症状ノート一覧へ

Symptoms · Published

不妊症

Infertility

臓器系
生殖・産婦人科
科目
Gynecology
トピック
婦人科 06:不妊症の原因とカップルの評価婦人科 07:不妊症の検査と治療
関連疾患
子宮内膜ポリープ

🧠 全体像は「女性だけの問題」として捉えると評価が半分で止まる症候である。定義は避妊なしの性交を12か月(女性35歳以上では6か月)続けても妊娠しない状態で、原因は女性因子だけでなく男性因子が単独・寄与を合わせて約半数の症例に関与する。だからこそ評価は「まず女性を調べてから男性へ」ではなく、・排卵の確認・卵管疎の評価を同時並行で進めるのが標準である。のように単独では軽微に見える病変も、内膜腔の形態を変えて着床を妨げる原因として評価の中で見つかる。

定義と評価開始時期

は、避妊をせず定期的な性交を続けても12か月妊娠しない状態と定義される1。女性が35歳以上の場合は妊孕能の年齢による生理的な低下を踏まえて評価開始を6か月へ早め、40歳を超える場合はさらに早期の評価が推奨される2

原因は男女で分けて考える

男性因子は単独で約20%、寄与因子として30〜40%——合わせて約半数の症例に関与する3。女性側の排卵・卵管・子宮の検索を先行させを後回しにすると、評価がここで滞る。

女性因子

因子 代表疾患・機序
無月経、
卵管因子 クラミジア感染後の卵管閉塞・癒着
子宮因子 (内膜腔を歪める)、
骨盤内の癒着・炎症に加え、卵の質・着床能への影響も指摘される

男性因子

精路閉塞(など)、内分泌異常()、精巣自体の造精機能障害(など)に大別される3

子宮内膜ポリープと不妊:着床障害という機序

💡 は内膜腔に突出する限局性病変で、着床の場である内膜局所の環境を機械的・炎症性に乱すことで着床を妨げると考えられている。では、IUI(子宮内人工授精)予定の患者215例のうち、ポリープ切除群は診断的+生検のみの対照群に比べ妊娠のが2.1(95%CI 1.5〜2.9)であり、切除群の妊娠の65%は最初のIUI前に成立していた4単独では無症候・軽微な病変でも、切除が妊娠率を改善しうるという点が、他の女性因子と区別してこの病変を扱う理由になる。

治療の方向性:原因に応じて段階を上げる

治療は特定された原因への対応が基本になる。のように外科的に是正できる病変はまず切除し(前述のとおりIUI前の切除が妊娠率を改善する4)、原因が・卵管因子・軽度の男性因子にとどまる場合はIUIのような比較的侵襲の低い方法から試み、それで妊娠に至らない場合や卵管閉塞・高度のように機械的な障壁が大きい場合はを含む(ART)へ進む1

男性因子は「治療可能性」で3群に分けて考える。 精路閉塞やなど外科的・内科的に是正できる原因が約18%、低精子数・運動率低下などそれ自体は是正できずARTを要する造精機能低下が約70%、高度の造精機能不全などARTでも児を得られない絶対不妊が約12%とされる3。同じ「男性因子」でも、この3群のどこに位置するかでがまったく変わる。

⚠️ ARTは治療そのものだけでなくアクセスも課題である。 ARTは30年以上前から利用可能で世界中で多数の児が生まれている一方、多くの地域で依然として入手困難・高額であり、原因が特定できても治療に到達できない患者がいることも診療上の視点として持っておく1

一次検査:男女同時並行で進める

flowchart TD
    A["避妊なし性交12か月未妊娠<br>(35歳以上は6か月)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='semen analysis'>精液検査</span>"]
    A --> C["排卵の確認<br>(月経歴、必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteal phase'>黄体期</span>プロゲステロン)"]
    A --> D["卵管疎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>・子宮腔の評価<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hysterosalpingography (HSG)'>子宮卵管造影</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saline'>生理食塩水</span>注入超音波)"]
    B --> E{"異常あり"}
    C --> E
    D --> E
    E -->|"あり"| F["原因に応じた専門的評価へ"]
    E -->|"なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovarian reserve'>卵巣予備能</span>評価・原因不明不妊として管理"]

⚠️ を省略しない。 女性側の検査だけを先に完了させてから男性側に着手すると、男性因子由来の症例で評価が半年〜1年遅れる。3項目は同時に依頼する。

まとめ

  • は避妊なし性交12か月(女性35歳以上では6か月)で評価を開始する。
  • 男性因子は単独・寄与を合わせて約半数の症例に関与し、女性因子(・卵管因子・子宮因子・)と同時並行で評価する。
  • は着床障害を介して不妊に関与し、無症候の病変でも切除で妊娠率が改善しうる。
  • 一次検査は・排卵の確認・卵管疎/子宮腔の評価を同時に依頼する。
  • 治療は原因に応じて段階を上げる(外科的是正・IUI・ART)。男性因子は治療可能性で3群に分かれ、ARTは有効な一方で入手可否そのものが課題になりうる。

出典

  1. 1.Infertility(World Health Organization・2025)不妊症を「避妊なしの定期的な性交を12か月以上続けても妊娠しない状態」と定義していること、原因を女性因子(卵管・子宮・卵巣・内分泌系の異常)・男性因子(精路閉塞・内分泌異常・造精機能障害)・原因不明に大別していること、治療がしばしば体外受精(IVF)を含む生殖補助医療(ART)に及ぶこと("Treatment of infertility often involves in-vitro fertilization (IVF) and other types of medically assisted reproduction")、ARTは30年以上前から存在するが世界の多くの地域で依然入手困難・高額であることを確認した(Key facts節・Causes節・Treatment and prevention節)。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion(American Society for Reproductive Medicine(Fertility and Sterility)・2021)35歳以上の女性では評価開始を6か月に早めること、初期評価の柱として月経歴による排卵の確認と子宮卵管造影・生理食塩水注入超音波による卵管疎通性・子宮腔評価を挙げていることを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Male Infertility(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)男性因子が単独で約20%の症例の原因であり、さらに30〜40%の症例で寄与因子となること("the male partner is solely responsible for about 20% of cases and is a contributing factor in another 30% to 40%")、原因を精路閉塞・内分泌異常・精巣自体の造精機能障害に大別できること、男性因子を治療可能性で3群(外科的・内科的に是正可能な原因が約18%、是正不能で生殖補助医療を要する造精機能低下が約70%、絶対不妊が約12%)に分けていることを確認した。閲覧 2026-08-11
  4. 4.Endometrial polyps and their implication in the pregnancy rates of patients undergoing intrauterine insemination: a prospective, randomized study(Human Reproduction・2005)子宮内膜ポリープを有するIUI施行予定の不妊症女性215例を無作為化し、子宮鏡下ポリープ切除群が診断的子宮鏡+生検のみの対照群に比べ妊娠のリスク比2.1(95%CI 1.5〜2.9)であったこと、切除群の妊娠の65%は最初のIUI前に成立していたことを確認した(Abstract)。閲覧 2026-08-11