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Disease Atlas · 血液 · 疾患

免疫性血小板減少症

Immune thrombocytopenia

別名
ITP特発性血小板減少性紫斑病
臓器系
血液免疫・膠原病
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 H-18:ITP内科学 H-15:血小板減少患者の診断アプローチ内科学 L-62:血小板減少症小児科 1-04:出血性疾患と免疫性血小板減少症
鑑別疾患
ヘパリン起因性血小板減少症血栓性血小板減少性紫斑病血友病A・B小児虐待・非事故性外傷播種性血管内凝固
続発疾患
鼻出血
関連疾患
抗リン脂質抗体症候群
治療薬
プレドニゾロンデキサメタゾンメチルプレドニゾロンロミプロスチムエルトロンボパグリツキシマブエフガルチギモドフォスタマチニブ
原因薬剤
アレムツズマブ
原因微生物
Helicobacter pylori
症状
過多月経出血出血傾向消化管出血体重減少点状出血歯肉出血頭蓋内出血発熱
検査値
ビリルビン偽性血小板減少血算血小板数血小板減少
元疾患
伝染性単核球症慢性リンパ性白血病
原因となる疾患
全身性エリテマトーデス分類不能型免疫不全症
適応薬
エフガルチギモドエルトロンボパグフォスタマチニブボノプラザンラベプラゾール免疫グロブリン静注療法

🧠 全体像は、血小板膜糖蛋白に対する自己抗体と細胞性免疫異常により血小板破壊が亢進し、同時にからのも障害される孤立性血小板減少のである。診断は「他に原因がない」ことの積み上げであり、治療はという数字だけでなく、実際の出血症状・年齢・・妊娠や手術予定など患者背景を統合したで決める。

病態

flowchart TD
    A["血小板膜糖蛋白(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycoprotein IIb/IIIa'>GPIIb/IIIa</span>等)に対する自己抗体"] --> B["脾臓のマクロファージによる血小板の貪食・除去"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megakaryocyte'>巨核球</span>の成熟・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thrombopoiesis'>血小板産生</span>を抑制"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic T cell'>細胞傷害性T細胞</span>など細胞性免疫の異常"] --> B
    D --> C
    B --> E["末梢<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet count'>血小板数</span>の低下"]
    C --> E
    E --> F["皮膚・粘膜出血"]
  • 血小板減少末梢での破壊亢進中枢(骨髄)での産生障害の両方が寄与し、単なる「消費」ではない。
  • 💡 抗体だけでは説明が難しい治療反応性(例:する)は、この「産生障害」の側面が同時に存在することを示している。
  • 一次性ITPは基礎疾患を伴わないが、二次性ITP、HIV、C型肝炎、、免疫不全、薬剤などを背景に生じる。二次性の除外は診断の中核である。

罹病期間による分類

ITPは国際的合意(ASHガイドライン等)に基づき、で3つの病期に分けて呼称する。これはな境界ではなく、疾患経過を記述するための用語である。

病期
新規診断ITP 診断から3か月以内
持続性ITP 3か月〜12か月
慢性ITP 12か月超

⭐ 「6か月未満は急性、6か月以上は慢性」という旧来のは現在使われていない。新規診断・持続性という中間段階を置くことで、自然寛解が期待できる時期に不必要なや長期免疫抑制へ急がないようにする狙いがある。

臨床像

出血パターンからの位置づけ

・機能)の障害は点状出血・粘膜出血が主体で、PT・aPTTは正常である点が、を来す血友病など)との鑑別点になる。

障害 典型的出血 代表疾患 基本検査
・機能 点状出血、紫斑、、歯肉・月経など粘膜出血 ITP、、薬剤性、感染、HUS ・塗抹、PT正常、aPTT正常
凝固因子 深部軟部組織血腫、、遅発性出血 血友病、、肝疾患 PT・aPTT、因子活性
混合 粘膜・深部の双方、全身性出血 DIC 血算、PT、aPTT、フィブリノゲン、

診断(除外診断としての位置づけ)

ITPは他に明らかな原因のない孤立性血小板減少として診断するであり、確定的な単一検査は存在しない。

flowchart TD
    A["血小板減少を確認"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>・再採血で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='EDTA-dependent pseudothrombocytopenia'>EDTA依存性偽性血小板減少</span>を除外"]
    B --> C["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>・肝腎機能・溶血所見(LDH・ビリルビン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haptoglobin'>ハプトグロビン</span>)を確認"]
    C --> D["病歴:感染・薬剤・飲酒・妊娠・自己免疫疾患・肝疾患・悪性腫瘍を評価"]
    D --> E["HIV・HCV検査、必要に応じHelicobacter pylori評価"]
    E --> F{"他血球異常・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aberrant cell type'>異型細胞</span>・臓器腫大・治療抵抗性があるか"}
    F -->|"なし・典型的な孤立性血小板減少"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow examination'>骨髄検査</span>は必須ではない"]
    F -->|"あり"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow examination'>骨髄検査</span>で白血病・骨髄異形成・浸潤性疾患を除外"]
  1. の除外:EDTA依存性による自動がないか、または再採血(等)で確認する。
  2. 他の原因の除外血算・塗抹・肝腎機能・溶血マーカーを確認し、感染・薬剤・飲酒・妊娠・自己免疫疾患・肝疾患・悪性腫瘍の病歴を評価する。
  3. 二次性ITPのスクリーニング:HIV・HCV検査を行い、地域や症状に応じてHelicobacter pyloriも評価する。が確認された成人ITPでは、により一部での改善が得られるため実施が推奨される1。小児ではな検査は推奨されない。
  4. :典型的な孤立性血小板減少では必須ではないが、他系統の血球異常、、臓器腫大、治療抵抗性があれば行う。
  5. 血小板は感度が十分でなく、陰性でもITPを否定できないため日常診断の決め手にはしない。

⚠️ 、芽球、新規血栓、発熱・腎障害・神経症状を伴う場合はTTP・DIC・HITなど緊急疾患を並行して精査する。ITPでは通常これらを認めない。

治療(成人)

治療開始の考え方

だけでなく、出血の有無・程度、抗凝固薬・の使用、手術予定、年齢、、併存症、患者の生活・希望を統合して判断する。のみに基づいて無症状の患者を治療するという考え方は現在の標準ではない。

flowchart TD
    A["ITPと診断"] --> B{"重篤または生命を脅かす出血か"}
    B -->|"はい"| C["入院し高用量ステロイド+IVIG+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet transfusion'>血小板輸血</span>で迅速に止血"]
    B -->|"いいえ"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet count'>血小板数</span>・出血症状・個別リスクを評価"}
    D --> E["無症状〜軽微な粘膜皮膚出血かつ概ね3万/μL以上:経過観察"]
    D --> F["3万/μL未満、または出血リスクが高い個別事情あり:治療を検討"]

3万/μL(30×10⁹/L)は一つの目安であり、な境界ではない1。抗凝固薬・の使用、手術予定、高齢、併存症などがあれば、この値以上でも治療を検討することがある。

初回治療

状況 主な治療
治療が必要な非緊急例 短期間の副腎皮質ステロイド
迅速な血小板上昇が必要(緊急処置前など)
生命を脅かす出血 高用量ステロイド+IVIG+を組み合わせ、と支持療法を行う
  • 長期のステロイド投与は感染・骨・代謝への毒性が大きいため避け、短期コースにとどめる。
  • ⚠️ は通常のITPでは輸血した血小板も自己抗体で破壊されるため効果が一過性であり、重大出血や緊急手術時など限られた場面で用いる。

持続性・慢性ITP(第二選択)

新規診断期を過ぎても治療が必要な持続性・慢性ITPでは、ステロイドを漫然と継続せず、以下から個別に選択する。

選択肢 位置づけ
(TPO-RA:など) 持続的な刺激。可逆的で継続投与が前提。第二選択の中で優先度が高い(リツキシマブ・より先に検討する)1
リツキシマブ 抗CD20モノクローナル抗体によるB細胞除去。効果は一部で持続するが再発もありうる
恒久的な効果が期待できる一方で不可逆的。自然寛解の可能性を考慮し、可能なら診断後少なくとも1年は延期する。術前に肺炎球菌・髄膜炎菌・b型ワクチン接種を行う

上記に加え、SYK阻害薬は2018年、複数の前治療に反応不十分な成人慢性ITPの治療薬としてFDA承認されており、TPO-RA・リツキシマブがしない例の追加選択肢となる2。FcRn阻害薬は2024年3月、日本で成人ITPに対する世界初の承認を受けたが、米国では2026年8月現在FDAの承認が確定しておらず(確証試験の結果待ち)、位置づけは今後変わりうる3

では、持続的な寛解を望むか、継続投与を許容できるか、感染・、妊娠希望などを患者とする。

小児ITPの特徴(成人との違い)

flowchart TD
    A["孤立性血小板減少を確認"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>で凝集・芽球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schistocyte'>破砕赤血球</span>を確認"]
    B --> C{"重大出血があるか"}
    C -->|"なし・軽い皮膚所見のみ"| D["説明・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activity limitation'>活動制限</span>・早期フォローを伴う経過観察"]
    C -->|"非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lethality'>致死性</span>の粘膜出血や生活の質低下"| E["短期副腎皮質ステロイド、状況によりIVIG"]
    C -->|"生命を脅かす出血"| F["緊急血液科対応:IVIG・ステロイド・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet transfusion'>血小板輸血</span>などを併用"]

⭐ 小児ITPは多くが感染後に急性発症し、のみで治療を決めないことが成人以上に強調される。現行のASH指針は、が低くても出血がない、または皮膚所見のみであれば経過観察を優先する方針を示しており、成人よりも保存的・観察的な運用になりやすい。非(肝脾腫、リンパ節腫大、、他系統の血球減少、異常な芽球)があれば白血病・などを再評価する。

成人と小児ITPの違い(まとめ)

項目 成人 小児
典型的な ・慢性化しやすい 多くは感染後の急性発症
自然寛解 慢性化する例が一定数ある 多くは自然寛解する
治療の基本姿勢 出血症状とを統合して判断 より保存的。無症状〜軽微な皮膚所見は経過観察を優先
慢性・難治例の治療 TPO-RA、リツキシマブ、を個別選択 同様の選択肢はあるが、はより慎重に、可能な限り回避・延期する

特殊状況

妊娠

無症状でが安定していれば観察できることが多い。治療が必要な場合は副腎皮質ステロイドまたはIVIGを基本とし、TPO-RAやリツキシマブは妊娠中の使用経験が限られるため通常は避ける。分娩方法は産科的適応で決め、ITP自体は帝王切開の絶対適応ではない。胎児・新生児にも一過性血小板減少が起こりうるため、分娩後は新生児のを確認する。

難治性ITP

第二選択治療にも反応しない場合は、複数の免疫の組み合わせや併用薬剤の見直し、二次性ITPの背景(未診断のSLE、など)の再評価を行う。治療抵抗性はを行う典型的な適応の一つでもある。

血小板輸血に関する注意

⚠️ ITPでは輸血された血小板も自己抗体で速やかに破壊されるため、な予防投与には用いず、重大出血や緊急手術など一時的な止血が必要な場面でIVIG・ステロイドと併用する。

まとめ

  • ITPは孤立性血小板減少を示すであり、でのの除外と二次性ITPの背景検索(HIV・HCV、必要に応じH. pyloriなど)が診断の柱である。
  • は新規診断(3か月以内)・持続性(3〜12か月)・慢性(12か月超)に分類する。
  • 治療はだけでなく、実際の出血と個別の出血リスクで決める。3万/μLは目安でありな境界ではない。
  • 初回治療は短期ステロイド、迅速な上昇にはIVIG、重大出血では両者とを組み合わせる。
  • 持続性・慢性例ではTPO-RA、リツキシマブ、(診断後1年程度の延期を考慮)を患者ごとの目標とリスクに合わせて選ぶ。
  • 小児ITPは自然寛解が多く、成人以上にのみで治療せず経過観察を優先する。

出典

  1. 1.American Society of Hematology 2019 guidelines for immune thrombocytopenia(American Society of Hematology・2019)新規診断ITPで血小板数3万/μL以上・無症状〜軽微な粘膜出血なら経過観察を推奨する閾値、第二選択治療はTPO受容体作動薬をリツキシマブ・脾摘より優先する序列、H. pylori陽性の成人ITPに対する除菌療法の推奨(成人ではgrade 1B、小児では非ルーチン)閲覧 2026-08-03
  2. 2.FDA Approves Fostamatinib for Chronic Immune Thrombocytopenia(OncLive・2018)SYK阻害薬フォスタマチニブは2018年4月17日、前治療に反応不十分な成人慢性ITPの治療薬としてFDA承認された閲覧 2026-08-03
  3. 3.argenx Announces Approval of VYVGART (efgartigimod alfa) in Japan for Adults with Primary Immune Thrombocytopenia(argenx(日本の厚生労働省承認を報告するプレスリリース)・2024)FcRn阻害薬エフガルチギモド(VYVGART)は2024年3月、日本で成人ITPに対する世界初の承認を取得した。米国FDAでは2026年8月現在未承認閲覧 2026-08-03