病理学

病理学 · C/4

骨髄・リンパ系の非腫瘍性疾患

Non-neoplastic disorders of myeloid and lymphoid system

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
リンパ増殖性疾患の症候学リンパ節腫脹の評価骨髄系増殖性疾患の症候学血液・腫瘍救急:発熱性好中球減少症、腫瘍崩壊症候群、上大静脈症候群
疾患
Rosai-Dorfman病好酸球増多症候群周期性好中球減少症猫ひっかき病無顆粒球症
検査値
リンパ球減少絶対単球数

🧠 全体像:・リンパ系の非腫瘍性疾患は「細胞が減っているか(好中球減少・)」「反応性に増えているか(・リンパ節炎パターン)」で整理でき、はがB細胞に感染し、それに対するCD8+ T細胞応答がとして現れるという感染と免疫応答が同時に見える好例。この非腫瘍性の枠組みは、次の//MPNという腫瘍性疾患への橋渡しになる。

A)骨髄系の非腫瘍性疾患

白血球減少

= 総の低下。

はより稀で、先天性または後天性(HIV、高用量)。

好中球減少・無顆粒球症

  • 好中球減少: 血中顆粒球の減少。米国感染症学会のガイドラインは、その文脈での好中球減少を()500/μL未満、または48時間以内に500/μL未満へ下がると見込まれる状態と定義し、100/μL未満を「高度」と呼ぶことがあるとしている1。
  • 重度好中球減少 =
  • 主要リスク:重篤な細菌・真菌感染

発生機序

  1. 産生低下

  2. 破壊・除去の亢進

    • 傷害
    • 圧倒的な感染
    • 脾腫 → 隔離・除去の増加

形態

臨床

  • 、悪寒、発熱、脱力、疲労
  • ・壊死(「」)

反応性白血球増多

  • 反応性原因(感染・炎症)による末梢血の顆粒球増加。
  • : 白血病を模倣しうる著明な。
  • : の出現(、、骨髄球、、)。

⚠️ と()を、だけで区別しない。 かつては「CMLで低値、で高値」という対比が教えられたが、決め手はとBCR::ABL1融合遺伝子の証明である。欧州白血病ネット(ELN)2025年推奨は、診断時の検査として(骨髄が望ましい)とを挙げ、BCR::ABL1のを「標準的な診断法」としている2。

系統別のパターン

  • :急性細菌感染、()
  • 好酸球増多:アレルギー、薬物反応
  • 増多:稀、を示唆しうる
  • :(結核、)
  • :ウイルスおよび一部の細菌感染

B)リンパ系の非腫瘍性疾患

伝染性単核球症(「キス病」)

  • EBVによる
  • 疫学:開発途上では幼児期、先進国では。

発生機序

  • 唾液感染
  • EBVが口腔咽頭に感染 → リンパ節 → CD21を介し成熟B細胞に感染
  • なB細胞活性化 → 抗抗体
  • 循環するウイルス特異的CD8+ T細胞 →
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Epstein-Barr virus'>EBV</span>の唾液を介した感染"] --> B["口腔咽頭上皮での増殖"]
    B --> C["リンパ節への波及"]
    C --> D["CD21を介した成熟B細胞への感染"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyclonal'>ポリクローナル</span>なB細胞活性化"]
    E --> F["抗<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Epstein-Barr virus'>EBV</span>抗体の産生"]
    D --> G["ウイルス特異的CD8+ T細胞の増加"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical lymphocyte'>異型リンパ球</span>"]

形態

  • (しばしばCD8+)を伴う増多
  • リンパ節:によるの拡大
  • 脾・肝:浸潤

臨床

  • 発熱、、全身性リンパ節腫脹
  • 約4〜6週で回復
  • T細胞免疫不全では重症・致死的となりうる
  • 迅速(試験)は感度87%・特異度91%で、5歳未満の小児や発症第1週の成人では偽陰性になりうる3

非特異的リンパ節炎(反応性パターン)

リンパ節炎 = リンパ節腫大、通常は感染・炎症による。

    • B細胞活性化による過形成
    • 原因:細菌感染、関節リウマチ、、早期
    • ⭐ 反応性の細胞はBcl-2陰性を保ち、強い(florid)過形成でもこの陰性パターンは保たれる。一方、この検討のでは腫瘍細胞が一貫してBcl-2陽性で、その陽性は遺伝子のクローン性と一致した。過形成が著明でとの鑑別に迷うときの重要なになる4。
    • を伴うT領域の過形成、は縮小
    • 原因:ウイルス感染、ワクチン接種後、薬物反応
    • 内皮細胞・マクロファージによる洞の拡張
    • しばしば気管支リンパ節(炭粉沈着)
    • 癌を排流するリンパ節と関連しうる

猫ひっかき病

トキソプラズマリンパ節炎

  • Toxoplasma gondiiの感染
  • 感染経路:加熱不十分な肉、汚染された食品・水、猫糞(経口–糞便)
  • 小型性リンパ節炎と記載される反応性パターン

C)腫瘍への橋渡し(次のトピックへ)

は造血幹細胞から生じる → モノクローナル増殖が正常骨髄を置換する。

  • AML: 早期の成熟ブロック → の蓄積
  • MDS: +血球減少
  • MPN: 成熟要素の増殖(、ET、PMF、PV)

💡 ポイント: = +。単核球症:B細胞へのCD21感染+異型CD8+リンパ球。反応性リンパ節パターン:(B)、(T)、(マクロファージ)。

まとめ

  • 好中球減少・は産生低下(・浸潤・化学療法)と破壊亢進(、感染、脾腫)の2機序で生じ、重篤な細菌・真菌感染のリスクとなる。
  • にはや(の出現)があり、細胞系統ごとに増多の原因パターンが異なる。
  • はがCD21を介して成熟B細胞に感染し、B細胞活性化と循環CD8+ T細胞()を来す。
  • 非特異的リンパ節炎は(B細胞)、(T細胞)、(マクロファージ)の3パターンに分かれる。
  • (Bartonella henselae)は壊死性肉芽腫、は小型性リンパ節炎を呈する。
  • (・・MPN)は造血幹細胞のモノクローナル増殖として、この非腫瘍性と対比される。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guideline for the Use of Antimicrobial Agents in Neutropenic Patients with Cancer: 2010 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2011)全文(Wayback Machine 2020-05-13取得の誌上版HTML)の定義の節で、発熱性好中球減少症の文脈における好中球減少をANC 500/mm³未満、または48時間以内に500/mm³未満へ低下すると見込まれる状態と定義し、ANC 100/mm³未満を「高度(profound)」と呼ぶことがあること(その確認には血液塗抹の目視が要る)を確認した。抄録は、発熱と好中球減少を呈する患者は全例でグラム陽性菌・グラム陰性菌の両方を対象とする抗菌薬で速やかに治療すべきとする閲覧 2026-08-27
  2. 2.2025 European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia(European LeukemiaNet・2025)全文(PMC12310532)の診断時検査の表で、t(9;22)(q34;q11)の染色体検査(骨髄が望ましいが末梢血でも可)、スクリーニングとしてのFISH、BCR::ABL1のRT-PCR(「標準的な診断法」、通常は末梢血で行い、染色体検査で見えない1〜5%の潜在的融合も検出する)を挙げていることを確認した。好中球アルカリホスファターゼには全文で言及がない閲覧 2026-08-27
  3. 3.Infectious Mononucleosis: Rapid Evidence Review(American Family Physician・2023)迅速異好抗体検査(モノスポット試験)の感度は87%・特異度は91%で、5歳未満の小児と成人の発症第1週には偽陰性となりうることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Bcl-2 oncoprotein is widespread in lymphoid tissue and lymphomas but its differential expression in benign versus malignant follicles and monocytoid B-cell proliferations is of diagnostic value(APMIS・1995)反応性リンパ組織ではBcl-2免疫染色の陽性が広範に分布し、マントル帯・胚中心内に散在する細胞・T細胞領域全般が陽性となる一方、明確に陰性となるのは胚中心細胞の大多数であり、この陰性パターンは強い(florid)過形成でも保たれること、対照的に濾胞性リンパ腫細胞は一貫してBcl-2陽性であり、その陽性は免疫グロブリン重鎖遺伝子のクローン性PCR所見と一致することを確認した閲覧 2026-08-27