婦人科学

婦人科学 · 05

月経困難症と月経前症候群

Dysmenorrhea. Premenstrual tension

前提:正常
女性性内分泌学エイコサノイド(プロスタグランジン・COX経路)
疾患
月経前不快気分障害
症状
月経困難症乳房痛

🧠 全体像:は排卵周期の子宮内膜で増えたプロスタグランジンによる子宮収縮・虚血が中心で、とが第一選択である。/はに反復し月経開始後に軽快する症状を、前方視的日誌で確認する。

月経困難症

原発性と続発性

項目 原発性 続発性
原因 明らかな骨盤なし 、、筋腫、感染、流出路異常など
発症 後、排卵周期が確立してから 直後の強い痛み、または年齢とともに新規・増悪
月経直前〜開始時に始まり、通常2〜3日で軽快 月経外にも持続、、不妊、異常出血を伴いうる
診察 通常は異常なし 圧痛、腫瘤、子宮可動性低下などを認めうる

機序と症状

低下で子宮内膜からプロスタグランジン(とくにF2α・E2)が放出され、子宮収縮、上昇、血管収縮・虚血を生じる。虚血で生じた産物が疼痛受容器を刺激する。12

  • 下腹部の疝痛で、腰・大腿へ放散する。
  • 悪心、嘔吐、下痢、頭痛、倦怠感を伴うことがある。
flowchart TD
    A["排卵後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secretory phase'>分泌期</span>内膜"] --> B["月経前の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progesterone'>黄体ホルモン</span>低下"]
    B --> C["プロスタグランジン放出"]
    C --> D["強い子宮収縮・血管収縮"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine muscle'>子宮筋</span>虚血"]
    E --> F["疝痛・悪心・下痢"]

診断

  • 典型的な病歴で原発性が疑われる場合は、追加検査なしにまずを行える。1
  • 直後からの重症、治療開始3〜6か月後も改善しない、進行性疼痛、異常出血、、不妊があれば続発性を検索する。ここで大事なのは「指示どおり服薬したうえで」改善しないことで、まずを確認する。1
  • は構造病変の第一選択画像であるが、正常でもを否定できない。

治療

  1. を月経開始1〜2日前または痛みの出現時から開始し、最初の2〜3日間は規則的に用いる。とホルモン避妊療法がきわめて有効なであり、それ以外の治療法は文献の裏づけがこれほど強くない。1
  2. 避妊希望や不十分の場合、複合ホルモン薬、単剤、放出などで排卵・内膜増殖を抑える。
  3. 、運動、睡眠も補助となる。
  4. 治療抵抗性では服薬状況を確認し、などを専門的に評価する。

月経前症候群とPMDD

「」は古い表現で、現在はとを用いる。

症状

領域 例
気分 、抑うつ、不安、、怒り
認知・行動 、、睡眠変化、食欲変化
身体 、浮腫、頭痛、腹部膨満、関節・筋肉痛
  • に出現し、月経開始後数日以内に軽快する。
  • PMDDではが強く、学業・仕事・対人機能を明確に障害する。
  • 少なくとも2周期の前方視的症状記録で周期性を確認し、、うつ病・不安症などの月経前増悪と区別する。

治療

  • 睡眠、定期運動、ストレス対処、を組み合わせる。
  • はPMDDの第一選択で、連日投与または投与が可能である(PMS一般の第一選択という意味ではない)。
  • 含有は月経前症状を改善しうるが、効果は小〜中等度( −0.41)で、有害事象は増える——有害事象による中止がの約3.4倍、有害事象全体も約2.3倍で、が増え、悪心・・も増えうる。自体にも有意な効果があった。3周期を超えた効果、軽症例での効果、他の配合薬との優劣はいずれも不明である。3
  • 作動薬は低エストロゲンの有害事象があるため、重症治療抵抗例に専門管理・とともに検討する。

まとめ

  • はプロスタグランジンによる子宮収縮・虚血が中心で、とが第一選択である。
  • 進行性疼痛、月経外疼痛、、異常出血、治療抵抗性はなど続発性原因を示唆する。
  • PMS/PMDDは少なくとも2周期の前方視的記録で確認し、PMDDにはが第一選択となる。含有COCの効果は小〜中等度で有害事象が増えるため、PMDDのと同列の第一選択として扱わない。

出典

  1. 1.Primary Dysmenorrhea: Diagnosis and Therapy(Obstetrics & Gynecology・2020)原発性月経困難症の病態がシクロオキシゲナーゼ経路によるプロスタノイド(とくにプロスタグランジン)の増加で、これが子宮収縮を起こして血流を制限し、嫌気性代謝産物が疼痛受容器を刺激すること。典型的な病歴があれば追加検査なしに経験的治療を始めてよいこと。**NSAIDsとホルモン避妊療法がきわめて有効な経験的治療**で、他の治療法は文献の裏づけがこれほど強くないこと。**指示どおり服薬しても症状が改善しない場合は続発性月経困難症の検索を始める**べきこと閲覧 2026-08-21
  2. 2.Primary Dysmenorrhea: Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment Updates(Korean Journal of Family Medicine・2022)原発性月経困難症が月経の直前または開始時に始まり3日ほど続く下腹部の疝痛を特徴とし、若年女性のQOLを損ない欠席・欠勤の主因になること。子宮内でのプロスタグランジンF2αとE2の分泌増加が骨盤痛の原因と考えられること。診断は病歴・症状・身体診察に基づき、治療はNSAIDs・ホルモン避妊薬・非薬物的補助(温罨法、運動)で行うこと閲覧 2026-08-21
  3. 3.Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome(Cochrane Database of Systematic Reviews・2023)無作為化試験5件・858人(多くはPMDD)のレビューで、ドロスピレノン+エチニルエストラジオール配合薬が月経前症状全体を改善しうるが効果は**小〜中等度**(標準化平均差 −0.41、95%信頼区間 −0.59〜−0.24、低品質エビデンス)であること。**有害事象による中止がプラセボより多く**(オッズ比3.41、2.01〜5.78)、有害事象全体も多い(オッズ比2.31、1.71〜3.11)こと。プラセボ自体にも有意な効果があったこと。3周期を超えた効果、軽症例での効果、他のプロゲスチンを含む配合薬との優劣はいずれも不明であること閲覧 2026-08-21