薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B29 Immunosuppressants / 免疫抑制薬 · 必修

スルファサラジン

sulfasalazine

分類
Immunosuppressants / 免疫抑制薬GI & hepatobiliary drugs / 消化器・肝胆道薬
商品名(日本)
サラゾピリン
商品名(EU)
Salazopyrin
科目
Pharmacology
トピック
B29: Immunopharmacology II (Inhibitors of cytokine gene expression, 5-ASA derivatives)
副作用
皮疹頭痛
監視検査値
血算
対象疾患
乾癬性関節炎環状肉芽腫関節リウマチ強直性脊椎炎若年性特発性関節炎潰瘍性大腸炎反応性関節炎慢性再発性多発性骨髄炎
原因となる疾患
巨赤芽球性貧血乏精子症薬剤誘発性ループス

🧠 全体像:は、5-ASAと()をでつないだである。経口摂取後もほとんど吸収されずに大腸まで届き、腸内細菌のが結合を切断して初めて5-ASA+に分解される。この2つの断片が別々の疾患に効く点が最大のポイントで、では腸管局所に残る5-ASA側、関節リウマチでは全身に吸収される側が主に働くと考えられている。そして副作用の多く(葉酸欠乏・溶血・可逆性・スルファアレルギー)も、この吸収される側が主因である。

薬効群の中での位置づけ

構成 5-ASAのみ 5-ASA+()
放出のしくみ 製剤の物理化学的設計(pH依存性など) 腸内細菌のによる分解
UCへの効果 5-ASA側の 同じく5-ASA側の
RAへの効果 なし あり(側が主因と考えられる)
副作用の主因 5-ASA自体(比較的少ない) 吸収される側(葉酸欠乏・溶血・不妊・スルファアレルギー)

⭐ 「UCでは5-ASA側、RAでは側」という対比が試験で問われやすい。 にはが存在しないため、RAへの適応がないことの説明にもなる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfasalazine'>スルファサラジン</span>を経口摂取"] --> B["上部消化管ではほとんど吸収されず<br>大腸まで到達"]
    B --> C["腸内細菌の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azoreductase'>アゾ還元酵素</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='azo bond'>アゾ結合</span>を切断"]
    C --> D["5-ASAが放出される"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfapyridine'>スルファピリジン</span>が放出される"]
    D --> F["腸粘膜局所でNF-κB経路等を抑制<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>に効く"]
    E --> G["吸収されて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic circulation'>全身循環</span>へ"]
    G --> H["関節リウマチへの抗炎症効果<br>(機序は5-ASAほど明確ではない)"]
    G --> I["葉酸吸収阻害・アセチル化代謝を受ける<br>→ 副作用の主因"]

💡 の代謝には遺伝的なアセチル化速度の(NAT2多型)が関わる。 はの血中濃度が上がりやすく、副作用(特に過敏反応)のリスクが高いとされる。やと同じアセチル化多型の教育ポイントがここでも登場する。

薬物動態

項目 値・特徴
経口吸収 自体はほとんど吸収されない(設計)
活性化 腸内細菌のに依存する(個人ので効果に差が出うる)
の代謝 肝でアセチル化(NAT2多型の影響を受ける)・酸化される
排泄 5-ASAは糞便中、代謝物は尿中

適応

領域 使いどころ
消化器 軽症〜中等症の
リウマチ 関節リウマチ(、メトトレキサート不耐・禁忌例や併用療法で選択)
リウマチ() ・・の
小児・自己炎症性骨疾患 (CNO/CRMO)で単剤に抵抗性の例(CARRAの合意治療計画。→「CNO/CRMOでの位置づけ」)1

💡 ではにのみ有効で、(脊椎・)や皮膚乾癬には通常効果がない。 でを合併する場合に限って選択肢になる。

CNO/CRMOでの位置づけ

北米のCARRA(小児関節炎・リウマチ研究)は、単剤に抵抗性および/または活動性の脊椎病変をもつ小児のについて、最初の6〜12か月を対象とする3つの合意治療計画(CTP)を定めている。そのTreatment A(非生物学的)は、メトトレキサート週1回か、50 mg/kg/日(1回最大1500 mg)を経口で1日2回に分けて投与するかの2択である1。⭐ 用量は体重あたりで決まる。 CARRAは「と阻害薬の用量は、文献と実臨床で報告されている標準的なのレジメンに倣った」と述べており、CNO固有の用量設定試験があるわけではない1。

⚠️ がこの2択に入ったのは、有効性のデータが強かったからではない。 CARRAの調査で最も多く使われていたはメトトレキサート(34%)で、はCNO部会の委員が経験上よく使うと報告したことを理由に採用された1。CNOに対するの報告は5件・IVにとどまり、うち3報は・メトトレキサート・への反応不良を記録している。メトトレキサートまたはで治療された小児の寛解率は18〜20%、有効率は38〜41%である1。💡 CTPの目的は優劣を示すことではなく、比較効果研究を回せるようにレジメンを標準化することである。

用法・用量

消化器症状(悪心・)を減らすため、少量から漸増するのが原則。は上部消化管での分解・悪心を減らすため広く使われる。開始前後に葉酸を補充することが推奨される。実際の用量は適応・性・施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:・過敏症、腸閉塞・尿路閉塞、の既往
  • ⚠️ 欠損症では溶血のリスクが高まる。 に共通する注意点
  • ⚠️ 可逆性の・を起こすことがある。 中止すれば通常は回復するため、がある場合は事前に説明する
  • 葉酸欠乏を起こしやすく、を検討する(特に妊娠を考慮する場合)
  • 定期的な血算・肝機能検査で骨髄抑制・肝障害を監視する
  • 乳幼児(特に新生児・)ではビリルビンをアルブミンから追い出しのリスクを高めるため使用を避ける

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心、、頭痛
注意 皮疹、葉酸欠乏()、可逆性・、
重篤・まれ 溶血性貧血(特に欠損症)、・重度の骨髄抑制、・、肝障害

まとめ

  • 5-ASAとをでつないだ。腸内細菌のが結合を切断して初めて活性化する。
  • には腸管局所に残る5-ASA側、関節リウマチには全身へ吸収される側が主に働くと考えられている。
  • 副作用の多く(葉酸欠乏・溶血・可逆性・スルファアレルギー)は側が主因。 にはこれらの副作用が少ない理由でもある。
  • のアセチル化にはNAT2多型が関わり、でが上がる。
  • 欠損症では溶血、乳幼児ではのリスクがあるため使用を避ける。
  • ではにのみ有効で、・皮膚病変には通常無効。
  • 可逆性の・を起こしうるが、中止すれば通常回復する。

出典

  1. 1.Consensus Treatment Plans for Chronic Nonbacterial Osteomyelitis Refractory to Nonsteroidal Antiinflammatory Drugs and/or With Active Spinal Lesions(Childhood Arthritis and Rheumatology Research Alliance (CARRA)・2018)PMC5938153の全文をPMCのHTML版で取得して逐語確認した(Europe PMCのfullTextXMLは404)。北米のCARRAが、NSAIDs単剤に抵抗性および/または活動性の脊椎病変を有する小児の慢性非細菌性骨髄炎(CNO/CRMO)について、名義集団法で3つの合意治療計画(CTP)をまとめたものであること。⭐ Table 2「Consensus treatment plans for the first 6–12 months」のTreatment A(非生物学的DMARD)が「Methotrexate (oral or subcutaneous)(15 mg/m2、1回最大25 mg)weekly」**OR**「Sulfasalazine (oral)(50 mg/kg/day、1回最大1500 mg)divided twice daily」の2択であり、スルファサラジンが**経口・1日2回分割**で位置づけられていること、全レジメンでNSAIDsの継続とプレドニゾン換算2 mg/kg/日(最大60 mg/日)までのグルココルチコイドを合計6週まで併用してよいこと、表脚注が「ビスホスホネート(3〜6か月)を除き、最低治療期間は12か月とすべき」としていることを確認した。⚠️ 本文が根拠の弱さを明記していることも確認した——「Most literature reported variable success of methotrexate (MTX) and sulfasalazine (SSZ) in patients with poor responses to NSAIDs or frequent relapses.」「Five articles have reported treatment of DMARDs in CNO with level IV evidence.」であり、Jansson・Catalano・Kaiser らの3報がSSZ・MTX・アザチオプリンへの反応不良を記録し、Borzutzky らと Wipff らの報告ではMTXまたはSSZ治療下の寛解率18〜20%・有効率38〜41%と低いこと。⚠️ スルファサラジンが採用された理由は調査での使用頻度ではなく「CNOグループの委員が経験に基づきスルファサラジンもよく使うと報告したため」であり(調査で最多のDMARDはメトトレキサート34%)、用量は「The dosing of DMARDs and TNFi followed standard JIA treatment regimens as reported in the literature and clinical practice」と若年性特発性関節炎のレジメンに倣ったものであること閲覧 2026-09-05