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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 疾患

乏精子症

Oligospermia

別名
Oligozoospermia
臓器系
生殖・産婦人科腎・泌尿器
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-22:男性不妊症
治療薬
クロミフェン
原因薬剤
サラゾスルファピリジンオキシメトロン
症状
不妊
検査値
卵胞刺激ホルモン血清テストステロン

🧠 全体像:は「病名」というよりという1つのに付けられたラベルである。⚠️ 1回の異常値だけで確定しない——精液所見は個体内変動が大きく、異常があれば少なくとも1か月あけて再検するのが原則である。診断そのものより重要なのは、原因を前精巣性(内分泌)・精巣性()・後精巣性(精路)のどこに求めるかという整理であり、この分類が検査と治療の道筋を決める。

定義

  • =精液中のがを下回る状態。 AUA/ASRMガイドラインが引用するマニュアル第6版(2021年)の基準では、自然妊娠に至った集団の5として16百万/mL(95%CI 15-18)が下限とされる1。
  • 同じ表で、精液量1.4 mL、総精子数39百万/射出液、前進運動率30%、総運動率42%、54%が下限値として示されている1。
  • ⚠️ これらは「自然妊娠した集団の5」であって、妊孕性の有無を分けるな閾値ではない。 精液所見は採取ごとの変動が大きいため、異常値が出れば標準化した条件で少なくとももう一度再検することが推奨される1。
  • だけで男性因子不妊を確定・除外することはできない。原因が同定できない特発性が約30%、パートナー評価を含めても原因が分からないが約25%を占める1。

原因の整理:前精巣性・精巣性・後精巣性

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oligozoospermia'>乏精子症</span>"] --> B["前精巣性<br>視床下部・下垂体の異常<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogonadotropic hypogonadism'>低ゴナドトロピン性性腺機能低下症</span>等)"]
  A --> C["精巣性<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='spermatogenesis'>造精機能</span>そのものの障害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Klinefelter syndrome'>Klinefelter症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryptorchidism'>停留精巣</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='varicocele'>精索静脈瘤</span>・薬剤性等)"]
  A --> D["後精巣性<br>精路の部分的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstruction to passage'>通過障害</span><br>(片側閉塞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ejaculatory duct obstruction'>射精管閉塞</span>等)"]
  B --> E["ホルモン評価で鑑別<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>・テストステロン)"]
  C --> E
  D --> F["精液量・pH・画像で評価"]

💡 この3分類が、検査の組み立てをそのまま決める。 前精巣性を疑えばホルモン評価、精巣性を疑えば遺伝学的検査、後精巣性を疑えば精路の評価へと進む——分類そのものが診断アルゴリズムになっている。

評価

ホルモン評価

・、・、、を示唆する所見があれば、と総テストステロンを評価する1。上昇は精子形成障害を反映しやすく、原発性(精巣性)と続発性(前精巣性)のを鑑別する軸になる。

遺伝学的検査

⭐ そのものが検査の適応を決める閾値になっている。

所見 推奨される検査 推奨度
+<5百万/mL+高値・等 (例: 47,XXY) Expert Opinion
+≤1百万/mL+同様の所見 Y染色体検査 Moderate(Grade B)

⚠️ Y染色体のスクリーニング閾値は、以前の≤5百万/mLから≤1百万/mLへ引き下げられた。 で0〜1百万/mLでは陽性率5%だったのに対し、1〜5百万/mLでは0.8%にとどまったためである1。非閉塞性全体では8〜12%、高度では3〜7%にY染色体が見つかる1。

閉塞性か非閉塞性か

⭐ 原則として精巣生検によらず、身体所見と血液検査だけで高い確率で鑑別できる。 >7.6 IU/Lかつ精巣長径<4.6 cmであれば精子形成障害(非閉塞性)の可能性89%、<7.6 IU/Lかつ精巣長径>4.6 cmであれば閉塞の可能性96%とされ、中間的な値のときのみ生検を検討する1。

治療

治療は原因分類に沿って選ぶ。

  • (前精巣性):原因評価のうえで治療する。⚠️ 挙児を希望する男性にはを単独投与しない。 性腺刺激ホルモンと精子形成そのものを抑制してしまうためで、代わりに・・等を用いる1。
  • (精巣性の代表例):ながあり精液所見異常を伴う不妊男性では、を除き手術を検討する。画像のみで判明する非触知性のには手術を推奨しない1。
  • 特発性:などのが用いられることがあるが、の成績と比べれば利益は限定的であることを説明したうえで使用する1。日本の電子添文では「における精子形成の誘導」がの一つとされ、1回50 mgのという男性向けの用法が定められている2。アナログも選択肢になりうる1。
  • (ビタミン・・等):使用されることがあるが、有用性を裏付けるエビデンスの質は低いとされる1。

⚠️ 薬剤性のは可逆的なことがある。 は可逆性のを起こしうるが中止すれば通常回復し、であるはとともにを来しうる。薬剤歴の聴取は前精巣性・精巣性のいずれの評価とも独立して行う価値がある。

まとめ

  • は基準(16百万/mL未満)で定義されるであり、変動が大きいため異常値は再検して確認する。精液所見だけで妊孕性の有無は決まらない。
  • 原因は前精巣性(内分泌)・精巣性()・後精巣性(精路)に整理し、この分類が検査・治療の道筋を決める。
  • の閾値(<5百万/mLで、≤1百万/mLでY染色体検査)が遺伝学的検査の適応を決め、閉塞性/非閉塞性の鑑別は値と精巣長径から生検なしに高確率で判定できる。
  • 治療はへの(単独は禁忌に近い)、適応を満たす、特発性例への等の(利益は限定的)を原因に応じて選ぶ。
  • ・など、可逆性の薬剤性も鑑別に含める。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Infertility in Men: AUA/ASRM Guideline (2020; Amended 2024)(American Urological Association / American Society for Reproductive Medicine・2024)全文(PDF)を閲覧。Oligozoospermiaが「精液中の精子濃度低下」と定義されること、WHO第6版に基づく精液所見の片側下限基準値(自然妊娠に至った集団の下位5パーセンタイル)が精液量1.4 mL・総精子数39百万/射出液・精子濃度16百万/mL(95%CI 15-18)・生存率54%・前進運動率30%・総運動率42%であること、精液所見は個体内変動が大きいため異常があれば少なくとも1か月あけて再検すべきこと(Strong Recommendation)、精液検査所見だけで妊孕性・不妊を確定できないこと、原因が同定できない特発性男性不妊が約30%、パートナー評価を含めても原因不明の不妊(unexplained)が約25%に上ること、乏精子症・無精子症や性腺機能低下を示唆する所見があればFSH・テストステロンのホルモン評価を行うこと(Expert Opinion)、原発性不妊で精子濃度<5百万/mLかつFSH高値・精巣萎縮等を伴う場合は核型検査を(Expert Opinion)、精子濃度≤1百万/mLで同様の所見を伴う場合はY染色体微小欠失検査を推奨すること(Moderate Recommendation、Grade B:この閾値はY染色体微小欠失が精子濃度0-1百万/mLで5%・1-5百万/mLで0.8%というメタ解析の結果を根拠に≤5百万/mLから≤1百万/mLへ変更されたこと)、非閉塞性無精子症の8-12%・高度乏精子症の3-7%にY染色体微小欠失が見つかること、閉塞性/非閉塞性の鑑別は原則として精巣生検によらず、FSH>7.6 IU/Lかつ精巣長径<4.6 cmで精子形成障害(非閉塞性)の可能性89%、FSH<7.6 IU/Lかつ精巣長径>4.6 cmで閉塞の可能性96%と臨床所見・血液検査で高い確率で予測できること(Expert Opinion)、触知可能な精索静脈瘤と精液所見異常を伴う不妊男性では無精子症を除き手術を検討すべきこと(Moderate Recommendation、Grade B)、画像のみで判明する非触知性精索静脈瘤には手術を推奨しないこと(Strong Recommendation、Grade C)、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では原因評価のうえ治療すること、挙児を希望する男性には外因性テストステロン単独投与を行わないこと(Clinical Principle)、低テストステロン男性にはアロマターゼ阻害薬・hCG・SERM等を使用しうること(Conditional Recommendation、Grade C)、特発性不妊男性へのSERM使用は生殖補助医療と比べ限定的な利益にとどまることを説明すべきこと(Expert Opinion)、抗酸化サプリメントの有用性のエビデンスは乏しいこと(Moderate Recommendation、Grade B)、特発性不妊男性にはFSHアナログの使用を考慮しうること(Conditional Recommendation、Grade B)を確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.クロミッド錠50mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2022)日本の電子添文でクロミフェンの効能又は効果に「乏精子症における精子形成の誘導」が含まれること、その用法・用量が1回50 mgの隔日投与であることを確認した。閲覧 2026-09-07