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Disease Atlas · 血液 · 疾患

巨赤芽球性貧血

Megaloblastic anemia

別名
ビタミンB12・葉酸欠乏性貧血
臓器系
血液
科目
Internal MedicineBiochemistry
トピック
内科学 H-03:大球性貧血内科学 L-58:低形成性貧血生化学 7/5:ビタミンB12欠乏とメチルマロン酸血症
上位概念
貧血
鑑別疾患
血栓性血小板減少性紫斑病骨髄異形成症候群骨髄癆性貧血再生不良性貧血鉄欠乏性貧血認知症慢性疾患に伴う貧血
治療薬
ビタミンB12葉酸
原因薬剤
メトホルミンメトトレキサート亜酸化窒素スルファサラジン
原因微生物
Diphyllobothrium latum
症状
しびれめまい倦怠感蒼白頭痛動悸労作時呼吸困難感覚性運動失調
検査値
過分葉好中球乳酸脱水素酵素ビリルビン血小板減少甲状腺刺激ホルモン網赤血球抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体ガストリンメチルマロン酸ホモシステイン汎血球減少
組織像
巨赤芽球性造血巨赤芽球性赤芽球過形成
原因となる疾患
クローン病胃炎小腸内細菌異常増殖熱帯性スプルー

🧠 全体像は、DNA合成(特にプリン・)の障害により核成熟が細胞質の成熟に追いつかなくなる病態で、代表原因はビタミンB12欠乏と葉酸欠乏である。両者は生化学的に「という同じ反応を、B12はとして、葉酸はとして支える」共犯関係にあるため血液像は酷似するが、B12だけがもう一つの反応()を介して神経を侵す点が決定的に異なる。この非対称性ゆえに、葉酸を単独投与するとB12欠乏の貧血は改善しても神経障害が進行しうるという臨床上最重要の禁忌が生まれる。

病態

ビタミンB12()は体内で2つの型に変換され、それぞれ別の反応を支える。は細胞質でとなり、とN5-メチル(N5-メチルTHF)からとTHFを再生する。この反応はN5-メチルTHFが他の葉酸依存反応(プリン・)に使える形へ戻る唯一の出口であるため、B12が欠乏すると葉酸がN5-メチルTHFの形に「トラップ」され、細胞内で使える葉酸が枯渇する()。葉酸欠乏はこの反応の基質そのものが不足する点で終着点は同じであり、いずれの経路でもTHF供給が滞ってDNA合成(プリン・)が障害される。

もう一つの反応は、ミトコンドリアでとするで、の分解の終末段階()を担う。この反応はB12だけに依存し葉酸は関与しないため、B12欠乏ではが蓄積しての異常合成を介した神経障害(末梢神経障害、)を来すが、葉酸欠乏では血液所見のみで神経症状は通常ない。

flowchart TD
    A["ビタミンB12欠乏"] --> B["①<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine synthase'>メチオニン合成酵素</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylcobalamin'>メチルコバラミン</span>依存)の活性低下"]
    C["葉酸欠乏"] --> B
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>蓄積・葉酸の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methyl trap'>メチルトラップ</span>"]
    D --> E["DNA合成障害(プリン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidylate'>チミジル酸</span>不足)"]
    E --> F["核成熟が細胞質成熟に追いつかない:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megaloblastic hematopoiesis'>巨赤芽球性造血</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ineffective erythropoiesis'>無効造血</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Intraosseous'>骨髄内</span>での前駆<span class='jp-term jp-term-diagram' title='HLA-DR3/DR4'>細胞破壊</span>)"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macrocytic anemia'>大球性貧血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Leukopenia'>白血球減少</span>・血小板減少"]
    G --> I["LDH・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indirect bilirubin'>間接ビリルビン</span>上昇(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ineffective erythropoiesis'>無効造血</span>による溶血様所見)"]
    A --> J["②<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonyl-CoA mutase'>メチルマロニルCoAムターゼ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenosylcobalamin'>アデノシルコバラミン</span>依存)の活性低下"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonic acid (MMA)'>メチルマロン酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='propionyl-CoA'>プロピオニルCoA</span>蓄積"]
    K --> L["末梢神経障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subacute combined degeneration of the spinal cord'>亜急性連合性脊髄変性症</span>"]

💡 を「」と「(飲酒、肝疾患、など)」に分けるのが第一分岐であり、(好中球の分葉が過剰)はDNA合成障害=を示す形態学的な手掛かりである。

原因

分類 ビタミンB12欠乏 葉酸欠乏
主な原因 )、やCrohn病などの、厳格な菜食、曝露、感染(虫体による腸管内B12消費) 摂取不足、、妊娠・需要増大、、メトトレキサートなどの薬剤
体内貯蔵量 数年分(欠乏の顕在化に時間がかかる) 数か月分(欠乏が早く顕在化する)
神経症状 あり得る 通常ない

⭐ 「」はに伴うB12欠乏を指す歴史的名称で、への自己免疫により産生が低下しでのB12吸収が障害される。のうち、は特異度がほぼ100%と高い一方で感度は40〜60%にとどまり1、陰性でもを否定できない。は感度約90%と高いが特異度でに劣るため1、上部内視鏡などとあわせ状況に応じて追加する。

臨床像

⚠️ 神経症状は貧血やの有無にかかわらず生じうる。 B12境界値の患者で神経症状が疑われる場合、確定検査の結果を待って治療開始を不必要に遅らせない。

診断

  1. CBC、を確認する。
  2. ビタミンB12、葉酸、肝機能、を測定する。
  3. B12が境界域で臨床的に疑わしければ(MMA)を測定する(腎機能低下でも上昇しうるため腎機能も考慮する)。はB12・葉酸いずれの欠乏でも上昇し鑑別に使えないが、MMAはB12欠乏でのみ上昇するため両者の鑑別に有用である。
  4. 溶血様所見(によるLDH上昇)を認めるが、低下やを伴う真の溶血とは異なる。
  5. 原因不明の血球減少、他系統の異形成があれば(MDS)を考え、血液専門医によるを検討する。
項目 ビタミンB12欠乏 葉酸欠乏
上昇 上昇
上昇 通常正常

💡 重度の血小板減少や溶血様を伴う(TTP)に似ることがあるが、塗抹形態(の有無)、、B12値、臨床像を統合して鑑別する。放射性B12を用いるは歴史的検査であり、現在の日常診療では用いない。

治療

ビタミンB12欠乏

  • 完全切除など不可逆的では、筋注B12を生涯継続する。
  • 食事性欠乏や一部のでは、十分量の高用量経口B12でも同等に補正できる場合がある。
  • 神経症状や重症例では、確実な補充のため筋注療法を優先する。
  • 治療開始後は、Hb、神経症状、に応じて追跡する。

葉酸欠乏

原因(アルコール、吸収不良、薬剤など)を治療しつつ葉酸を補充する。⚠️ 葉酸単独投与はB12欠乏による貧血を改善しながら神経障害を進行させうるため、葉酸を開始する前に必ずB12欠乏を除外するか同時に補充する。

妊娠を計画する人は、原則として妊娠前から妊娠12週まで葉酸400 µg/日を摂取する。児の既往など高リスクでは、医療者の管理下で5 mg/日を用いる。

治療反応の追跡

補充後は数日でが増え、数週間でHbが改善する。反応が乏しければ、診断の再検討、服薬状況、鉄欠乏の併存、持続出血、骨髄疾患を評価する。

まとめ

  • はDNA合成障害によるで、が手掛かりとなる。
  • B12は)と(神経障害)の2反応を支えるが、葉酸は前者にのみ関与するため、B12欠乏だけが神経症状を来す
  • B12境界域ではMMAが鑑別に有用(B12欠乏でのみ上昇、葉酸欠乏では正常)。
  • 不可逆的によるB12欠乏は生涯にわたる筋注補充を要する。
  • 葉酸を単独で開始する前に必ずB12欠乏を評価する。

出典

  1. 1.Pernicious Anemia(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)抗内因子抗体は特異度ほぼ100%だが感度40〜60%にとどまること、抗胃壁細胞抗体は感度約90%だが特異度で内因子抗体に劣ることを確認した。閲覧 2026-08-03