婦人科学

婦人科学 · 06

不妊症の原因とカップルの評価

Causes of infertility. The infertile couple

前提:正常
女性性内分泌学性成熟の内分泌生理学・男性生殖生理学受精
疾患
水卵管症排卵障害にもとづく不妊症
症状
不妊症

🧠 全体像:は一方だけの問題としてではなく、精子、排卵、卵管・子宮、性交・性機能を両者同時に評価する。評価開始は女性年齢と既知のリスクで変わり、35歳未満は12か月、35歳以上は6か月、40歳超や既知の原因があればより早く始める。

定義と評価開始時期

  • :過去に妊娠成立歴がない。
  • :過去に妊娠成立歴がある。
状況 評価開始の目安
女性が35歳未満で明らかなリスクなし 定期的な避妊なし性交を12か月続けても妊娠しない
女性が35歳以上 6か月で評価を開始
女性が40歳超 即時的な評価・治療を検討する。38〜40歳超ではを第一選択の治療戦略として即時に考えてよい1
無月経・、卵管疾患、、既知の男性因子など せず評価

💡 健康なカップルでも1周期当たりの妊娠確率は有限であり、「すぐ妊娠しない」ことだけで病的とは限らない。一方、女性年齢は妊孕性と治療成績に強く影響するため、年齢に応じた時間設定が重要である。

💡 原因の内訳。 不妊カップルの約85%で原因が同定でき、残り15%が原因不明である。最も多いのは・男性因子・卵管疾患で、は診断の約25%を占める。の女性の70%はPMOS(従来PCOS)である。1

この85%と15%は同じ不妊カップル全体を分母とするため、原因別の頻度が混在しないよう、まず「同定できるか」で二分して示す。

pie
  title 不妊カップルにおける原因同定の内訳(概算)
  "原因を同定できる(約85%)" : 85
  "原因不明(約15%)" : 15

主な原因

領域 代表的原因
男性因子 、精子運動率低下、形態異常、、、内分泌異常、勃起・
排卵因子 PMOS(従来PCOS)、、甲状腺・高プロラクチン、、加齢性低下
卵管・腹膜因子 、後、、、
子宮・頸管因子 、ポリープ、、、
性交・性機能 性交頻度不足、、、
原因不明 標準評価で明らかな原因を同定できない。不妊カップルの約15%1
flowchart TD
    A["妊娠成立"] --> B["適切な時期の性交・精子の腟内射出"]
    B --> C["排卵と良好な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovum'>卵子</span>"]
    C --> D["通過可能な卵管で受精"]
    D --> E["胚が子宮腔へ移動"]
    E --> F["受容性のある子宮内膜へ着床"]
    F --> G["どの段階の障害も<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infertility factor'>不妊因子</span>となる"]

妊娠を望むカップルへの助言

妊娠しやすい時期

  • は、排卵推定日に終わる6日間である。健常女性221人・625周期の前方視的研究では、受精が成立したのはこの6日間に性交があった場合に限られた。妊娠確率は排卵5日前で0.10、排卵日当日で0.33と、排卵日に近いほど高い。2
  • この期間に1〜2日ごと、またはカップルに負担のない頻度で性交する。
  • 尿中サージ検査は排卵の約1〜2日前を捉える。上昇は排卵後の確認には使えるが、その周期の排卵予測には遅い。

⚠️ 性交後に仰向けで15分間休むことがを上げるという確かな根拠はない。精子は性交後数分〜15分ほどで卵管へ到達しうる。

💡 この点の根拠はすべて(IUI)後の研究で、自然性交には直接あてはまらない。 391組のではIUI後15分の安静で継続が27%対18%と高かったが(相対危険1.5)3、4試験1,361組のでは継続の相対危険1.67(95%信頼区間0.86〜3.22)、1.11(0.56〜2.20)といずれも有意でなく、安静と即時離床のどちらも推奨できないとされた。4

妊娠前の健康管理

  • 葉酸を開始し、喫煙・・違法薬物を避ける。
  • 過量飲酒を避け、は中等量にする。
  • 慢性疾患、服薬、ワクチン、遺伝性疾患リスクを確認する。
  • 極端な・高体重、過度の運動、熱曝露や精巣などを個別に見直す。

初回評価の原則

  1. 両者の生殖歴、性交頻度、既往、手術、感染、薬剤、生活曝露を同時に聴取する。
  2. 男性は早期にを行う。
  3. 女性は排卵、子宮・卵管、年齢に応じたを評価する。
  4. 検査は低侵襲で有用なものから行い、結果がを変えるかを考える。

まとめ

  • 不妊評価は35歳未満では12か月、35歳以上では6か月、40歳超または既知の原因があればより早く開始する。
  • 原因は男性、排卵、卵管・腹膜、子宮、性交・性機能に分け、両者を並行して評価する。約85%で原因が同定でき、最多は・男性因子・卵管疾患である。
  • は排卵推定日に終わる6日間で、排卵日当日の性交で妊娠確率が最も高い。性交後の仰臥位がを上げるという確かな根拠はない(人工授精後の安静も、では有意な差が出ていない)。

出典

  1. 1.Diagnosis and Management of Infertility: A Review(JAMA・2021)不妊症が定期的な避妊なし性交12か月後の妊娠不成立と定義され、**約85%で原因が同定でき残り15%が原因不明**であること。最も多い原因が**排卵障害・男性因子・卵管疾患**であること。**排卵障害が診断の約25%**を占め、**無排卵の女性の70%が多嚢胞性卵巣症候群**であること。ゴナドトロピンの有害事象として多胎(治療により最大36%)と卵巣過剰刺激症候群(1〜5%)があること。女性の妊孕性は加齢で低下するため、**38〜40歳超では体外受精を第一選択の治療戦略として即時に検討してよい**こと閲覧 2026-08-21
  2. 2.Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby(The New England Journal of Medicine・1995)妊娠を計画する健常女性221人・625周期の前方視的研究で、**受精が成立したのは排卵推定日に終わる6日間に性交があった場合に限られた**こと。妊娠確率は排卵5日前の性交で0.10、**排卵日当日の性交で0.33**と、排卵日に近いほど高かったこと閲覧 2026-08-21
  3. 3.Immobilisation versus immediate mobilisation after intrauterine insemination: randomised controlled trial(BMJ・2009)子宮内人工授精を受けた391組の無作為化比較試験で、授精後15分の安静群の継続妊娠率が27%と即時離床群の18%より有意に高かったこと(相対危険1.5、95%信頼区間1.1〜2.2)閲覧 2026-08-21
  4. 4.Immobilization versus immediate mobilization after intrauterine insemination: A systematic review and meta-analysis(Journal of Gynecology Obstetrics and Human Reproduction・2017)子宮内人工授精後の安静に関する無作為化比較試験4件・1,361組のメタ解析で、継続妊娠率の相対危険が1.67(95%信頼区間0.86〜3.22)、生児出生率が1.11(0.56〜2.20)といずれも**有意でなく**、安静と即時離床のどちらも推奨できないと結論されたこと閲覧 2026-08-21