内科学

内科学 · H-15

血小板減少患者の診断アプローチ

Investigation of a thrombocytopenic patient

前提:病態
凝固系の低下と亢進が併存する病態(TTP・HIT・DIC)凝固系の機能低下に関連する病態
前提:正常
造血。血液の組成。
疾患
MYH9関連疾患ベルナール・スリエ症候群血小板型フォン・ヴィレブランド病免疫性血小板減少症
検査値
偽性血小板減少血小板減少血小板数

🧠 全体像:は一般に血小板 < 150 × 10^9/Lを指すが、出血リスクは値だけでなく、低下速度、、凝固異常、薬剤、処置によって変わる。最初に依存性を除外し、で、芽球、を確認する。、、HIT、重症出血は即時対応が必要である。

初期対応

緊急所見

  • 頭痛、神経症状、意識障害、
  • 活動性消化管・肺・後腹膜・
  • 発熱、腎障害、溶血、
  • 新規血栓、、ヘパリン曝露
  • 芽球、重度、敗血症・ショック

これらがあれば原因精査と血液専門医・救急対応を並行する。

偽性血小板減少を除外する

依存性により、自動がとなることがある。

  1. で・を確認する。
  2. クエン酸またはヘパリン採血管で再採血する。
  3. 過去の血小板値と急激な変化を確認する。

ではが必要となる。採血困難や検体凝固もの原因になる。

原因分類

機序 主な原因
産生低下 、MDS、白血病、、薬剤・化学療法、アルコール、B12・葉酸欠乏、感染
免疫性破壊 、薬剤免疫性、SLE、/、HIT
、/、、人工回路、大量出血
肝硬変・門脈圧亢進、脾腫
希釈 大量輸血・大量輸液

塗抹を起点にした鑑別

flowchart TD
    A["血小板減少を確認"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>"]
    B --> C["他血球は正常・塗抹に異常なし"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spherocyte'>球状赤血球</span>"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schistocyte'>破砕赤血球</span>"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>または芽球"]
    B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukoerythroblastosis'>白赤芽球症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacrocytes'>涙滴赤血球</span>"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune thrombocytopenia'>ITP</span>、薬剤、感染関連を評価"]
    D --> I["Evans症候群、免疫性溶血、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hypersplenism'>脾機能亢進</span>"]
    E --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombotic thrombocytopenic purpura'>TTP</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemolytic uremic syndrome'>HUS</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation'>DIC</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haemolysis, elevated liver enzymes, low platelets'>HELLP</span>、機械性溶血"]
    F --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aplastic anemia, AA'>再生不良性貧血</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelodysplastic syndrome'>MDS</span>、白血病"]
    G --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow infiltration'>骨髄浸潤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Myelofibrosis'>骨髄線維症</span>"]

は末梢破壊や遺伝性症を示唆する。白血球、腎疾患、聴覚障害、家族歴があれば遺伝性血小板減少も考える。

病歴と基本検査

領域 確認内容
出血 点状出血、鼻・、月経、血尿、消化管出血
薬剤 ヘパリン、キニン、ST合剤、バンコマイシン、、化学療法、アルコール
感染・免疫 発熱、/リスク、SLE症状、最近のワクチン・感染
肝脾 肝疾患、飲酒、脾腫、門脈圧亢進
妊娠 妊娠週数、高血圧、、溶血、蛋白尿
血栓 、動脈血栓、、妊娠合併症

基本検査は再検、塗抹、、肝・腎機能、・ビリルビン・、/・フィブリノゲン・を臨床像に応じて選ぶ。、、B12・葉酸、妊娠、自己免疫検査も適応を絞って行う。

緊急疾患

血栓性血小板減少性紫斑病

は、血小板減少とを認めた時点で疑う。古典的五徴が揃うのを待たない。

  • 採血後、結果を待たずと副腎皮質ステロイドを開始する1
  • を早期に併用し、ではリツキシマブを検討する1
  • は生命危機出血を除き避ける

DIC

基礎疾患、延長、フィブリン関連マーカー上昇、・血小板減少の推移で診断し、原因治療を優先する。

HIT

ヘパリン開始5〜10日後の50%以上の低下または新規血栓で疑い、が中〜高確率なら全ヘパリンを止め、非ヘパリン系抗凝固を開始する。中間確率での別適応がなく出血リスクが高い場合は、検査結果まで予防強度を選択できるが、それ以外の中〜高確率では治療強度を用いる。2

免疫性血小板減少症

は、他に原因がない孤立性血小板減少として診断するである。は典型例すべてに必要ではなく、他血球異常、異常塗抹、治療反応不良などで検討する。

成人の新規では、血小板≥ 30 × 10^9/Lで無症状〜軽微出血なら多くは観察し、< 30 × 10^9/Lでは短期副腎皮質ステロイドを検討する。⚠️ この2つは推奨の強さが違う。 ASH 2019 は、≥ 30 × 10^9/Lでステロイドを行わず観察することを強い推奨(推奨1b)、< 30 × 10^9/Lで観察よりステロイドを選ぶことを条件付き推奨(推奨1a)としており、エビデンスの確実性はどちらも非常に低い3。どちらの備考も、血小板減少の程度・併存症・抗凝固薬や・予定処置・年齢を挙げて個別化を求めており、数字だけで決めない。推奨1bの備考はさらに、閾値の下端にある例と60歳超ではステロイドが妥当なことがあるとしている3。⭐ この閾値は2026年版でも更新されていない4。

⭐ ただし「治療するなら何を使うか」は2026年に変わった。 ASH 2026 の推奨1は、初回治療を要する成人の原発性に対し、リツキシマブ+ステロイド(±)または刺激薬+ステロイド(±)を、併用やステロイド単独より提案する(条件付き推奨・エビデンスの確実性は低。ただしとしての推奨はリツキシマブとそのに限る)4。ここでいう刺激薬は、受容体作動薬のほか遺伝子組換えヒトを含む薬効群で、ガイドラインは構成薬を互換として扱っている4。💡 診断が不確実なときは、併用へ進む前に2週以下の短期ステロイド(±)で血小板反応を見て診断の確からしさを上げてよい。併用でも単独でも、毒性を抑えるためステロイドの投与は6週以下に留めるのが望ましい4。⚠️ リツキシマブも刺激薬も入手できない場合は、ステロイド単独を併用より提案する(条件付き推奨・確実性は非常に低い)4。

重大出血では高用量ステロイド、、を組み合わせる。は単独の持続的支持療法ではなく、他の迅速治療と併用して一時的な止血を得る手段である。5 ⚠️ ASH 2019 は緊急時の管理・妊娠・2017年以降に登場した治療を扱わないと明記しているので、この場面の根拠は同ガイドラインではない3。

血小板輸血

状況 原則
化学療法・後の低形成性血小板減少で非出血 < 10 × 10^9/Lで予防輸血6
< 20 × 10^9/Lで輸血6
非性大手術 < 50 × 10^9/Lで輸血6
活動性重大出血・緊急手術 目標値を処置・出血部位に合わせ、原因治療と併用
の重大出血 ・ステロイドと併用し、一時的止血を得る5
/HIT 生命危機出血を除きルーチン輸血を避ける

固定しただけで輸血せず、出血部位、処置、発熱、凝固異常、薬剤を考える。

まとめ

  • まず再検・塗抹でを除外する。
  • 原因は産生低下、破壊・消費、、希釈に分類する。
  • 、芽球、血栓、神経・腎症状は緊急疾患の手掛かりである。
  • はで、治療はだけでなく出血・患者背景で決める。
  • ・HITではをルーチンに行わない。

出典

  1. 1.ISTH guidelines for treatment of thrombotic thrombocytopenic purpura(International Society on Thrombosis and Haemostasis・2020)急性免疫性TTPでは血漿交換と副腎皮質ステロイドを直ちに開始し、カプラシズマブとリツキシマブを病相に応じて追加することを確認した閲覧 2026-08-13
  2. 2.American Society of Hematology 2018 guidelines for management of venous thromboembolism: heparin-induced thrombocytopenia(American Society of Hematology・2018)HITでは4Tsを用い、中間確率かつ治療量抗凝固の別適応がなく高出血リスクなら予防強度、それ以外の中〜高確率では治療強度の非ヘパリン抗凝固を選ぶことを確認した閲覧 2026-08-13
  3. 3.American Society of Hematology 2019 guidelines for immune thrombocytopenia(American Society of Hematology・2019)PMC6963252の全文で推奨の番号・文言・強さを確認した。推奨1aは新規診断の成人ITPで血小板3万/μL未満かつ無症状〜軽微な粘膜皮膚出血なら経過観察より副腎皮質ステロイドを提案し(条件付き推奨・エビデンスの確実性は非常に低い)、その備考でこの群にも経過観察が妥当な一部があるとして血小板減少の程度・併存症・抗凝固薬や抗血小板薬・予定処置・年齢の考慮を求める。推奨1bは3万/μL以上の同じ患者群についてステロイドを行わず経過観察とすることを推奨し(強い推奨・確実性は非常に低い)、その備考は閾値の下端・併存症・抗凝固薬や抗血小板薬・予定処置・60歳超ではステロイドが妥当なことがあるとする。⚠️ 本ガイドラインは緊急時の管理・妊娠・2017年以降に登場した治療を扱わないと明記している。⚠️ 推奨5〜9は2026年版で撤回・置換されているが、推奨1a・1b自体は撤回されていない閲覧 2026-09-08
  4. 4.American Society of Hematology 2026 Guidelines for Immune Thrombocytopenia (ITP)—Initial and Second-Line Therapy in Adults with Primary ITP(American Society of Hematology・2026)全57頁の本文PDFを取得して確認した。Table 1は2019年版の推奨1a・1bについて「治療開始の閾値は更新されていない」と明記する一方、「ただし一次治療の選択は2026年版の推奨1で更新された」と注記する(同じ注記が推奨3・4にも付く)。推奨1は、初回治療を要する成人の原発性ITPにリツキシマブ+副腎皮質ステロイド(±IVIG)または血小板産生刺激薬(thrombopoietic agent)+副腎皮質ステロイド(±IVIG)を、ミコフェノール酸モフェチル+ステロイドやステロイド単独より提案する(条件付き推奨・エビデンスの確実性は低。推奨は抗CD20抗体のうちリツキシマブとそのバイオシミラーに限られる)。そのRemarksは、診断が不確実な場合に併用へ進む前に2週以下の短期のステロイド(±IVIG)で血小板反応を見て診断の確からしさを上げるのは妥当であること、併用でも単独でも毒性を抑えるためステロイドの投与は6週以下に留めるのが望ましいこと、併用相手として最も研究されているのはデキサメタゾン40mg×4日を2〜4週間隔で1〜3コースだがプレドニ(ゾ)ロン0.5〜2mg/kg/日も適切であること、リツキシマブは375mg/m²を週1回4回が最も研究されていることを述べる。リツキシマブも血小板産生刺激薬も選べない場合はステロイド単独をミコフェノール酸モフェチル併用より提案する(条件付き推奨・確実性は非常に低い)。パネルはアバトロンボパグ・エルトロンボパグ・ヘトロンボパグ・ロミプロスチム・遺伝子組換えヒトトロンボポエチンを互換として扱っている。本版は焦点更新であり、診断・治療開始の適応・妊娠中のITP・小児ITPを扱わない。⚠️ 出版社サイトは今回も403で、読んだのはInternet Archiveに保存された出版社のFirst Edition版PDF(組版前の採択原稿、Tracking no ADV-2026-021269R1)であり、誌上版との異同は確認していない閲覧 2026-09-17
  5. 5.Consensus guidelines for the management of adult immune thrombocytopenia in Australia and New Zealand(Medical Journal of Australia・2022)ITPの生命危機的出血ではIVIGと高用量ステロイドに血小板輸血を併用し、輸血単独の持続効果を期待しないことを確認した閲覧 2026-08-13
  6. 6.Platelet Transfusion: 2025 AABB and ICTMG International Clinical Practice Guidelines(Association for the Advancement of Blood and Biotherapies / International Collaboration for Transfusion Medicine Guidelines・2025)非出血性の低形成性血小板減少、腰椎穿刺、非神経軸性大手術に対する制限的な血小板輸血閾値を確認した閲覧 2026-08-13