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Symptoms · Published

月経困難症

Dysmenorrhea

別名
有痛性月経生理痛
臓器系
生殖・産婦人科
科目
GynecologyPathology
トピック
婦人科 05:月経困難症と月経前症候群病理学 C/72:子宮内膜炎/内膜増殖症/子宮内膜症婦人科 28:子宮内膜症と子宮腺筋症婦人科学 32:骨盤痛
関連疾患
子宮内膜症・子宮腺筋症

🧠 全体像の診療は「原発性か続発性か」の切り分けに尽きる。原発性は排卵周期が確立した健康な内膜がプロスタグランジンを作りすぎることで起こる機能的な痛みで、機序を抑えること自体が治療になるためNSAIDsが対症療法でありながら第一選択になる。続発性は骨盤内の疾患が痛みを作っており、進行性の増悪・月経外の痛み・治療抵抗性という手がかりで見分け、原因検索へ進む。急性発症で他のを伴う場合の緊急鑑別はに譲る。

定義と用語の整理

患者は「生理痛」「生理がつらい」と訴えるが、医学的なは月経に伴う痙攣性の下腹部痛(腰・大腿へ放散しうる)を指す。まず区別すべきは症状が出る時期で、月経前のに出現し月経開始とともに軽快する気分・身体症状は(PMDD)であり、とは時間関係が逆になる。

原発性と続発性の切り分けが診療の骨格になる。

項目 原発性 続発性
からの期間 後6〜12か月、排卵周期の確立とともに発症 から年月を経て新規に出現、または既存の月経痛が増悪
との時間関係 月経開始の直前〜直後に始まり、48〜72時間で軽快 月経前から始まり月経後まで持続することがある
随伴症状 悪心・嘔吐・下痢・頭痛など、プロスタグランジンで説明できる全身症状 、不妊、などを伴いうる
骨盤所見 で異常を認めない 圧痛、腫瘤、子宮可動性の低下などの所見を認めうる
進行性か 周期ごとにほぼ同じパターンを繰り返す 進行性に増悪することが多い

病態生理

排卵周期が確立すると、に伴うプロゲステロン低下が引き金となり、の子宮内膜でが活性化してが遊離する。ここからプロスタグランジン(特にPGF2α)とが過剰に産生され、と血管収縮による子宮血流低下(虚血)が痛みを作る。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteolysis'>黄体退縮</span>・プロゲステロン低下"] --> B["子宮内膜で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phospholipase'>ホスホリパーゼ</span>活性化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arachidonic acid'>アラキドン酸</span>遊離"]
    C --> D["プロスタグランジンF2α・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukotriene'>ロイコトリエン</span>産生増加"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine muscle'>子宮筋</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercontractility'>過収縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal sympathetic tone'>基礎緊張</span>上昇"]
    D --> F["血管収縮による子宮血流低下"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine muscle'>子宮筋</span>の虚血性疼痛"]
    F --> G
    D --> H["悪心・嘔吐・下痢・頭痛などの全身症状"]

💡 悪心・嘔吐・下痢・頭痛は痛みとは別の疾患を疑うではなく、同じプロスタグランジン・過剰が消化管平滑筋や血管にも作用した結果として説明できる。この機序がNSAIDsを対症療法でありながら第一選択にする根拠そのものである——NSAIDsはを阻害してそのものを減らすため、痛みだけでなく随伴する全身症状にも効く。

⚠️ 見逃してはいけない病態

⚠️ 周期ごとに増悪する強い月経痛で、経血がほとんど出ない・少ない思春期例はを疑う。 などで前後の経血排出路が塞がれていると、周期性の強い疼痛だけが先行し出血に乏しい。外陰のを省略しない。

⚠️ 発熱、増加、留置歴を伴う新規のを考え、確定診断を待たず評価する。

⚠️ 進行性の増悪、月経外の、不妊、NSAIDsとへの反応不良はを示唆する。 症状の強さと病変の広がりは一致しない。痛みがに限らず慢性化した場合はの枠組みで評価する。

⚠️ 子宮の腫大やを伴うを考える。 子宮腔に近い筋腫ほど・月経痛に直結する。

⚠️ 骨盤内に腫瘤・圧痛を触れる、またはNSAIDs・に反応しない場合は、を漫然と続けず疾患の検索へ切り替える。

診察・検査の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysmenorrhea'>月経困難症</span>の訴え"] --> B["月経日誌で発症時期・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='time course'>時間経過</span>・随伴症状を確認"]
    B --> C{"原発性を示唆する典型像か"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic examination'>骨盤診察</span>は必須でなく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric therapy'>経験的治療</span>を開始"]
    C -->|"進行性・月経外の痛み・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dyspareunia'>性交痛</span>・不妊など続発性を示唆"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic examination'>骨盤診察</span>と外陰の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span>"]
    E --> F{"性交渉の経験があるか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transvaginal ultrasound, TVUS'>経腟超音波</span>"]
    F -->|"なし"| H["経腹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transrectal ultrasound (TRUS)'>経直腸超音波</span>"]
    G --> I{"症状を説明する所見があるか"}
    H --> I
    I -->|"いいえ、症状が強い・治療抵抗性"| J["MRIまたは婦人科専門評価"]
    I -->|"はい"| K["原因疾患に応じた治療へ"]

では月経日誌で発症時期・・周期性を確認し、典型的な原発性であればを省略してを開始してよい。続発性を示唆する所見があれば(性交渉未経験者では経腹・)に進む。⚠️ は初回の検査手段ではない。 画像陰性でも表在性の病変は除外できないため、症状が強く治療抵抗性であれば婦人科専門評価へ進む。

治療の考え方

の治療は「痛みそのものを抑える対症療法」と「原因疾患を治す原因治療」の2階建てで考える。原発性はプロスタグランジン産生を抑えること自体が治療になるため両者がほぼ一致するが、続発性では対症療法(NSAIDs・)で症状を抑えながら、必要に応じて原因疾患への治療を並行させる。

段階 選択肢
第一選択 などのNSAIDsを、月経開始の1〜2日前または痛みの出現時から開始し、最初の2〜3日間は規則的に投与する
避妊希望・NSAIDs不十分 (連続投与を含む)、放出子宮内システム、などの単剤
治療抵抗性・続発性 服薬状況を確認したうえでなどを専門的に評価し、必要に応じてなどのGnRH作動薬をと併用する

⭐ 生活への支障(学校・仕事を欠席する、でもが妨げられる)は、痛みの自己申告スケールよりも実質的な重症度の指標になる。で「何日休んだか」「薬でどこまで戻るか」を具体的に聞く。

まとめ

  • の診療の骨格は原発性・続発性の切り分けであり、からの期間、との時間関係、随伴症状、骨盤所見、進行性かどうかで対比する。
  • 原発性はプロスタグランジン・過剰によると虚血が原因で、同じ機序が悪心・嘔吐・下痢・頭痛などの全身症状も説明し、NSAIDsを第一選択にする根拠になる。
  • 周期ごとに増悪する強い月経痛で経血に乏しい思春期例はを疑い、外陰のを省略しない。
  • 進行性の増悪、月経外の痛み、、不妊、治療抵抗性はなど続発性の疾患を示唆する。
  • 典型的な原発性ではを省略してを開始できるが、続発性が疑われれば・画像評価に進み、は初回の検査手段にしない。
  • 治療はNSAIDsとという対症療法が中心だが、続発性では原因疾患の評価・治療を並行して行う。
  • 生活への影響(欠席・欠勤)は重症度の実質的な指標になる。