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Disease Atlas · 血液 · 疾患

無顆粒球症

Agranulocytosis

臓器系
血液免疫・膠原病感染症
科目
PathologyPharmacology
トピック
病理学 C/4:骨髄・リンパ系の非腫瘍性疾患薬理学 Core60:薬剤性有害反応:骨髄障害薬理学 A18:抗精神病薬
関連疾患
血液・腫瘍救急
治療薬
フィルグラスチム
原因薬剤
カプトプリルカルバマゼピンセフメタゾールクロルプロマジンクロルプロパミドシメチジンクロザピンシプロヘプタジンダプソンデフェリプロンチアマゾールプロピルチオウラシル
症状
発熱口内炎
検査値
絶対好中球数好中球減少
スコア
MASCCスコア

🧠 全体像は「白血球の分画異常」ではなく、感染から体を守る好中球がほぼ消えた状態である。大半は薬剤によるの反応で、用量とはに、多くは投与開始から数週間以内に突然発症する。発熱+は確定診断を待たない緊急事態であり、の中止との早期投与という2つの初動が生死を分ける。

病態

が100/µL未満まで低下した状態で、機序は顆粒球産生の障害末梢での破壊亢進の2つに大別される1。薬剤性の大部分は後者で、薬剤またはその反応性が好中球・前駆細胞の表面タンパクに結合してとなり、これに対する免疫反応が好中球を標的として破壊するの機序と考えられている。

flowchart TD
    A["薬剤またはその<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metabolite'>代謝産物</span>"] --> B["好中球・前駆細胞表面タンパクに結合"]
    B --> C["新規抗原として免疫系に認識される"]
    C --> D["好中球特異的な免疫反応"]
    D --> E["好中球の破壊亢進<br>または産生障害"]
    E --> F["ANC 100/µL未満=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agranulocytosis'>無顆粒球症</span>"]
    F --> G["重篤な細菌・真菌感染のリスク"]

💡 用量に比例しないのが反応の特徴である。 化学療法による骨髄抑制はで発症時期も予測しやすいのに対し、は治療域の用量でも生じ、多くは投与開始から数週間以内に突然発症する。この違いが、化学療法中の好中球減少(血液・で扱う)とを区別する意味を持つ。

原因薬剤

を来す薬剤は多岐にわたるが、代表例は次の通りである1

薬剤群 代表例
)、
抗精神病薬 (頻度が突出して高い)、
NSAIDs・・抗ヒスタミン薬 金製剤、
抗菌薬 系(
その他 関連)、カルバマゼピンも併せ持つ)、

があり、⚠️ 片方でを起こした患者へのもう一方の使用は禁忌であるなど生命を脅かす病態でのみ再考の余地がある)。 発症は投与開始2か月以内に多く、発熱・は即中止・即受診のとして患者にあらかじめ説明しておく。デンマークの研究ではの頻度は0.11%・0.27%であり、全体では100日0.3%と推定されている2

のリスクが他の原因薬より突出して高く、この副作用への対策そのものが薬の運用に組み込まれている。 定期的な好中球数モニタリングなしにを処方することはできない。同様にも他の)より発現頻度が明確に高く、週1回のANC測定が必須とされている。

臨床像

  • 突然の発熱・悪寒・感、または感染症状での発症が典型的である1
  • 口腔内潰瘍・歯肉の壊死性病変(好中球減少性)はしばしば初発症状になる1
  • 好中球減少そのものによる局所炎症反応の乏しさから、膿や画像上の炎症所見が弱くなり、重症感染でも所見に乏しいことがある。

診断

原因薬剤の使用歴と発症時期の時間的関係が診断の中心になる。血算・分画でANCを直接確認し、他の血球系が保たれているか(薬剤性の免疫破壊は好中球系列に選択的なことが多い)を見る。は、産生障害型か破壊亢進型かを区別し、他のなど)を除外する必要がある場合に行う。

治療

⚠️ 発熱+は確定診断を待たず治療する緊急病態である。 口腔温38.3℃以上の単回測定、または38.0℃以上が1時間持続する発熱に、ANC 500/µL未満または48時間以内にそこまで低下する見込みの好中球減少が組み合わさった状態をと呼び、から1時間以内の初回経験的投与が推奨される3(ANC 100/µL未満)はこの中でも高度好中球減少に位置づけられ、(21点をとする低リスク・高リスクの層別化)などの検証済みツールを臨床判断に組み合わせる4

  • の中止が最優先である。 原因薬剤を継続したまま経過を見ない。
  • 感染徴候があれば第3世代系などの経験的を開始し、4〜5日反応がなければ経験的抗真菌薬を追加する1
  • (G-CSF)は好中球の回復を早める目的で用いられる1
  • は原則として再投与しない。同系統薬への変更が必要な場合は、のリスクを踏まえてと相談する。

まとめ

  • はANC 100/µL未満まで低下した状態で、大半は薬剤によるの免疫破壊が機序である。
  • 原因薬剤はなど抗精神病薬・NSAIDs/など多岐にわたり、に投与開始数週間以内で突然発症する。
  • としての緊急対応(培養採取と1時間以内の投与)を、確定診断を待たずに開始する。
  • 治療の要はの中止で、G-CSF・経験的抗菌薬(なら抗真菌薬)を組み合わせる。
  • は定期的なANCモニタリングそのものが処方の前提になる代表例である。

出典

  1. 1.Agranulocytosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)無顆粒球症がANC 100/µL未満と定義されること、機序が顆粒球産生不良と破壊亢進の2つに大別されること、代表的な原因薬剤として抗甲状腺薬(カルビマゾール・プロピルチオウラシル)、クロザピンなど精神科薬、NSAIDs(金製剤・ナプロキセン・ペニシラミン)、スルホンアミド系・ペニシリン系・セフェム系抗菌薬が挙げられること、臨床像として倦怠感・発熱・悪寒や感染症状に加え口腔潰瘍・歯肉壊死性病変で発症しうること、治療は被疑薬の中止・G-CSF(フィルグラスチム)投与を行い感染時は第3世代セフェム系などの経験的抗菌薬を用い4〜5日反応がなければ経験的抗真菌薬を追加することを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.ASCO/IDSA Clinical Practice Guideline Update for Outpatient Management of Fever and Neutropenia in Adults Treated for Malignancy(American Society of Clinical Oncology (ASCO) / Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2018)2018年の更新がトリアージから1時間以内の初回経験的抗菌薬投与を推奨していることを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Febrile Neutropenia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)重症好中球減少(ANC<500/µL)・高度好中球減少(ANC<100/µL)という程度区分と、MASCCスコアが21点を境に低リスク・高リスクを層別化するために用いられることを確認した閲覧 2026-08-11
  4. 4.2016 American Thyroid Association Guidelines for Diagnosis and Management of Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis(American Thyroid Association・2016)無顆粒球症の発生頻度がメチマゾール(チアマゾール)で約0.1〜0.3%、プロピルチオウラシルで約0.3%であることを確認した閲覧 2026-08-11