長1年、小児低悪性度神経膠腫では病勢進行または許容できない毒性までである。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Mekinist (trametinib) Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)PDF全文を取得して確認した。4.1の適応は、単剤またはダブラフェニブ併用での12歳以上の切除不能・転移性悪性黒色腫(BRAF V600変異)、ダブラフェニブ併用での12歳以上の Stage III 悪性黒色腫の完全切除後の術後補助療法、成人の進行非小細胞肺癌、放射性ヨウ素に抵抗性または不適で前治療中・後に増悪した成人の局所進行・転移性の分化型甲状腺癌(DTC、BRAF V600E)の4項目で、甲状腺未分化癌・臓器横断の固形腫瘍・低悪性度神経膠腫は含まれない。4.4 Visual impairment は、RPED と RVO を含む視覚障害がトラメチニブの単剤でも併用でも起こりうるとし、RVO の既往がある患者にはトラメチニブを推奨しないと明記する。コントロール不良の緑内障・高眼圧・コントロール不良の高血圧・コントロール不良の糖尿病・過粘稠度症候群や凝固亢進症候群の既往といった RVO の素因を持つ患者での安全性は確立していないとする。RPED には4.2の Table 3 に従い、Grade 1 は月1回の網膜評価を続けながら治療継続、Grade 2〜3 は最長3週間休薬し、改善すれば0.5 mg減量して再開、改善しなければ永続中止とする。RVO が診断されたらトラメチニブは永続中止とし、併用中のダブラフェニブは RVO・RPED いずれでも用量調節を要さない。ぶどう膜炎ではトラメチニブの用量調節を要さず、ダブラフェニブ側の SmPC 4.4 を参照するよう指示する。4.8の眼障害は、単剤で霧視・眼窩周囲浮腫・視覚障害・脈絡網膜症が common、乳頭浮腫・網膜剥離・網膜静脈閉塞が uncommon、ダブラフェニブ併用では霧視・視覚障害・ぶどう膜炎・脈絡網膜症が common、網膜剥離・眼窩周囲浮腫が uncommon で、併用の頻度表に網膜静脈閉塞は挙がらない。PDFの10.(DATE OF REVISION OF THE TEXT)は空欄で、EMAのProduct informationページの Last updated 表示は22/05/2026。閲覧 2026-09-08
  3. 3.メキニスト錠0.5mg/メキニスト錠2mg/メキニスト小児用ドライシロップ4.7mg 電子添文(ノバルティスファーマ株式会社(PMDA 医療用医薬品情報。2026年2月改訂・第8版、効能変更・用法及び用量変更)・2026)電子添文を全文確認した。「4. 効能又は効果」の錠剤は、BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫、BRAF遺伝子変異を有する切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、標準的な治療が困難なBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍(結腸・直腸癌を除く)、BRAF遺伝子変異を有する再発又は難治性の有毛細胞白血病、BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫、がん化学療法後に増悪した低異型度漿液性卵巣癌の6項目で、甲状腺癌は含まれない。「6. 用法及び用量」は悪性黒色腫・非小細胞肺癌・有毛細胞白血病・固形腫瘍・低悪性度神経膠腫がいずれもダブラフェニブとの併用で成人2mgを1日1回空腹時、悪性黒色腫の術後補助療法は投与期間12か月までとする一方、低異型度漿液性卵巣癌だけは併用の記載が無くトラメチニブ単剤(成人2mgを1日1回空腹時)である。「8.2」は網膜静脈閉塞・網膜色素上皮剥離・網膜剥離等の重篤な眼障害が報告されているとして定期的な眼の異常の確認と、異常時の速やかな受診指導を求める。「11.2 その他の副作用」の悪性黒色腫・非小細胞肺癌・有毛細胞白血病・低異型度漿液性卵巣癌の表では、眼の項が1%〜10%未満に霧視・ぶどう膜炎・視力障害、1%未満に網膜色素上皮剥離・眼窩周囲浮腫・網脈絡膜症・網膜剥離・視力低下、頻度不明に網膜静脈閉塞を置く。閲覧 2026-09-08
  4. 4.TAFINLAR (dabrafenib) capsule / TAFINLAR (dabrafenib) tablet, for suspension — full prescribing information(Novartis Pharmaceuticals Corporation(DailyMed)・2025)5.5 Uveitis を全文確認した。文書自身の改訂表示は Revised March 2025。ぶどう膜炎(虹彩炎・虹彩毛様体炎を含む)は単剤の併合安全性集団で成人の1%、トラメチニブ併用の併合安全性集団で成人の2%、小児で1.2%に生じ、市販後に両眼性の汎ぶどう膜炎・両眼性虹彩毛様体炎の報告がある。臨床試験ではステロイド点眼と散瞳薬点眼が用いられた。虹彩炎と診断した場合は眼局所治療を行い本剤は用量を変えずに継続する。重度のぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)、または軽度・中等度でも眼局所治療に反応しない場合は最長6週間休薬し、Grade 0〜1へ改善すれば同用量または減量で再開する。Grade 2以上のぶどう膜炎が6週を超えて持続する場合は永続中止する。閲覧 2026-09-08
  5. 5.Clinical and Morphologic Characteristics of MEK Inhibitor-Associated Retinopathy: Differences From Central Serous Chorioretinopathy(Ophthalmology・2017)PMC5698142で全文を取得して確認した。転移癌に対しMEK阻害薬を投与中で光干渉断層計により漿液性網膜剥離が確認された25例50眼・313病巣を対象とした単施設後ろ向きコホート研究である。92%が両眼性、77%が多発性、83.3%で少なくとも1病巣が中心窩にかかり、すべての液体貯留はinterdigitation zoneと保たれた網膜色素上皮のあいだに生じ、色素上皮剥離・網膜内浮腫・高反射ドットを認めなかった。病巣形態はdome 231(73.8%)・caterpillar 36(11.5%)・wavy 31(9.9%)・splitting 15(4.8%)。脈絡膜厚は基線269.6±15.1μm・液体貯留時261.5±15.0μm(p=0.07、32眼)などいずれの時点間でも有意差が無く正常範囲内で、著者らはCSCで確立した肥厚脈絡膜(pachychoroid)がMEKARには無いと述べる。薬剤開始から網膜下液の初回検出までの中央値は14日で80%が1サイクル目に異常所見を示し、消退までの中央値は32日、全眼で自己限定的に消退し薬剤中止を要さなかった。症状は48%の患者にあり最多は霧視で変視症などもみられた。液体貯留時にSnellen視力が基線から2行を超えて低下した眼は無く、消退時には全眼が基線から1行以内であった。⚠️ 蛍光眼底造影で血管異常・充盈欠損・遮蔽・漏出・染色を認めなかったという記述は4眼のみの所見であり、自己蛍光の正常所見も4眼である。⚠️ 「最大90%の患者に自己限定的な神経感覚網膜剥離が生じる」はDiscussion冒頭で本研究の結果ではなく引用文献10の記述として述べられており、本研究自身の結果ではない。閲覧 2026-09-08