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Disease Atlas · 血液 · 疾患

Rosai-Dorfman病

Rosai-Dorfman disease

別名
RDDロザイ・ドルフマン病Rosai-Dorfman-Destombes病洞組織球症を伴う巨大リンパ節症
臓器系
血液免疫・膠原病全身
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/4:骨髄・リンパ系の非腫瘍性疾患内科学 H-20:リンパ節腫脹の評価
鑑別疾患
Erdheim-Chester病IgG4関連疾患ランゲルハンス細胞組織球症
治療薬
プレドニゾロンコビメチニブシロリムスメトトレキサートリツキシマブクラドリビン
症状
頸部リンパ節腫脹発熱寝汗体重減少眼球突出
検査値
血算赤沈血清免疫グロブリン
画像所見
溶骨性病変
適応薬
コビメチニブ

🧠 全体像:は、洞を埋め尽くすように増える大型のが emperipolesis——リンパ球を丸ごと胞体に取り込んだまま生かしておく現象——を示すことを特徴とする組織球症である。旧称の「」が示すとおり、典型像は若年者の両側性・無痛性の巨大なである。学習の幹は3つ——①とはS100陽性は共通だがCD1a・CD207が陰性である点で分かれる、②節外病変が4割強あり腎・肺に及ぶと予後が悪い、③多くはしうるのでまず経過観察、という治療の入り口である。

位置づけ:5群分類のR群

2016年の組織球症分類改訂は組織球症をL・C・R・M・Hの5群に整理し、本症を単独でR群に置いた1。とがまとめられたL群とは別の群である。R群には家族性型、古典的節性型、節外型、腫瘍関連型、免疫疾患関連型が含まれる。

⚠️ 皮膚は同じ分類のC群(皮膚・粘膜組織球症)側に置かれている1。「」という同じ名前でも、分類上の居場所が病変分布で変わる点は取り違えやすい。

病型 特徴
古典的(節性)型 両側性・無痛性の巨大な。発熱・・体重減少を伴うことがある
節外型 全体の43%。皮膚・・骨・中枢神経・腎などに生じ、19%は多臓器性
免疫疾患関連型 全体の10%。・関節炎・などに合併
腫瘍関連型 ・などに前後して生じる
家族性型 SLC29A3 変異(H症候群・Faisalabad組織球症)、FAS 変異(ALPS I型)

疫学

は20万人に1人、米国で年間およそ100例と見積もられている。発症年齢の平均は20.6歳と若年に寄り、男性と黒人に多い。ただし皮膚はアジア人女性に多いという逆の偏りを示す2。

病理:emperipolesisは手掛かりであって必須条件ではない

リンパ節では洞が拡張し、淡明な核と「水様透明」と表現される豊富な胞体を持つ大型で満たされる。このの胞体の中を、リンパ球・形質細胞・好中球・赤血球が壊されずに通り抜けている像が emperipolesis である2。

💡 emperipolesis は貪食ではない。 取り込まれた細胞は消化されず無傷のまま存在する。でみられるの像とは、細胞が壊れているかどうかで意味が違う。

⚠️ emperipolesis は診断の補助であって必須ではない2。節外病変では線維化が強く、が疎らで emperipolesis を見つけにくい。免疫染色まで進む。

マーカー
S100 陽性 陽性
CD68 陽性 可変
CD163 可変 陰性が多い
CD1a 陰性 陽性
CD207() 陰性 陽性

⭐ S100陽性だけでは分けられない。決着はCD1aとCD207でつける1。この2つが陰性であることがR群の側に置く根拠になる。

分子病態:反応性か腫瘍性か

かつて反応性の増殖と考えられてきたが、病変組織ので KRAS・NRAS・MAP2K1・ARAF のが同定されている2。21例の検討では7例(33%)に KRAS 変異4例と MAP2K1 変異3例がに認められ、著者らは少なくとも変異例についてクローン性の性疾患であるとした3。

⚠️ BRAF V600E変異は検出されない。 の約半数がBRAF V600Eで駆動されるのに対し、では21例中0例3、別の23検体でも0例であった2。MAPK経路の活性化という点は共通でも、入り口の遺伝子が違う——この差が治療薬の選び方に直結する。

臨床像

flowchart TD
    A["両側性・無痛性の<br>巨大な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical lymphadenopathy'>頸部リンパ節腫脹</span>"] --> B["発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='night sweat'>寝汗</span>・体重減少<br>を伴うことがある"]
    A --> C["リンパ節生検"]
    C --> D["洞内の大型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histiocyte'>組織球</span><br>emperipolesis"]
    D --> E["S100陽性<br>CD1a陰性・CD207陰性"]
    E --> F["節外病変の検索<br>皮膚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinonasal (nasal cavity and paranasal sinuses)'>鼻副鼻腔</span>・骨・中枢神経・腎・肺"]
    F --> G["自己免疫疾患・リンパ腫の併存を評価"]
部位 頻度 主な症状
頸部リンパ節 典型像 両側性・無痛性の巨大な腫脹
鼻・副鼻腔 11% 鼻閉、、顔面の非対称
皮膚 節外例の10% 緩徐に増大する無痛性の結節・局面
骨 5〜10% ないし病変。骨折はまれ
中枢神経 5%未満 頭痛、痙攣、
腎 4% 血尿、腎不全。死亡率40%
肺 2% 間質性病変、結節。死亡率45%
消化管 1%未満 血便、

⚠️ 頻度が低い部位ほど致命的である。 腎・肝・呼吸器の病変を伴う多発節外病変が予後不良因子であり、頻度2〜4%の肺・腎病変に40%台の死亡率が報告されている2。「まれだから軽い」と読まない。

は非特異的で、(67%)、を伴う(60%)、、がみられる2。

鑑別

疾患 分かれ目
CD1a・CD207が陽性。
中高年発症、の両側対称性、約半数がBRAF V600E
関連疾患 節外でも陽性形質細胞が増える例があり重なる。S100陽性の洞内とemperipolesisで分ける
反応性の は小型で emperipolesis を欠き、原因(悪性腫瘍の所属リンパ節、炭粉沈着など)が別にある
腫瘍関連型として併存しうるため、除外ではなく併存の検索として扱う

治療

⭐ 最初の選択肢は「治療しないこと」である。 無症候の節性病変では経過観察が適切で、20〜50%がする2。

方針 内容
経過観察 合併症のない節腫脹。20〜50%が
外科切除 単発病変では根治的。気道閉塞・脊髄圧迫では
副腎皮質ステロイド 相当で40〜70 mg/日ないし1 mg/kg/日。反応は一定しない
2.5 mg/m²/日を18か月。とくにALPS関連例
メトトレキサート 20 mg/m²を週1回。との併用例もある。多発病変・中枢神経病変で有効
2.1〜5 mg/m²を5日間、28日ごと。難治例での報告
リツキシマブ 自己免疫関連例。無効例の報告もある
放射線治療 難治病変・・気道閉塞に30〜50 Gy

⭐ が使えるのは、BRAF V600Eが無くてもMAPK経路が動いているからである。 米国添付文書はに「成人のに対する」という適応を与えており、根拠となった26例のには4例が含まれ、判定のは76.9%(61.5%)であった4。⚠️ 悪性黒色腫でのは併用が前提だが、ではを併用しない単剤である点が逆になる。

まとめ

  • は2016年改訂分類で単独のR群を成す組織球症で、L群の・とは別枠である。
  • 典型像は若年者(平均20.6歳)の両側性・無痛性の巨大なだが、節外病変が43%、が19%にある。
  • 病理の核はemperipolesis(無傷のまま胞体を通り抜ける血球)だが必須所見ではない。S100陽性・CD1a陰性・CD207陰性で確定に近づく。
  • KRAS・MAP2K1 のなが33%に見つかり、少なくともその一部はクローン性である。BRAF V600Eは検出されない点がと対照的。
  • 無症候例は経過観察でよく20〜50%がする。治療を要する場合はステロイド・・メトトレキサート・・放射線、そして単剤の()が選択肢になる。
  • 肺(2%・死亡率45%)と腎(4%・死亡率40%)の病変は頻度が低い一方で予後を大きく損なう。

出典

  1. 1.Revised classification of histiocytoses and neoplasms of the macrophage-dendritic cell lineages(Blood(Histiocyte Society 作業部会、Emile JF, et al.)・2016)組織球症をL・C・R・M・Hの5群に再編し、R群にRosai-Dorfman病(家族性型、古典的節性型、節外型、腫瘍関連型、免疫疾患関連型)を置いたこと、R群がランゲルハンス細胞組織球症とErdheim-Chester病を含むL群とは別に立てられていること、皮膚限局のRosai-Dorfman病はC群(皮膚・粘膜組織球症)側に置かれること、本症の組織像が淡明核と淡い胞体を持つ大型のS100陽性組織球でemperipolesisを示しCD1a陰性・CD207陰性である点がランゲルハンス細胞組織球症と異なることを確認した。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Consensus recommendations for the diagnosis and clinical management of Rosai-Dorfman-Destombes disease(Blood(Histiocyte Society, Abla O, Jacobsen E, Picarsic J, et al.)・2018)本症を2016年改訂分類のR群に属する非ランゲルハンス細胞組織球症と位置づけ、有病率を20万人に1人・米国で年間約100例と見積もること、発症年齢の平均が20.6歳で男性と黒人に多く皮膚限局型はアジア人女性に多いこと、節外病変が43%・多臓器病変が19%にみられること、免疫疾患関連型が10%を占めること、節外病変の部位別の内訳(皮膚は節外例の10%、鼻・副鼻腔11%、骨5〜10%、中枢神経5%未満、腎4%、肺2%、消化管1%未満)と肺病変で45%・腎病変で40%という高い死亡率、検査所見(正球性正色素性貧血67%、好中球増加を伴う白血球増加60%、赤沈亢進、高ガンマグロブリン血症)、病理が「水様透明」な胞体を持つ大型組織球の洞内増生でS100陽性・CD68陽性・CD163可変・CD1a陰性・CD207陰性でありemperipolesisは有用だが必須ではないこと、KRAS・NRAS・MAP2K1・ARAFの体細胞変異が病変組織で同定される一方23検体でBRAF V600E変異が検出されなかったこと、家族性型がSLC29A3変異(H症候群・Faisalabad組織球症)とFAS変異(ALPS I型)に関連すること、治療として無症候の節病変は経過観察でよく20〜50%が自然寛解すること・単発病変には外科切除・プレドニゾン40〜70 mg/日ないし1 mg/kg/日・ALPS関連例へのシロリムス2.5 mg/m²/日を18か月・メトトレキサート20 mg/m²週1回・難治例へのクラドリビン・自己免疫関連例へのリツキシマブ・難治病変への30〜50 Gyの放射線治療が挙げられること、MEK阻害薬コビメチニブの臨床試験(NCT02649972)が進行中でKRAS変異例の縮小例が報告されていること、予後は節性・皮膚限局例では概して良好だが腎・肝・呼吸器病変を伴う多発節外病変で不良であること、および総説が引用する既往の集積で死亡率が7%(Foucar 1990)ないし12%(Pulsoni 2002)と報告されていることを確認した。エビデンスの多くが症例集積に基づく専門家の統合である旨を総説自身が明記している。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Mutually exclusive recurrent KRAS and MAP2K1 mutations in Rosai-Dorfman disease(Modern Pathology(Garces S, Medeiros LJ, Khoury JD, et al.)・2017)Rosai-Dorfman病21例中7例(33%)にKRAS変異4例・MAP2K1変異3例を認め両者が相互排他的であったこと、BRAF V600E変異はいずれの症例にも検出されなかったこと、変異陽性7例の内訳が節外単独3例・節性と節外の併存3例・節性単独1例であったこと、および著者らが本症を「少なくとも変異例においては遺伝子変化に駆動されるクローン性組織球性疾患」と結論したことを確認した。閲覧 2026-09-03
  4. 4.COTELLIC (cobimetinib) tablet, film coated — full prescribing information(Genentech / DailyMed (U.S. National Library of Medicine)・2026)米国添付文書の適応が「BRAF V600E/K変異陽性の切除不能・転移性悪性黒色腫へのベムラフェニブ併用」と「成人の組織球系腫瘍に対する単剤療法」の2つであること、組織球系腫瘍でも用量が60 mgを1日1回・28日サイクルのうち21日間であること、根拠試験26例の内訳にRosai-Dorfman病4例が含まれPET判定の奏効率が76.9%(完全奏効61.5%・部分奏効15.4%)であることを確認した。参照した版の Revised は 7/2026。閲覧 2026-09-03