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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

コビメチニブ

cobimetinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
コテリック
商品名(EU)
Cotellic
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
承認適応
悪性黒色腫Erdheim-Chester病Rosai-Dorfman病
副作用
下痢光線過敏症悪心嘔吐発熱視力低下
監視検査値
クレアチンキナーゼ(CPK)
原因となる疾患
MEK阻害薬関連漿液性網膜症尋常性痤瘡

🧠 全体像:は単独では悪性黒色腫に使わないで、との併用で初めて意味を持つ薬として設計されている。単剤最大の弱点は、BRAF野生型細胞で形成を介してMAPK経路をかえって活性化させるparadoxical activation——これが・を誘発する。はMAPK経路のBRAFより下流、MEKを直接遮断するため、化がどう起ころうと下流のシグナルを断てる。この「上流の抜け道を下流で塞ぐ」という発想が、coBRIM試験で・が単剤群20%から併用群6%へ減ったことを説明する核心である1。

薬効群の中での位置づけ

BRAF+MEK併用療法は現在2系統ある。

併用 位置づけ 特徴
+(coBRIM試験) BRAF V600E/K変異陽性黒色腫の標準治療の一つ ・関節痛・は側に多く残るが、単剤よりは大幅に減少する
同じBRAF+MEK二重阻害の併用療法 発熱が特徴的。では全体のがやや良好とされる

⭐ coBRIM試験(未治療の・転移性BRAF V600変異陽性黒色腫495例)の主解析では、+群が+プラセボ群に対し中央値9.9か月対6.2か月、68%対45%(10%対4%)と上回った2。⚠️ この数値は2014年の主解析のものである。 追跡を延長した米国添付文書の最終解析では中央値12.3か月対7.2か月、中央値22.3か月対17.4か月、70%対50%(16%対10%)と、いずれも大きくなっている1。データカットが違えば同じ試験でも数値が変わるので、どちらの解析の値かを添えて読む。

は「の相棒」として設計された薬であり、悪性黒色腫では単剤適応を持たない。 例外は(、、など)で、を併用せず単剤で使う——これらはBRAF V600変異の有無によらずMAPK経路のが病態の中心にあるため、単独でも標的を直接叩ける。⚠️ ただしこれは米国だけの適応である。 のSmPCは今も併用の悪性黒色腫1適応しか持たず、は文書中に一度も現れない3。

機序

flowchart TD
    A["BRAF V600変異細胞<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomer'>単量体</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive activation'>恒常活性化</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vemurafenib'>ベムラフェニブ</span>がBRAFを阻害"]
    B --> C["MAPK経路(RAF→MEK→ERK)が遮断される"]
    D["BRAF野生型細胞<br>(潜在する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RAS mutation'>RAS変異</span>細胞)"] --> E["BRAF-CRAF<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heterodimerization'>ヘテロ二量体形成</span>"]
    E -.->|"paradoxical activation"| F["MAPK経路がかえって活性化"]
    F --> G["潜在<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RAS mutation'>RAS変異</span>クローンの増殖が加速"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutaneous squamous cell carcinoma, cSCC'>皮膚有棘細胞癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratoacanthoma'>角化棘細胞腫</span>"]
    I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cobimetinib'>コビメチニブ</span>がMEK1/2に結合<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP-binding site'>ATP結合部位</span>でなく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allosteric site'>変構部位</span>)"] --> J["RAFの活性化状態によらずMEKの活性化を阻止"]
    J -.->|"paradoxical activationが起きても下流を遮断"| F
    J --> K["BRAF変異細胞のMAPK経路も追加抑制"]
    C --> L["腫瘍細胞の増殖抑制が強化される"]
    K --> L

💡 なぜを「」するとが減るのか。 paradoxical activationは、BRAF野生型細胞でが形成されMAPK経路が逆に活性化する現象で、あくまでBRAFより上流の出来事である。はBRAFより下流のMEKを()で阻害するため、化がどう起ころうと、その先のMEK活性化そのものを止められる。単剤治療中の・の検体は高頻度に(特にHRAS)を伴い、でも併用がその増殖を抑えた4。米国添付文書はcoBRIM試験について、またはの発現率を単剤群20%対併用群6%(併用群の初発までの4か月)と記載している。は逆に併用群4.5%対単剤群2.4%、二次性原発黒色腫は併用群0.8%対単剤群2.4%で、減っているのは・の系統だけである1。

薬物動態

項目 値・特徴
約46%1
半減期 約44時間(平均)。1日1回投与で定常状態は9日ほどで到達する1
代謝 主にで代謝される
食事の影響 食事の有無を問わず服用できる

⚠️ 強いCYP3A阻害薬・との併用は避ける。 短期の中等度CYP3A阻害薬をやむを得ず併用する場合は、を20 mgへ一時減量する1。

適応

領域 使いどころ 米国
皮膚 BRAF V600(米国はV600E/K)変異陽性の・転移性悪性黒色腫(との併用に限る、単剤適応は無い) あり3 あり1
血液・系 成人のへの(根拠は単施設26例。内訳は13例・4例・4例・黄色肉芽腫2例・3例で、判定の76.9%、RECIST判定46.2%) 無い3 あり1

⚠️ この適応は「」ではない。 は2022年4月28日受理のを2022年10月28日に通常の承認として承認し、の適応を追加した。承認レターの全文に accelerated・subpart H・confirmatory の語は1回も現れず、現行の添付文書にもに伴うの但し書きは無い561。この補足申請の審査区分がであったことは、Drugs@ の HTML 版(補足申請の表に審査区分の列が無い)ではなく openFDA の構造化データで確かめられる——S-005 は PRIORITY、直近の表示変更の S-007 は STANDARD である7。は審査にかける時間の区分、はどの評価項目で承認するかの区分であり、両者を混同すると「検証試験で臨床的有用性が未確認のまま出た適応」という誤った理解になる。

⭐ への適応はBRAF変異の有無を問わないである点が悪性黒色腫の使い方と対照的。 根拠試験の26例もBRAF V600変異陽性6例・野生型20例で、変異の有無で組み入れを分けていない1。MAPK経路のという共通の病態を、単独でMEKレベルで直接叩く。

用法・用量

悪性黒色腫:60 mgを1日1回、28日サイクルのうち21日間し、7日間する。960 mgを1日2回、なく継続併用する。:同じ60 mg 1日1回・21/28日サイクルでする。・・心毒性・に応じ・減量(40 mg→20 mgの段階的減量)し、実際の用量は添付文書で確認する1。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌の欄はほとんど空である。 米国添付文書の第4節は逐語で None.、のSmPCの4.3は・添加剤への過敏症だけである13。この薬の安全性は禁忌ではなく、投与前後のモニタリングと・減量の規定で担保されている——だから下の各項目は「使ってよいか」ではなく「何を測り続けるか」として読む。

  • ⚠️ (関連):coBRIM試験で症候性・無症候性を合わせ26%に認めた。内訳は脈絡網膜症13%・12%で、初発までの期間は2日〜9か月、持続期間は1日〜15か月と幅が広い1。⚠️ とでは対応が段違いである——は最大4週間のとし、改善すれば1段階減量して再開、4週以内に改善しないか減量後に再発すれば永続中止。これに対しはその時点で永続中止である(coBRIM試験では各群1例に発生)1。💡 視覚症状が出てからでは遅い所見なので、投与前と投与中に定期的な眼科評価を組み込む——無症候例が26%の中に含まれていることが、定期評価を求める理由そのものである
  • ⚠️ 心毒性(低下):coBRIM試験でGrade 2または3の低下が併用群26%・単剤群19%に発現した(のではGrade 2が8%、Grade 3-4が12%)。投与前・開始1か月後・以後3か月ごとに評価し、ベースラインのが施設下限未満または50%未満の患者での安全性は確立していない1
  • ⚠️ 出血:Grade 3-4の出血が併用群1.2%・単剤群0.8%に発現し、全Gradeでは13%対7%。も0.8%に生じている1
  • :Grade 3-4のが 11%・ 8%に発現するため定期的にモニタリングする1
  • ⚠️ ・CPK上昇:coBRIM試験の併用群でGrade 3-4のCPK上昇が14%(単剤群0.5%)。初発までの中央値は16日(12日〜11か月)で、投与開始まもない時期に集中する。のではGrade 2が27%・Grade 3-4も27%と単剤でむしろ高い。投与前に血清CPKと血清クレアチニンをベースラインとして測り、投与中も定期的に測定する1。💡 CPK単独では判断しない——添付文書が重く扱うのはCPKがベースラインの10倍超かつが1.5倍以上に同時上昇した患者(併用群3.6%対単剤群0.4%)で、が腎に及んでいるかを組にして見る。Grade 4のCPK上昇、あるいはCPK上昇と筋痛が同時にあれば最大4週間する1
  • :coBRIM試験の併用群で47%に発現し、うち43%がGrade 1〜2、残る4%がGrade 3であった(同じ添付文書の有害事象表では「反応」として46%対単剤群35%。節によって集計の括り方が違うので数値が1%ずれる)。(/、SPF30以上)・・リップバーム・直射日光回避を指導する1
  • :動物試験で胚と大血管・頭蓋の胎児奇形が示されている。⚠️ ただし「妊娠は禁忌」ではない。 のSmPCは4.3ではなく4.6で扱い、「母体の必要性と胎児のリスクを慎重に考慮したうえで、明らかに必要な場合を除き妊娠中は使用すべきでない」と書く。妊娠可能な女性には治療中および終了後3か月間、2種類の有効な避妊法を用いるよう指導する3
  • 新規原発悪性腫瘍:皮膚・非皮膚とも生じうるため、投与前・投与中、および中止後6か月間は的評価を続ける1

副作用

頻度 内容
高頻度(悪性黒色腫、20%以上。coBRIM試験の+群 対 単剤群) 下痢(60%対31%)、(46%対35%)、悪心(41%対25%)、発熱(28%対23%)、嘔吐(24%対13%)1
高頻度(、20%以上。なので比較群は無い) (65%)、下痢(62%)、感染症(62%)、悪心(46%)、疲労(42%)、浮腫(42%)1
注意 ・、、CPK上昇、低下
重篤・まれ 、重篤な出血、、

まとめ

  • はMEK1/2をで阻害する薬で、悪性黒色腫ではとの併用が前提であり単剤適応を持たない。
  • 単剤のparadoxical activation(化を介したMAPK経路のな再活性化)による・を、MEKレベルで下流を遮断することで抑える——coBRIM試験でまたはの発現率が単剤群20%から併用群6%へ低下した核心的な機序。
  • 一方、(、、など)への適応はBRAF変異の有無を問わず単剤で用いる。これは米国のみの適応で、2022年10月28日にによる通常の承認として追加された(ではない)7。のSmPCにこの適応は無い。
  • 半減期は約44時間、主にで代謝され、強いCYP3A阻害・との併用は避ける。
  • ・低下・出血・・(CPK上昇)・に注意し、定期的な眼科評価・心機能評価・肝機能検査・CPK測定を組み込む。
  • とは同じBRAF+MEK併用の枠組みだが、有害事象プロファイルの重心(・関節痛 対 発熱)が異なる。

出典

  1. 1.COTELLIC (cobimetinib) tablet, film coated — full prescribing information(Genentech / DailyMed (U.S. National Library of Medicine)・2026)参照した版の改訂表示は Revised 7/2026(Drugs@FDA の 206192s007lbl.pdf と同一本文)。米国添付文書の適応(BRAF V600E/K変異陽性の悪性黒色腫へのベムラフェニブ併用、および成人の組織球系腫瘍への単剤療法)、用法・用量(60 mgを1日1回28日中21日間経口投与)、薬物動態(消失半減期44時間、絶対的バイオアベイラビリティ46%)、警告(漿液性網膜症26%、Grade 2または3の左室駆出率低下26%対ベムラフェニブ単剤19%、Grade3-4出血1.2%、Grade3-4肝機能障害ALT 11%/AST 8%、Grade3-4 CPK上昇14%、光線過敏症47%)、皮膚有棘細胞癌または角化棘細胞腫の発現率(coBRIM試験でコビメチニブ+ベムラフェニブ群6%対ベムラフェニブ単剤群20%、併用群での初発までの期間中央値4か月)、Trial 1 の最終解析(無増悪生存期間中央値12.3か月対7.2か月、全生存期間中央値22.3か月対17.4か月、奏効率70%対50%、完全奏効16%対10%)、単剤療法の根拠となった組織球系腫瘍の単施設単群試験26例の成績(内訳はErdheim-Chester病13例・ランゲルハンス細胞組織球症4例・Rosai-Dorfman病4例・黄色肉芽腫2例・混合型組織球症3例、BRAF V600変異陽性6例と野生型20例、PET判定の奏効率76.9%、RECIST判定46.2%)、および用量調整(40 mg→20 mgの段階的減量)を確認した。第4節 CONTRAINDICATIONS は None であり、全文に accelerated の語は1回も現れない閲覧 2026-09-07
  2. 2.Combined vemurafenib and cobimetinib in BRAF-mutated melanoma(New England Journal of Medicine(Larkin J, et al.)・2014)coBRIM試験(未治療の切除不能・転移性BRAF V600変異陽性黒色腫495例、ベムラフェニブ+コビメチニブ対ベムラフェニブ+プラセボ)で、無増悪生存期間中央値9.9か月対6.2か月、奏効率68%対45%(完全奏効10%対4%)とコビメチニブ併用群が上回ったことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Cotellic 20 mg film-coated tablets — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)EU の 4.1 はベムラフェニブとの併用によるBRAF V600変異陽性の切除不能・転移性悪性黒色腫の1適応のみで、組織球系腫瘍は文書全体で0件であり単剤の適応は存在しない。4.3 の禁忌は有効成分または添加剤への過敏症のみ。妊娠は 4.6 で扱われ、動物試験で胚致死性と大血管・頭蓋の胎児奇形が示されたことを根拠に「母体の必要性と胎児のリスクを慎重に考慮したうえで、明らかに必要な場合を除き妊娠中は使用すべきでない」と書かれており、禁忌には置かれていない。用量は60 mgを1日1回21日間投与し7日休薬する28日サイクル。文書自体は改訂年月を印字せず、取得したEMA公開PDFの更新日は2025年6月13日閲覧 2026-09-07
  4. 4.RAS mutations in cutaneous squamous-cell carcinomas in patients treated with BRAF inhibitors(New England Journal of Medicine(Su F, et al.)・2012)BRAF阻害薬治療中に生じた皮膚有棘細胞癌・角化棘細胞腫の検体35例中21例(60%)にRAS変異(最多はHRAS Q61L)を認めたこと、HRAS変異マウスモデルでBRAF阻害薬類縁化合物が病変の増殖を促進したがMEK阻害薬の併用でその増殖が抑えられたことを確認した閲覧 2026-08-10
  5. 5.NDA 206192/S-005 Supplement Approval — Cotellic (cobimetinib) tablets(U.S. Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research・2022)2022年4月28日に受理された事前承認補足申請が「成人の組織球系腫瘍に対する治療」という新規適応を追加するものであり、2022年10月28日付の署名で承認されたことを確認した。承認レターの全文に accelerated・subpart H・confirmatory の語は1回も現れず、加速承認の枠組みではない。希少疾病用医薬品指定を理由に小児研究公平法(PREA)の小児評価が免除されている閲覧 2026-09-07
  6. 6.Drugs@FDA: FDA-Approved Drugs — COTELLIC (NDA 206192) approval history(U.S. Food and Drug Administration・2026)NDA 206192 の承認履歴のページを確認した。Original Approvals の表だけが「Review Priority; Orphan Status」列を持ち、ORIG-1(2015年11月10日、Type 1 - New Molecular Entity)に PRIORITY; Orphan と表示される。⚠️ Supplements の表には審査区分の列が無く、組織球系腫瘍の適応を追加した SUPPL-5 は2022年10月28日・Efficacy-New Indication、直近の SUPPL-7 は2026年8月20日・Labeling-Package Insert(掲載ラベルが 206192s007lbl.pdf = Revised 7/2026 の版)としか表示されない。補足申請の審査区分はこのページからは読めないので、そこは openFDA の構造化データで確かめている閲覧 2026-09-07
  7. 7.openFDA Drugs@FDA API — NDA 206192 (COTELLIC) submissions(U.S. Food and Drug Administration (openFDA)・2026)Drugs@FDA の構造化データを API から取得し、NDA 206192 の submissions 配列を1件ずつ確認した。組織球系腫瘍の適応を追加した SUPPL 5 は承認済(AP)・2022年10月28日・review_priority が PRIORITY・分類 Efficacy、直近の SUPPL 7 は AP・2026年8月20日・STANDARD・Labeling、原申請 ORIG 1 は AP・2015年11月10日・PRIORITY・Type 1 - New Molecular Entity である。Drugs@FDA の HTML 版は補足申請の審査区分を表示しないため、S-005 が優先審査であること・S-007 が通常審査であることの裏づけはこの API 応答による閲覧 2026-09-08