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Disease Atlas · 血液 · 疾患

再生不良性貧血

Aplastic anemia

別名
AA
臓器系
血液
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C-2:造血低下による貧血内科学 H-06:再生不良性貧血内科学 L-58:低形成性貧血
上位概念
貧血
鑑別疾患
遺伝性・後天性溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症・G6PD欠乏症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間ヘモグロビン尿症)急性骨髄性白血病巨赤芽球性貧血骨髄異形成症候群骨髄癆性貧血
治療薬
ATG(抗胸腺細胞グロブリン)シクロスポリンAフィルグラスチム
原因薬剤
クロラムフェニコールアセタゾラミドカルバマゼピンフェルバマットメタミゾールミアンセリンフェニルブタゾンプロベネシドチアマゾール
症状
倦怠感出血蒼白点状出血動悸発熱労作時呼吸困難
検査値
網赤血球汎血球減少
元疾患
パルボウイルスB19感染症
原因となる疾患
ウイルス性肝炎
適応薬
エルトロンボパグ
禁忌薬
フェニルブタゾンフェルバマットメタミゾール

🧠 全体像(AA)は、造血幹・前駆細胞そのものが減少し、骨髄が低細胞性・脂肪髄に置き換わることでを来すである。後天性AAの大多数は、が造血幹細胞を標的として攻撃するの機序で説明され、などの遺伝性は少数派だが小児・若年例では必ず除外する。さらにAA・(PNH)・(MDS)は、免疫攻撃を逃れたクローンの選択・進展という点で概念的に連続しており、診断時のPNHクローン検索と長期のクローン進展監視が診療の要になる。

病態

後天性AAの中核機序は、自己反応性のによる造血幹細胞への攻撃である。何らかの契機でオリゴクローナルなT細胞が活性化し、IFN-γ・TNF-αなど抑制性サイトカインを放出して造血幹・前駆細胞のアポトーシスを誘導する。が失われると骨髄は低細胞性となり、造血組織は脂肪髄に置き換わる。

flowchart TD
    A["トリガー(特発性・薬剤・ウイルス・放射線など)"] --> B["自己反応性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic T cell'>細胞傷害性T細胞</span>の活性化"]
    B --> C["IFN-γ・TNF-αなど抑制性サイトカインの放出"]
    C --> D["造血幹・前駆細胞のアポトーシス"]
    D --> E["骨髄の低細胞化・脂肪髄への置換"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>"]
    D --> G["免疫攻撃を逃れたクローンの相対的増殖"]
    G --> H["PNHクローン(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GPI-anchored protein'>GPIアンカー蛋白</span>欠損)"]
    G --> I["MDS関連クローン(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monosomy 7'>モノソミー7</span>など)へ進展しうる"]

💡 この最後の分岐がAA・PNH・MDSの概念的なを説明する。を欠くPNHクローンはT細胞攻撃の標的を提示しにくいため相対的に生き残りやすく、診断時点で小規模なPNHクローンを伴うAAは珍しくない。一方で、造血幹細胞の反復ストレスと不安定なゲノムの蓄積は、などの染色体異常を伴うMDSクローンへの進展にもつながり得るため、長期のクローン進展監視が必要になる。

原因

分類 主な原因
特発性・ 後天性AAの大多数を占める
薬剤・ 、一部の抗菌薬・など
ウイルス関連 肝炎関連(血清学的に同定されない肝炎後AAを含む)、B19、HIV
放射線 高線量
自己免疫・妊娠関連 全身性自己免疫疾患、まれに妊娠関連
遺伝性(先天性 等)、など

⚠️ 後天性か遺伝性かの鑑別はに直結する。 などの先天性では造血幹細胞がDNA損傷修復の異常を抱えており、通常強度の・放射線)に対する感受性が著しく高い。若年発症、・café-au-lait斑・母指/橈骨異常などの身体所見、家族歴、複数以外の異常(爪異常、など)があれば、移植前に(DEBまたはC)で必ず除外する。

臨床像

の各の減少が、そのまま症状に反映される。

血球減少 症状・所見
赤血球減少 感、、蒼白
好中球減少 発熱、口腔・咽頭感染、皮膚・呼吸器感染、重症細菌・真菌感染
血小板減少 点状出血、紫斑、

リンパ節腫大や著明な脾腫はAAの典型像ではない。 これらを認めた場合は、、リンパ腫、など骨髄を占拠・浸潤するを積極的に再検討すべき、AAを除外する方向に働く重要な陰性所見である。

診断

必要な検査

  • CBC、(芽球・異形成の有無を確認)
  • (低形成の分布は性になり得るため、十分な検体長の生検で評価する)
  • ・必要に応じた分子検査(などMDSを示唆する異常の除外)
  • によるPNHクローン評価(FLAER、CD55/CD59陰性細胞集団の検出)
  • 若年者・身体所見・家族歴が示唆的ならを除外
  • 肝・腎機能、B12・葉酸、溶血検査、臨床背景に応じたウイルス検査

で得られる所見は、低細胞性骨髄であり、造血組織が線維化やを伴わずに脂肪髄へ置換されている像である。この所見自体が、骨髄が腫瘍細胞や線維化で置換される、あるいは異形成・芽球増加を伴うMDSとの鑑別点になる。

重症度分類(Camitta基準)

重症度は、骨髄細胞密度と末梢血球数の両方で判定する。

分類 骨髄細胞密度 血球基準
中等症 低形成だが下記の重症基準を満たさない はあるが重症基準に届かない
重症(severe AA、SAA) <25%、または25〜50%で残存造血細胞が30%未満 好中球<0.5×10^9/L・血小板<20×10^9/L・絶対<20×10^9/Lのうち2項目以上
最重症(very severe AA、VSAA) 重症基準を満たす 上記に加え好中球<0.2×10^9/L

⭐ SAA/VSAAの判定は、(HSCT・ISTのいずれか)を速やかに開始する適応そのものであるため、診断確定と同時に行う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>+絶対<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticulocyte'>網赤血球</span>低値"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>・薬剤/ウイルス歴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Malnutrition or obesity'>栄養状態</span>を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow aspiration'>骨髄穿刺</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow biopsy'>骨髄生検</span>"]
    C --> D["低細胞性骨髄・脂肪髄への置換"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cytogenetics'>細胞遺伝学</span>でMDSを鑑別"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow cytometry'>フローサイトメトリー</span>でPNHクローンを評価"]
    D --> G["若年・身体所見・家族歴から遺伝性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow failure'>骨髄不全</span>を評価"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Camitta criteria'>Camitta基準</span>で重症度を判定"]
    F --> H
    G --> H
    H --> I{"年齢とHLA適合ドナーの有無"}
    I -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='matched sibling (donor)'>適合同胞</span>ドナーあり(特に若年)"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allogeneic hematopoietic stem cell transplantation (allo-HSCT)'>同種造血幹細胞移植</span>を第一選択"]
    I -->|"若年・重症感染+適合非血縁ドナーが迅速に得られる"| J
    I -->|"適合ドナーなし・移植<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ineligible'>不適格</span>"| K["ウマATG+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclosporin'>シクロスポリン</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IST'>エルトロンボパグ</span>"]
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(treatment) response'>奏効</span>不良・再発なら代替ドナー移植を専門施設で再検討"]

鑑別

疾患 鑑別点
低形成MDS 異形成、染色体・遺伝子異常、芽球増加
PNH 欠損クローン、溶血・血栓症
芽球、骨髄の腫瘍細胞による占拠
、B12・葉酸低下
脾腫、、線維化・
遺伝性等) 若年発症、身体奇形、家族歴、陽性

治療

根治・疾患修飾治療

SAA/VSAAでは、年齢とHLA適合ドナーの有無に基づき、か免疫(IST)かを速やかに選択する。

項目
主な適応 若年でHLAドナーがある場合が第一選択(40〜50歳は併存症・ドナー・施設経験を踏まえ個別判断) ドナーがない、高齢、移植
機序 患者の造血幹細胞そのものを健常ドナー由来のものに置き換える ウマATG+を抑制し、内因性造血を回復させる
治癒性 治癒的(そのものを置換) しても内因性の造血幹細胞の脆弱性やクローン進展リスクは残る
主なリスク GVHD、 、感染、再発、PNH・MDS・へのクローン進展

)をATG+する3剤併用は、現行のIST標準である。 標準ISTのみと比較してまでの期間が改善することがで示され、2024年版ガイドラインでも、非移植例に対する第一選択IST regimenとして明記されている。

ドナーがない場合の非HSCTは、原則としてISTがしなかった後に検討するが、重症感染を伴い適合非血縁ドナーが迅速に得られる若年患者では、前提のIST開始を待たずに前倒しで検討され得る。年齢だけで機械的に決めず、併存症、感染状態、ドナーの型、移植施設の経験を総合して判断する。

支持療法

  • では、培養検体を採取したうえでの開始を遅らせない。
  • 赤血球・は症状と閾値に応じて行い、将来の移植を見据えて白血球除去製剤を用い、必要時は照射製剤とする。不要な輸血は・鉄過剰を増やすため避ける。
  • (G-CSF)は全を回復させるではなく、重度好中球減少に感染を伴う場合など限定的な状況で補助的に検討する。
  • 出血予防、感染予防、への対応、歯科処置や侵襲的手技の計画を行う。

長期フォローアップ

寛解後もPNH・MDS・へのクローン進展がないか、定期的なで長期に監視する。

まとめ

  • AAは造血幹細胞の減少により低細胞性骨髄(脂肪髄置換)とを来すであり、後天性の多くはによる機序で生じる。
  • リンパ節腫大・脾腫を欠く点が、白血病・リンパ腫との重要な鑑別点である。
  • AA・PNH・MDSは免疫攻撃を逃れたクローンの選択・進展という点で概念的に連続しており、診断時のPNHクローン評価と長期のクローン進展監視が欠かせない。
  • 重症度は(骨髄細胞密度、好中球・血小板・)で中等症・重症・最重症に分類し、SAA/VSAAでは速やかにを選ぶ。
  • 若年でドナーがあればHSCTが第一選択、それ以外はウマATG+の3剤併用ISTが現行標準である。
  • 若年発症例・身体所見・家族歴が示唆的な場合は、の毒性が異なるなどの遺伝性を移植前に必ず除外する。