疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 血液 · 先天性疾患

MYH9関連疾患

MYH9-related disease

別名
MYH9-RDMYH9関連血小板異常症May-Hegglin異常Sebastian症候群Fechtner症候群Epstein症候群
臓器系
血液腎・泌尿器耳鼻咽喉科全身
科目
Internal MedicineMedical Physiology
トピック
内科学 H-15:血小板減少患者の診断アプローチ止血と血小板の役割
鑑別疾患
アルポート症候群グランツマン血小板無力症ベルナール・スリエ症候群免疫性血小板減少症
合併症
白内障
続発疾患
慢性腎臓病鼻出血
治療薬
エルトロンボパグトラネキサム酸
症状
出血歯肉出血過多月経難聴
検査値
血小板数血算

🧠 全体像:は、のをコードする MYH9 の変異によるの疾患である。生まれつきあるのは3つだけ——・血小板減少・好中球細胞質内のMYH9凝集。難聴・腎症・・は後から現れるので、初診時に無いことは否定の根拠にならない。⚠️ 最大の落とし穴はとので、登録症例の約60%が一度はそう診断され、30%がを含む不適切な治療を受けていた。塗抹で血小板の大きさを見ることがになる。

旧来のeponymが1つの疾患に統合された

かつては好中球のの有無と、難聴・腎症・の組み合わせで別々の病名が付けられていた1。がいずれも MYH9 と判明したことで、これらは同じ疾患の表現型のばらつきとして統合された。

旧病名 定義に使われていた組み合わせ
May-Hegglin異常 減少+(難聴・腎症を伴わない)
Sebastian症候群 減少+(May-Hegglin異常と同じ組み合わせとして記載されていた)
Fechtner症候群 上記に難聴・腎症・が加わる
Epstein症候群 難聴・腎症はあるがを欠く
難聴17(DFNA17) 当初は孤立性の感音難聴と記載され、後に症候性と判明

💡 統合のな意味は「の有無で疾患を分けない」ことにある。 は42〜84%にみられるが淡く、見落とされうる1。でMYH9凝集を染めれば、で見えない例も捉えられる。

先天性の3徴と、後から現れる4つ

MYH9 は1,960アミノ酸の(myosin-9)をコードし、細胞の運動・遊走・・形態維持に関わる。で、の約35%は孤発例(多くは)である1。

flowchart TD
    A["MYH9の病的変異"] --> B["出生時から全例にある3徴"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant platelet'>巨大血小板</span><br>(径3.9 µm超が40%超)"]
    B --> D["血小板減少<br>(15万/µL未満)"]
    B --> E["好中球細胞質内の<br>MYH9凝集"]
    A --> F["加齢とともに現れる症候"]
    F --> G["感音難聴<br>平均31歳"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proteinuric nephropathy'>蛋白尿性腎症</span><br>平均27歳"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cataract'>白内障</span><br>平均37歳"]
    F --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver enzyme abnormality'>肝酵素異常</span>"]
症候 頻度 発症年齢
100% 出生時
血小板減少 98% 出生時
80〜90% 出生時(重症度はと相関)
感音難聴 80〜85% 平均31歳(20歳未満36%、20〜40歳33%、40歳超31%)
50% 後年
腎症 25% 平均27歳(72%は35歳未満で診断)
20% 平均37歳

⚠️ 横断的なと生涯の発症頻度を混同しない。 平均年齢33歳の255例の連続症例では、聴力検査を受けた237例中114例(48%)に難聴、247例中61例(25%)に腎症、235例中43例(18%)にがみられた2。生涯を通じた難聴の発症頻度80〜85%1と食い違うわけではなく、まだ発症していない患者が含まれていることの反映である。

出血は約30%が自然発症の(主に・・)を来す程度で、生命を脅かす出血はまれである1。

遺伝子型が将来を決める

⭐ 変異部位から、腎症と難聴が来るかどうかを予測できる。 7つの遺伝子型でコホートの約85%が説明され、リスクが階層化される2。

変異 腎症 難聴 特徴
p.Arg702() 最高リスク 最高リスク 5万/µL未満。ほぼ全例が40歳までに発症しへ急速に進行
p.Asp1424His 高〜中等度 高(60歳までに全例) 中間的な重症度
p.Arg1165 など 低 高(60歳までに全例) 「聴覚型」。も低リスク
p.Asp1424Asn・p.Glu1841Lys・の欠失 低 低 生涯にわたり減少のみのことが多い

診断

⚠️ は最大の血小板を認識せず、も大きさもともに過小評価する1。用手法と塗抹の目視に戻る。

検査 判定の基準
塗抹での血小板径 3.7 µm超、または径3.9 µm超の血小板が40%超(赤血球の約半分の径)
好中球のMYH9染色 細胞質内の凝集。感度・特異度ともほぼ100%。健常者では一様に分布する
42〜84%。淡いため陰性でも否定できない
MYH9 病的変異の98%を検出。に直結する

鑑別

疾患 血小板サイズ 分かれ目
正常〜やや大 平均血小板径3.7 µm超が感度86%・特異度87%で本症を分ける。後天性の経過
巨大 の孤立性欠如、CD42a〜dの発現低下。MYH9凝集は無い
正常 正常。すべてで凝集欠如
正常 難聴・腎症・が重なるが、血小板は正常。COL4A 遺伝子群

⚠️ イタリアのMYH9-RD登録では、の約60%がと診断されており、30%がを含む不適切な治療を受けていた1。と同じの型である。を見たら遺伝性を疑う。

治療と経過観察

治癒的な治療は無く、出血の管理と非血液学的症候の進行抑制が柱になる1。

対象 方針
が第一選択(・・縫合・圧迫)
軽〜中等度の出血・手術前の予防 などの
を上げる必要があるとき 。3〜6週間の投与でが増えが軽減・消失する。手術11件中10件でなしに施行できた
他の手段で管理できない出血、生命・臓器を脅かす出血、重要部位の出血に限る
腎症 早期の阻害薬・で蛋白尿が減少ないし寛解し、腎障害の進行を遅らせうる
高度〜 が有効
分娩 5万/µL以上が推奨される。重症血小板減少の母から経腟分娩した児はのリスクが高いと考えられる

経過観察は・血算を年1回以上、腎症の検索を年1回(型では6か月ごと)、聴力とを3年ごとに行う1。

まとめ

  • は MYH9()の変異による疾患で、May-Hegglin異常・Sebastian症候群・Fechtner症候群・Epstein症候群・DFNA17を統合した概念である。
  • 出生時からあるのは・血小板減少・好中球のMYH9凝集の3つ。難聴(80〜85%、平均31歳)・腎症(25%、平均27歳)・(20%、平均37歳)・(50%)は後から現れる。
  • 好中球のMYH9染色は感度・特異度ともほぼ100%。は42〜84%にとどまり、陰性でも否定できない。
  • p.Arg702変異はほぼ全例が40歳までに腎症とを発症する最重症型で、遺伝子型が将来の合併症を予測する。
  • はを数え落とすため、も大きさも過小評価される。
  • とのが多く、登録症例の約60%が一度そう診断され30%が不適切な治療を受けていた。塗抹での血小板径が最初のになる。
  • 治療はとが土台で、必要に応じて。腎症には早期の阻害薬・、にはを用いる。

出典

  1. 2.MYH9-related disease: a novel prognostic model to predict the clinical evolution of the disease based on genotype-phenotype correlations(Human Mutation(Pecci A, et al.)・2014)121家系255例(男134・女121、平均年齢33歳、標準偏差21)というMYH9-RDの連続症例として最大の集積で、評価可能な247例中61例(25%)に蛋白尿性腎症(平均発症27歳)、聴力検査を受けた237例中114例(48%)に感音難聴(平均発症31歳)、評価可能な235例中43例(18%)に白内障(平均発症37歳)を認めたこと、p.Arg702置換がほぼ全例で40歳までに腎症と難聴を発症し末期腎不全へ急速に進行する最高リスクであること、p.Asp1424Hisが腎症・難聴の高リスクであること、p.Arg1165などSH3ドメイン/モータードメイン境界の置換が難聴高リスク・腎症と白内障は低リスクという「聴覚型」を示すこと、p.Asp1424Asn・p.Glu1841Lys・非らせん尾部の欠失が非先天性合併症の低リスクであること、およびこれら7つの遺伝子型がコホートの約85%を占めることを確認した。閲覧 2026-09-03